相続した空き家は、解体して更地で売るか古家付き土地で売るか
相続した空き家を「解体して更地」で売るか「古家付き土地(現況)」で売るかは、解体費と更地後に上がる固定資産税、買主層、契約不適合責任と解体費の負担、空き家3000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)の適用のさせ方で決まります。控除は令和6年から買主が引渡し後に除却する形でも使える余地があり、解体のタイミングが手取りを左右します。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が売り方の比較を整理します。
結論(先に要点):相続した空き家を売るとき、「解体して更地」か「古家付き土地(現況渡し)」かは、①解体費用と、更地にした後に住宅用地特例が外れて上がる固定資産税、②買主層(更地は建てたい人、古家付きは価格重視・DIY・投資層)、③契約不適合責任と解体費の負担、④空き家の3000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)の適用のさせ方——この4点の兼ね合いで決まります。とくに控除は「更地にしてから売る/買主が引渡し後に除却する」のどちらでも使える形に整理されており、解体のタイミングが手取りを左右します。税額の計算は税理士、滅失登記は土地家屋調査士・司法書士へ振り分けます。
相続した実家が空き家になり、いざ売ろうとすると必ず突き当たるのが「壊してから売るか、そのまま売るか」です。どちらが得かは物件と売り先で変わり、一律の正解はありません。本記事は、相続した空き家を売却したい相続人に向けて、更地渡しと古家付き土地渡しという売り方そのものの違い(費用・期間・買主層・契約不適合責任・税の特例)を整理したものです。放置したままにするリスクや控除の逆算は別記事に譲り、ここは「解体するか否か」の判断材料に絞ります。
更地で売るのと古家付き土地で売るのは、買主から見て何が違いますか?
同じ土地でも、更地と古家付きでは買う人の層が変わります。
更地は、すぐ建てたい人・住宅メーカー・建売業者に向きます。境界や地中埋設物がはっきりしていれば、買主は建築計画をすぐ立てられます。一方、古家付き土地(現況渡し)は、価格を抑えたい人、DIYやリフォームを前提にする人、投資として貸したい人に向きます。古家に価値を認めないケースでも、「解体費は買主が負担する前提で、その分安く」という値づけが成立します。
| 更地渡し | 古家付き土地(現況渡し) | |
|---|---|---|
| 主な買主層 | すぐ建てたい人・建売業者 | 価格重視・DIY・リフォーム・投資 |
| 売主の初期費用 | 解体費が先に出る | かけない |
| 引渡しまでの期間 | 解体の分だけ延びる | 早い |
| 見た目の分かりやすさ | 高い(土地の形が見える) | 建物が視界を遮る |
どちらが高く売れるかは立地と建物の状態次第です。土地の価値が容積率でどう動くかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に、「売るか残すか」の全体判断は「相続した実家、売るか残すか」に整理しています。
解体費用と、更地にした後の固定資産税増はどれくらい見込みますか?(税額は税理士へ)
更地にする前に必ず押さえるのが、固定資産税の住宅用地特例です。
地方税法は、住宅が建っている土地(住宅用地)の固定資産税について、課税標準を軽減する特例を定めています。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準を6分の1、それを超える一般住宅用地の部分は3分の1に軽減されます(都市計画税はそれぞれ3分の1・3分の2)。建物を解体して更地にすると、この住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がります。
よく「更地にすると固定資産税が6倍になる」と言われますが、これは正確ではありません。特例が外れると課税標準は上がりますが、更地には負担調整措置や住宅用地でない土地の上限(課税標準は評価額の70%)が働くため、実際の増え方は6倍ちょうどにはなりません。増加幅は自治体・評価額によって変わります。
| 状態 | 小規模住宅用地の固定資産税の課税標準 |
|---|---|
| 家屋が建っている(住宅用地) | 評価額の6分の1 |
| 解体して更地 | 特例が外れる(負担調整あり・6倍ちょうどではない) |
さらに、放置された空き家が**「特定空家等」や「管理不全空家等」**に指定され、市町村の勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外されます(空家等対策特別措置法)。解体しなくても、放置しているだけで特例が外れることがある点は要注意です。具体的な税額・増加幅の試算は税理士に、放置のリスクは別途ご確認ください。
古家付きのまま売ると、契約不適合責任や解体費の負担はどうなりますか?
古家付き土地を売る場合の論点は、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)です。
民法では、売った物が契約の内容に適合しない場合、買主は追完(修補)・代金減額・損害賠償・契約解除を求められます(民法562条〜)。築古の空き家は雨漏り・シロアリ・給排水の不具合などが出やすく、そのまま売ると後からこの責任を問われるおそれがあります。
そこで個人間の中古取引では、「現況有姿で引き渡し、契約不適合責任を負わない(免責)」という特約を付けることがよく行われます。民法上、契約不適合責任は特約で軽減・免責できます(ただし売主が知りながら告げなかった事実には免責が及びません)。
注意すべきは、売主が宅地建物取引業者で買主が個人(非業者)の場合です。この場合は宅地建物取引業法40条により、契約不適合責任の通知期間を「引渡しの日から2年以上」とする以外の、買主に不利な特約は無効になります。相続人が個人として売る場合と、業者が売主になる場合とで、免責特約の効き方が違います。
| 個人が売主 | 宅建業者が売主・買主が個人 | |
|---|---|---|
| 契約不適合責任の免責特約 | 原則有効(知って告げなかった事実は除く) | 宅建業法40条で制限(引渡しから2年以上等) |
| 解体費の扱い | 「買主負担で安く」等を価格に織り込む | 同様に価格・条件で調整 |
解体費を「売主負担で更地にしてから渡す」か「買主負担で古家付きのまま安く」渡すかは、価格交渉の中身です。どちらにするかで、次の税の特例の使い方も変わります。
3000万円の特別控除を使うなら、解体のタイミングで何が変わりますか?(適用可否は税理士へ)
相続した空き家を売るときの大きな要素が、**「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3000万円特別控除」(租税特別措置法35条3項)**です。譲渡所得から最大3000万円を控除できます(相続人が3人以上の場合は1人あたり2000万円)。
主な要件は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築 |
| 建物の種類 | 区分所有建物(マンション等)でないこと |
| 居住状況 | 相続開始の直前に被相続人が一人で居住していたこと(老人ホーム入所等の特例あり) |
| 用途 | 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住に使っていないこと |
| 譲渡対価 | 1億円以下 |
| 期限 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで/特例の適用期限は令和9年12月31日まで |
| 家屋の状態 | 売却時に耐震基準に適合、または家屋を除却して更地にすること |
ここで解体のタイミングが効きます。従来は「売主が引渡しまでに耐震改修する」か「更地にする」必要がありましたが、令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡からは、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または除却をした場合も適用対象に加わりました。つまり、売主が先に壊さなくても、買主が引渡し後に壊す段取りでも控除を使える余地が生まれています。
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
これは「更地にしてから売るか、古家付きで売るか」の判断を大きく変えます。適用の可否・要件の当てはめ・譲渡所得の計算は税理士の所管です。要件は細かく、老人ホーム入所の特例や共有の場合の扱いもあります。当社は物件の売り方(更地/現況)と価格の設計を、税理士は控除の適用可否を、それぞれ別に見ます。
解体・滅失登記・売却を、それぞれ誰に頼めばよいですか?
物件の売り方の見立て(更地/古家付き)と、売買の媒介は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。役割は次のように分かれます。
| 順番 | すること | 担い手 |
|---|---|---|
| 1 | 相続登記(被相続人から相続人へ名義を移す) | 司法書士 |
| 2 | 更地/古家付きの方針と価格を決める | 宅地建物取引業者(当社) |
| 3 | 解体工事(更地にする場合) | 解体業者 |
| 4 | 建物滅失登記(解体後1か月以内) | 土地家屋調査士(表題)・司法書士 |
| 5 | 3000万円控除の適用可否・譲渡所得の計算 | 税理士 |
| 6 | 相続人間で売り方がまとまらない場合の交渉・調停 | 弁護士 |
建物を解体したら、不動産登記法第57条により、滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請する義務があります。名義が被相続人のままでは売買契約も所有権移転登記もできないため、相続登記が前提です(相続登記は2024年4月1日から義務化。詳しくは「相続したとき、登記の義務化で何が変わったか」)。
相続登記・建物滅失登記の権利部は司法書士、滅失登記の表題(測量・現況)は土地家屋調査士、3000万円控除や譲渡所得税は税理士、相続人間の紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。 これらはそれぞれ独立した事業体であり、当社とは別々にご契約いただきます。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。相続不動産全般の進め方は相続・空き家の相談にまとめています。
よくある質問
Q. 更地にしてから売るのと、古家付きのまま売るのは、どちらが得ですか?
A. 一律の正解はありません。更地はすぐ建てたい買主に向き見た目も分かりやすい一方、解体費が先に出て、更地の間は固定資産税の住宅用地特例が外れます。古家付きは初期費用をかけず早く売り出せますが、契約不適合責任や解体費の負担を価格に織り込む必要があります。3000万円控除は令和6年以降、買主が引渡し後に除却する形でも使える余地があり、税理士に適用可否を確認したうえで決めるのが安全です。
Q. 空き家を解体すると、固定資産税は6倍になりますか?
A. 「6倍ちょうど」にはなりません。解体で住宅用地特例(小規模住宅用地は課税標準6分の1)が外れて課税標準は上がりますが、更地には負担調整措置や評価額の70%という上限が働くため、実際の増加幅は自治体・評価額によって変わります。具体的な試算は税理士へご確認ください。なお放置して「特定空家等」の勧告を受けると、解体しなくても特例が外れることがあります。
Q. 建物を壊したら、登記は何かしないといけませんか?
A. 必要です。不動産登記法第57条により、建物を解体(滅失)したら1か月以内に建物滅失登記を申請する義務があります。表題部(現況・測量)は土地家屋調査士、権利部の手続は司法書士の領域です。名義が被相続人のままなら、その前提として相続登記も必要になります。
Q. 古家付きで売って、契約不適合責任を負わないようにできますか?
A. 個人が売主の場合、「現況有姿・契約不適合責任免責」の特約は原則有効です(ただし知りながら告げなかった事実には免責が及びません)。売主が宅地建物取引業者で買主が個人の場合は、宅建業法40条により通知期間を引渡しから2年以上とするなどの制限があり、買主に不利な特約は無効です。特約の書き方は取引の当事者や物件で変わるため、媒介の中で個別に確認します。
この記事の出典(一次情報)
- 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(租税特別措置法35条3項。昭和56年5月31日以前建築・区分所有建物でない・相続開始直前に被相続人が一人で居住・譲渡対価1億円以下・耐震基準適合または除却=更地。令和6年1月1日以降の譲渡は買主が翌年2月15日までに耐震改修・除却した場合も対象。相続人3人以上は1人2000万円。適用期限は令和9年12月31日まで。2026年8月27日参照)
- e-Gov法令検索「地方税法」(第349条の3の2=住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は6分の1、一般住宅用地は3分の1。都市計画税は第702条の3で3分の1・3分の2。2026年8月27日参照)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(第57条=建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請しなければならない。2026年8月27日参照)
- e-Gov法令検索「民法」(第562条〜第564条=契約不適合責任(追完・代金減額・損害賠償・解除)。特約による軽減・免責の可否。2026年8月27日参照)/宅地建物取引業法第40条(売主が宅建業者・買主が非業者の場合の担保責任の特約の制限=引渡しから2年以上)。
※固定資産税の増加幅、3000万円控除の適用可否、契約不適合責任の免責特約の効き方は、物件ごと・当事者ごとに異なります。本記事は個別の物件について判断していません。税額と控除の適用は税理士、登記は司法書士・土地家屋調査士、相続人間の紛争は弁護士の窓口で最終確認してください。
※空き家の3000万円控除は要件が細かく、老人ホーム入所や共有の場合の扱いがあります。適用可否は必ず税理士にご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の売却価格や税額を判断・保証するものではありません。
※物件の見立て・価格設計・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が承ります。相続登記・滅失登記の権利部は司法書士、滅失登記の表題は土地家屋調査士、譲渡所得税・控除は税理士、相続人間の紛争は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と手続(行政・相続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
売る・貸す・持ち続ける——決める前のご相談からで大丈夫です。
相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。
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