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2026.09.21相続

相続した生産緑地は売れる?特定生産緑地・買取申出と売却までの流れ

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した生産緑地も売れますが、宅地とは道のりが違います。生産緑地には建築・宅地造成を制限する行為制限がかかり、そのまま宅地として自由には売れません。鍵は、特定生産緑地に移行済みか・30年経過や指定解除で制限が外れているか、市町村長への買取りの申出(生産緑地法第10条)、相続税の納税猶予(租税特別措置法第70条の6)の3点です。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、売却までの流れを条文と国交省・国税庁の資料から整理します。

結論(先に要点):相続した生産緑地も売れますが、宅地とは道のりが違います。生産緑地には建築や宅地造成を制限する行為制限がかかっており、そのまま宅地として自由に売れるわけではありません。鍵になるのは、①その土地が特定生産緑地に移行済みか、30年経過や指定解除で行為制限が外れているか②市町村長への買取りの申出(生産緑地法第10条)を経て行為制限が解除されるか③相続税の納税猶予(租税特別措置法第70条の6)を受けているか、の3点です。売却の仲介は当社(四葉不動産株式会社)が、相続税の納税猶予の可否・打切りの判断は税理士が、買取り申出や指定解除・農地転用の行政手続は行政書士が、相続登記は司法書士が、相続人間の紛争は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で分担します。

市街化区域の中にある農地(生産緑地)を相続して、営農を続けるか売却するか迷っている——この記事は、そうした相続人に向けて、生産緑地に固有の制限と売却までの流れを、生産緑地法・都市計画法・租税特別措置法の条文と国土交通省・国税庁の資料から整理したものです。売却の進め方・査定・買主探しは当社が情報提供として担い、税務・行政手続・登記・紛争は有資格者が行います。市街化区域外の農地や調整区域の土地とは扱いが異なる点が、この土地の難しさです。

生産緑地とは何で、相続するとどんな制限がかかるのか?

生産緑地とは、市街化区域内の農地等のうち、都市計画で「生産緑地地区」に定められた土地です(都市計画法の地域地区。生産緑地法により農地として保全される)。所有者は農地として管理する義務を負う一方、固定資産税は宅地並みではなく農地として評価され、相続税・贈与税の納税猶予の対象にもなり得るという優遇を受けます。

その代わり、生産緑地には行為制限がかかります。生産緑地地区内では、建築物の新築・宅地造成・土地の形質の変更などが原則として制限され、市町村長の許可が必要です。つまり、相続してそのまま「宅地として造成して売る」ことは、行為制限がかかっている限りできません。

生産緑地の特徴内容
場所市街化区域内の農地等で、都市計画で生産緑地地区に指定された土地
行為制限建築・宅地造成・形質変更が原則制限される(市町村長の許可制)
税の優遇固定資産税は農地評価、相続税・贈与税の納税猶予の対象になり得る
面積要件一団の農地等で原則500㎡以上(条例で300㎡まで引下げ可)

市街化区域外や市街化調整区域の農地との違いは大きく、農地一般の相続・売却は相続した農地を売る・貸すときに最初に確認すること、調整区域の土地は相続した市街化調整区域の土地は売れる?に整理しています。相続不動産全般は相続と不動産をご覧ください。

特定生産緑地に移行済みか、指定解除されたかで、売却はどう変わるのか?

分かれ目は、その土地の「今の状態」です。生産緑地は指定の告示日から30年が経過すると、いつでも買取りの申出ができる状態になります(生産緑地法第10条)。1992年(平成4年)に多くの生産緑地が指定され、その30年目が2022年(令和4年)に集中したのが、いわゆる「2022年問題」です。

このとき所有者には二つの道がありました。ひとつは特定生産緑地への移行です(生産緑地法第10条の2)。30年経過が近づいた生産緑地を、所有者の同意のもとで特定生産緑地に指定すると、税の優遇を維持したまま、10年ごとに継続を選び直せます。もうひとつは移行せずに買取りの申出をして、行為制限の解除(宅地化)へ進む道です。

その土地の状態売却への影響
特定生産緑地に移行済み行為制限は続く。売るには買取りの申出(申出基準日から10年経過・主たる従事者の死亡等)か、農地としての売買を検討
30年経過・特定生産緑地に未移行いつでも買取りの申出ができる。申出を経て行為制限が外れれば宅地として売りやすくなる
買取り申出後に行為制限が解除済み宅地並み課税へ移行するが、宅地として売却しやすい

相続した生産緑地がどの状態にあるかは、市町村の都市計画課で確認できます。ここを取り違えると売却方針が根本から変わるため、まず現況の確認が出発点になります。

市町村への買取りの申出から売却までの流れは?

行為制限がかかったままの生産緑地を宅地として売るには、原則として買取りの申出を経て行為制限の解除に至る必要があります。流れは次のとおりです。

段階内容
①買取りの申出30年経過(または主たる従事者の死亡・故障)を要件に、市町村長に時価で買い取るべき旨を申し出る(生産緑地法第10条)
②市町村の判断市町村が買い取るか、買い取らない旨を通知するかを決める
③あっせん市町村が買い取らない場合、農林漁業希望者へのあっせんが行われることがある
④行為制限の解除買取り申出から3か月以内に所有権の移転が成立しないと、行為制限が解除される(生産緑地法第14条)
⑤宅地としての売却行為制限が外れれば、宅地として媒介・売買契約に進める

主たる従事者(その農地の中心的な担い手)が死亡した場合は、30年の経過を待たずに買取りの申出ができます。相続をきっかけに営農を続けられなくなったときの出口が、この主たる従事者の死亡による申出です。誰が主たる従事者にあたるか、証明をどう整えるかは行政手続の論点で、行政書士の領域になります。

相続税の納税猶予を受けていると、売却で何が起きるのか?

被相続人が生産緑地で営農し、相続人が農業を継ぐ場合、相続税の納税猶予(租税特別措置法第70条の6=農地等についての相続税の納税猶予及び免除等)を受けていることがあります。これは、農業投資価格を超える部分に対応する相続税の納付を猶予し、一定の要件を満たして営農を続ければ、最終的に猶予税額が免除される制度です。

問題は、猶予を受けている農地を譲渡・転用すると、猶予が打ち切られる点です。買取りの申出や売却は、この打切り事由にあたり得ます。打ち切られると、猶予されていた相続税に加えて利子税を納めることになります。

  • 納税猶予を受けているかどうかは、相続税の申告内容で確認する
  • 売却・買取り申出が猶予の打切りにあたるか、いつ・いくら納付するかは税額に直結する
  • 特定生産緑地に移行していれば猶予を継続できる余地があり、営農か売却かの判断が変わる

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

この判断は税理士の領域です。 打切りの有無と納付額を確かめないまま売却を進めると、想定外の納税が生じかねません。売るかどうかを決める前に、納税猶予の状況を税理士に確認してもらうのが安全です。当社は、売却する場合の査定・媒介に伴走します。

売却・税務・行政手続・登記は、誰に振り分けるのか(分離受任)?

相続した生産緑地の売却は、複数の専門家が関わります。役割を分けると次のとおりです。

やること担い手
売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社)
相続税の納税猶予の可否・打切りリスク・譲渡所得税の計算税理士
買取りの申出・指定解除・農地転用など官公署への行政手続の書類作成行政書士(四葉行政書士事務所)
相続登記・所有権移転登記司法書士
相続人間の紛争・遺産分割の調停/訴訟弁護士

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。税務は税理士、買取り申出・農地転用等の手続は行政書士、登記は司法書士、紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

誰に相談すればよいですか?

相続した生産緑地の売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。買取りの申出・指定解除・農地転用など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。相続税の納税猶予・譲渡所得税は税理士が、相続登記・所有権移転登記は司法書士が、相続人間の紛争は弁護士が扱います。物件(不動産)と権利・手続(相続・税務・登記の振り分け)を同じテーブルに並べて確認します。

よくある質問

Q. 相続した生産緑地を、宅地としてそのまま売れますか?
A. 行為制限がかかったままでは、宅地として自由には売れません。生産緑地地区では建築・宅地造成が原則制限されます。宅地として売るには、原則として買取りの申出(生産緑地法第10条)を経て行為制限の解除に至る必要があります。まず市町村の都市計画課で、特定生産緑地か・30年経過済みかを確認するのが出発点です。

Q. 特定生産緑地に移行していると、売れなくなるのですか?
A. 売れなくなるわけではありませんが、行為制限は続きます。特定生産緑地では、申出基準日から10年が経過したとき、または主たる従事者が死亡・故障したときに買取りの申出ができます。税の優遇を維持できる代わりに、宅地化までの道のりは通常の生産緑地と同様に買取り申出を経ます。

Q. 主たる従事者だった親が亡くなりました。30年を待たずに売れますか?
A. 主たる従事者の死亡は、30年の経過を待たずに買取りの申出ができる要件です(生産緑地法第10条)。誰が主たる従事者にあたるか、証明をどう整えるかは行政手続の論点で、行政書士が承ります。申出を経て行為制限が外れれば、宅地としての売却に進めます。

Q. 相続税の納税猶予を受けています。売ると何が起きますか?
A. 猶予を受けている農地を譲渡・転用すると、猶予が打ち切られ、猶予されていた相続税に利子税を加えて納めることになり得ます(租税特別措置法第70条の6)。打切りの有無・納付額の判断は税理士の領域です。売却を決める前に、納税猶予の状況を税理士に確認してもらうのが安全です。

この記事の出典(一次情報)

※特定生産緑地への移行の有無、買取り申出の要件充足、納税猶予の打切りの有無と納付額、農地転用・指定解除の可否は、個別の事情と自治体の運用によって変わります。本記事は個別の事案について判断していません。相続税の納税猶予・譲渡所得税は税理士へ、買取り申出・農地転用等の手続は行政書士へ、相続登記は司法書士へ、相続人間の紛争は弁護士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の売却の可否や税額を判断・保証するものではありません。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、買取り申出・農地転用等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・税務・登記の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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