相続した土地は国庫帰属で手放すのと売るのとどちらが得ですか?

使い道のない相続した土地を手放すには、国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度と、市場で売る2つの道があります。国庫帰属は審査手数料が土地一筆あたり1万4000円、承認されると負担金が原則20万円かかる「払って手放す」制度で、市場で売れる土地なら手取りが残ります。まず市場で売れるかを査定で見極め、売れないなら国庫帰属や引き取りを検討する順番が現実的です。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、手放す費用と売る手取りを並べて判断材料を整理します。
結論(先に要点):使い道のない相続した土地を「手放す」には、国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度と、市場で売る2つの道があります。国庫帰属は審査手数料が土地一筆あたり1万4000円、承認されると負担金が原則20万円(土地の種目・面積で増える場合がある)かかり、「払って手放す」制度です。一方、市場で売れる土地なら、費用を払うどころか手取りが残ります。まず「そもそも市場で売れる土地か」を査定で見極め、売れないなら国庫帰属や引き取りを検討する、という順番が現実的です。市場売却の可否・査定・媒介は当社(四葉不動産株式会社)が担い、国庫帰属の承認申請書類の作成は行政書士または司法書士、相続登記は司法書士、譲渡所得・税務は税理士、共有者間や隣地との紛争は弁護士へ振ります。これらは独立した事業体で、それぞれ直接ご契約いただきます。
山林・原野・地方の実家の土地を相続したものの、使う予定もなく、固定資産税と管理の手間だけが続く——このとき「お金を払ってでも手放す(国庫帰属)」のと「市場で売る」のと、どちらが得かは土地によって逆になります。本記事は、使い道のない土地を相続した相続人に向けて、手放す費用と売る手取りを並べて判断材料を示すものです。市場で売れるかどうかの見極めと査定は当社(宅地建物取引業者)が担い、国庫帰属の制度手続きは行政書士・司法書士の、税務は税理士の、紛争は弁護士の領域です。役割を分けて整理します。
国庫帰属で手放すといくらかかりますか(手数料と負担金)?
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈(相続人に対する遺贈)で取得した土地を、一定の要件を満たし負担金を納めることを条件に、国が引き取る制度です。相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号、令和5年4月27日施行)にもとづきます。かかるお金は次の2つです。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 審査手数料 | 土地一筆あたり1万4000円(収入印紙で納付)。却下・不承認でも返還されない |
| 負担金 | 承認されたときに納める。原則20万円(国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的費用を考慮して算定)。宅地・田・畑・森林・原野等では、面積に応じて算定され20万円を超えることがある |
負担金は、承認の通知が届いた日の翌日から30日以内に納めます。負担金を納めた時点で、その土地の所有権が国に移転します。 期限内に納めないと承認は失効します。
要点は、国庫帰属は「手取りが入る」制度ではなく「費用を払って手放す」制度だということです。だからこそ、まず市場で売れる土地なのかを先に確かめる意味があります。制度の要件・費用・期間の手続きそのものは行政書士側の記事相続した土地を国庫帰属で手放す制度の要件と国庫帰属の費用と審査期間に詳しく整理しています。相続不動産全般は相続と不動産をご覧ください。
同じ土地を売った場合の手取りと期間はどう見積もりますか?
市場で売れる土地なら、費用を払う国庫帰属と違い、売却代金から費用を引いた手取りが残ります。見積もりの骨格は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売却代金 | 査定価格。立地・接道・地目・境界の状態で大きく動く |
| 仲介手数料 | 宅地建物取引業法の上限(売買価格400万円超の部分は3%+6万円に消費税等)。低廉な空き家等には別枠の特例あり |
| 譲渡所得税 | 売却益(売った金額−取得費−譲渡費用)にかかる。相続で取得した土地の取得費・取得時期の考え方は税理士へ |
| 期間 | 買主が見つかるまでの時間。過疎地・山林は長引くことがある |
売却益にかかる税では、低未利用土地等の100万円特別控除(租税特別措置法第35条の3)が使える土地があります。都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を、譲渡価額500万円以下(市街化区域等では800万円以下)で、譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超のときに売った場合、譲渡所得から100万円を控除できるもので、適用期間は令和2年7月1日から令和10年12月31日までです(確定申告と市区町村長の確認書等が必要)。「安くしか売れない土地」ほど、この控除で税負担が実質ゼロに近づくことがあります。
取得費が分からない土地では、売った金額の5%を概算取得費とできます(国税庁タックスアンサー No.3258)。相続で取得した土地の取得費・取得時期は No.3270 に整理されています。具体的な税額の計算・申告は税理士が担います。当社は、その土地が市場でいくらで・どれくらいの期間で売れそうかの査定と、売り方(現況渡し・古家付き・更地など)の比較を担います。山林・原野の売り方は相続した山林・原野を売る流れ、生産緑地は相続した生産緑地を売る流れ、市街化調整区域の土地は相続した市街化調整区域の土地は売れる?に整理しています。
国庫帰属が使えない土地(却下・不承認要件)はどんな土地ですか?
国庫帰属は、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。申請の入り口で却下される土地(法第2条第3項)と、審査で不承認になる土地(法第5条第1項)が定められています。
| 区分 | 引き取ってもらえない土地の例 |
|---|---|
| 却下事由(第2条第3項) | 建物がある土地/担保権・使用収益権(抵当権・賃借権など)が設定されている土地/通路その他他人による使用が予定される土地/土壌汚染されている土地/境界が明らかでない・所有権の存否や範囲に争いがある土地 |
| 不承認事由(第5条第1項) | 崖がある土地/地上に工作物・車両・樹木等がある土地/除去しなければ使用できない有体物が地下にある土地/隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分できない土地/その他通常の管理・処分に過分の費用・労力を要する土地 |
「建物がある」「境界が定まっていない」「隣地ともめている」土地は、そのままでは国庫帰属を使えません。 建物があるなら解体、境界が不明なら確定測量、といった前さばきが要ることもあります。これらの前さばき(解体費・測量費)を払ってまで手放すのか、それとも現況のまま市場で売れる買主を探すのか、という比較になります。境界が定まっていない土地の売り方は境界が確定していない相続不動産を売る流れも参考になります。共有の土地は共有者全員で申請する必要があり、共有者間で意見が割れる・所在の分からない共有者がいる場合は、まずその調整が要ります。争いを含む調整は弁護士の領域です。
売れない土地を寄付・引き取りサービスに回す選択肢はどうですか?
市場で売れず、国庫帰属も要件で難しい土地では、寄付や民間の引き取りサービスが候補に挙がります。ただし、いずれも過度な期待は禁物です。
- 自治体への寄付:自治体は、利用予定のない土地の寄付を原則としては受け付けません。受贈するかは自治体の個別判断で、道路用地など具体的な利用目的がある場合に限られることが多いのが実情です。
- 民間の引き取りサービス:費用(引き取り料)を払って所有権を移す事業者があります。金額・その後の管理責任・契約の中身は事業者ごとに差が大きく、玉石混交です。契約前に、費用の総額、名義変更(登記)の方法、引き取り後のトラブル時の責任の所在を確認してください。
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
| 手放し方 | 手取り/費用 | 向く土地 |
|---|---|---|
| 市場で売る | 手取りが残る | 立地・接道・境界が整い、買主が見込める土地 |
| 国庫帰属 | 費用(手数料+負担金)を払う | 却下・不承認事由に当たらず、要件を整えられる土地 |
| 寄付・引き取りサービス | 原則受け付けられない/費用がかかる | 上記いずれも難しい土地 |
順番としては、①まず市場で売れるかを査定で確かめ、②売れないなら国庫帰属の要件に当たるかを見て、③それも難しいなら寄付・引き取りを検討する、が現実的です。 どれが得かは土地ごとに変わるため、費用と手取りと時間を並べて判断します。
手放すか売るかの判断は誰に相談すればいいですか(分離受任)?
使い道のない相続土地の出口を決めるときは、複数の専門家が関わります。役割を分けると次のとおりです。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 市場で売れるかの見極め・査定・媒介・売買契約 | 四葉不動産株式会社(宅地建物取引業) |
| 国庫帰属の承認申請書類の作成 | 行政書士(四葉行政書士事務所)または司法書士 |
| 遺産分割協議書の作成 | 行政書士(四葉行政書士事務所) |
| 相続登記・所有権移転登記 | 司法書士 |
| 譲渡所得税・取得費・低未利用土地控除の計算 | 税理士 |
| 共有者間・隣地との紛争、境界の争い | 弁護士 |
市場での売却の可否・査定・媒介・売買契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。国庫帰属の承認申請書や遺産分割協議書など官公署・私人間に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります(国庫帰属の申請書類は司法書士も扱います)。相続登記・所有権移転登記は司法書士、譲渡所得税・取得費・低未利用土地控除の計算は税理士、共有者間や隣地との紛争・境界の争いは弁護士が扱います。
これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。国庫帰属の申請書類は行政書士または司法書士へ、登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士、雇用・社会保険は社会保険労務士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。制度の運用・負担金の算定・受付の状況は変わります。着手時点で法務局・法務省のページを直接ご確認ください。
よくある質問
Q. 相続した山林を国庫帰属で手放すと、いくらかかりますか?
A. 審査手数料が土地一筆あたり1万4000円(却下・不承認でも返還されません)、承認されると負担金が原則20万円かかります。ただし森林などは面積に応じて負担金が算定され、20万円を超えることがあります。手取りが入る制度ではなく「費用を払って手放す」制度なので、まず市場で売れないかを査定で確かめることをおすすめします。
Q. どんな土地でも国庫帰属で引き取ってもらえますか?
A. いいえ。建物がある土地、担保権や賃借権が設定された土地、境界が明らかでない土地、土壌汚染された土地などは申請の入り口で却下されます(法第2条第3項)。また、崖がある土地、地上に工作物・樹木がある土地、隣地ともめている土地、通常の管理・処分に過分の費用・労力がかかる土地は不承認になり得ます(法第5条第1項)。建物の解体や境界確定など前さばきが要ることもあります。
Q. 売れそうにない土地でも、査定を頼む意味はありますか?
A. あります。売れるかどうか、いくらで売れそうかは、実際に査定してみないと分かりません。安くしか売れない土地でも、低未利用土地等の100万円特別控除(租税特別措置法第35条の3)が使えれば税負担が実質ゼロに近づくことがあり、費用を払う国庫帰属より手放し方として有利になる場合があります。まず市場で売れるかを確かめ、その結果を国庫帰属や引き取りと並べて比較してください。
Q. 使い道のない土地を自治体に寄付できますか?
A. 原則として、自治体は利用予定のない土地の寄付を受け付けません。受贈するかは自治体の個別判断で、道路用地など具体的な利用目的がある場合に限られることが多いのが実情です。民間の引き取りサービスは費用を払って所有権を移す形が多く、費用や引き取り後の責任の所在は事業者ごとに差があるため、契約内容を確認してください。
この記事の出典(一次情報)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号、令和5年4月27日施行)。第2条第3項=却下事由(建物・担保権等・他人の使用予定・土壌汚染・境界不明等)、第5条第1項=不承認事由(崖・工作物等・地下の有体物・隣接地との争訟・過分の費用労力)、審査手数料は土地一筆あたり1万4000円。2026年9月26日参照)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(負担金は国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的費用を考慮して算定。原則20万円、宅地・田畑・森林等では面積に応じて算定される場合がある。通知到達日の翌日から30日以内に納付し、納付時に所有権が国に移転。2026年9月26日参照)
- 国税庁タックスアンサー No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(租税特別措置法第35条の3。都市計画区域内の低未利用土地等を譲渡価額500万円以下〈市街化区域等は800万円以下〉、譲渡年1月1日時点で所有期間5年超で譲渡した場合に100万円控除。適用期間は令和2年7月1日〜令和10年12月31日。2026年9月26日参照)
- 国税庁タックスアンサー No.3258 取得費が分からないとき(取得費が不明のとき等、売った金額の5%を概算取得費とできる。2026年9月26日参照)
- 国税庁タックスアンサー No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(2026年9月26日参照)
※国庫帰属の負担金の額(種目・面積による算定)、却下・不承認の当てはめは、個別の土地の状況によって変わります。本記事は個別の土地について判断していません。着手時点で法務局・法務省のページで最新の運用を確認してください。
※低未利用土地等の特別控除の適用要件・確認書の取得は市区町村と税務署の運用によります。譲渡所得税・取得費の具体的な計算と申告は税理士へご相談ください。
※相続登記・所有権移転登記は司法書士へ、共有者間や隣地との紛争・境界の争いは弁護士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の土地の売却の可否・税額・国庫帰属の可否を判断・保証するものではありません。
※市場での売却の可否・査定・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、国庫帰属の承認申請書・遺産分割協議書等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。国庫帰属の申請書類は司法書士も扱います。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・登記・税務・紛争の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
売る・貸す・持ち続ける——決める前のご相談からで大丈夫です。
相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|10:00〜18:00(定休:火・水)
