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2026.09.11相続の手続き(行政書士の実務から)

デジタル遺産の相続手続き|ネット銀行・証券・暗号資産・サブスク

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

ネット銀行・ネット証券・暗号資産・有料サブスクなどのデジタル遺産も、原則として相続の対象です。通帳や書面が残らず発見しにくいこれらの資産の把握のしかた、各事業者への相続手続き、暗号資産の相続税評価と準確定申告、サブスクの解約と相続手続きの違いを、民法第896条・第898条・第899条と資金決済法第2条第14項を軸に整理し、税務は税理士、登記は司法書士、紛争は弁護士へ分離受任で振る分担をまとめました。

結論(先に要点):ネット銀行・ネット証券・暗号資産・有料サブスクなどの「デジタル遺産」も、原則として相続の対象になります。相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し(民法第896条)、相続財産は相続人が数人あるときは共有となり(民法第898条)、各相続人は相続分に応じて権利義務を承継します(民法第899条)。ただし通帳や書面が残らないため発見が難しく、パスワードで残高を引き出せても、それだけで遺産分割や相続税の手続きが済んだことにはなりません。本記事は、デジタル遺産の把握・各事業者への相続手続き・暗号資産の評価と税務・サブスクの解約・役割分担を整理する一般的な情報提供であり、個別の法的判断や可否は判断しません。

デジタル遺産は、なぜ相続人が存在に気づきにくいのか?

在来の資産は、通帳・証書・郵便物という「紙の痕跡」で存在に気づけます。デジタル遺産は口座開設も取引も電子交付で完結することが多く、紙が届かないため、相続人が存在自体を知らないまま放置されがちです。手がかりになるのは次のようなものです。

手がかり具体例
端末・アプリスマートフォンやPCに入った銀行・証券・暗号資産のアプリ
メール取引残高報告書・約定通知・請求のメール
カード類提携ATMカード、デビットカード
引落し既存口座からのサブスク・カードの定期引落し

被相続人が生前に資産の一覧(サービス名・連絡先)を残しておくと、相続人の負担は大きく下がります。ただしパスワードそのものを書き残す方法は情報漏えいの危険があるため、保管方法は慎重に検討してください。四葉行政書士事務所は、判明した資産をもとに、財産目録や遺産分割協議書の作成を行政書士業務の範囲で支援します。財産目録の作り方は相続財産の調べ方・財産目録もご覧ください。

ネット銀行・ネット証券の残高は、どう調べて名義変更するのか?

ネット銀行・ネット証券にも、店舗型の金融機関と同様に相続手続きがあります。相続人(またはその代理人)が各社に死亡の事実を連絡すると、口座は凍結され、所定の相続手続きの案内が届きます。

手続内容
残高の確認相続開始日時点の残高証明書を各社に請求する
必要書類被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書または法定相続情報一覧図など(各社で異なる)
名義変更・解約相続人名義の口座への移管、または解約して払戻し

証券口座は、株式・投資信託を相続人名義の口座へ移す「移管」が原則で、被相続人名義のまま売却はできないのが通常です。金融機関ごとに必要書類が異なります。当事務所は、預貯金の払戻しや証券の移管の可否を保証しません。相続人間で分け方が決まっていない場合は、まず遺産分割協議書は自分で作れる?の考え方で合意を文書化します。

暗号資産は、相続財産としてどう把握し評価するのか(税務は誰か)?

暗号資産は、資金決済に関する法律第2条第14項に定義される財産的価値で、相続財産に含まれます。相続人は暗号資産交換業者に死亡を届け出て、相続開始時の残高(数量)を把握します。

  • 把握:交換業者の相続手続きにより残高・取引履歴を取得する。自己管理ウォレット(取引所を介さないもの)は、秘密鍵やリカバリーフレーズが分からないと事実上引き継げないことがあります
  • 評価:活発な市場が存在する暗号資産は、相続税の課税時期における取引価格をもとに評価するのが国税庁の取扱いです
  • 税務:暗号資産の相続税評価、被相続人の準確定申告(相続開始年の売却益等)、相続人が売却したときの所得税は、税理士の領域です

相続は譲渡ではないため、相続で取得しただけでは所得税の課税対象になりませんが、被相続人の取得価額を引き継ぐため、相続人が後日売却したときに課税されます。評価額や申告の要否の判断は税理士が行います。当事務所は税務相談を行いません。相続税の全体像は相続税の申告が必要なケースもご覧ください。

サブスクや有料アカウントの解約は、相続手続きとどう違うのか?

動画・音楽・クラウド・アプリなどの有料サブスクは、契約者の死亡後も自動更新で課金が続くことがあります。まず引落し口座やカードの明細から契約を洗い出し、各サービスの規約に沿って解約します。

解約は「もう使わない契約を止める」手続きで、預貯金の名義変更のような「財産を承継する」相続手続きとは性質が異なります。アカウント自体は被相続人の一身に専属した契約に近く、解約・退会で終わるのが通常です。ただし、電子マネー残高やポイント、クラウド上の写真などのデータの扱いは規約により様々で、承継の可否や払戻しの可否はサービスごとに確認が必要です。故人のIDに他人がログインし続ける運用は規約違反になり得るため、正規の解約手続きをとることが大切です。

資産の把握・協議書・税務・紛争は、それぞれ誰が担うのか?

デジタル遺産の相続は、把握から分割・税務・解約まで、関わる専門分野が分かれます。担当は次のとおりです。

  • 判明した資産の財産目録・遺産分割協議書の作成 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 各金融機関・交換業者への残高確認・名義変更・解約の手続き → 各事業者の相続手続きに沿って相続人が実施
  • 暗号資産の相続税評価・準確定申告・売却時の所得税 → 税理士
  • 遺産に不動産が含まれる場合の相続登記 → 司法書士(本記事の対象外)
  • 相続人間で争いがある場合の交渉・調停・審判 → 弁護士

四葉行政書士事務所は、四葉不動産株式会社とは別事業体です。各分野は、それぞれの資格者と独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、当事務所は紹介料を受け取りません。不動産の売却・活用の相談は不動産の相続・売却の窓口へ。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続の取扱業務は相続手続きサポートをご覧ください。

よくある質問

Q. 故人のパスワードを知っていれば、ネット銀行からお金を引き出してよいですか?
A. パスワードで残高を引き出せても、それだけで相続手続きが済むわけではありません。預貯金は相続財産で、遺産分割の対象です。相続人が単独で引き出して費消すると、他の相続人との関係で問題になり、法定単純承認とみなされる場面もあり得ます。まずは金融機関に死亡を届け出て、正規の相続手続きをとることをおすすめします。

Q. 暗号資産があるかどうか分からないときは、どう探せばよいですか?
A. スマートフォンやPCの取引アプリ、メールの取引通知、既存口座から暗号資産交換業者への入出金の記録が手がかりになります。交換業者が判明したら、相続人から死亡を届け出て残高照会を行います。自己管理ウォレットは、秘密鍵やリカバリーフレーズが分からないと引き継げないことがあります。

Q. 相続税の申告で、暗号資産はどう評価しますか?
A. 活発な市場が存在する暗号資産は、相続税の課税時期における取引価格をもとに評価するのが国税庁の取扱いです。評価額や申告の要否、被相続人の準確定申告の要否は、税理士が判断します。当事務所は税務相談を行いません。

Q. 有料サブスクの解約は行政書士に頼めますか?
A. 解約は、各サービスの規約に沿って相続人が行う手続きで、財産を承継する相続手続きとは性質が異なります。当事務所は、判明した契約の一覧化や、解約に必要な相続関係を示す書類(遺産分割協議書・法定相続情報一覧図など)の作成を、行政書士業務の範囲で支援します。個別の可否は各サービスの規約によります。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第896条・第898条・第899条(参照日 2026-09-11)
  • e-Gov法令検索「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)第2条第14項(暗号資産の定義)(参照日 2026-09-11)
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」および財産評価に関する取扱い(活発な市場が存在する暗号資産の評価)(参照日 2026-09-11)
  • 一般社団法人全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」ほか相続手続きの案内(参照日 2026-09-11)
  • 各暗号資産交換業者・ネット銀行・ネット証券の相続手続きに関する案内(参照日 2026-09-11)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続手続きの可否、必要書類、暗号資産の評価額、税額、サービスごとの解約や承継の可否を保証するものではありません。各金融機関・交換業者・サービスの手続きは、それぞれの案内に従って相続人が行います。暗号資産の相続税評価・準確定申告・所得税は税理士、遺産に不動産が含まれる場合の相続登記は司法書士、相続人間で争いがある場合は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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