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2026.08.23投資・事業用不動産

運送業を始めるなら、営業所と車庫の物件はどこを見て選ぶか

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

運送業(緑ナンバー)の物件で詰まるのは用途地域ではありません。営業所と車庫が市街化調整区域でないか、両者の直線距離が公示の範囲内か、車庫が全車両を収容でき前面道路が通れる幅員か、休憩施設を営業所か車庫に併設できるか。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを条文と公示から順に整理します。

結論(先に要点):運送業(一般貨物・緑ナンバー)の物件で最初に確認するのは、①営業所と車庫が市街化調整区域でないか②営業所と車庫の距離が公示の範囲内か③車庫が全車両を収容でき、前面道路が使う車両の通れる幅員か④休憩施設を営業所か車庫に併設できるか、の4点です。いずれも賃貸借契約を結ぶ前に確かめられます。

「あとは物件だけ」と言われて探し始め、契約したあとで許可要件に合わず詰まる。介護事業所やクリニックで起きる手戻りが、運送業でも同じ形で起きます。本記事は、東京で一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)を新しく立ち上げようとしている中小事業者・独立ドライバーの方と、運送業のテナントを受け入れる貸主の方に向けて、契約前に確認できることを順に並べたものです。可否の最終確認は、営業所を管轄する地方運輸局・運輸支局の窓口で行います。

運送業の物件で、最初に落ちるのはどこですか?

用途地域より先に、市街化調整区域かどうかで落ちます。

一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第3条により国土交通大臣の許可を受けなければなりません。同法第6条は許可の基準を定め、その第2号は「事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、その事業を継続して遂行するために適切な計画を有するものであること」としています。営業所・車庫の適否は、この基準の中で、都市計画法・農地法・建築基準法など関係法令に抵触しないこととして審査されます。

ここで最初の関門が都市計画法(昭和43年法律第100号)です。同法第7条第1項は市街化区域と市街化調整区域の区分を定め、同条第3項は「市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする」としています。そして第43条第1項は、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内では、農林漁業用など一定の建築物を除き、都道府県知事の許可を受けなければ建築物を新築・改築・用途変更してはならないと定めています。

つまり——市街化調整区域に営業所(建物)を建てる、あるいは事務所を営業所に用途変更するのは、原則としてそのままではできません。 建物を伴わない青空駐車場としての車庫であっても、地目が農地なら農地法の転用手続が別に要ります。

物件の所在営業所(建物)車庫
市街化区域用途地域の制限に従う建物なしなら都市計画法の建築制限は原則かからない
市街化調整区域原則不可(都市計画法第43条第1項の許可が要る)建物を建てるなら同じく許可。地目が農地なら農地転用も

農地の転用許可は行政書士の業務です。この手続を含めて、営業所・車庫の候補地が関係法令に抵触しないかは、契約前に確認できます。用途地域と容積率が土地の値づけにどう効くかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。

営業所と車庫は、どれだけ離れていてよいですか?

離れてよい距離には上限があり、それは地域で違います。

営業所に併設できれば一番単純ですが、運送業では車庫だけ別の場所に置くことがよくあります。その場合の営業所と車庫の距離は、運輸省告示第340号と各地方運輸局の公示(一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画の変更の認可に関する処理方針)で、地域ごとに直線距離の上限が決まっています。

営業所の所在地(関東運輸局管内)営業所と車庫の直線距離
東京都特別区・横浜市・川崎市20km以内
上記以外の地域10km以内

この数値は地方運輸局ごとに異なります(5km・10km・20kmなど)。営業所を先に契約してから離れた車庫を探すと、距離の上限に収まらず両方を取り直すことになります。 営業所と車庫は、距離の条件をセットで見て選びます。

なお営業所ごとに配置する事業用自動車は5両以上が必要とされており、車庫はその全車両を収容できる広さが要ります。車庫の広さは、置く台数と車種から逆算する話です。

車庫は、どんな広さ・前面道路なら認められますか?

「全車両が入る」だけでは足りません。車両どうし・車庫の境界との間に間隔が要り、前面道路には幅員の条件があります。

車庫は、配置するすべての事業用自動車を収容でき、かつ車両相互間および車両と車庫の境界・壁との間に、それぞれ原則50cm以上の間隔を確保できる広さが求められます。1台あたりの目安面積は車種でおおよそ次のとおりですが、間隔の取り方や形状で変わるため、あくまで目安です。

車種1台あたりの目安面積
2t車(小型トラック)約15㎡
4t車(中型トラック)約28㎡
10t車(大型トラック)約45〜50㎡

前面道路も論点です。車庫に出入りする事業用自動車が、車両制限令に照らして通行できる幅員の道路に接していることが要ります。前面道路が私道なら通行承諾、幅員が問題になりそうなら道路管理者の幅員証明書が必要になることがあります。大型車を置くつもりの車庫が、大型車の通れない細街路にしか接していない——これは物件を見た段階で気づける論点です。

ここまでの確認は、賃貸借契約の前に済ませられます。契約後に「幅員が足りない」「間隔が取れない」と分かると、収支計画が動きます。同じく消防や自治体の確認が契約より先に要る例は「民泊を始められる物件の条件」に、事業用物件で用途地域が先に効く例は「クリニックの物件は、契約前に何を確認するのか」に書きました。

休憩・睡眠施設は、物件のどこに置きますか?

休憩施設は、営業所か車庫のどちらかに併設します。単独では置けません。

一般貨物自動車運送事業では、運転者が休憩できる施設を確保することが求められ、この休憩施設は営業所または車庫に併設する必要があります。休憩施設だけが営業所とも車庫とも離れた場所にある形は認められません。

睡眠施設は、必ず要るわけではありません。ただし、運行の実態として運転者に連続8時間の休息期間を確保できない運行を行う場合には、睡眠のための施設が必要になります。長距離を扱うなら、睡眠施設をどこに置くかも物件の条件に入ってきます。

施設置き場所必要になる場面
休憩施設営業所または車庫に併設常に必要
睡眠施設営業所または車庫(休憩施設と併せて)連続8時間の休息が確保できない運行を行う場合

つまり、営業所・車庫の物件を選ぶ段階で、休憩(と、必要なら睡眠)のスペースを取れる間取りかまで見ておくことになります。賃貸借契約書のどこを読むかは「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」に、同じ構造の手戻りが介護事業所で起きる理由は「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」に整理しています。事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。

物件の契約と運送業許可は、誰にどう頼み分けますか?

物件(不動産)と許可・登録(行政手続)は、それぞれ別の担い手に分かれます。

運送業の立ち上げは、複数の手続が並びます。物件を探す・契約する部分と、許可を取る・車両を登録する部分は、担い手が違います。事業用自動車(緑ナンバー)の新規登録には、自家用車のような警察の車庫証明(保管場所証明書)は原則要りません。運送業許可の中で車庫が確保されているため、代わりに運輸支局へ「事業用自動車等連絡書」を提出して登録します。

事項担い手・窓口
物件の調査・媒介、営業所や車庫の賃貸借契約宅地建物取引業者
運送業(一般貨物)の許可申請、営業所・車庫の要件判断、官公署へ提出する書類の作成行政書士
農地に車庫を置く場合の農地転用の手続行政書士
事業用自動車(緑ナンバー)の登録・事業用自動車等連絡書運輸支局
法人を設立するときの設立登記司法書士
賃料・原状回復・立退きなどの紛争弁護士
税務税理士

物件の契約は、許可の前提になります。営業所・車庫が要件を満たしていることは、許可申請の中で審査されるからです。先に物件だけを決めてしまうと、要件に合わずやり直しになる——だからこそ、上の1〜4の論点を契約前に並べて確認します。

誰に相談すればよいですか?

物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可申請、営業所・車庫の要件判断、農地転用など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。

この2つはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。

事業用自動車の登録は運輸支局、法人の設立登記は司法書士、税務は税理士、賃料や立退きなどの紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 市街化調整区域に運送会社の営業所と車庫は置けますか?
A. 市街化調整区域は都市計画法第7条第3項で「市街化を抑制すべき区域」とされ、同法第43条第1項により、開発許可を受けた開発区域以外では都道府県知事の許可がなければ建築物を新築・用途変更できません。営業所(建物)は原則そのままでは置けません。建物を伴わない車庫でも、地目が農地なら農地転用の手続が別に要ります。可否は物件ごとに変わるため、着手前に特定行政庁と地方運輸局にご確認ください。

Q. 営業所と車庫は、どれくらい離れていても許可されますか?
A. 運輸省告示第340号と各地方運輸局の公示で、営業所と車庫の直線距離の上限が地域ごとに決まっています。関東運輸局管内では、東京都特別区・横浜市・川崎市に営業所を置く場合は20km以内、それ以外の地域は10km以内が基準です。数値は地方運輸局で異なるため、営業所と車庫はセットで、管轄の運輸支局に確認しながら選びます。

Q. 車庫はどれくらいの広さが必要ですか?
A. 配置するすべての事業用自動車(営業所ごとに5両以上)を収容でき、車両相互間および車両と境界・壁との間に原則50cm以上の間隔を確保できる広さが必要です。1台あたりの目安は2t車で約15㎡、4t車で約28㎡、10t車で約45〜50㎡ですが、形状や間隔の取り方で変わります。前面道路が使う車両の通れる幅員か(車両制限令)も併せて確認します。

Q. 事業用自動車の登録に、警察の車庫証明は要りますか?
A. 一般貨物自動車運送事業の事業用自動車(緑ナンバー)は、新規登録の際に自家用車のような警察の車庫証明(保管場所証明書)は原則要りません。運送業許可の中で車庫が確保されているため、代わりに営業所を管轄する運輸支局へ「事業用自動車等連絡書」を提出して登録します。運用は変わり得るため、着手時点で運輸支局にご確認ください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」(平成元年法律第83号。第2条第2項=一般貨物自動車運送事業の定義、第3条=一般貨物自動車運送事業の許可、第6条第2号=事業用自動車の数・自動車車庫の規模その他国土交通省令で定める事項に関する適切な計画。現行条文は令和5年法律第63号による改正・2026年5月21日施行。2026年8月23日参照
  • e-Gov法令検索「都市計画法」(昭和43年法律第100号。第7条第1項=区域区分、同条第3項=市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域、第43条第1項=市街化調整区域の開発許可を受けた開発区域以外での建築物の新築・改築・用途変更は都道府県知事の許可。現行条文は令和8年法律第23号による改正・2026年5月27日施行。2026年8月23日参照
  • 国土交通省・各地方運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可及び事業計画の変更の認可に関する処理方針(公示)」および「一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨物運送を除く)経営許可申請書作成の手引」(営業所ごとに事業用自動車5両以上、営業所と車庫の距離=運輸省告示第340号に基づく地域別の直線距離の上限、車庫は全車両を収容でき車両相互間・境界との間に原則50cm以上、前面道路は車両制限令に適合する幅員、休憩施設は営業所または車庫に併設、睡眠施設は連続8時間の休息を確保できない運行の場合に必要、営業所・車庫が都市計画法・農地法・建築基準法等の関係法令に抵触しないこと。2026年8月23日参照

※営業所・車庫の距離、車庫の広さ、休憩・睡眠施設の要件は、営業所を管轄する地方運輸局の公示によって異なり、改正されることがあります。数値は本記事の参照日時点の目安です。着手時点で管轄の運輸支局にご確認ください。
※市街化調整区域での営業所・車庫の可否、農地転用の要否は、区域区分・地目・都市計画・開発許可の有無・条例による上乗せによって変わります。本記事は個別の物件について判断していません。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や許可の取得を判断・保証するものではありません。最終確認は特定行政庁・地方運輸局(運輸支局)・農業委員会等の窓口で行ってください。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、運送業の許可申請・農地転用等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と許可・届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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