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2026.09.12相続の手続き(行政書士の実務から)

お墓・仏壇は遺産分割の対象か?祭祀承継者の決め方と協議書の書き方

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

お墓・仏壇・位牌などの祭祀財産(系譜・祭具・墳墓)は、通常の相続財産とは別枠で、遺産分割の対象になりません。民法第897条による祭祀承継者の決まり方(指定・慣習・家庭裁判所)、遺産分割協議書での書き方、改葬許可(墓地、埋葬等に関する法律第5条)、家事事件手続法第190条の承継者指定の審判を整理し、登記は司法書士、相続税は税理士、紛争は弁護士へ分離受任で振る分担をまとめました。

結論(先に要点):お墓・仏壇・位牌などの「祭祀財産」(系譜、祭具及び墳墓)は、預貯金や不動産といった通常の相続財産とは扱いが異なり、遺産分割の対象にはなりません。これらは相続人間で分けるのではなく、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、被相続人の指定があればその者が承継します(民法第897条第1項)。慣習が明らかでないときは家庭裁判所が承継者を定めます(同条第2項)。本記事は、祭祀財産が相続財産と別枠であること、祭祀承継者の決まり方、遺産分割協議書での書き方、費用・改葬の扱い、相談先を整理する一般的な情報提供であり、個別の法的判断は行いません。

お墓や仏壇は相続財産に含まれるのか?

相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法第896条)。しかし、系譜(家系図など)、祭具(仏壇・位牌・神棚など)、墳墓(墓石・墓地の使用権など)は、民法第897条により、この原則にかかわらず祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定められています。つまり祭祀財産は、遺産分割の対象となる相続財産とは別枠で承継され、相続人全員で分け合うものではありません。

区分承継の仕方
通常の相続財産預貯金・不動産・有価証券等遺産分割の対象。相続人間の協議等で分ける
祭祀財産系譜・祭具(仏壇・位牌)・墳墓(墓石・墓地使用権)遺産分割の対象外。祭祀主宰者が承継

祭祀財産は遺産分割の対象となる相続財産とは別枠のため、原則として相続税の課税対象にもなりません(ただし評価・課税の個別判断は税理士の領域です)。財産の全体像の整理は遺産分割協議書は自分で作れる?もご覧ください。

祭祀承継者はどうやって決まるのか?

民法第897条は、祭祀承継者の決まり方を次の順序で定めています。

順位決め方根拠
① 被相続人の指定被相続人が生前または遺言で指定した者民法第897条第1項ただし書
② 慣習指定がないときは、その地方の慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者民法第897条第1項本文
③ 家庭裁判所の指定慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定める民法第897条第2項

指定の方法は遺言に限られず、書面や口頭でもよいとされますが、後日の紛争を避けるため書面で明確にしておくことが望まれます。祭祀承継者は相続人である必要はなく、相続人以外や親族以外の者を指定することもできるとされています。家庭裁判所が定める場合は、被相続人との身分関係や生活関係、承継の意思・能力、祭具の管理の経緯などを総合して判断するとされています。

遺産分割協議書に祭祀の扱いをどう書くのか?

祭祀財産は遺産分割の対象外ですが、相続人間の認識をそろえるため、遺産分割協議書に祭祀主宰者を確認的に記載することがあります。記載の考え方は次のとおりです。

  • 「被相続人〇〇の祭祀主宰者(系譜・祭具・墳墓の承継者)を相続人△△と定める(確認する)」といった条項を置く
  • 墓地の使用権(永代使用権)は墓地ごとの規約に従うため、霊園・寺院への名義変更手続が別途必要になることがある
  • 敷地の所有権が問題になる場合や、不動産として登記された土地の名義を変える場合の相続登記は司法書士の業務

遺産分割協議書そのものの作成は行政書士業務の範囲で支援できます。書き方は遺産分割協議書は自分で作れる?、不動産の名義変更(相続登記)の流れは相続登記の流れもご覧ください。

承継者は費用や改葬をどこまで負うのか?

祭祀承継者になっても、墓地の管理料や法要の費用を負担する法律上の義務が当然に生じるわけではなく、これらをどう分担するかは親族間の話し合いによります。祭祀承継者が単独で負担することも、相続人間で実際上分担することもあります。

お墓の引っ越し(改葬)をするときは、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)により、現に焼骨が納められている地の市町村長の改葬許可が必要です(同法第5条)。市町村長は許可をするときに改葬許可証を交付します(同法第8条)。改葬には、現在の墓地・移転先の墓地双方の手続や書類が必要で、寺院墓地では離檀に伴う話し合いが生じることもあります。改葬許可の申請手続は市区町村の案内に従って行います。

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決まらないときは誰に相談するのか?

承継者をめぐって親族間で話がまとまらないときは、家庭裁判所に祭祀承継者(祭具等の所有権の承継者)の指定を求めることができます。これは家事事件手続法第190条(別表第二の十一の項)の「祭具等の所有権の承継者の指定」の審判・調停事件で、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立ての手数料は収入印紙800円です。審判に不服があるときは即時抗告ができます。

祭祀は感情的な対立になりやすく、紛争性のあるものの代理交渉・調停・審判の代理は弁護士の業務です。当事務所は、争いのない範囲での遺産分割協議書の作成や事実関係の整理を行政書士業務として支援します。

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体です。遺産分割協議書の作成は行政書士、墓地や敷地の相続登記は司法書士、相続税の評価・申告は税理士、親族間で争いがある場合の交渉・調停・審判は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。不動産の相続・売却の相談は不動産の相続・売却の窓口へ。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続の取扱業務は相続手続きサポートをご覧ください。

よくある質問

Q. お墓や仏壇は、相続人で分けたり売ったりできますか?
A. 系譜・祭具・墳墓といった祭祀財産は、遺産分割の対象となる相続財産とは別枠で承継されます(民法第897条)。相続人全員で分け合うものではなく、祭祀を主宰すべき一人が承継するのが原則です。処分の可否や方法は、祭祀財産の性質や墓地・寺院の規約にもよるため、個別の判断は資格者にご確認ください。

Q. 祭祀承継者は長男でなければいけませんか?
A. いいえ。民法第897条は、まず被相続人の指定、次に慣習によるとし、長男に限っていません。祭祀承継者は相続人である必要もなく、相続人以外や親族以外の者を指定することもできるとされています。指定がなく慣習も明らかでないときは、家庭裁判所が定めます。

Q. お墓を別の場所に移すには、どんな手続が必要ですか?
A. 改葬には、現に焼骨が納められている地の市町村長の改葬許可が必要です(墓地、埋葬等に関する法律第5条)。市町村長は許可の際に改葬許可証を交付します(同法第8条)。現在の墓地と移転先双方の手続や書類が必要で、寺院墓地では離檀に関する話し合いが生じることもあります。

Q. 承継者が決まらないときは、どこに相談すればよいですか?
A. 親族間で話がまとまらないときは、家庭裁判所に祭具等の所有権の承継者の指定を申し立てることができます(家事事件手続法第190条)。申立ての手数料は収入印紙800円です。紛争性のある交渉・調停・審判の代理は弁護士の業務で、弁護士は当事務所とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第896条・第897条(参照日 2026-09-12)
  • e-Gov法令検索「家事事件手続法」(平成23年法律第52号)第190条・別表第二の十一の項(祭具等の所有権の承継者の指定)(参照日 2026-09-12)
  • e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)第5条・第8条(参照日 2026-09-12)
  • 裁判所「祭具等の所有権の承継者の指定調停・審判」申立ての手続案内(参照日 2026-09-12)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の祭祀承継者の判断、祭祀財産の範囲、改葬の可否、相続税の評価・課税を保証するものではありません。遺産分割協議書の作成は行政書士、墓地や敷地の相続登記は司法書士、相続税の評価・申告は税理士、親族間で争いがある場合の交渉・調停・審判は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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