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相続の手続き(行政書士の実務から)

再転相続(民法916条)の熟慮期間|相続人が承認・放棄前に亡くなったとき

家族・住まい・相続書類を整理するイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

再転相続は、相続人が承認も放棄もしないうちに亡くなり、その相続人が二つの相続を引き継ぐ場面です。一次相続の熟慮期間は、再転相続人が自分に相続人の地位が移ったことを知った時から起算します(民法第916条・最高裁令和元年8月9日判決)。二次相続を放棄すると一次相続の承認・放棄の地位も承継しないこと、一次を放棄した後に二次を放棄しても一次の放棄の効力は失われないこと(最高裁昭和63年6月21日判決)、家裁への申述書類の作成が行政書士の業務範囲外である点と分離受任を整理します。

結論(先に要点):再転相続は、相続人が承認も放棄もしないうちに亡くなり、その相続人が二つの相続を引き継ぐ場面です。一次相続の熟慮期間は、再転相続人が自分に相続人の地位が移ったことを知った時から数えます(民法第916条・最高裁令和元年8月9日判決)。家庭裁判所への申述書類の作成は行政書士の業務範囲外です。

情報確認日:2026年10月25日。本記事は、相続手続きの最中に相続人が亡くなり、承認・放棄の判断に迷う相続人に向けて、再転相続(民法第916条)の熟慮期間の起算点と、一次・二次の承認・放棄の組み合わせに絞って整理します。熟慮期間の一般的な起算点と伸長は相続放棄の熟慮期間3か月、承認後に相続が重なる数次相続は数次相続と遺産分割協議書をご覧ください。条文はe-Gov法令検索で照合しました。

再転相続とはどの場面で起きるのか?

再転相続は、相続人が相続の承認も放棄もしないまま、熟慮期間の途中で亡くなった場面で起きます。たとえば祖父(甲)が亡くなり、その子である父(乙)が承認・放棄を決める前に亡くなると、孫(丙)が父の相続(二次相続)を引き継ぐとともに、父が持っていた「祖父の相続を承認・放棄する地位」も引き継ぎます。この丙を再転相続人と呼びます。

数次相続と混同されがちですが、両者は局面が違います。数次相続は、先の相続人が相続を承認した後に次の相続が重なる場合を指すのに対し、再転相続は承認・放棄の前に相続人が亡くなった場合です。再転相続では、丙が二つの相続それぞれについて承認・放棄を選べる点が特徴です。

場面乙(中間の相続人)の状態丙の立場
再転相続甲の相続を承認も放棄もせずに死亡甲・乙の両方の承認・放棄を選べる
数次相続甲の相続を承認した後に死亡乙を通じて甲の遺産分割に加わる

熟慮期間は民法916条でいつから数えるのか?

民法第915条第1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかをしなければならないと定めます。再転相続では、このうち一次相続(甲)の熟慮期間について、民法第916条が特則を置いています。

民法第916条は、「相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する」と定めます。この「知った時」をどう読むかについて、最高裁令和元年8月9日判決は、再転相続人(丙)が、中間の相続人(乙)からの相続によって、乙が承認・放棄しなかった甲の相続についての相続人の地位を自己が承継した事実を知った時を指すと判断しました。つまり、丙が「自分に甲の相続の承認・放棄をする立場が回ってきた」と知った時が起算点です。

対象の相続熟慮期間の起算点根拠
一次相続(甲の相続)丙が、甲の相続の承認・放棄をする地位を承継したことを知った時民法第916条・最高裁令和元年8月9日判決
二次相続(乙の相続)丙が、自己のために乙の相続の開始があったことを知った時民法第915条第1項

丙が未成年者や成年被後見人であるときは、法定代理人が知った時から起算します(民法第917条)。期間内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認をしたものとみなされます(法定単純承認。民法第921条第2号)。

一次相続と二次相続で承認・放棄をどう組み合わせられるのか?

再転相続人は、二つの相続それぞれについて承認・放棄を選べますが、組み合わせには順序の制約があります。鍵になるのは、甲の相続の承認・放棄をする地位は、乙の相続を通じて丙に移っているという点です。

  • 丙が乙(二次相続)の相続を放棄すると、丙は乙の相続人でなくなるため、甲(一次相続)の承認・放棄をする地位も承継しません。この場合、甲の相続については承認も放棄もできなくなります。
  • 丙が乙の相続を承認する(または放棄しないでおく)ときは、甲の相続について承認・放棄を選べます。乙の相続は承認しつつ、甲の相続だけを放棄することもできます。
  • 丙が先に甲の相続を放棄した後に乙の相続を放棄しても、先にした甲の放棄の効力は失われないとされています(最高裁昭和63年6月21日判決)。
丙の選択甲(一次相続)についてできること
乙の相続を放棄甲の承認・放棄はできない(地位を承継しない)
乙の相続を承認甲を承認・放棄のいずれも選べる

どの順序でどう組み合わせるかによって、承継する財産・債務が大きく変わります。評価が分かれる論点もあるため、債務の有無や財産の内容を踏まえた個別の判断は、司法書士・弁護士に相談してください。なお、いったんした相続放棄は熟慮期間内でも撤回できません(民法第919条第1項)。

相続放棄の申述は誰が書類を作れるのか?

相続放棄は、家庭裁判所に申述して行います(民法第938条)。申述が受理されると、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。再転相続では、一次相続・二次相続のどちらを放棄するのか、申述の際に対象を明確にする必要があります。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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ここで担い手の違いに注意が必要です。家庭裁判所に提出する申述書・申立書といった裁判所提出書類の作成は、行政書士の業務範囲外です。これらは司法書士または弁護士が担います。行政書士は、相続財産・債務の調査や財産目録の作成支援、遺産分割協議書の作成といった範囲を担います。

書類・手続作成・代理の担い手
相続放棄の申述書司法書士・弁護士
熟慮期間の伸長の申立書司法書士・弁護士
債権者との交渉・相続をめぐる紛争弁護士
相続財産・債務の調査、財産目録・遺産分割協議書の作成支援行政書士

期限を過ぎそうなとき、まず何をすればよいのか?

再転相続では二つの熟慮期間が並行して進むため、残り時間が読みにくくなります。間に合いそうにないときは、熟慮期間内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます(民法第915条第1項ただし書)。調査と手続を同時に進めるため、役割を分けて早めに頼むのが基本です。

依頼先担当する範囲
四葉行政書士事務所相続財産・債務の調査、財産目録・遺産分割協議書の作成支援、戸籍収集
司法書士・弁護士相続放棄・熟慮期間伸長の家裁への申述・申立書類の作成
弁護士債権者との交渉、相続をめぐる紛争
司法書士相続登記
税理士相続税の試算・申告

家庭裁判所に提出する申述書・申立書の作成は、行政書士の業務範囲外です。 四葉行政書士事務所、四葉社会保険労務士事務所、四葉不動産株式会社はそれぞれ別事業体で、独立した事業体として受任します。各分野の担当者と別々にご契約いただき、各受任者が直接請求・入金を受けます。当事務所は紹介料を受け取りません。

相続手続サポート、受任の流れ、報酬額表をご確認ください。相続不動産の売却は別事業体の相続不動産相談で扱い、こちらも別々にご契約いただきます。

よくある質問

Q. 再転相続と数次相続はどう違うのですか?
A. 再転相続は、相続人が承認も放棄もしないうちに亡くなり、その相続人(再転相続人)が二つの相続を引き継ぐ場面です。承認・放棄の前であるため、再転相続人は二つの相続それぞれについて承認・放棄を選べます。承認後に相続が重なる数次相続とは局面が異なります。

Q. 一次相続の熟慮期間はいつから数えますか?
A. 再転相続人が、中間の相続人からの相続によって、一次相続の承認・放棄をする地位を自己が承継したことを知った時から数えます(民法第916条・最高裁令和元年8月9日判決)。被相続人が亡くなった日や、それを知っただけの時点とは限りません。

Q. 二次相続を放棄すれば、一次相続も自動的に放棄になりますか?
A. 自動的に放棄になるのではなく、一次相続について承認・放棄をする地位自体を承継しなくなります。そのため、二次相続を放棄すると一次相続は承認も放棄もできません。順序と組み合わせで結果が変わるので、個別の判断は司法書士・弁護士に相談してください。

Q. 相続放棄の申述書は行政書士に頼めますか?
A. 家庭裁判所に提出する申述書・申立書の作成は行政書士の業務範囲外で、司法書士・弁護士が担います。行政書士は相続財産・債務の調査や財産目録・遺産分割協議書の作成支援、戸籍収集を行います。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov・民法(明治29年法律第89号):第915条第1項(熟慮期間と伸長のただし書)、第916条(再転相続における熟慮期間の起算)、第917条(未成年者・成年被後見人の起算)、第919条第1項(撤回の禁止)、第921条(法定単純承認)、第938条(放棄の申述)、第939条(放棄の効力)。最終改正日は未検証。
  • 最高裁判所令和元年8月9日判決(民集73巻3号293頁、再転相続における一次相続の熟慮期間の起算点):民法第916条の「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、再転相続人が、中間の相続人からの相続により、一次相続の承認・放棄をする地位を自己が承継した事実を知った時をいう、と判断。判決全文は未取得で、事件番号と射程は未検証。
  • 最高裁判所昭和63年6月21日判決(民集42巻5号301頁、再転相続人がした一次相続の放棄の効力):先にした一次相続の放棄の効力は、その後の二次相続の放棄によって遡って失われない旨。判決全文は未取得で、射程は未検証。
  • 裁判所・相続の放棄の申述:申述人、管轄=被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、熟慮期間3か月(参照日2026-10-25)。

確認日2026-10-25。条文はe-Gov法令検索で照合しました。最高裁令和元年・昭和63年各判決の射程、事件番号、各法令の最終改正日は未検証です。承認・放棄の組み合わせの可否は評価が分かれる論点を含みます。手続前に家庭裁判所の最新案内で再確認してください。

本記事は一般的な情報提供であり、承認・放棄の選択、熟慮期間の起算、伸長や放棄が認められるかどうか、手続結果を保証しません。個別の判断は人間の資格者が資料を確認して行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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