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2026.09.03許認可の手続き(行政書士の実務から)

簡易宿所の旅館業許可は、どんな条件と流れで取りますか──民泊の届出との違い・構造設備・用途地域・消防

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

戸建てや空きビルで素泊まりの宿を営むには、簡易宿所営業として都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)の許可が要ります(旅館業法第3条第1項)。客室延べ床面積33㎡以上(宿泊者10人未満なら3.3㎡×人数)などの構造設備は旅館業法施行令第1条第2項に、用途地域は建築基準法別表第2に、用途変更は建築基準法第87条第1項にあり、消防法令適合通知書の添付も求められます。年営業日数に上限がない点が住宅宿泊事業法の民泊(届出・年180日上限)との違いです。建築・消防・物件は建築士・特定行政庁・消防機関・不動産へ分離受任で振る分担を示しました。

結論(先に要点):戸建てや空きビルで素泊まりの宿(ゲストハウス等)を営むには、旅館業法の営業許可が要ります。簡易宿所営業として、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可を受けます(旅館業法第3条第1項)。客室の延べ床面積や便所・洗面などの構造設備は旅館業法施行令第1条第2項に基準があり、あわせて用途地域・用途変更(建築基準法)と消防法令への適合が前提になります。年間の営業日数に上限がない点が、住宅宿泊事業法の民泊(届出制・年180日上限)との大きな違いです。本記事は許可の条件と流れを整理するためのもので、許可の可否は保健所の審査によります。当事務所が許可を保証するものではありません。

簡易宿所の許可と、民泊の届出は何が違いますか

同じ「泊める商売」でも、根拠となる法律が異なります。簡易宿所は旅館業法の「許可」、いわゆる民泊は住宅宿泊事業法の「届出」で、要件も日数の扱いも別物です。

簡易宿所営業住宅宿泊事業(民泊)
根拠法旅館業法第3条第1項住宅宿泊事業法(平成30年6月15日施行)
手続許可届出
営業日数上限なし年間180日以内
構造設備施行令第1条第2項の基準あり住宅としての設備が基本

住宅宿泊事業法による民泊は届出制で、年間の宿泊提供日数が180日以内に制限されます。これに対し簡易宿所営業は許可制で、日数の上限はありませんが、構造設備の基準や用途地域・消防への適合という要件が課されます。年間を通して継続的に宿泊業を営みたい場合は簡易宿所の許可、住宅を活用して日数の範囲で行う場合は民泊の届出、というのが基本の選び分けです。民泊の届出の要件は住宅宿泊事業の届出にまとめています。

簡易宿所の構造設備基準(客室・便所・洗面)はどこまで求められますか

簡易宿所営業の構造設備の基準は、旅館業法施行令第1条第2項に定められています。代表的な項目は次のとおりです。都道府県等の条例で、これに上乗せの基準が定められている場合があります。

項目基準の概要
客室の延べ床面積33㎡以上。ただし、宿泊者数を10人未満とする場合は、3.3㎡に宿泊者数を乗じた面積以上
階層式寝台(二段ベッド等)上段と下段の間隔がおおむね1m以上
換気・採光・照明・防湿・排水適当な設備を有すること
入浴設備宿泊者の需要を満たす規模。近接して公衆浴場等がある場合を除く
洗面設備宿泊者の需要を満たす適当な規模
便所適当な数を有すること

簡易宿所は相部屋(ドミトリー)を想定した営業類型のため、旅館・ホテル営業と異なり、客室ごとの広さではなく客室全体の延べ床面積で基準が定められています。玄関帳場(フロント)の設置は簡易宿所では一律には求められませんが、宿泊者名簿の備付けや本人確認の体制は運営上必要です。具体的な数値・区画は保健所の手引きと事前相談で確認します。

用途地域や既存建物の用途変更は、問題になりますか

旅館業(ホテル・旅館)は、建築基準法別表第2により用途地域ごとの制限を受けます。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域などでは原則として建てられないなど、地域によって可否が分かれます。開こうとする場所がどの用途地域かを、まず特定行政庁(建築を所管する窓口)で確認します。

既存の建物を宿泊施設に転用する場合は、用途変更に注意が要ります。旅館・ホテルは建築基準法上の特殊建築物にあたり、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える用途変更をするときは、確認申請が必要です(建築基準法第87条第1項。確認が必要となる規模を100㎡超から200㎡超に緩和する改正は令和元年6月25日施行)。用途地域の可否、用途変更の要否、既存不適格建築物の扱いは、建築士・特定行政庁の領域です。物件を契約する前に、用途地域と用途変更の見通しを確認しておくことが実務上重要です。

消防法令適合通知書は、なぜ必要ですか

旅館業の営業許可申請では、消防法令に適合していることを示す「消防法令適合通知書」の添付を求められるのが一般的です。この通知書は、施設を管轄する消防署が現地検査を行い、消防法令に適合していると認めたときに交付します。宿泊施設は不特定の人が就寝する用途のため、消防用設備等の設置基準(消防法)が住宅より厳しく、自動火災報知設備・誘導灯・消火器などが求められる場合があります。

必要な消防用設備は、建物の規模・構造・収容人員によって変わります。保健所の許可審査と消防署の適合確認は別の窓口で進むため、どちらか一方だけが整っても営業は始められません。物件の内装や間取りを決める前に、消防署へ事前相談し、必要な設備と工事を見積もっておくことが、後戻りを防ぐうえで重要です。

建築・消防・物件は、それぞれ誰に相談すればよいですか

簡易宿所の許可は、複数の専門分野が交わります。担当は次のように分かれます。

  • 旅館業許可(簡易宿所)の申請書・添付書類の作成、保健所との事前相談の支援 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 事業用物件の選定・賃貸借・重要事項説明 → 四葉不動産株式会社
  • 建築物の用途・確認申請・用途変更・検査済証の確認 → 建築士・特定行政庁
  • 消防用設備等の設計・工事、消防法令適合通知書の交付申請 → 消防設備士・消防機関
  • 建物や事業の会計・税務 → 税理士
  • 権利義務・紛争にわたる個別の法的判断 → 弁護士

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体です。当事務所は旅館業許可の申請支援のみを独立した事業体として担い、物件・建築・消防・税務は、それぞれの資格者・行政窓口と別々にご契約・ご相談いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。許認可の全体像は許認可の手続き、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。許可の可否そのものは保健所が判断します。

よくある質問

Q. 簡易宿所と民泊は、どちらが有利ですか?
A. 一概には言えません。簡易宿所(旅館業法第3条第1項)は許可制で営業日数の上限がない一方、構造設備・用途地域・消防の要件が課されます。民泊(住宅宿泊事業法)は届出制で始めやすい反面、年間180日以内という日数制限があります。継続的に営みたいか、日数の範囲で行うかで選び分けます。

Q. 客室の広さは、必ず33㎡以上ないと駄目ですか?
A. 宿泊者数を10人未満とする場合は、3.3㎡に宿泊者数を乗じた面積以上でよいとされています(旅館業法施行令第1条第2項)。たとえば宿泊者を最大4人とする施設なら、3.3㎡×4=13.2㎡以上が客室延べ床面積の目安になります。条例で上乗せ基準がある場合があるため、保健所で確認します。

Q. 住宅街の戸建てでも簡易宿所は開けますか?
A. 用途地域によります。旅館・ホテルは建築基準法別表第2で用途制限を受け、第一種・第二種低層住居専用地域などでは原則として営めません。まず特定行政庁でその場所の用途地域を確認します。物件を契約する前の確認が重要です。

Q. 消防法令適合通知書は、いつ取ればよいですか?
A. 旅館業許可申請の添付書類として求められるのが一般的なので、許可申請の前に消防署へ交付申請し、現地検査を経て交付を受けます。必要な消防用設備の工事が伴うことがあるため、内装工事の前に消防署へ事前相談しておくと、後戻りを防げます。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「旅館業法」(昭和23年法律第138号)第3条第1項(参照日 2026-09-03)
  • e-Gov法令検索「旅館業法施行令」(昭和32年政令第152号)第1条第2項(簡易宿所営業の構造設備の基準)(参照日 2026-09-03)
  • e-Gov法令検索「住宅宿泊事業法」(平成29年法律第65号。施行 平成30年6月15日)第2条第3項(年間提供日数180日以内)(参照日 2026-09-03)
  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号)第87条第1項、別表第2(参照日 2026-09-03)
  • 開業予定地の保健所が公表する旅館業(簡易宿所営業)許可申請の手引き(各自治体。参照日 2026-09-03)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の許可の可否、構造設備基準・用途地域・用途変更・消防法令への適合を保証するものではありません。旅館業許可の最終的な審査は保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)が行います。用途地域・用途変更・既存不適格の判断は特定行政庁・建築士、消防用設備等の要否は消防機関・消防設備士が担います。施設ごとの基準・様式・必要書類は当該自治体の公式ページで確認してください。事業用物件の選定・賃貸借・重要事項説明は四葉不動産株式会社、建築確認・用途変更は建築士・特定行政庁、消防設備の設計・工事は消防設備士・消防機関、会計・税務は税理士、権利義務・紛争にわたる個別の法的判断は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約・ご相談のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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