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労務のしくみ

自動車整備工場(認証・指定工場)の労務は?整備士の時間外・資格者の配置・兼務

人事・賃金・労務制度を整えるイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

自動車整備工場の労務の軸は、整備主任者・自動車検査員という資格者を常勤で勤務時間を満たして置き続けられるか、整備士の時間外・休日・割増賃金、そして車検が集中する繁忙期のシフトです。整備主任者は1級又は2級の自動車整備士技能検定の合格者から選任し(道路運送車両法施行規則第62条の2の2)、指定工場では自動車検査員を選任します。36協定(労働基準法第36条)・割増賃金(同第37条)・変形労働時間制(同第32条の2・第32条の4)・パートの社会保険を整理します。認証・指定の申請は行政書士、物件は宅地建物取引業者、税務は税理士の領域で、独立した事業体として別々にご契約いただきます。

結論(先に要点):自動車整備工場の労務の軸は、整備主任者・自動車検査員という資格者を「常勤で勤務時間を満たして置き続けられるか」と、整備士全体の時間外・休日・割増賃金、そして車検が集中する繁忙期のシフトです。整備主任者は1級又は2級の自動車整備士技能検定の合格者から選任し(道路運送車両法施行規則第62条の2の2)、指定工場(民間車検場)では自動車検査員を選任します。残業や休日労働には36協定(労働基準法第36条)と割増賃金(同第37条)が、繁忙期には変形労働時間制(同第32条の2・第32条の4)が効きます。認証・指定の申請は行政書士、物件は宅地建物取引業者、税務は税理士の領域で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。

「整備主任者が辞めたら認証はどうなるのか」「車検が月末と3月に集中するが、残業をどう組めば合法か」「ピット要員のパートに社会保険はいつから要るのか」——認証工場・指定工場を開業し、運営する経営者からよく受ける相談です。このページは、認証・指定の要件そのものではなく、その要件を満たし続けるための労働時間・配置・社会保険という労務の設計を整理します。認証・指定の可否や申請書類は運輸支局と行政書士の領分で、この記事は労務に絞ります。

整備主任者・自動車検査員など資格者の配置は労務にどう響きますか?

認証工場(自動車特定整備事業の認証・道路運送車両法第78条)には整備主任者を、指定工場(指定自動車整備事業の指定・同法第94条の2)にはさらに自動車検査員を置きます。どちらも「資格者を1人以上置く」という配置の要件であり、労務では、その人が常勤で勤務時間を満たしているか、欠けたときに割れないかが問題になります。

資格者選任の根拠と要件労務上の留意点
整備主任者事業場ごとに、1級又は2級の自動車整備士技能検定の合格者で特定整備に従事する者から選任(道路運送車両法施行規則第62条の2の2)。法令研修・技術研修の受講がある退職・休職で欠けると認証の維持に関わる。実際の整備・記録簿の統括と管理を兼ね、長時間労働になりやすい
自動車検査員指定工場で選任し、工場内の検査に基づいて保安基準適合証を交付する(同法第94条の4ほか)検査の最終責任を負う立場で、勤務の継続性と労働時間の把握がとくに重要

労務でまず効くのは、資格者が常勤で勤務時間を満たし続けられる雇用の安定とシフトです。資格者が1人しかいない体制は、その人の有給取得・病欠・退職で認証・指定の前提が崩れるため、代替できる有資格者の育成と勤務表の設計が労務の課題になります。整備主任者が工場長を兼ね、実際の整備や後進の管理まで担っているときは、労働基準法第41条第2号の管理監督者に当たるかどうかが問題になりますが、これは役職名ではなく勤務実態で判断します。管理監督者の線引きは管理監督者か名ばかり管理職かに整理しています。資格者の選任・届出の可否や認証・指定の要件判定そのものは、運輸支局と行政書士の業務で、社会保険労務士業務とは扱う法律が異なります。

整備士の時間外・休日労働と割増賃金はどう管理しますか?

整備士に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせる、又は法定休日に働かせるには、時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を結んで労働基準監督署長に届け出る必要があります(労働基準法第36条)。限度時間は原則として月45時間・年360時間で、特別条項を結んでも、年720時間以内、休日労働を含む複数月平均80時間以内・単月100時間未満、月45時間を超えられるのは年6回まで、という上限を超えられません。割増賃金の率は次のとおりです。

区分割増率(労働基準法第37条)
時間外労働(法定労働時間超)2割5分以上
1か月60時間を超える時間外労働5割以上(中小企業も2023年〈令和5年〉4月1日から適用)
深夜労働(原則22時〜翌5時)2割5分以上(時間外と重なれば合算)
休日労働(法定休日)3割5分以上

整備業は、自動車運転者のような時間外労働の上限規制の特例(2024年〈令和6年〉4月から適用された年960時間の枠など)の対象業種ではなく、原則の上限規制がそのまま適用されます。36協定の限度時間と特別条項の設計は36協定は残業をどこまで認められるかに整理しています。実際の労働時間への当てはめ(手待ち時間・移動時間・研修時間を労働時間に含めるか)は個別事情で結論が分かれます(未検証)。

繁忙期(車検集中・年度末)のシフトは何で組めますか(変形労働時間制)?

車検は月末や年度末(3月)に集中し、繁閑の差が大きい業種です。繁忙期に所定労働時間を長く、閑散期に短く配分して、平均を週40時間以内に収める仕組みが変形労働時間制です。

制度根拠向く場面
1か月単位の変形労働時間制労働基準法第32条の2月末の車検集中など、1か月の中で山谷があるとき。就業規則又は労使協定で定める
1年単位の変形労働時間制労働基準法第32条の43月の年度末が突出するなど、1年を通して繁閑があるとき。労使協定と届出が必要

1年単位の変形労働時間制を採ると、常時10人未満の事業場でも週44時間の特例は使えず週40時間で計算し、対象期間の労働日数・連続労働日数・1日と1週の労働時間の上限などの制約がかかります。制度の選び方は変形労働時間制とフレックスの選び方にまとめています。どの制度が自社の繁閑に合うかは、実際の受注の波と勤務表の作り方で変わります。

パート・短時間の整備士に社会保険はいつ必要ですか?

パートやアルバイトの整備士・ピット要員でも、1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば、健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。この4分の3に満たない短時間労働者でも、短時間労働者の適用拡大の要件を満たせば加入します。

区分加入の目安
4分の3基準週の所定労働時間・月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上なら被保険者
短時間労働者の適用拡大被保険者の総数が常時51人を超える特定適用事業所で、週の所定労働時間20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超える雇用の見込み・学生でない、を満たすと加入(2024年〈令和6年〉10月から従業員51人以上に拡大)

短時間労働者の社会保険の考え方は短時間労働者の社会保険と4分の3基準に、適用拡大の流れは社会保険の適用拡大はどこまで進むかに整理しています。繁忙期だけ労働時間が増えるパートの被保険者資格の判定は、契約上の所定労働時間と実態のずれで結論が分かれることがあります(未検証)。建設業など現場系の社会保険・労災特別加入の整理は建設業の社会保険と一人親方の労災特別加入もあわせてご覧ください。

認証・指定の維持と労務管理の関係で注意することは何ですか?

認証・指定は、資格者の配置・設備・管理体制が前提です。労務の失敗が、そのまま認証・指定の維持リスクになります。注意したいのは次の点です。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

  • 整備主任者・自動車検査員が1人体制だと、その人の退職・長期離脱で前提が崩れる。代替できる有資格者を育て、勤務表で穴を作らない
  • 長時間労働による離職が、資格者の欠員に直結する。36協定・変形労働時間制・割増賃金を整え、労働時間を把握する
  • 就業規則は常時10人以上で作成・届出義務(労働基準法第89条)。資格者の兼務・手当・勤務形態を規程に落とす。就業規則の義務は就業規則は何人から義務かに整理しています

手続の担い手は、資格が違うと分かれます。

手続担当
認証・指定の要件判定、運輸支局への認証申請・指定申請行政書士(四葉行政書士事務所。当事務所とは独立した事業体)
36協定・就業規則・変形労働時間制・社会保険・労働時間管理社会保険労務士(四葉社会保険労務士事務所)
工場となる物件の用途地域・面積・前面道路の確認宅地建物取引業者
税務・減価償却税理士
個別の労働時間該当性の最終判断労働基準監督署・裁判所

四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として労務を受任し、行政書士(四葉行政書士事務所)や宅地建物取引業者など別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

当事務所がお引き受けするのは、認証工場・指定工場が認証・指定を維持しながら整備士を安定して雇うための労務の設計です。

  • 整備主任者・自動車検査員の勤務の継続性を支える雇用契約・勤務表・労働時間管理の整備
  • 36協定の作成・届出と、時間外・休日・深夜・月60時間超の割増賃金の設計
  • 車検集中・年度末の繁閑に合わせた1か月単位・1年単位の変形労働時間制の設計
  • パート・短時間の整備士の社会保険の資格得喪と、適用拡大の要件確認
  • 就業規則・賃金規程・労働条件明示の整備

認証・指定の申請は行政書士、工場の物件は宅地建物取引業者、税務は税理士の領域です。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として業務を受任し、別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。紹介料はありません。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 整備主任者はどんな資格が要りますか?
A. 事業場ごとに、1級又は2級の自動車整備士技能検定に合格し、特定整備に従事する者から選任します(道路運送車両法施行規則第62条の2の2)。選任にあたっては、合格を証する書面を添えて届け出ます。選任後も法令研修・技術研修の受講が求められます。整備主任者が1人しかいない体制は、その人の離脱で認証の前提が崩れるため、代替できる有資格者の育成と勤務表の設計が労務の課題になります。

Q. 整備士の残業の割増賃金はどのくらいですか?
A. 時間外労働は2割5分以上、1か月60時間を超える時間外労働は5割以上(中小企業も2023年4月1日から)、深夜労働は2割5分以上、法定休日の労働は3割5分以上です(労働基準法第37条)。法定労働時間を超える残業や休日労働には、36協定の締結と労働基準監督署長への届出が必要です(同第36条)。整備業は自動車運転者のような上限規制の特例の対象業種ではなく、原則の上限規制が適用されます。

Q. 車検が集中する時期の長時間勤務は、どう合法に組めますか?
A. 繁忙期に所定労働時間を長く、閑散期に短く配分して平均を週40時間以内に収める変形労働時間制を使います。月末の車検集中には1か月単位(労働基準法第32条の2)、3月の年度末が突出するなら1年単位(同第32条の4)が向きます。1年単位は週44時間の特例が使えず週40時間で計算し、労働日数や連続労働日数の上限がかかります。どの制度が合うかは受注の波と勤務表の作り方で変わります。

Q. ピット要員のパートに社会保険はいつから必要ですか?
A. 週の所定労働時間と月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上なら、健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。4分の3に満たなくても、被保険者総数が常時51人を超える特定適用事業所で、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超える雇用見込み・学生でない、を満たせば加入します(2024年10月から従業員51人以上に拡大)。繁忙期だけ時間が増える場合の判定は個別事情で分かれます。

この記事の根拠

  • 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条 ── 自動車特定整備事業の認証(認証工場)。2020年(令和2年)4月1日施行の改正で、従来の「分解整備」が電子制御装置整備を含む「特定整備」に拡大された
  • 道路運送車両法第94条の2 ── 指定自動車整備事業の指定(指定工場・民間車検場)。指定工場は工場内の検査に基づき自動車検査員が保安基準適合証を交付できる(同法第94条の4ほか)
  • 道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)第62条の2の2 ── 自動車特定整備事業者の遵守事項。事業場ごとに1級又は2級の自動車整備士技能検定の合格者で特定整備に従事する者から整備主任者を選任し、特定整備・記録簿を統括管理させる。整備主任者には法令研修・技術研修がある(国土交通省・地方運輸局の整備主任者研修資料/2026年10月1日参照)
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)・第32条の4(1年単位の変形労働時間制)・第36条(時間外及び休日の労働)・第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)・第41条第2号(管理監督者)・第89条(就業規則の作成及び届出の義務)
  • 時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内・複数月平均80時間以内・単月100時間未満・月45時間超は年6回まで)は大企業2019年4月・中小企業2020年4月から適用。月60時間超の時間外の5割以上の割増は中小企業も2023年4月1日から適用(厚生労働省「時間外労働の上限規制」「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ」/2026年10月1日参照)
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)・厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)── 4分の3基準と短時間労働者の適用拡大(被保険者総数が常時51人を超える特定適用事業所で、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月超の雇用見込み・学生でない。2024年〈令和6年〉10月から従業員51人以上に拡大。日本年金機構「社会保険の適用拡大」/2026年10月1日参照)
  • 実際の労働時間への当てはめ(手待ち時間・移動時間・研修時間の扱い)、変形労働時間制の採否、短時間労働者の被保険者資格の判定は、個別の勤務実態によって結論が分かれます。本記事では個別の結論を出していません(未検証)

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、整備主任者・自動車検査員の勤務の継続性を支える雇用契約・勤務表・労働時間管理、36協定と割増賃金の設計、車検集中・年度末に合わせた変形労働時間制、パート・短時間の整備士の社会保険と適用拡大の要件確認、就業規則・賃金規程の整備についてご相談いただけます。認証・指定の申請は行政書士(四葉行政書士事務所)、工場の物件は宅地建物取引業者、税務は税理士が行います。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として業務を受任し、別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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