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2026.09.16相続の手続き(行政書士の実務から)

相続人でない親族の介護は報われる?──特別寄与料(民法第1050条)の要件・期限・協議

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続人でない親族が、被相続人を無償で療養看護するなどして財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できます(民法第1050条第1項)。2018年の相続法改正で新設され、2019年(令和元年)7月1日に施行された制度です。相続人だけが対象の寄与分(民法第904条の2)との違い、『無償の療養看護』の要件、金額の決め方と6箇月・1年の期間制限、相続税法上の取扱い(みなし遺贈・2割加算・債務控除)を整理し、合意書の作成支援は行政書士、家裁への処分請求は弁護士、相続税は税理士、相続登記は司法書士へ分離受任で振る分担を示しました。

結論(先に要点):相続人でない親族が、被相続人を無償で療養看護するなどして財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できます(民法第1050条第1項)。これは2018年(平成30年)の相続法改正で新設され、2019年(令和元年)7月1日に施行された制度です。相続人だけが対象の寄与分(民法第904条の2)とは別の権利で、子の配偶者(いわゆる嫁)などが典型です。まず当事者間の協議で決め、協議が調わないときは家庭裁判所へ処分を請求しますが、この請求には期間制限があります(同条第2項)。本記事は制度の一般的な情報提供にとどまり、具体的な法的判断は資格者が行います。

特別寄与料は誰が誰に請求できますか

請求できるのは「特別寄与者」、請求される相手は「相続人」です。民法第1050条第1項は、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族を、特別寄与者としています。ただし、相続人・相続の放棄をした者・欠格や廃除により相続権を失った者は除かれます。

ここでいう「親族」は、民法上の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)を指します。相続人でない親族が対象なので、実際に問題になりやすいのは、被相続人の子の配偶者(息子の妻・娘の夫)、相続人でない兄弟姉妹や甥姪などです。特別寄与者は、相続の開始後、相続人に対して、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求できます。相続人が数人いるときは、各相続人が法定相続分(民法第900条から第902条まで)に応じた額を負担します(同条第5項)。

寄与分と特別寄与料は何が違いますか

どちらも「被相続人への貢献を評価する」制度ですが、請求できる人が根本的に異なります。寄与分は共同相続人のための制度で、特別寄与料は相続人でない親族のための制度です。

寄与分(民法第904条の2)特別寄与料(民法第1050条)
請求できる人共同相続人相続人でない被相続人の親族
反映のしかた遺産分割の中で相続分を修正相続人に金銭を請求
決める場面遺産分割協議・調停・審判当事者の協議・家裁の処分
期間制限遺産分割の中で扱う6箇月・1年の期間制限あり

従来は、たとえば長男の妻が義父を長年介護しても、妻は相続人でないため遺産分割で寄与を主張できませんでした。この不均衡を埋めるために新設されたのが特別寄与料です。相続人自身の貢献は引き続き寄与分(民法第904条の2)で、遺産分割の中で扱います。相続人の特別受益・寄与分の考え方は相続人の特別受益と寄与分にまとめています。

「無償の療養看護」はどこまで認められますか

民法第1050条第1項の要件は、大きく次の3つです。いずれも満たす必要があります。

  • 無償であること(対価・報酬を受けていないこと)
  • 療養看護その他の労務の提供をしたこと
  • それによって被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与があったこと

ポイントは「無償」と「財産の維持・増加」です。介護の対価として給与や生活費を受け取っていた場合は、無償とはいえず認められにくくなります。また、単に同居していた・時々様子を見ていたという程度では足りず、通常の親族間の協力を超える「特別の」貢献であり、それによって被相続人が支出を免れた(=財産が維持された)といえる関係が求められます。財産の維持・増加につながらない精神的な支えだけでは、金銭請求の根拠にはなりにくいのが実務の考え方です。もっとも、どこまでが「特別の寄与」に当たるかは個別事情によるため、判断は資格者に相談してください。

金額はどう決め、いつまでに請求しますか

まず当事者(特別寄与者と相続人)の協議で決めます。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求できます(民法第1050条第2項)。このとき家庭裁判所は、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して額を定めます(同条第3項)。金額には上限があり、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(同条第4項)。

家庭裁判所への請求には期間制限があります。特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、又は相続の開始の時から1年を経過したときは、処分を請求できません(同条第2項ただし書)。この期間は寄与分より短く、経過すると家裁の手続きが使えなくなるため、早めの対応が要ります。

税務面も押さえておきます。特別寄与料を受け取った特別寄与者は、被相続人から遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象になり(相続税法第4条第2項)、配偶者・一親等の血族以外なので相続税額の2割加算の対象です(相続税法第18条)。申告期限は、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10箇月以内です(相続税法第29条)。支払った相続人の側は、その額を債務控除できます(相続税法第13条第4項)。税額の計算は税理士の領域です。

ご自身のケースについて相談したい方へ

在留資格・許認可など、行政手続について状況をお聞かせください。

協議・裁判・税務は、それぞれ誰に頼めばよいですか

特別寄与料をめぐる手続きは、段階ごとに担当が分かれます。

  • 当事者の協議が調ったときの合意書(協議書)の作成支援 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 協議が調わず家庭裁判所へ処分を請求する段階、相手方との交渉・代理、個別の法的判断 → 弁護士
  • 相続税の申告・2割加算・債務控除の計算 → 税理士
  • 相続財産に不動産があるときの相続登記 → 司法書士
  • 相続した不動産の売却・活用の相談 → 四葉不動産株式会社

四葉行政書士事務所は、当事者間で合意が成立した場合の合意書(協議書)作成の支援を、独立した事業体として担います。協議がまとまらず家庭裁判所の手続きに進む段階や、相手方との交渉・個別の法的判断は弁護士の業務です。相続税は税理士、相続登記は司法書士、相続不動産の売却・活用は四葉不動産株式会社(別事業体)が、それぞれ別々にご契約・ご相談のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。相続手続の全体像は相続の手続き、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続不動産の相談は相続不動産の窓口をご覧ください。遺産分割協議書そのものの作り方は遺産分割協議書の作り方にまとめています。

よくある質問

Q. 長男の妻は義父の遺産を相続できますか?
A. 相続はできませんが、無償で義父を療養看護して財産の維持・増加に特別の寄与をしたときは、相続人に対して特別寄与料を請求できます(民法第1050条第1項)。長男の妻は相続人でない親族なので、相続分としてではなく、特別寄与者としての金銭請求という形になります。

Q. 寄与分と特別寄与料は両方もらえますか?
A. 同じ人が両方を受け取ることはありません。寄与分(民法第904条の2)は共同相続人のための制度、特別寄与料(民法第1050条)は相続人でない親族のための制度で、対象者が分かれています。相続人であれば寄与分、相続人でない親族であれば特別寄与料を検討します。

Q. いつまでに請求すればよいですか?
A. まず当事者の協議で決めますが、協議が調わないときに家庭裁判所へ処分を請求できる期間には制限があります。相続の開始及び相続人を知った時から6箇月、又は相続開始の時から1年を経過すると、家裁への請求はできません(民法第1050条第2項ただし書)。期間が短いため、早めに動くことが大切です。

Q. 特別寄与料に税金はかかりますか?
A. 受け取った側は、被相続人から遺贈により取得したものとみなされて相続税の対象になり(相続税法第4条第2項)、2割加算の対象です(相続税法第18条)。申告期限は額が確定したことを知った日の翌日から10箇月以内です(相続税法第29条)。支払った相続人は債務控除できます。具体的な税額の計算は税理士にご相談ください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第1050条第1項〜第5項(特別の寄与)、第904条の2(寄与分)、第900条から第902条まで(参照日 2026-09-16)
  • 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号。特別の寄与に関する規定の施行 2019年(令和元年)7月1日)(参照日 2026-09-16)
  • e-Gov法令検索「家事事件手続法」(平成23年法律第52号)特別の寄与に関する処分の審判事件(参照日 2026-09-16)
  • e-Gov法令検索「相続税法」(昭和25年法律第73号)第4条第2項(みなし遺贈)、第13条第4項(債務控除)、第18条(2割加算)、第29条(期限内申告の特則)(参照日 2026-09-16)

本記事は一般的な情報提供であり、特定の事案について特別寄与料の可否・金額を保証するものではありません。特別寄与料が認められるか、いくらが相当かは、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を踏まえた個別判断であり、家庭裁判所の処分によることもあります。協議が調わないときの家庭裁判所への処分請求、相手方との交渉、権利義務・紛争にわたる個別の法的判断は弁護士、相続税の申告・2割加算・債務控除の計算は税理士、相続財産に不動産があるときの相続登記は司法書士、相続不動産の売却・活用は四葉不動産株式会社が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約・ご相談のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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