メインコンテンツにスキップ
相続の手続き(行政書士の実務から)

死後事務委任契約とは何を頼める契約?──おひとりさまの生前の備え・遺言・任意後見との違い

文机に置かれた封をした和封筒と硯を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

死後事務委任契約は、葬儀・納骨・行政手続・契約解約など自分の死後の事務を、生前に信頼できる相手へ委任しておく契約です。委任は委任者の死亡で終了するのが原則(民法第653条第1号)ですが、この規定は任意規定で、死亡後も終了させない特約は有効とされます(最判平成4年9月22日)。頼める事務の範囲、遺言・任意後見との違い、公正証書や費用の預託、相続登記は司法書士・税務は税理士・紛争は弁護士へ振る分離受任を整理しました。

結論(先に要点):死後事務委任契約は、自分が亡くなったあとの事務(葬儀・納骨、行政手続、公共料金や各種契約の解約、遺品整理など)を、生前に、信頼できる相手へ委任しておく契約です。根拠は委任の規定(民法第643条)で、委任は委任者の死亡によって終了するのが原則ですが(民法第653条第1号)、この規定は任意規定であり、委任者の死亡後も委任を終了させない特約は有効とされています(最判平成4年9月22日)。死後事務委任契約は「死後の事務」を、任意後見契約は「判断能力が低下したあとの生前の財産管理・身上保護」を、遺言は「財産の承継」を、それぞれ扱う別の仕組みです。本記事は、死後事務委任契約で頼めることの範囲・遺言や任意後見との違い・作成と費用の預託・役割分担を整理する一般的な情報提供であり、個別の契約内容の適否は判断しません。

死後事務委任契約では、具体的に何を頼めますか?

死後事務委任契約は、委任者が亡くなったあとに必要になる事実行為・手続を、あらかじめ受任者に委ねておく契約です。身寄りが少ない方(おひとりさま)が、自分の死後に「誰が葬儀を手配するのか」「役所の手続は誰がするのか」を決めておくために使われます。

頼める事務の例は次のとおりです(契約でどこまで委任するかは個別に定めます)。

分野委任できる事務の例
葬儀・供養葬儀・火葬・納骨・埋葬の手配、菩提寺や霊園との連絡
行政手続死亡届の届出人となること、健康保険証・年金関係の返却、公的給付の手続の連絡
契約の清算電気・ガス・水道・通信・賃貸借など各種契約の解約と精算
生活の後片付け入院費・施設利用料の精算、遺品整理、デジタル情報(SNS等)の整理

一方、相続財産を誰にどう分けるか(承継)は死後事務委任契約では決められません。財産の承継は遺言の領域です。四葉行政書士事務所は、行政書士業務の範囲で、死後事務委任契約書の作成と受任、委任事務の整理を支援します。死亡届の届出については、届出をすることができる者の範囲が戸籍法で定められているため、契約前に確認します。

遺言・任意後見・死後事務委任は、それぞれ何が違いますか?

似た言葉ですが、効力が生じる時期と扱う内容が異なります。3つを組み合わせて備えるのが一般的です。

仕組みいつ効力を持つか主に扱う内容方式
任意後見契約判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されたとき(生前)生活・療養看護・財産管理の事務の代理公正証書(任意後見契約に関する法律第3条)
遺言死亡したとき財産の承継(誰に何を相続・遺贈するか)自筆証書・公正証書等(民法の方式)
死後事務委任契約死亡したあと葬儀・行政手続・契約解約など死後の事務書面(公正証書にすることが多い)

任意後見契約は、委任者が、精神上の障害により判断能力が不十分になった状況における事務を委託し代理権を付与する契約で、公正証書によってしなければなりません(任意後見契約に関する法律第2条第1号・第3条)。遺言は財産の承継を定めるもので、書き方や訂正には民法の方式があり、書き方の基礎は自筆証書遺言は自分で作れる?をご覧ください。死後事務委任契約は、これらではカバーされない「死後の事務」を担います。生前の判断能力低下には任意後見、財産の承継には遺言、死後の手続には死後事務委任、と役割が分かれます。

契約はどう作り、費用の預託はどうしておくと安全ですか?

死後事務委任契約は、民法第643条の委任契約として、当事者の合意で成立します。ただし、委任者の死亡後に受任者が事務を行う契約であるため、①委任者が亡くなっても契約を終了させない旨の特約、②委任する事務の範囲を具体的に列挙すること、③費用の負担と精算の方法、を明確にしておくことが重要です。

民法第653条第1号は委任者の死亡を委任の終了事由としていますが、この規定は任意規定であり、当事者が異なる合意をすることができるため、委任者の死亡によっても終了しない旨の特約は有効とされています(最判平成4年9月22日)。実務では、契約の存在と内容を明確にするために公正証書で作成することが多く、任意後見契約や遺言とあわせて公証役場で整えることもあります。

費用については、葬儀費用や各種精算に充てる金銭をあらかじめ預けておく「預託」の方法がとられることがあります。預託金は、受任者自身の財産と分けて管理し、使途と精算の報告方法を契約に定めておくと、後日のトラブルを避けやすくなります。金銭の管理方法・保全の仕組みは、契約で具体的に決めておくことが大切です。

相続や登記・税務は、この契約でカバーできますか?

死後事務委任契約は「死後の事務」を扱う契約で、相続そのもの・登記・税務まではカバーしません。これらは、それぞれ別の資格者の領域です。

やりたいこと担当
葬儀・行政手続・契約解約など死後の事務の委任契約の作成・受任行政書士
財産の承継を定める遺言、相続関係の書類作成行政書士(遺言関連資料の整理)/公証人(公正証書遺言)
相続登記(不動産の名義変更)の代理申請・登記申請書の作成司法書士又は弁護士
相続税の申告、亡くなった方の準確定申告税理士
相続人間の遺産分割の紛争、遺留分の主張弁護士

ご自身のケースについて相談したい方へ

在留資格・許認可など、行政手続について状況をお聞かせください。

死後事務委任契約で葬儀や解約手続を委任していても、相続財産の分け方や不動産の名義変更は別の手続です。相続登記は司法書士又は弁護士、税務は税理士の領域で、死後事務委任契約の受任者が当然に行えるものではありません。相続手続き全体の順番と期限は相続が発生したらやることチェックリスト、相続手続きの期限まとめをご覧ください。

生前の備えと死後の手続きは、誰にどこを頼めばよいですか?

生前の備えと死後の手続は、複数の資格者にまたがります。担当は次のとおりです。

  • 死後事務委任契約・任意後見契約の書類作成と受任、遺言関連資料の整理 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 任意後見契約・公正証書遺言・公正証書化 → 公証人(公証役場)
  • 相続登記の代理申請・登記申請書の作成 → 司法書士又は弁護士
  • 相続税の申告・準確定申告 → 税理士
  • 相続人間の紛争・遺留分・個別の法律相談 → 弁護士
  • 相続した不動産の査定・売却・賃貸 → 宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社)

四葉行政書士事務所とは別事業体の四葉不動産株式会社が、独立した事業体として別契約で、相続した不動産の査定・売却・賃貸を担当します。相続登記は司法書士又は弁護士、税務は税理士、紛争は弁護士の領域で、各分野は、それぞれの窓口・資格者と独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、当事務所は紹介料を受け取りません。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービス、相続した不動産の売却・管理は相続不動産の完全ガイド(四葉不動産)をご覧ください。葬儀のあとに続く手続きの相談先の切り分けは葬儀のあとの手続きは誰に相談する?も参考になります。

よくある質問

Q. 死後事務委任契約があれば、遺言はいらないのですか?
A. いいえ。死後事務委任契約は葬儀・行政手続・契約解約など「死後の事務」を扱う契約で、相続財産を誰にどう承継させるかは決められません。財産の承継を定めたい場合は、別に遺言が必要です。両者は扱う内容が違うため、目的に応じて組み合わせます。

Q. 委任者が亡くなったら、委任契約は終わってしまうのではないですか?
A. 民法第653条第1号は委任者の死亡を委任の終了事由としていますが、この規定は任意規定であり、当事者が異なる合意をすることができます。委任者の死亡によっても終了しない旨の特約は有効とされており(最判平成4年9月22日)、この特約があることで、死後の事務を受任者が行えます。

Q. 契約は公正証書にしなければいけませんか?
A. 死後事務委任契約そのものは、法律上必ず公正証書とすることを求められてはいません。ただし、契約の存在と内容を明確にし、後日の紛争を避けるために公正証書で作成することが多く、任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条により公正証書が必要)や遺言とあわせて公証役場で整えることもあります。

Q. 預けたお金(預託金)は、きちんと使われますか?
A. 預託金は、受任者自身の財産と分けて管理し、使途・精算・報告の方法を契約に定めておくことが大切です。金銭の管理・保全の仕組みを契約で具体的に決めておくと、後日のトラブルを避けやすくなります。個別の設計は、面談のうえ資格者が行います。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第643条(委任)、第653条第1号(委任の終了事由=委任者又は受任者の死亡)(参照日 2026-08-27)
  • 最高裁判所第三小法廷 平成4年9月22日判決(委任者の死亡後も委任を終了させない旨の合意を含む委任契約の効力)(参照日 2026-08-27)
  • e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(平成11年法律第150号)第2条第1号(定義)、第3条(任意後見契約は公正証書によってしなければならない)(参照日 2026-08-27)
  • 法務省「成年後見制度・任意後見制度」案内(参照日 2026-08-27)
  • 日本行政書士会連合会「行政書士の業務(遺言・相続、任意後見・死後事務等)」案内(参照日 2026-08-27)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約内容の適否、委任できる事務の範囲、預託金の管理方法、死亡届の届出人となれるかを保証するものではありません。相続登記の代理申請・登記申請書の作成は司法書士又は弁護士、相続税の申告・準確定申告は税理士、相続人間の紛争・遺留分・個別の法律相談は弁護士、相続した不動産の査定・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業者)が、それぞれ独立した事業体として別契約で対応します。公正証書の作成は公証人(公証役場)が行います。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。

LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。

東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00