トリミング・ペットショップの物件、開業前に何を確認する?──第一種動物取扱業の飼養施設と物件の条件
トリミングサロン・ペットショップの物件で先に詰まるのは、飼養施設の基準(ケージ・洗浄・消毒・換気・排水)を満たせるか、臭気・鳴き声で近隣とぶつからないか、賃貸借契約で「動物の飼養」が禁じられていないかの3点です。第一種動物取扱業の登録は事業所ごとで、物件が飼養施設の基準を満たせることが前提。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、動物の愛護及び管理に関する法律の条文と環境省・自治体の案内から、契約前に確認できることを整理します。
結論(先に要点):トリミングサロン・ペットショップの物件で先に詰まるのは、飼養施設の基準(ケージ・洗浄・消毒・換気・排水)を満たせるか、臭気・鳴き声で近隣とぶつからないか、そして賃貸借契約で「動物の飼養」が禁じられていないか、の3点です。第一種動物取扱業の登録は「事業所ごと」に受けるもので、物件が飼養施設の基準を満たせることが前提になります。契約前に用途地域・排水・換気・貸主の可否を確かめれば、手戻りは防げます。
「ペット可のマンションだから大丈夫」と借りたのに、いざ登録の段になって、飼養施設の換気や排水が基準に届かず工事のやり直しになる。飲食店や美容室で起きるのと同じ手戻りが、動物を扱う店でも起きます。本記事は、東京でトリミングサロンやペットショップを開こうとしている方と、その物件を貸す方に向けて、賃貸借契約を結ぶ前に確認できることを、動物の愛護及び管理に関する法律の条文と環境省・自治体の案内から順に整理したものです。可否の最終確認は登録主体である自治体の窓口で行います。
動物取扱業の物件で、契約前にまず何を確認する?
まず、自分の商売が「登録の要る業」に当たるかを確かめます。動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第10条は、動物(哺乳類・鳥類・爬虫類に属するもの)の販売・保管・貸出し・訓練・展示などを業として営もうとする者は、事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事(指定都市・中核市等ではその長)の第一種動物取扱業の登録を受けなければならない、と定めています(2026年8月25日参照)。
自分の店がどの種別かは、こう整理できます。
| 業態 | 該当する種別(例) |
|---|---|
| ペットショップ(生体販売) | 販売 |
| トリミングサロン(預かって施術) | 保管 |
| ペットホテル | 保管 |
| しつけ・訓練教室 | 訓練 |
| 猫カフェ・ふれあい | 展示 |
登録は「事業所ごと」です。 だから物件が変われば登録し直しになり、物件そのものが飼養施設の基準を満たせることが登録の前提になります。ここが物件選びの起点です。
登録には有効期間があり、5年ごとの更新が必要です(同法第13条)。加えて、暴力団関係者や過去に登録を取り消された者など、一定の事由に当たると登録が拒否されます(同法第12条)。物件の話ではありませんが、開業を組み立てるうえで押さえておく点です。
飼養施設の面積・ケージ・臭気対策は物件でどう決まる?
第一種動物取扱業者は、環境省令で定める飼養施設の構造・規模その他の管理に関する基準を遵守しなければなりません(同法第21条)。その具体は同法施行規則(平成18年環境省令第1号)が定めており、令和3年6月1日施行の改正で犬・猫を扱う場合の数値基準(いわゆる数値規制)が加わりました(2026年8月25日参照)。
物件の側で効いてくるのは、次のような点です。
| 項目 | 施行規則が示す考え方 |
|---|---|
| ケージ等 | 動物の種類・数・体格に応じた大きさ。犬猫は運動スペースを分けるか一体にするかで基準が異なり、床材の金網使用は原則禁止(肉球が保護される場合を除く) |
| 給餌・給水設備 | 清潔な水を常時飲めるようにする設備 |
| 洗浄・消毒設備 | 施設・器具を洗浄し消毒できる設備 |
| 排水設備 | 汚物・汚水を適切に排出できる排水 |
| 換気設備 | 臭気・湿気・粉じんを排出し、温湿度を管理できる換気 |
| 遮光・照明設備 | 動物の生理に配慮した採光・照明 |
| 従業者数 | 犬・猫は従業者1人あたりの飼養頭数に上限(犬は20頭〔うち繁殖用15頭〕、猫は30頭〔うち繁殖用25頭〕。従業者数の基準は経過措置を経て段階施行) |
注意すべきは、これらは「動物のための基準」であって、建物のどこに何を置くかは物件の給排水・換気の素地で決まるということです。 ワンルームの店舗に消毒用の洗浄槽や大型の換気を後から入れようとすると、給排水の増設や電気容量の増設で費用と工期が動きます。臭気・鳴き声の対策(防音・消臭・排気の向き)も、建物の構造しだいで打てる手が変わります。
物件の側で確認しておくとよいのは、基準の数値そのものより、その基準を満たせる素地があるかです。
| 契約前に確認 | なぜ効くか |
|---|---|
| 給排水の位置と口径 | 洗浄・消毒・給水に必須。トリミングは湯を大量に使う |
| 換気・排気の経路 | 臭気は近隣トラブルの主因。排気の向きと能力が要 |
| 電気容量 | 給湯・ドライヤー・空調・洗浄機で容量が要る |
| 防水・清掃性のある床壁 | 「清潔の保持」の素地。原状回復の範囲とも絡む |
| 防音の余地 | 鳴き声対策。木造・軽量鉄骨は響きやすい |
給排水・換気・防音の設計は施工業者(設計者)の領域です。当社(不動産会社)は、物件がこれらの条件を満たせるかどうかの下調べと、貸主との条件交渉に伴走します。 設備設計そのものは行いません。同じ構造の手戻りは「美容室・理容所の物件、保健所は何を見ているか」や「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」にも整理しています。
用途地域や近隣への配慮で断られやすいのはどんな物件?
動物を扱う店で、飲食店やクリニックと違うのは、臭気・鳴き声・排水という近隣影響が物件選びを大きく左右することです。ここは制度の要件というより、貸主・近隣との関係で決まります。
第一に、賃貸借契約です。集合住宅・雑居ビルの多くは、契約書に「動物の飼養」や「ペットの持込み」を禁じる条項を置いています。ペット可の住宅であっても、それは入居者が飼うことの許可であって、動物を反復して預かる「業」を認める趣旨とは限りません。契約書に動物飼養・業としての利用の可否がどう書かれているかを、申込みの前に読む必要があります。 契約書のどこを読むかは「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」に整理しています。
第二に、用途地域です。ペットショップ・トリミングサロンは建築基準法上「サービス業を営む店舗」として扱われ、美容院などと同様に用途地域の制限を受けます。第一種低層住居専用地域では単独の店舗は建てにくく(兼用住宅の小規模なものに限られる)、第二種低層住居専用地域では床面積の合計150㎡以内などの制約があります。用途地域上の可否は特定行政庁の窓口で確認できます。用途地域と容積率が土地の値づけをどう動かすかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。
第三に、近隣です。登録の可否とは別に、臭気・騒音は自治体の生活環境の条例や、近隣からの苦情という形で店の存続に響きます。排気の向き、営業時間、防音の作り込みは、契約前に貸主と近隣の状況を確かめておくのが安全です。
登録申請は誰に頼み、不動産会社はどこまで担う?
役割は3つに分かれます。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 物件の調査・媒介・賃貸借契約 | 宅地建物取引業者(当社) |
| 給排水・換気・防音の設計、内装工事 | 施工業者・設計者 |
| 第一種動物取扱業の登録申請書類の作成 | 行政書士 |
第一種動物取扱業の登録では、事業所ごとに動物取扱責任者を選任する必要があります(同法第22条)。動物取扱責任者になるには、一定の実務経験や資格などの要件を満たす必要があり、その要件を満たすかどうかの審査は登録主体である自治体が行います。 これは人の要件なので、物件とは別に準備します。
登録申請など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。行政の窓口・様式・条例の数値・受付の運用は変わります。着手時点で管轄の自治体(動物愛護センター等)のページを直接ご確認ください。 事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。
誰に相談すればよいですか?
物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。第一種動物取扱業の登録申請など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。給排水・換気・防音の設計や内装工事は施工業者・設計者が扱います。
この2つ(不動産会社・行政書士事務所)はそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士(2026年9月開業予定)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。
よくある質問
Q. ペット可のマンションなら、トリミングサロンを開けますか?
A. 開けるとは限りません。ペット可は入居者が動物を飼うことの許可であって、動物を反復して預かる「業」としての利用まで認める趣旨とは限りません。多くの賃貸借契約は「動物の飼養」や業としての利用を制限しています。申込みの前に契約書の条項と貸主の意向を確認してください。加えて、飼養施設の換気・排水・消毒設備が施行規則の基準を満たせるかの下調べが要ります。
Q. 第一種動物取扱業の登録は、店を移転したらどうなりますか?
A. 登録は「事業所ごと」に受けるものです(動物の愛護及び管理に関する法律第10条)。事業所を移せば、新しい物件について登録し直しになります。新しい物件が飼養施設の基準を満たせることが前提になるため、移転先の給排水・換気・区画は、契約前に確認しておくのが安全です。
Q. 飼養施設のケージの大きさや従業員数に、決まった数値はありますか?
A. 犬・猫を扱う場合は、施行規則(令和3年6月1日施行の改正)でケージの大きさや従業者1人あたりの飼養頭数の上限などの数値基準が定められています(犬は1人あたり20頭〔うち繁殖用15頭〕、猫は30頭〔うち繁殖用25頭〕など。従業者数の基準は経過措置を経て段階施行)。数値の適用や解釈は自治体の運用によるため、管轄の動物愛護センター等でご確認ください。
Q. 登録申請は不動産会社に頼めますか?
A. いいえ。官公署に提出する登録申請書類の作成は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所が承ります。物件の調査・媒介・賃貸借契約は四葉不動産株式会社が承ります。両者は独立した事業体で、それぞれ直接ご契約いただきます。動物取扱責任者の要件を満たすかどうかの審査は、登録主体である自治体が行います。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号。第10条=第一種動物取扱業の登録(事業所ごとに都道府県知事等の登録/販売・保管・貸出し・訓練・展示等)、第12条=登録の拒否、第13条=登録の更新(有効期間)、第21条=環境省令で定める飼養施設の構造・規模その他の基準の遵守義務、第22条=動物取扱責任者の選任。2026年8月25日参照)
- e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」(平成18年環境省令第1号。飼養施設に係る基準(ケージ等・給餌給水・洗浄消毒・排水・換気・照明等)、令和3年6月1日施行の改正で犬猫の飼養管理に係る数値基準を規定。2026年8月25日参照)
- 環境省「動物の適正な取扱いに関する基準等(第一種動物取扱業者)」(第一種動物取扱業者が遵守すべき基準・飼養管理基準の解説。従業者1人あたりの飼養頭数上限、ケージ等の基準、経過措置の段階施行。2026年8月25日参照)
- 東京都動物愛護相談センター「飼養管理基準について」(令和3年6月1日施行、ケージ等の基準は令和4年6月1日から既存事業者に適用、従業者数の基準は令和6年6月1日完全施行。2026年8月25日参照)
※飼養施設の具体的な数値・運用は、環境省令と各自治体の運用によって定まり、自治体ごとに異なる取扱いがあります。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の自治体(動物愛護センター等)と特定行政庁の窓口で確認してください。
※用途地域上の可否は、物件の床面積・構造・区域の指定によって変わります。最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や登録の受理を判断・保証するものではありません。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、登録申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と登録(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
代表が直接お返事し、ご希望を伺って条件に合う物件があればLINEでご紹介します。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
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