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相続の手続き(行政書士の実務から)

配偶者短期居住権とは?遺産分割が終わるまで家に住み続けられるかを行政書士が整理

座卓を囲んで一枚の書面に向かう三人の後ろ姿を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

配偶者が亡くなり、相続開始時にその建物へ無償で住んでいた配偶者は、遺産分割が終わるまでの一定期間、無償で住み続けられます(配偶者短期居住権・民法第1037条)。その建物を遺産分割する場合は、帰属が確定した日か相続開始から6か月を経過する日の遅い方まで(同条第1項第1号)、それ以外は取得者の消滅申入れから6か月まで(同項第2号・第3項)です。登記できる配偶者居住権(長期・民法第1028条)との違い、善管注意義務(第1038条)、長期居住権取得時の消滅(第1039条)、返還(第1040条)を整理し、設定登記は司法書士・争訟は弁護士・評価は税理士・不動産の売却は別事業体という分離受任を行政書士の実務から示しました(令和2年4月1日施行)。

結論(先に要点):配偶者が亡くなったとき、その建物に相続開始の時点で無償で住んでいた配偶者は、遺産分割が終わるまでの一定期間、そのまま無償で住み続けられます。これが配偶者短期居住権です(民法第1037条)。住める期間は、その建物を含めて遺産分割をする場合は、遺産分割により建物の帰属が確定した日か、相続開始の時から6箇月を経過する日の、いずれか遅い日までです(同条第1項第1号)。遺産分割の対象にならない場合は、建物を取得した人からの消滅の申入れの日から6箇月を経過する日までです(同項第2号・第3項)。この権利は、登記できる配偶者居住権(長期・民法第1028条)とは別で、要件を満たせば当然に発生し、登記はできません。制度は令和2年(2020年)4月1日に施行され、同日以降に開始した相続に適用されます。本記事は一般的な情報提供で、個別の居住が続けられるかの最終判断をするものではありません。四葉グループの行政書士は、権利関係の整理と遺産分割協議書の作成を、独立した事業体として支援します。配偶者居住権(長期)の設定登記は司法書士、居住の継続や明渡しをめぐる争訟は弁護士、相続税の評価は税理士、相続した不動産の売却・活用は別事業体である当社(不動産業者)の領域で、それぞれ別々にご契約いただきます。当事務所は各専門家から紹介料を受け取りません。

配偶者短期居住権は、いつ・どんな場合に発生する?

配偶者短期居住権は、被相続人の財産に属した建物に、配偶者が相続開始の時に無償で居住していた場合に、その建物を取得した人(居住建物取得者)に対して、無償で使用する権利として認められます(民法第1037条第1項)。遺言や遺産分割協議で特別に定めなくても、要件を満たせば当然に発生する法律上の権利で、性質としては使用貸借に類する法定の債権と説明されます。残された配偶者が、相続開始の直後に住まいを失うことを防ぐための制度です。

要件内容
対象の建物被相続人の財産に属した建物
居住の状態相続開始の時に、配偶者が無償で居住していたこと
権利の内容居住建物取得者に対し、無償で使用する権利(配偶者短期居住権)
発生のしかた要件を満たせば当然に発生(遺言・協議での設定は不要)

ここでの「配偶者」は法律上の配偶者を指し、内縁関係は含まれません。また、無償で「使用」する権利であって、賃料収入を得るなどの「収益」まで含むものではない点が、長期の配偶者居住権と異なります。相続の進め方の全体像は相続は何から始める?戸籍収集・相続人調査もあわせてご覧ください。受任の進め方は受任の流れに沿ってご案内します。

いつまで住める?(遺産分割確定日と相続開始から6か月の遅い方)

住める期間は、その建物が遺産分割の対象になるかどうかで決まります。配偶者を含む共同相続人の間でその建物について遺産分割をすべき場合は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日か、相続開始の時から6箇月を経過する日の、いずれか遅い日までです(民法第1037条第1項第1号)。遺言で建物の取得者が決まっているなどで遺産分割の対象にならない場合は、居住建物取得者が消滅の申入れをすることができ(同条第3項)、その申入れの日から6箇月を経過する日までとなります(同項第2号)。

場面住み続けられる終わりの時点根拠
その建物を遺産分割する場合分割で帰属が確定した日、又は相続開始から6箇月を経過する日の、遅い方民法第1037条第1項第1号
上記以外(遺贈等で取得者が定まっている場合)居住建物取得者の消滅の申入れの日から6箇月を経過する日民法第1037条第1項第2号・第3項

つまり、どのように分割が進んでも、最低でも相続開始から6か月は住まいが確保される設計です。配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって建物を使用しなければならず、居住建物取得者の承諾を得なければ第三者に使用させることはできません(民法第1038条第1項・第2項)。これらに違反すると、居住建物取得者は意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができます(同条第3項)。遺産分割協議書の作成支援は遺産分割協議書の作り方でも扱っています。

配偶者居住権(長期)とどう違う?登記は必要?

名前が似ている「配偶者居住権」(長期)は、別の権利です。配偶者居住権は、配偶者が相続開始の時に居住していた建物について、遺産の分割によって取得するものとされたとき、又は遺贈の目的とされたときに取得する権利で、建物の全部を無償で使用及び収益できます(民法第1028条第1項)。これは登記できる権利で、配偶者には登記請求権が認められています(民法第1031条第1項)。一方、配偶者短期居住権は要件を満たせば当然に発生する短期の権利で、登記はできません。配偶者が同じ建物について配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は消滅します(民法第1039条)。

観点配偶者短期居住権配偶者居住権(長期)
根拠民法第1037条〜第1041条民法第1028条〜第1036条
発生のしかた要件を満たせば当然に発生遺産分割・遺贈・死因贈与で取得
権利の内容無償で使用無償で使用及び収益
存続期間原則、相続開始から6か月以上の短期原則、終身(別段の定めも可)
登記できないできる(登記請求権あり・第1031条)

長期の配偶者居住権をどう設定し、遺産分割や登記につなげるかは、配偶者居住権の設定・遺産分割・登記で別に整理しています。配偶者居住権(長期)の設定登記は司法書士の領域で、行政書士は遺産分割協議書など権利関係を整える書類の作成を独立した事業体として支援します。費用の目安は報酬額表で別に定めています。

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短期居住権が認められないのは、どんなとき?

配偶者短期居住権は、次の場合には認められません。配偶者が相続開始の時に居住建物について配偶者居住権(長期)を取得したとき、又は配偶者が相続欠格(民法第891条)に該当し、若しくは廃除によって相続権を失ったときは、短期居住権は発生しません(民法第1037条第1項ただし書)。また、建物が被相続人以外との共有でなく被相続人の「財産に属した建物」であること、相続開始の時に「無償で」居住していたことが前提なので、生前から賃料を払って借りていた場合などは、この制度ではなく従来の賃貸借の規律で住み続けられるかを考えます。

認められない・前提を欠く場合理由
相続開始時に配偶者居住権(長期)を取得していた長期の権利があるため短期は不要(第1037条第1項ただし書)
相続欠格・廃除で相続権を失ったただし書により除外(第891条等)
相続開始時に無償で居住していなかった「無償で居住」の前提を欠く

配偶者短期居住権が消滅したときは、配偶者は原則として居住建物を返還しなければなりません(民法第1040条)。使用貸借等に関する一定の規定が準用されます(民法第1041条)。住み続けられるか、いつ明け渡すかをめぐって相続人間で争いになる場合は、法的な主張・交渉や訴訟は弁護士の領域です。相続した建物を最終的に売却・活用する場合は、別事業体の不動産業者による相続不動産の相談窓口もご利用いただけます。権利関係の整理や遺産分割協議書の作成は、行政書士が独立した事業体として支援し、各専門家とは別々にご契約いただき、相互に紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。当事務所の相続のご案内もご覧ください。

よくある質問

Q. 遺言で家を別の人に渡すと書かれていても、配偶者は住み続けられますか?
A. 一定期間は住み続けられます。遺言で建物の取得者が定まっている場合でも、相続開始の時に無償で居住していた配偶者には配偶者短期居住権が認められ、居住建物取得者からの消滅の申入れの日から6箇月を経過する日までは無償で使用できます(民法第1037条第1項第2号・第3項)。その後の居住をめぐる争いは弁護士の領域です。

Q. 配偶者短期居住権は登記できますか?
A. できません。登記できるのは長期の配偶者居住権(民法第1028条、登記請求権は第1031条第1項)で、配偶者短期居住権は要件を満たせば当然に発生する短期の権利であり、登記の対象ではありません。配偶者が同じ建物について長期の配偶者居住権を取得したときは、短期居住権は消滅します(民法第1039条)。

Q. 住んでいる間、家の維持費や固定資産税は誰が負担しますか?
A. 配偶者は従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって建物を使用する義務を負い(民法第1038条第1項)、通常の必要費は配偶者が負担するのが原則です(準用される民法第1034条等)。固定資産税など費用の具体的な負担や清算は個別の事情で異なるため、本記事では一律の結論は示しません。判断は資格者にご確認ください。

Q. 内縁の妻(夫)でも配偶者短期居住権は認められますか?
A. 配偶者短期居住権の「配偶者」は法律上の配偶者を指し、内縁(事実婚)の方は含まれません。内縁の場合に住み続けられるかは、使用貸借や賃貸借など別の法律構成で個別に検討することになり、争いになれば弁護士の領域です。行政書士は権利関係の整理や関係書類の作成を独立した事業体として支援します。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索・法務省「民法」第1037条(配偶者短期居住権。被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた配偶者が、居住建物取得者に対し無償で使用する権利を有する。第1項第1号=遺産分割をすべき場合は分割で帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日、第2号=それ以外は第3項の申入れの日から6箇月を経過する日、ただし書=配偶者居住権取得時・相続欠格第891条・廃除の場合は除く、第2項=取得者は第三者への譲渡等で配偶者の使用を妨げてはならない、第3項=第1号の場合を除きいつでも消滅の申入れができる)・第1038条(従前の用法・善管注意義務、第三者使用は取得者の承諾、違反時は意思表示で消滅)・第1039条(配偶者居住権を取得したときは配偶者短期居住権は消滅)・第1040条(消滅時の居住建物の返還等)・第1041条(第597条第3項・第600条・第616条の2・第1032条第2項・第1033条・第1034条の準用)(参照日 2026-10-18)
  • e-Gov法令検索・法務省「民法」第1028条(配偶者居住権=長期。遺産分割又は遺贈により取得し、建物全部を無償で使用及び収益できる)・第1031条(配偶者居住権の設定の登記・登記請求権)(参照日 2026-10-18)
  • 法務省「残された配偶者の居住の権利を保護するための方策(配偶者居住権・配偶者短期居住権)」(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律=平成30年法律第72号。居住権に関する部分は令和2年〔2020年〕4月1日施行、同日以後に開始した相続から適用)(参照日 2026-10-18)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案で配偶者が住み続けられるか、いつまで住めるか、誰が費用を負担するかといった最終判断をするものではありません。配偶者短期居住権は要件を満たせば当然に発生し登記できない短期の権利で、登記できる配偶者居住権(長期)とは別の制度です。権利関係の整理と遺産分割協議書の作成支援は四葉グループの行政書士が独立した事業体として担い、配偶者居住権(長期)の設定登記は司法書士、居住の継続や明渡しをめぐる争訟は弁護士、相続税の評価は税理士、相続した不動産の売却・活用は別事業体である四葉不動産株式会社が、それぞれ別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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