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相続

相続税の納税資金を不動産の売却でつくるには?10か月の期限から逆算する段取り

申告書と電卓を並べた確定申告の準備を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した不動産を売って相続税の納税資金をつくるなら、起点は申告・納付の期限=相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月(相続税法第27条・第33条)です。ここから逆算すると売却活動に使える期間は実質半年ほど。段取りは「相続登記→査定・売り出し→売買契約→決済・納税」で、登記は司法書士、税額と特例の判断は税理士、遺産分割の紛争は弁護士へ。相続開始から3年10か月以内の売却なら取得費加算(措置法第39条)で譲渡税を抑えられる余地があり、間に合わないときは延納・物納も。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が条文から整理します。

結論(先に要点):相続した不動産を売って相続税の納税資金をつくるなら、起点は申告・納付の期限=相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月(相続税法第27条・第33条)です。この10か月から逆算すると、売却活動そのものに使える期間は実質半年ほどしかありません。段取りの順番は「相続登記(名義を相続人へ)→ 査定・売り出し → 売買契約 → 決済・納税」で、登記は司法書士、税額と特例の判断は税理士、遺産分割の紛争は弁護士に振ります。相続開始から3年10か月以内の売却なら取得費加算(措置法第39条)で譲渡税を抑えられる余地があり、10か月に間に合わないときは延納・物納という道もあります。売り急ぎで価格を落とさないよう、期限から逆算して早く動くのが要です。

相続税は「原則、現金で一度に納める」税です。手元の預貯金で足りなければ、相続した不動産を売って資金をつくることになります。ところが、いざ売ろうとすると申告期限が迫っていて、値段を叩かれても売り切るしかない——このすれ違いは珍しくありません。本記事は、相続した不動産を売って相続税の納税資金に充てたい相続人に向けて、10か月という期限から逆算した売却スケジュールの組み方を、相続税法・租税特別措置法の条文と国税庁の案内から整理したものです。相続税の申告や特例の適用可否は税理士、相続登記は司法書士、遺産分割でもめている場合は弁護士の領域で、当社は物件の売却の段取りに絞ります。

相続税の納税資金を不動産で用意するとき、まず押さえる期限は?

すべての起点は、申告と納付の期限です。

相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に提出しなければなりません(相続税法第27条)。そして納税も、この申告期限までに行うのが原則で、税金は金銭で一度に納めるのが原則です(同法第33条/2026年9月27日参照)。

期限内容根拠
相続開始を知った日の翌日から10か月相続税の申告・納付(金銭一括が原則)相続税法第27条・第33条
相続開始から3年10か月取得費加算(措置法第39条)を使える売却の期限租税特別措置法第39条
相続で取得を知った日から3年相続登記の申請義務(過料の対象)不動産登記法第76条の2

「売った代金で納税する」なら、決済(残代金の受領)が納付期限に間に合っていないといけません。 契約から決済までは数週間〜1か月以上かかることが多く、売り出しから買主が決まるまでにも時間が要ります。だから逆算が要になります。相続不動産の売り方の全体像は相続・空き家の相談に、相続登記の義務化を起点にした売却は「相続したとき、登記の義務化で何が変わったか」に整理しています。

10か月の申告期限から、売却スケジュールをどう逆算する?

10か月を、逆算で並べるとこうなります。あくまで目安で、物件・地域・遺産分割の進み方で前後します。

逆算やること主な担い手
相続開始〜2か月相続の把握・遺産分割の方針、相続登記の準備相続人・司法書士
〜3か月相続登記(売るには名義を相続人へ移すのが前提)、査定司法書士・当社
〜4か月売り出し価格の設定・売却活動の開始当社
〜7か月買主の決定・売買契約当社
〜9か月決済・残代金受領(=納税資金の確保)当社・司法書士
10か月相続税の申告・納付税理士・相続人

ここで一番のボトルネックになりやすいのが相続登記と遺産分割です。名義が被相続人のままでは売買契約も所有権移転登記もできません。遺産分割協議がまとまらないと登記も売却も進まず、10か月はあっという間に消えます。遺産分割でもめている場合は、早い段階で弁護士に相談し、売却の段取りと並行させるのが現実的です。相続登記は2024年4月1日から義務化され(不動産登記法第76条の2)、相続で取得を知った日から3年以内の申請が求められます。売る前提でも避けて通れません。

売り出しに使える実質的な期間は、10か月のうち半年ほどです。逆算して「いつまでに売り出すか」を最初に決めておくと、後半で値段を叩かれる展開を避けやすくなります。

売り急ぎで価格が下がらないようにするには?

期限に追われた売却の最大のリスクは、足元を見られて安く買い叩かれることです。防ぐ手立ては、突き詰めれば「早く動く」ことに尽きますが、具体的には次の点が効きます。

打ち手ねらい
相続登記・境界・書類を先に整える買主が安心して検討でき、契約〜決済が速い
売り出しを前倒しする検討期間を長く取れ、複数の買主を比べられる
価格の下限(納税に必要な手取り)を先に把握するどこまで値引きに応じられるかを冷静に判断できる
買取と仲介を比べる期限が迫れば「確実だが安い買取」も選択肢。まず仲介で反応を見る

境界が不明確だと、買主が測量の完了を待つことになり決済が遅れます。確定測量には数週間〜数か月かかることもあり、10か月の中では重い工程です。売れる状態に整える工程(登記・境界・書類)を前倒しするほど、後半の値引き圧力は下がります。 相続した不動産をどう売り進めるかの実務は「相続した不動産を換価分割で売る流れは?」にも整理しています。

なお、どうしても10か月に売却が間に合わない見込みなら、値段を叩かれてまで売り急ぐより、後述の延納・物納を税理士と検討するほうが手取りを守れる場合があります。売却と納税手段の比較を早めに始めるのが要です。

小規模宅地等の特例や取得費加算と売却は両立できる?(判断は税理士へ)

売却と税の特例は、タイミングによってぶつかったり両立したりします。ここは税理士の所管なので、当社は「売却スケジュールに効く点」だけを整理します。

**取得費加算(租税特別措置法第39条)**は、相続税を納めた人が相続財産を売ったとき、納めた相続税額のうち一定額を譲渡所得の計算上、取得費に加算できる特例です。加算額は「相続税額 × その譲渡した財産の相続税評価額 ÷ その人の相続税の課税価格」で計算します。使える期限は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで=相続開始からおおむね3年10か月以内の譲渡です(2026年9月27日参照)。納税のための売却は多くがこの期間に収まるため、譲渡税を抑えられる余地があります。

一方、注意が要るのが小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)です。これは相続税の課税価格を下げる特例で、居住用・事業用・貸付事業用の宅地について評価を減額します。ただし類型によっては「相続税の申告期限まで保有・居住/事業を継続する」ことが要件になっており、申告期限(10か月)より前に売ってしまうと、この継続要件を満たさず特例が使えなくなる場合があります(配偶者が取得した居住用宅地など、保有継続が要件でない類型もあります)。

特例売却との関係期限の目安
取得費加算(措置法39条)期間内の売却で譲渡税を圧縮できる相続開始から約3年10か月以内
小規模宅地等の特例(措置法69条の4)類型により申告期限までの保有継続が要件。早く売ると外れることがある相続税の申告期限(10か月)

つまり「小規模宅地等の特例を使いたい土地」と「売って納税資金にしたい土地」が同じ場合、売る時期が特例の可否を左右します。 どの土地をいつ売るか、特例の適用可否・要件の当てはめ・譲渡所得の計算は、必ず税理士にご確認ください。当社は物件ごとの売りやすさ・想定価格・スケジュールを、税理士は特例の可否を、それぞれ別に見ます。

延納・物納という選択肢と、売却はどう比べる?

売却が間に合わない、あるいは売っても足りないときの受け皿が、延納と物納です。いずれも金銭一括納付が原則の例外で、要件が厳しく、税理士との検討が前提になります。

**延納(相続税法第38条)**は、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由があるなどの要件を満たす場合に、担保を提供して年賦で分割納付する方法です(延納税額100万円以下かつ延納期間3年以下なら担保不要)。延納期間中は利子税がかかります。

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

**物納(相続税法第41条)**は、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、その困難とする金額を限度として、相続財産そのもので納める方法です。物納に充てられる財産には順位があり、第1順位が不動産・船舶・国債・地方債・上場株式等、第2順位が非上場株式等、第3順位が動産です。物納財産の収納価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額です(2026年9月27日参照)。

手段向く場面留意点
売却して金銭で納付市場で売れる不動産があり、期限に間に合う売り急ぎの値下げに注意。取得費加算を活かす
延納(第38条)一括は無理だが分割なら払える担保・利子税。要件審査あり
物納(第41条)延納でも困難。売りにくい不動産を持つ延納が前提。順位・収納価額・要件が厳格

売れる不動産なら、市場で売って手取りを残すほうが有利なことが多い一方、売りにくい不動産や期限に間に合わないケースでは延納・物納が現実的な受け皿になります。どれを選ぶかは、売却の見込み(当社)と、延納・物納の要件・税額(税理士)を並べて判断します。 手放し方の比較の考え方は「相続した土地は国庫帰属で手放すのと売るのとどちらが得ですか?」にも整理しています。

誰に相談すればよいですか?

物件の査定、売り方・価格・スケジュールの設計、売買の媒介は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。役割は次のように分かれます。

すること担い手
相続税の申告、延納・物納、小規模宅地等の特例・取得費加算の適用可否、譲渡所得税の計算税理士
相続登記(被相続人から相続人へ名義を移す)司法書士
遺産分割でもめている場合の交渉・調停弁護士
物件の査定・売り方の設計・媒介宅地建物取引業者(当社)

税額と特例の判断は税理士、相続登記は司法書士、遺産分割の紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。これらはそれぞれ独立した事業体であり、当社とは別々にご契約いただきます。 当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。

よくある質問

Q. 相続税を売却代金で払うには、いつまでに売ればよいですか?
A. 相続税の申告・納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法第27条・第33条)。「売った代金で納税する」なら、決済(残代金の受領)がこの期限に間に合っている必要があります。契約から決済まで、また売り出しから買主決定までの時間を考えると、売り出しは相続開始から3〜4か月のうちに始めておくのが安全です。相続登記や遺産分割が遅れると全体が押すため、早めに司法書士・税理士と並行して進めてください。

Q. 相続した土地を売ると譲渡税がかかりますが、抑える方法はありますか?
A. 相続税を納めた人が相続開始からおおむね3年10か月以内に相続財産を売った場合、取得費加算(租税特別措置法第39条)で、納めた相続税額のうち一定額を取得費に加算でき、譲渡所得を圧縮できる余地があります。納税のための売却は多くがこの期間に収まります。適用可否・加算額・譲渡所得の計算は税理士の所管ですので、必ずご確認ください。

Q. 小規模宅地等の特例を使う土地を、納税のために売っても大丈夫ですか?
A. 類型によっては注意が要ります。小規模宅地等の特例(措置法第69条の4)は、類型により「相続税の申告期限まで保有・居住/事業を継続する」ことが要件になっており、申告期限(10か月)より前に売ると継続要件を満たさず特例が使えなくなる場合があります(配偶者取得の居住用宅地など要件でない類型もあります)。どの土地をいつ売るかで特例の可否が変わるため、売却時期は税理士と相談して決めてください。

Q. 10か月までに売れなかったら、どうなりますか?
A. 期限までに金銭で納付できない場合、要件を満たせば延納(相続税法第38条・担保提供のうえ年賦分割)や、延納によっても困難なときは物納(第41条・相続財産そのもので納付)という手段があります。いずれも要件が厳格で、税理士との検討が前提です。売れる不動産なら市場で売って手取りを残すほうが有利なことも多く、値段を叩かれてまで売り急ぐ前に、売却の見込みと延納・物納を並べて比べるのが安全です。

この記事の出典(一次情報)

※相続税の税額、延納・物納の可否、小規模宅地等の特例や取得費加算の適用可否は、財産の内容・分割の仕方・各人の事情によって異なります。本記事は個別の事案について判断していません。税額と特例の適用は税理士、相続登記は司法書士、遺産分割の紛争は弁護士の窓口で最終確認してください。
※行政の期限・要件・様式は改正されることがあります。着手時点で国税庁・管轄税務署の案内を直接ご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の不動産の売却価格や税額、特例の適用を判断・保証するものではありません。
※物件の査定・売り方の設計・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が承ります。相続税・特例・譲渡所得税は税理士、相続登記は司法書士、遺産分割の紛争は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と手続(行政・相続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。

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