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2026.08.14相続

相続登記をしないまま実家は売れますか──義務化・過料と売却の順序

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続登記をしないまま実家を売ることはできません。買主へ所有権を移す前提として、先に相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務になり、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象。義務化前に相続した不動産も対象で、期限は2027年3月31日です(法務省Q&A・2026年8月14日参照)。相続人申告登記では売却できない理由、住所変更登記の義務化との違い、売却までの順序を整理しました。

結論(先に要点):相続登記をしないまま実家を売ることはできません。買主へ所有権を移す前提として、先に相続登記が必要です。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務になり、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象です。義務化より前に相続した不動産も対象で、期限は2027年(令和9年)3月31日です。売却を決めたら、登記から着手します。本記事は、登記が済んでいない相続不動産を売りたい方・登記しないまま置いている相続人の方に向けて、期限と売却までの順序を説明します。なお、2026年4月に義務化された「住所変更登記」は別の制度です(住所変更登記の義務化)。

相続登記はいつまでにしなければなりませんか?

項目内容
義務化の開始令和6年(2024年)4月1日
期限不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
義務化前に相続した不動産相続登記が未了なら義務化の対象。令和9年(2027年)3月31日までに登記が必要
遺産分割で取得した場合別途、遺産分割の日から3年以内に、その内容に応じた登記が必要
怠った場合正当な理由がないときは10万円以下の過料の対象(裁判所が決定)

出典はいずれも法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日現在・2026年8月14日参照)です。

見落とされがちなのが3行目です。義務化より前に相続した実家も対象になります。「何十年も前の相続だから関係ない」とはなりません。祖父母名義のままの土地・建物は、まさにこの経過措置の対象です。

登記をしないまま売買契約はできますか?

売買契約を結ぶこと自体は可能です。ただし、買主へ所有権移転登記をするには、その前提として、被相続人から相続人への相続登記が入っている必要があります。登記は権利の変動の順番どおりに入れるためです。

実務では、売り出しの前に相続登記を済ませておくのが原則です。遅くとも決済(引渡し)までに完了していなければ、取引は成立しません。登記が未了のままでは、買主・仲介会社・買主側の金融機関のいずれから見ても取引を進めにくく、売却活動そのものが動きません。

権利証(登記識別情報)が見つからない場合でも売却の方法はあります。「権利証がなくても売れますか」をご覧ください。

相続人申告登記をすれば売却できますか?

できません。相続人申告登記は、期限内に「自分が登記簿上の所有者の相続人である」ことを法務局に申し出ることで申請義務を果たしたとみなされる簡易な制度です。しかし、不動産の権利関係を公示するものではなく、売却や抵当権の設定をする場合には、別途相続登記が必要です(法務省Q&A・2026年8月14日参照)。

整理すると次のようになります。

目的相続人申告登記で足りるか
義務違反(過料)を避ける足りる(申出をした相続人のみ)
実家を売却する足りない。相続登記が必要
抵当権を設定して借入れする足りない。相続登記が必要

「期限が迫っているが遺産分割がまとまらない」ときに義務違反を避ける手段と位置づけ、売却するなら相続登記まで進める、と考えてください。

住所変更登記の義務化とは別の制度ですか?

別の制度です。混同されやすいので整理します。

相続登記の義務化住所変更登記の義務化
対象所有者が亡くなったとき所有者の住所・氏名が変わったとき
開始2024年(令和6年)4月1日2026年(令和8年)4月1日

住所変更登記の期限・過料は「住所変更登記の義務化」で説明しています。売却の場面では、登記簿上の住所が現住所と異なる場合に住所変更登記も必要になるため、実家の売却では両方が同時に出てくることがあります。

遺産分割がまとまっていない場合はどうしますか?

売却するには、誰がその不動産を取得するかを遺産分割で決め、その内容を遺産分割協議書にまとめる必要があります。協議書の作り方と必要書類は「遺産分割協議書の作り方」を参照してください。

売るか残すか迷っている段階の考え方は「相続した実家、売るか残すか」で整理しています。期限(2027年3月31日)から逆算すると、協議→協議書→登記→売り出しの順で、時間の余裕は見た目より多くありません。

誰に相談すればよいですか?

売却・査定のご相談は四葉不動産株式会社が、遺産分割協議書の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別契約で受任します。相続登記の申請は司法書士の業務であり、ご希望の場合は司法書士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社・当事務所は紹介料を受け取りません。

相続不動産のご相談の全体像は相続不動産のご相談をご覧ください。相談は無料です。

よくある質問

Q. 20年前に相続した実家が祖父名義のままです。義務化の対象になりますか?
A. なります。令和6年4月1日より前に相続した不動産でも、相続登記が未了であれば義務化の対象で、令和9年(2027年)3月31日までに相続登記が必要です(法務省Q&A)。数次相続(相続人がさらに亡くなっている場合)は戸籍の収集に時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。

Q. 過料はすぐに科されるのですか?
A. いきなり科されるわけではありません。法務省の公表資料によると、登記官が義務違反を把握した場合にまず催告(登記をするよう催促)を行い、それでも登記されず正当な理由がない場合に裁判所へ通知され、裁判所が10万円以下の範囲で判断します。相続人が極めて多数で書類収集に時間がかかる場合など、正当な理由が認められる類型も示されています。

Q. 相続人申告登記だけして、そのまま売りに出せますか?
A. 出せません。相続人申告登記は義務を果たしたとみなされる制度にとどまり、売却(所有権移転登記)の前提にはなりません。売却するには相続登記が必要です。売却予定があるなら、はじめから遺産分割→相続登記の順で進めるのが近道です。

Q. 相続登記が終わっていない段階でも、売却の相談はできますか?
A. できます。査定や売却時期の検討は登記完了前から並行して進められます。遺産分割協議書の作成は四葉行政書士事務所、登記申請は司法書士、売却は四葉不動産株式会社と、それぞれ別契約になりますが、段取り全体の順番はご相談の最初に整理してお示しします。相談は無料です。

この記事の出典(一次情報)

※過料の運用・正当な理由の判断は個別の事情によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の登記・売却に関する判断を保証するものではありません。
※売却・査定は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別契約で受任します。相続登記の申請は司法書士の業務です。当社・当事務所は紹介料を受け取りません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。元毎日新聞記者・中国総局長。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。売却の段取り(不動産)と協議書の作成(行政手続)の論点を同じテーブルで確認します。登記は連携する専門家をご案内します。

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