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2026.08.24相続

相続した再建築不可の物件は、売る前に何を確かめるのか

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した再建築不可の物件は、まず接道を確かめます。建築基準法第43条は敷地が道路に2m以上接することを求め、幅員4m未満のみなし道路(2項道路)ではセットバックが要ります。接道が足りなくても、隣地の買い増しや第43条第2項の認定・許可という道があります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、売る前に確認できることを条文から整理します。

結論(先に要点):相続した「再建築不可」の物件は、まず接道を確かめます。建築基準法第43条第1項は、建物の敷地が「道路」に2m以上接することを求めます。この道路とは第42条が定めるもの(幅員4m以上等)で、幅員4m未満のみなし道路(2項道路)に接する敷地は中心線から2m下がる(セットバック)義務があります。接道が足りない場合でも、セットバック・隣地の買い増し・第43条第2項の認定や許可という道があり、売る前にこの順で確認します。

親から実家や空き家を相続したら「再建築不可」と言われた——建て替えられない土地は、売れないわけではありませんが、値づけと売り方が普通の土地と変わります。本記事は、接道義務を満たさない実家・空き家を相続した方に向けて、どの条文で「再建築不可」が決まり、それを解く方法があるのか、売れないときに何ができるのかを順に整理したものです。可否の最終確認は特定行政庁の窓口で行います。

再建築不可とはどの条文で決まるのか?

「再建築不可」という言葉は法律の用語ではありません。実体は、建築基準法上の接道義務を満たさないために、既存の建物を壊すと新しい建物の建築確認が下りない状態を指します。

建築基準法(昭和25年法律第201号)第43条第1項は、こう定めています。「建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。……)に二メートル以上接しなければならない」。除かれるのは、自動車のみの交通の用に供する道路と、地区計画の区域内の一定の道路です。

問題は「道路」の意味です。ここでいう道路は、日常語の「通り」ではありません。同法第42条第1項が、幅員4m以上(特定行政庁が指定する区域では6m以上)で、次のいずれかに当たるものと定めています。

内容(要約)
第1号道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道など)
第2号都市計画法・土地区画整理法等による道路
第3号都市計画区域等の指定時に現に存在した道
第4号2年以内に事業執行予定として特定行政庁が指定した道路
第5号私人が築造し、特定行政庁の位置指定を受けた道(位置指定道路)

さらに第42条第2項は、都市計画区域の指定時などに既に建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で特定行政庁が指定したものを「道路とみなす」と定めます(2項道路・みなし道路)。この場合、その中心線から水平距離2mの線が道路の境界線とみなされ、建て替えのときは敷地をそこまで下げる必要があります(セットバック)。

つまり「再建築不可」の正体は、多くの場合、次のどれかです。敷地が接する道が建築基準法上の道路でない/道路に接する長さが2mに満たない/間口が旗竿地で細い通路しかない。 どれに当たるかで、次の打ち手が変わります。

接道2mを満たす方法はあるのか?

あります。ただし、どれも「その土地の事情次第」です。売る前に、次の順で当たります。

方法効く場面主な確認先
セットバック接する道が2項道路(幅員4m未満のみなし道路)特定行政庁
隣地の買い増し・等価交換間口が2mに足りない/通路が細い隣地所有者・宅地建物取引業者
位置指定道路の新設私道を築造できる広い土地特定行政庁(第42条第1項第5号)
第43条第2項の認定・許可上記が使えないが、周囲に空地等がある特定行政庁(次章)

セットバックは、2項道路に面していれば建て替え時にほぼ必ず伴います。下がった部分は敷地面積に算入されず、建蔽率・容積率の計算からも外れるため、建てられる建物は小さくなります。容積率と敷地の関係が土地の値づけをどう動かすかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。

間口が足りない旗竿地では、隣地を少し買い増して2mを確保する、あるいは隣地と土地を交換して形を整える、という手があります。ここで前提になるのが境界の確定です。どこまでが自分の土地かが曖昧なままでは、買い増しの面積も接道の長さも確定しません。境界の測量・確定(筆界特定・境界確定測量)は土地家屋調査士の領域です。

43条但し書き(2項)の認定・許可は誰が判断するのか?

セットバックも買い増しも使えないとき、最後の道が建築基準法第43条第2項です。ここは**「認定」と「許可」の二つに分かれ**、判断する主体と手続が違います。

**第2項第1号(認定)**は、その敷地が幅員4m以上の道(建築基準法上の道路に該当するものを除く)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとして用途・規模に関し国土交通省令で定める基準に適合し、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるものについて、接道義務を適用しないというものです。建築審査会の同意は要りません。

第2項第2号(許可)は、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他これらと同等以上に国土交通省令で定める基準に適合し、特定行政庁が支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについて、接道義務を適用しないというものです。認定より重い手続です。

第2項第1号(認定)第2項第2号(許可)
接する対象幅員4m以上の「道」(道路に該当しないもの)周囲に広い空地等
建築審査会の同意不要必要
性格基準に該当すれば認定個別審査による許可
判断する主体特定行政庁特定行政庁(建築審査会の同意を得て)

注意すべきは、認定も許可も「その土地・その計画」に対して出るものだということです。 「この土地は43条2項でいける」という一般的な太鼓判ではなく、建てる建物の用途・規模まで含めて判断されます。多くの特定行政庁が包括同意基準を公表していますが、当てはまるかは事前相談で確かめる必要があります。建築基準法上の可否を最終的に判断するのは特定行政庁であり、当社(不動産会社)ではありません。

売れないときの活用と価格の考え方は?

再建築不可は「売れない」ではなく「買い手と使い道が限られる」です。値づけと売り先は、次のように考えます。

まず隣地所有者が最有力の買い手になり得ます。隣地に足せば、相手の敷地の間口・面積・容積が増え、再建築不可が解消することがあるからです。買い手にとって価値が上がる相手に売るのが、最も高く売れる筋です。

次に建て替えを伴わない活用です。既存建物のリフォームによる賃貸、解体して駐車場・資材置場・トランクルームなど、建築確認を要しない用途に振り替える方法があります。ただし解体すると建物が無くなり、敷地の固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がることがあります。空き家を放置したまま相続する場合の論点は「相続した実家、売るか残すか」に、相続登記の義務化と売却の順序は「相続したとき、登記の義務化で何が変わったか」に整理しています。

価格の考え方としては、再建築不可の物件は市場での減価が大きく、相続税の評価でも財産評価基本通達20-3が「無道路地」の評価方法(接道義務を満たすための通路を仮定し、その費用等を控除する)を定めています。ただし相続税評価額と実際に売れる金額は別物です。取得費・譲渡所得税の計算は税理士に、相続人間で売るか残すかがまとまらない場合の交渉・調停は弁護士に、それぞれ直接ご依頼ください。当社が扱うのは、物件の評価・売却の媒介・活用の設計です。

相続してから売るまでの順番は?

順番確認・作業すること担い手
1接道の状況(道路の種別・間口・幅員)を調べる宅地建物取引業者・特定行政庁
2相続登記(所有権の名義を相続人に移す)司法書士
3境界の確定(買い増し・分筆を検討するなら)土地家屋調査士
4セットバック・隣地買い増し・第43条第2項の見込みを確認特定行政庁・宅地建物取引業者
5売る/貸す/活用するの方針と価格を決める宅地建物取引業者
6譲渡所得税・取得費の見込み、相続人間の合意税理士・(紛争時)弁護士

相続登記は、2024年4月1日から義務化されています(詳しくは「相続したとき、登記の義務化で何が変わったか」)。名義が被相続人のままでは、売却の契約も所有権移転登記もできません。相続不動産全般の進め方は相続・空き家の相談にまとめています。

誰に相談すればよいですか?

物件の接道調査、評価、売却の媒介、活用の設計は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。建築基準法上の可否の最終判断は特定行政庁が、第43条第2項の認定・許可の申請は建築士(設計者)が扱います。

登記は司法書士、境界の確定は土地家屋調査士、譲渡所得税・取得費は税理士、相続人間の紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。 これらはそれぞれ独立した事業体であり、当社とは別々にご契約いただきます。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。

よくある質問

Q. 「再建築不可」でも売れますか?
A. 売れます。ただし建て替えができないため、買い手と用途が限られ、価格は減価します。隣地所有者への売却、リフォームによる賃貸、解体して駐車場等への転用が主な選択肢です。セットバックや第43条第2項の認定・許可で接道を解消できる場合は、売り方が変わります。まず接道の状況を確認してください。

Q. 幅員4m未満の道に接しています。建て替えはできますか?
A. その道が建築基準法第42条第2項のみなし道路(2項道路)に指定されていれば、道路中心線から2m下がるセットバックを条件に建て替えられる場合があります。下がった部分は敷地面積・建蔽率・容積率の計算から外れます。指定の有無と後退距離は特定行政庁で確認してください。

Q. 第43条第2項の認定と許可は、どう違いますか?
A. 第1号の認定は、幅員4m以上の道に2m以上接し利用者が少数などの基準に適合する場合で、建築審査会の同意は不要です。第2号の許可は、周囲に広い空地を有する等の場合で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て個別に許可します。いずれも土地と建築計画に対して出るもので、可否は特定行政庁が判断します。

Q. 相続した空き家を、登記しないまま売れますか?
A. 売れません。売買契約の後に所有権移転登記をするには、その前提として被相続人から相続人への相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく期限内に申請しないと過料の対象になり得ます。相続登記の申請は司法書士へ直接ご依頼ください。

この記事の出典(一次情報)

※接道の状況、道路の種別、セットバックの要否、第43条第2項の認定・許可の可否は、土地ごと・建築計画ごとに異なります。本記事は個別の物件について判断していません。建築基準法上の可否の最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
※無道路地・再建築不可の評価は、相続税の評価額と市場での売却価格が一致しません。税額・取得費・譲渡所得税の計算は税理士の所管です。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や売却価格を判断・保証するものではありません。
※物件の調査・評価・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が承ります。登記は司法書士、境界確定は土地家屋調査士、税務は税理士、紛争は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と手続(行政・相続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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