相続人がいない不動産は誰がどう売る?相続財産清算人と家裁の許可

相続人がいない(または全員が相続放棄した)不動産は、所有者の死亡だけでは誰も売れません。まず家庭裁判所が相続財産の清算人を選任し(民法第952条。2023年〈令和5年〉4月1日施行の改正で「相続財産管理人」から名称変更)、清算人が家庭裁判所の権限外行為許可(民法第28条・第953条準用)を得てはじめて売却できます。東京都文京区の宅地建物取引士が、選任から権限外行為許可・換価・清算の順序までを民法の条文と裁判所の案内から整理します。選任申立ては弁護士・司法書士、登記は司法書士、税務は税理士の領域です。
結論(先に要点):相続人がいない(または全員が相続放棄した)不動産は、所有者の死亡だけでは誰も売れません。まず家庭裁判所が利害関係人か検察官の請求で「相続財産の清算人」を選任し(民法第952条第1項。2023年〈令和5年〉4月1日施行の改正で、従来の「相続財産管理人」はこの名称に改められました)、その清算人が家庭裁判所の権限外行為許可(民法第28条。第953条で不在者財産管理人の規定を準用)を得てはじめて、不動産を売って現金に換えられます。清算人は不動産の売却を保存・管理の範囲を超える処分行為として扱うため、個別に許可の申立てが要るからです。不動産会社(当社)が担うのは、選任された清算人からの依頼を受けての価格査定・買主探索・売却の媒介までで、清算人の選任申立てや権限外行為許可の申立ては弁護士または司法書士、相続登記・名義変更は司法書士、相続税・譲渡所得など税務は税理士、相続人間や債権者との紛争は弁護士が担い、いずれも独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします(紹介料のやりとりはありません)。
身寄りのない親族の不動産を抱えた関係者、債権者、特別縁故者、空き家の近隣・自治体の担当者に向けて、相続人がいない不動産を清算人が換価・売却するまでの実務の流れを、民法の条文と裁判所・法務省の案内の順に整理します。本記事は一般的な情報提供であり、清算人の選任の可否、権限外行為許可が下りるかどうか、売却価格の妥当性といった最終判断は、家庭裁判所と各有資格者の領域です。
四葉不動産株式会社は、東京都文京区小日向を拠点に、相続した不動産の調査と査定・売却の媒介を承っています。「相続人がいない不動産をどう換価するか」という段階から、清算人・弁護士・司法書士と連携してお手伝いします。
相続人がいない不動産を売るには、誰を選任する必要がある?
相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は「法人」となります(民法第951条)。所有者が亡くなっても、相続人が不明・不存在、または全員が相続放棄したために承継者がいない状態では、その不動産を売る権限を持つ人が誰もいません。そこで、家庭裁判所が利害関係人(債権者・特別縁故者・共有者・買いたい隣地所有者など)または検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任します(民法第952条第1項)。
| 状態 | 誰が売れるか |
|---|---|
| 相続人がいる | 相続人(相続登記のうえで売却) |
| 相続人が不明・不存在、全員放棄 | 誰も売れない。清算人の選任が必要 |
| 清算人が選任された | 清算人(ただし家庭裁判所の許可が要る処分がある) |
2023年(令和5年)4月1日施行の民法改正で、この役職の名称が「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に改められ、あわせて公告の手続が合理化されました。改正前後の解説記事には旧名称が残っていることが多いので、混同しないよう注意してください。選任の申立ては、裁判所に提出する書類の作成を伴うため、弁護士または司法書士の領域です(行政書士は裁判所提出書類の作成を業として行えません)。相続不動産全般の進め方は相続した不動産の相談窓口もご覧ください。
相続財産清算人は、なぜ家庭裁判所の許可がないと売れない?
清算人には、民法第953条によって不在者財産管理人の規定(民法第27条〜第29条)が準用されます。その第28条は、「第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる」と定めています。第103条の権限とは、財産の保存行為と、性質を変えない範囲の利用・改良行為です。
不動産の売却は、この保存・利用改良の範囲を超える「処分行為」にあたります。そのため、清算人が相続財産の不動産を売るには、売却という行為そのものについて家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。許可は物件・売却条件ごとに個別に判断されるので、「清算人が選任されたから自由に売れる」わけではない点が、通常の相続不動産との大きな違いです。
| 行為 | 家庭裁判所の許可 |
|---|---|
| 財産の保存(管理・現状維持) | 不要(第103条の範囲内) |
| 性質を変えない利用・改良 | 不要(第103条の範囲内) |
| 不動産の売却など処分 | 必要(権限外行為許可。民法第28条) |
権限外行為許可の申立てから売却まで、流れはどうなる?
実務では、清算人が選任されたあと、債権者・受遺者を確定するための公告を行いながら、売却が必要な不動産について権限外行為許可を申し立て、許可を得て売却する、という順に進みます。改正で公告が一本化されたため、従来より期間の見通しが立てやすくなりました。
| 段階 | 内容 | 主に関わる担当 |
|---|---|---|
| 1. 清算人の選任 | 家庭裁判所が選任し、選任の旨と相続人の権利主張期間(6箇月を下れない)を遅滞なく公告(民法第952条) | 弁護士・司法書士(申立書類)/家庭裁判所 |
| 2. 請求申出の公告 | 清算人が相続債権者・受遺者に2箇月以上の請求申出期間を公告(1の期間内に満了。民法第957条) | 清算人 |
| 3. 価格査定・買主探索 | 売却する不動産の査定と買主探索、売却条件の整理 | 当社(宅地建物取引業) |
| 4. 権限外行為許可の申立て | 売却の相手・価格など条件を定めて家庭裁判所に許可を申し立てる(民法第28条) | 弁護士・司法書士(申立書類)/家庭裁判所 |
| 5. 売却・引渡し | 許可を得て売買契約、代金受領、所有権移転登記 | 当社(媒介)/司法書士(登記) |
不動産会社が関わるのは、主に3と5——査定・買主探索と、許可を得た後の媒介です。価格の妥当性は、権限外行為許可の判断材料にもなるため、査定の根拠を整えておくことが実務上は重要になります。選任申立てや権限外行為許可の申立ての書類作成は弁護士・司法書士が、登記は司法書士が担います。相続した不動産を売る一般的な流れは相続した不動産を売却するまでの流れでも扱っています。
売却代金は、誰に・どの順番で配られる(清算の順序)?
清算人が不動産を換価して得た代金は、まず債権者や受遺者への弁済に充てられます。民法第957条第2項は、限定承認の清算に関する規定(第927条第2項〜第4項、第928条〜第935条。ただし第932条ただし書を除く)を準用しており、弁済はおおむね次の順で進みます。
| 順番 | 配られる先 | 根拠(準用) |
|---|---|---|
| 1 | 相続債権者(申し出た債権者への配当弁済) | 民法第929条 |
| 2 | 受遺者 | 民法第931条 |
| 3 | 特別縁故者(請求があり、家庭裁判所が相当と認めた場合) | 民法第958条の2 |
| 4 | 残余は国庫に帰属 | 民法第959条 |
ご自身のケースについて相談したい方へ
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弁済のために不動産を売る必要があるときは、原則として競売によることになりますが、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って価額を弁済すれば競売を止められる、という例外もあります(民法第932条本文・ただし書を準用)。実務では任意売却が選ばれることも多く、その可否と条件は家庭裁判所の権限外行為許可で判断されます。どの順で・いくら配るかという清算の法的判断は清算人と裁判所の領域で、不動産会社は換価の部分(査定・媒介)を担います。譲渡所得など税務は税理士の領域です。
特別縁故者・共有者・国庫帰属とは、どう関わる?
債権者・受遺者への弁済を終えてなお財産が残ると、「特別縁故者」への分与の問題になります。被相続人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人など特別の縁故があった人は、家庭裁判所に財産の分与を請求できます(民法第958条の2第1項)。この請求は、相続人の権利主張期間(民法第952条第2項の期間)が満了した後3箇月以内にしなければなりません(同条第2項)。特別縁故者がいない、または分与されなかった残余は、最終的に国庫へ帰属します(民法第959条)。
共有不動産の持分の所有者が相続人なく亡くなった場合は、少し扱いが異なります。民法第255条は「共有者の一人が死亡して相続人がいないとき、その持分は他の共有者に帰属する」と定めていますが、判例は、特別縁故者への分与がされなかったときにはじめて第255条で他の共有者に帰属すると整理しており、特別縁故者への分与が優先します。共有持分が絡む売却は論点が増えるため、清算人・弁護士・司法書士と早めに連携するのが安全です。相続した共有持分の売り方は相続した共有持分を第三者に売る・分割するでも整理しています。
相続人がいない不動産の換価・売却のご相談を四葉不動産へ(相談無料)
お問い合わせに「相続人不存在」と、不動産の所在地、相続放棄の有無、清算人がすでに選任されているか、共有持分かどうかをご記入ください。清算人・弁護士・司法書士と連携し、査定・買主探索・媒介の部分からお手伝いします。
よくある質問
Q. 相続人がいない不動産は、放っておけば勝手に国のものになりますか?
A. 自動では国庫に帰属しません。家庭裁判所が相続財産の清算人を選任し、債権者・受遺者への弁済や特別縁故者への分与といった清算を経て、なお残った財産が最終的に国庫へ帰属します(民法第959条)。不動産を現金に換えるには、清算人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て売却する手続が必要です。選任の申立ては弁護士・司法書士の領域です。
Q. 清算人が選任されれば、すぐに不動産を売れますか?
A. いいえ。不動産の売却は財産の保存・利用改良の範囲を超える処分行為にあたるため、清算人は売却という行為について家庭裁判所の権限外行為許可(民法第28条。第953条で準用)を個別に得る必要があります。許可は売却の相手・価格などの条件ごとに判断されます。不動産会社は、その前提となる査定・買主探索と、許可を得た後の媒介を担います。
Q. 「相続財産管理人」と「相続財産清算人」は違うものですか?
A. 2023年(令和5年)4月1日施行の民法改正で、相続人の不存在の場合に選任される役職の名称が「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に改められ、公告の手続も合理化されました。改正前の記事には旧名称が残っていることが多いので、手続を調べるときは施行日に注意してください。なお、相続財産の保存のみを行う「相続財産の管理人」は別に設けられています。
Q. 不動産会社は、清算人の選任や許可の申立てもしてくれますか?
A. いいえ。清算人の選任申立てや権限外行為許可の申立ては、裁判所に提出する書類の作成を伴うため、弁護士または司法書士の領域です。相続登記は司法書士、相続税・譲渡所得など税務は税理士、紛争は弁護士が担います。不動産会社(当社)が担うのは、清算人からの依頼を受けての価格査定・買主探索・売却の媒介までです。いずれも独立した事業体として別々にご契約いただきます。
この記事の出典(一次情報)
以下は確認の出発点となる公表資料です。法令は改正されるため、条文・項・号・施行日・最終改正はe-Gov法令検索で最新を確認してください。手続の具体的な流れは管轄の家庭裁判所の運用によるため、裁判所・法務省の案内で確認してください。清算人の選任の可否、権限外行為許可、特別縁故者への分与の可否は家庭裁判所が判断します。公的資料の参照日はいずれも2026年11月3日。
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第951条=相続財産法人、第952条=清算人の選任と公告〔権利主張期間は6箇月を下れない〕、第953条=第27条〜第29条の準用、第957条=相続債権者・受遺者への弁済〔2箇月以上の請求申出公告〕、第958条の2=特別縁故者への分与、第959条=残余財産の国庫帰属、第28条=権限外行為の許可、第103条=権限の定めのない代理人の権限、第929条・第931条=弁済の順、第932条=換価のための競売、第255条=共有持分の帰属)
- 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号。2023年〈令和5年〉4月1日施行。相続財産管理人から相続財産清算人への名称変更、清算手続の公告の合理化。e-Gov法令検索で該当条と最新を確認)
- e-Gov法令検索「家事事件手続法」(平成23年法律第52号。相続財産清算人の選任・権限外行為許可の申立て手続。e-Gov法令検索で条番号と最新を確認)
- 裁判所「相続財産清算人(相続財産管理人)の選任」手続案内(参照日2026年11月3日。最新は裁判所のページで確認)
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」関係資料(相続財産清算人・公告手続の見直しの趣旨。参照日2026年11月3日)
本記事は一般的な情報提供であり、清算人の選任、権限外行為許可、特別縁故者への分与、売却価格の妥当性を保証するものではありません。清算人の選任申立てと権限外行為許可の申立ては弁護士・司法書士が、相続・所有権移転の登記は司法書士が、相続税・譲渡所得など税務は税理士が、相続人間や債権者との紛争は弁護士が、売却の査定・媒介は不動産(当社)が、それぞれ判断・担当します。
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)/四葉不動産株式会社 代表取締役・宅地建物取引士。相続した不動産の調査と査定・売却の媒介を承ります。著者プロフィール
更新日:2026年11月3日
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