行政書士と不動産屋を別々に頼むと、何が起きるか
相続の手続き(相続人調査・戸籍収集・遺産分割協議書の作成)と、その先にある不動産の売却は、本来ひと続きの作業です。窓口を分けて別々に依頼すると起きる問題と、一つの窓口で進めることの意味を、行政書士の実務から解説します。
結論から言うと、相続の手続き(相続人調査・戸籍収集・遺産分割協議書の作成)と、その先にある不動産の売却は、本来ひと続きの作業です。窓口を分けて別々に依頼すると、同じ説明を二度すること、書類のやり取りに待ち時間が生まれ、相続登記の期限を意識したスケジュール管理がしにくくなります。
相続手続きから不動産売却まで、実務は4段階でつながっている
相続した不動産を売るまでの流れを行政書士の実務から整理すると、次の4段階になります。
- 相続人の確定・戸籍収集(行政書士の業務範囲)——被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、法定相続人を確定します。本籍地を転籍している場合は複数の役所とのやり取りが必要になり、これだけで数週間かかることもあります。
- 遺産分割協議書の作成(行政書士の業務範囲)——相続人全員の合意内容を書面化します。不動産をどう分けるか(単独取得・共有・代償分割など)の書き方によって、後の登記や売却のしやすさが変わります。
- 相続登記=名義変更(司法書士の業務範囲)——2の協議書をもとに、法務局で名義を変更します。
- 不動産の売却活動(宅地建物取引業者の業務範囲)——3の登記が完了して初めて、正式な売買契約・引き渡しが可能になります。
この4つは法律上、それぞれ別の資格者の業務範囲です。行政書士が登記や不動産の売却を代わりに行うことはできませんし、宅地建物取引業者が遺産分割協議書を作成することもできません。業際(それぞれの資格の業務範囲)は守られる必要があります。
一方で、「誰が窓口になって、この4段階の進捗を把握しているか」は業際の話とは別です。窓口が一つであれば、2の協議書ができ次第すぐに3・4の準備に取りかかれます。窓口が分かれていると、それぞれの担当者に進捗を報告し、次の依頼先へ情報を引き継ぐという手間が発生します。
相続登記には期限がある——だからこそ一体で進める意味がある
2024年4月1日に施行された改正不動産登記法により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務が課されました。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になり得ます(2024年4月1日より前に発生した相続についても、2027年3月31日までの猶予期間内に登記が必要です)。
期限があるからこそ、1〜4の段階を無駄なく進める必要があります。窓口が分かれて手戻りが生じるたびに、この期限に近づいていきます。
窓口が分かれると起きがちなこと
- 家族構成や財産の状況を、行政書士・不動産会社それぞれに一から説明し直す
- 遺産分割協議書が完成するのを待ってから不動産会社に連絡する(並行して進めれば短縮できる期間が延びる)
- 協議書の「不動産の表示」の書き方が後の登記・売却の実務と噛み合わず、書き直しが必要になることがある
- 全体の進捗と期限(相続登記の3年)を把握している人が誰もいない状態になる
これは特定の事務所や会社の問題ではなく、依頼先が分かれること自体から生じる構造的な手間です。それぞれの専門家が自分の担当範囲を適切に処理していても、引き継ぎの部分で時間がかかる、というのはよくあることです。
窓口が一つだと何が変わるか
四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は、同じ拠点(文京区小日向)で運営しており、代表者も同じです。相続人調査・戸籍収集・遺産分割協議書の作成を進めながら、並行して不動産売却の準備(査定・資料収集など)を進められるのが特徴です。相続登記は提携する司法書士と連携し、進捗を共有しながら進めます。
もちろん、行政書士業務と宅建業はそれぞれ別の資格・別の契約として、お客様と直接やり取りします。窓口が一本化されているのは「進捗の把握と連携がしやすい」という運用上の利点であり、業際を越えて一方の資格者がもう一方の業務を行っているわけではありません。
現場の実感
文京区で実家を相続された方から、最初は行政書士事務所と不動産会社を別々に探そうとしていた、というお話を伺ったことがあります。遺産分割協議書ができあがるまで不動産会社には相談していなかったため、協議書完成後に初めて査定を依頼し、そこから売却活動が始まる、という進め方を想定されていました。
協議書の作成段階から「この書き方だと後の売却でこう困る可能性がある」という点を踏まえて文言を調整し、並行して物件の状態確認や査定の準備を進めることができました。結果として全体の期間を短縮できただけでなく、相続登記の期限も余裕を持って迎えられました。「手続きが終わってから不動産のことを考える」のではなく、「手続きの段階から不動産のことも見据えて進められる」という点を評価していただけたのが印象に残っています。
(本エピソードは複数の実例を組み合わせ、個人が特定されないよう抽象化しています。)
よくある質問
Q. 行政書士と不動産屋を同じ会社に頼むと、業際の問題はありませんか?
A. 行政書士業務(遺産分割協議書の作成など)と宅地建物取引業(不動産の売買仲介など)は、それぞれ別の資格・別の契約としてお客様と直接やり取りします。窓口が同じでも、業務そのものが混ざることはありません。
Q. 相続登記(司法書士の業務)はどうなりますか?
A. 相続登記は司法書士の独占業務です。四葉行政書士事務所・四葉不動産株式会社では行わず、提携する司法書士におつなぎします。
Q. 相続登記の期限はどれくらい厳しいのですか?
A. 2024年4月1日の法改正により、不動産の取得を知った日から3年以内の登記申請が義務化されています。正当な理由なく過ぎると10万円以下の過料の対象になり得ます。3年は長く感じられますが、戸籍収集や協議に時間がかかるケースもあるため、早めに着手されることをおすすめします。
Q. 相続手続きと売却活動は、同時に進めても大丈夫ですか?
A. 遺産分割協議が調い、相続人が確定した段階であれば、書類作成の手続きと並行して査定・資料準備などの売却準備を進めることが可能です。ただし売買契約の締結・引き渡しには相続登記の完了が必要です。
Q. 一部の手続きだけ他の専門家に頼むこともできますか?
A. 可能です。窓口を一本化することは必須ではなく、お客様のご希望に応じて対応します。
Q. 遠方に住んでいても相談できますか?
A. オンラインと郵送でのやり取りに対応しています。文京区にお越しいただかなくても手続きを進められます。
相続の手続きと、その先の不動産のこと、まとめてご相談いただけます。
浦松丈二|四葉行政書士事務所 代表行政書士(登録番号 第25087022号)・四葉不動産株式会社 代表取締役・宅地建物取引士(東京都知事登録)。元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)。文京区小日向を拠点に、相続の手続きと不動産の管理・活用・売却をワンストップでサポートしています。
※本記事は一般的な情報提供です。相続登記は司法書士の、相続税申告は税理士の、紛争性のある事案は弁護士の専門領域であり、四葉行政書士事務所・四葉不動産株式会社が行うものではありません。個別の事案については資格者にご確認ください。
