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2026.09.02採用と雇用

特定技能2号の分野拡大で、家族帯同と社会保険の労務はどう変わるのか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

特定技能2号は、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族を呼べる点で1号と大きく違います。2023年6月9日の閣議決定で、対象は介護を除く特定産業分野に広がりました。家族が日本で暮らせば健康保険の被扶養者になり得て(健康保険法第3条第7項の国内居住要件を含む)、長く働くほど厚生年金は積み上がります。労務の設計を、5年で帰る前提から長期定着の前提へ組み替える必要があります。在留資格の変更申請そのものは行政書士の領域で、労務・社会保険の側から整理します。

結論(先に要点):特定技能2号は、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族を呼べる点で1号と大きく違います。家族が日本で暮らせば社会保険の被扶養者になり得て、長く働くほど厚生年金は積み上がります。労務の設計を、5年で帰る前提から長期定着の前提へ組み替える必要があります。

特定技能は、深刻な人手不足の分野で外国人を受け入れる在留資格です(出入国管理及び難民認定法別表第一の二)。1号と2号があり、2号は熟練した技能を持つ人向けで、1号とは在留の扱いがはっきり違います。

2023年(令和5年)6月9日の閣議決定で、それまで建設・造船・舶用工業の2分野に限られていた特定技能2号が、介護を除く特定産業分野に広がりました。これにより、1号で受け入れた人が2号へ移行し、家族を帯同して長く働く道が、多くの業種で現実的になっています。

自社の分野が2号の対象か、対象者が要件を満たすかは、記事だけでは決まりません。この記事では、2号への移行が労務と社会保険にどう効くのかを整理します。在留資格の変更申請そのものは行政書士(申請取次)の領域で、当事務所では扱いません。

特定技能2号は、1号と何が違うのか?

在留の更新に上限があるかどうかと、家族を呼べるかどうかが、決定的に違います。

項目特定技能1号特定技能2号
在留期間の更新通算で上限5年上限なし(更新を続けられる)
家族の帯同原則として認められない要件を満たせば配偶者・子の帯同が可能
求められる技能水準相当程度の知識・経験熟練した技能
支援計画・支援機関受入れ機関の支援義務あり支援計画の対象外

在留の上限がなくなることで、対象者は日本で腰を据えて働き続けられます。家族を呼べることは、生活の基盤が日本に移ることを意味します。どちらも「5年で帰国する」前提を崩すため、雇用管理・社会保険の実務がそこから変わっていきます。技能試験や実務経験など、2号に上がるための要件は分野ごとに定められていますが、その該当性や在留資格変更の可否は出入国在留管理庁が判断する領域です。

2023年の分野拡大で、どの業種が2号を使えるようになったのか?

介護を除く特定産業分野です。2023年6月9日の閣議決定で、対象が一気に広がりました。

このとき追加されたのは、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の9分野と、造船・舶用工業の溶接以外の区分です。従来の建設・造船・舶用工業とあわせ、介護以外の特定産業分野で2号の受入れが可能になりました(この運用の開始は令和5年8月31日)。

介護分野に2号がないのは、専門的・技術的分野の在留資格「介護」が別にあるためです。介護の外国人労働者の労務は、2号がなく1号のみという前提で設計が分かれます。詳しくは介護分野の特定技能外国人の労務と社会保険に整理しています。なお、特定産業分野はその後も追加されているため、現在の対象分野の全体像は出入国在留管理庁の公式ページでご確認ください(本記事は2026年9月2日参照)。

家族を帯同すると、社会保険の扶養や手続きはどう変わるのか?

日本で暮らす家族は、要件を満たせば健康保険の被扶養者になり得ます。ここが1号との実務上の大きな違いです。

1号のときは家族を帯同できないため、被扶養者はふつう生じません。2号で配偶者や子が来日し、日本国内に住所を持つと、被扶養者の認定が問題になります。健康保険の被扶養者は、主として被保険者に生計を維持されていること(年間収入がおおむね130万円未満で被保険者の収入の2分の1未満、などの目安)に加え、2020年4月から原則として日本国内に住所を有することが要件になっています(健康保険法第3条第7項)。国内に住む帯同家族は、この国内居住要件を満たします。

被扶養者に該当する家族が生じたら、事業主は被扶養者(異動)届を提出します。届出には家族の身分関係・生計維持を確認できる書類が要り、外国籍の家族については続柄や収入の確認方法が国内のケースと異なることがあります。国内居住要件と例外の考え方は被扶養者の国内居住要件と外国人従業員に整理しています。なお、帯同する家族の在留手続そのものは行政書士の領域です。

2号へ移行した外国人の労働条件明示・就業規則で気をつける点は?

在留資格が変わっても、労働契約と労働条件明示のルールは日本人と同じです。加えて2024年4月からの追加事項が効いてきます。

労働基準法第15条第1項と労働基準法施行規則第5条により、労働契約の締結時には賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。2024年4月からは、すべての労働者に「就業場所・業務の変更の範囲」を、有期契約の労働者には「更新上限」「無期転換の申込機会」「無期転換後の労働条件」を明示することが加わりました。2号への移行に合わせて有期から無期へ切り替える、あるいは契約期間を見直すなら、明示する事項もそこで変わります。

条文は言語を指定していないため、日本語の通知書でも法律上の明示は成り立ち得ますが、外国人労働者の雇用管理指針は、母国語又は平易な日本語で理解できるよう明示するよう努めることを求めています。2024年4月改正の全体像は労働条件の明示ルールはどう変わったかに整理しています。就業規則そのものの作成義務は就業規則は何人から義務かをご覧ください。

帰国せず長く働く前提で、年金・社会保険はどう積み上がるのか?

厚生年金保険の被保険者期間が延びるぶん、将来の老齢厚生年金が積み上がります。長期就労を前提とする2号では、ここの見え方が1号と変わります。

1号で数年働いて帰国する人については、帰国する社員の脱退一時金と年金に書いたとおり、要件を満たせば脱退一時金を請求する道があります。これに対して2号で日本に定着し、保険料を払い続ける人は、受給資格期間(原則10年=120月)を満たせば、老齢年金を受け取る側に立ち得ます。脱退一時金を受け取るとその期間は年金の計算から外れるため、長く働く前提なら、目先の一時金より年金の積み上げを見たほうがよい場合があります。どちらが有利かは本人の在留の見通しや母国の制度によって分かれ、当事務所が一律に結論づけることはしません。

社会保障協定を結んでいる国の出身者は、日本と母国の加入期間の扱いにも影響が及びます。健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の適用は、在留資格ではなく働き方(労働時間・雇用形態)で決まる点は、1号でも2号でも変わりません。

在留手続と労務・社会保険は、それぞれ誰に頼むのか?

入口の在留資格は行政書士、雇ったあとの労務と社会保険は社労士、と担い手が分かれます。

  • 特定技能2号への在留資格変更許可申請、帯同家族の在留手続、登録支援機関としての各種届出、入管対応 → 行政書士(申請取次)の領域です。四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります
  • 労働条件明示・雇用契約・就業規則の整備、社会保険・労働保険の適用と被扶養者の届出、給与計算 → 社会保険労務士の領域です
  • 個別の労使紛争・団体交渉に発展した場合 → 弁護士へご相談ください

外国人を1人雇うと、在留・労務・住まいで窓口がいくつも動きます。時系列での整理は外国人を1人雇うと、窓口はいくつ必要かに、雇い入れ・離職のハローワーク届出は外国人を雇ったら、ハローワークに届け出るに分けて書いています。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

当事務所がお引き受けするのは、2号への移行に合わせた労務と社会保険の作り替えです。

  • 2号移行にあわせた労働条件通知書・雇用契約書の改訂(2024年4月の追加事項、母国語対応)
  • 就業規則・賃金規程の整備と、無期転換を見据えた契約設計
  • 帯同家族の被扶養者(異動)届など、社会保険・労働保険の届出
  • 長期就労を前提とした厚生年金・健康保険の見通しの整理
  • 外国人雇用状況の届出(雇入れ・離職)の代行

次のものは、当事務所では扱いません。

  • 特定技能2号への在留資格変更許可申請・帯同家族の在留手続・登録支援機関の届出 → 四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります
  • 個別の労使紛争・団体交渉・訴訟 → 弁護士への相談をご案内します
  • 賃金の税務上の処理、年末調整 → 税理士へおつなぎします
  • 会社の登記に関する手続 → 司法書士へおつなぎします
  • 社宅・寮の賃貸借 → 四葉不動産株式会社が別の事業体として承ります

四葉不動産株式会社、四葉行政書士事務所、四葉社会保険労務士事務所は、それぞれ独立した事業体として業務を受任します。他の専門家をご紹介する場合も、お客様に直接ご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容ご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 1号で雇っている外国人を2号にすると、社会保険の手続きは増えますか?
A. 本人の被保険者資格そのものは、労働時間・雇用形態が変わらなければ在留資格の変更で自動的に変わるわけではありません。増えるのは家族に関する手続です。2号は家族の帯同ができるため、配偶者や子が来日して日本国内に住み、生計維持と収入の要件を満たすと、健康保険の被扶養者になり得ます(健康保険法第3条第7項の国内居住要件を含む)。その場合は被扶養者(異動)届を提出します。在留資格変更の申請自体は行政書士の領域で、当事務所では扱いません。

Q. 帯同した家族は、必ず被扶養者になりますか?
A. いいえ。被扶養者になるかどうかは、主として被保険者に生計を維持されているか、年間収入が基準(おおむね130万円未満で被保険者の収入の2分の1未満など)の範囲か、日本国内に住所を有するか、といった要件で決まります。家族自身が働いて基準を超える収入を得れば、その家族は被扶養者ではなく自ら被保険者になることもあります。個別の認定は、収入や生計維持の状況を確認したうえで判断されます。

Q. 介護分野でも特定技能2号は使えますか?
A. 使えません。2023年6月9日の閣議決定で2号の対象は介護を除く特定産業分野に広がりましたが、介護分野には2号が設けられていません。専門的・技術的分野の在留資格「介護」が別にあるためです。介護の外国人労働者は1号のみという前提になるため、家族帯同や長期定着を前提とした労務設計は本記事とは分かれます。

Q. 2号で長く働く人は、脱退一時金を請求しないほうがよいのですか?
A. 一律には決まりません。脱退一時金は帰国する人が短期間の加入期間を清算する制度で、受け取るとその期間は年金の計算から外れます。日本に定着して保険料を払い続け、受給資格期間(原則10年)を満たす見込みなら、老齢年金を受け取る側に立ち得るため、目先の一時金より年金の積み上げを見たほうがよい場合があります。どちらが有利かは本人の在留の見通しや母国の制度によって分かれ、当事務所が一律に結論づけることはしません。

この記事の根拠

  • 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の二 ── 在留資格「特定技能」(1号・2号)
  • 特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)── 建設・造船・舶用工業に加え、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の9分野と造船・舶用工業の溶接以外の区分を追加し、介護以外の特定産業分野で2号の受入れを可能とする(運用開始は令和5年8月31日)。介護分野は在留資格「介護」があるため対象外
  • 出入国在留管理庁「特定技能制度」および同「特定技能2号の対象分野の追加について」(2026年9月2日参照)── 1号は在留期間の通算上限5年・原則家族帯同不可、2号は在留期間の更新に上限なし・要件を満たせば配偶者と子の帯同が可能・支援計画の対象外
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第7項 ── 被扶養者は、原則として日本国内に住所を有する者(一定の例外を除く。2020年4月1日施行)
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第5条 ── 労働契約締結時の労働条件明示、2024年4月1日施行の追加事項(就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限・無期転換の申込機会・無期転換後の労働条件)
  • 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成19年厚生労働省告示第276号)── 母国語その他労働者が理解できる方法による労働条件の明示等の努力義務
  • 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)附則第29条(脱退一時金)、老齢年金の受給資格期間(原則10年)に関する規定
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項 ── 外国人雇用状況の届出
  • 法令の条文は2026年9月2日に e-Gov 法令検索の法令データ提供API(法令ID 326CO0000000319・大正11年法律第70号・322AC0000000049・322M40000100023・昭和29年法律第115号)を取得して確認。閣議決定・出入国在留管理庁の公式資料は同日に確認

この記事は、個別の該当性を判断するものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、特定技能2号への移行にあわせた労働条件通知書・雇用契約書の改訂、就業規則・賃金規程の整備、帯同家族の被扶養者届など社会保険・労働保険の手続、外国人雇用状況の届出についてご相談いただけます。特定技能2号への在留資格変更許可申請・帯同家族の在留手続・登録支援機関の届出は当事務所では扱わず、四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります。個別の労使紛争・団体交渉・訴訟は弁護士への相談をご案内し、賃金の税務上の処理と年末調整は税理士へ、会社の登記は司法書士へおつなぎします。社宅・寮の賃貸借は四葉不動産株式会社が別の事業体として承ります。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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