死因贈与契約と遺言は何が違うのか——不動産の死因贈与と始期付所有権移転仮登記

死因贈与は贈与者の死亡で効力を生ずる「契約」で、相手方の承諾により成立します(民法第549条・第554条)。遺言は一人で行う単独行為で、法定の方式に従う必要があります(第960条)。死因贈与には遺贈の規定が準用され、撤回は第1022条が方式部分を除き準用されるため、贈与者は生前いつでも撤回できるのが原則です(最判昭和47年5月25日)。ただし負担付死因贈与で負担の全部またはこれに類する程度を履行した後は、特段の事情がない限り撤回できません(最判昭和57年4月30日)。不動産では、遺贈と違い生前に「始期付所有権移転仮登記」ができます(不動産登記法第105条第2号)。税金は相続税の対象になる一方、不動産取得税は課税され、登録免許税は原則2.0%です。契約書作成は行政書士、仮登記・本登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士に分けて整理します。
結論(先に要点):死因贈与は「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」で、贈与する人と受け取る人の合意(契約)によって成立します(民法第549条・第554条)。一方、遺言は遺言者が一人で行う単独行為で、法律の定める方式に従わなければできません(第960条)。死因贈与には、その性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用され(第554条)、撤回については、遺言の撤回を定めた第1022条が方式に関する部分を除いて準用されるため、贈与者は生前であればいつでも撤回できるのが原則です(最高裁判所第二小法廷 昭和47年5月25日判決)。もっとも、負担付死因贈与で受贈者が負担の全部またはこれに類する程度を履行したときは、特段の事情がない限り撤回できません(最高裁判所第三小法廷 昭和57年4月30日判決)。不動産の死因贈与では、遺贈と違い、贈与者の生前に受贈者のために「始期付所有権移転の仮登記」をしておくことができます(不動産登記法第105条第2号)。税金は、相続税の対象になる一方(死因贈与は相続税法上「遺贈」に含まれます)、不動産取得税は課税され、登録免許税は原則2.0%です。本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約の有効・無効や税額を判断・確定するものではありません。死因贈与契約書の作成支援は四葉グループの行政書士が独立した事業体として担い、始期付所有権移転の仮登記・死亡後の本登記は司法書士、相続税・不動産取得税・登録免許税の試算は税理士、遺留分侵害など紛争になった場合は弁護士が、それぞれ別々にご契約いただく前提で分けて進めます。相続した不動産の売却・管理は別事業体の四葉不動産株式会社が担当します。当事務所は紹介料を受け取りません。
死因贈与と遺言は、成立のしかたと撤回のしやすさがどう違うのか?
もっとも大きな違いは「一人で決めるか、相手との合意か」です。遺言は遺言者が単独で行う行為で、民法第960条により、この法律に定める方式(自筆証書・公正証書など)に従わなければすることができません。これに対して死因贈与は、贈与者が財産を無償で与える意思を示し、相手方がこれを受諾することで成立する契約です(第549条・第554条)。相手の承諾が要る点が、遺言と根本的に異なります。
| 項目 | 死因贈与 | 遺言(遺贈) |
|---|---|---|
| 性質 | 契約(相手方の承諾が必要)第549条・第554条 | 単独行為(相手の承諾は不要)第960条 |
| 方式 | 法律上は特別な方式は不要(口頭でも成立し得る。実務上は契約書を作る) | 法定の方式に従う必要がある(第960条) |
| 撤回 | 生前はいつでも撤回できるのが原則(第1022条を方式部分を除き準用/昭和47年判決) | いつでも遺言の方式に従って撤回できる(第1022条) |
| 根拠 | 民法第554条が遺贈の規定を準用 | 民法第960条以下 |
撤回について、最高裁判所第二小法廷 昭和47年5月25日判決は、死因贈与の取消し(撤回)には遺言の撤回に関する民法第1022条が、その方式に関する部分を除いて準用されると判断しました。つまり、書面で交わした死因贈与であっても、贈与者は生前であれば原則としていつでも撤回できます。「契約だから一度結んだら動かせない」という理解は、死因贈与については必ずしも当てはまりません。ただし後述のとおり、負担付きの場合は例外があります。遺言そのものの方式の違いは自筆証書遺言と公正証書遺言の違いで整理しています。
不動産を死因贈与するとき、生前に「始期付所有権移転の仮登記」はできるのか?
できます。これが遺贈と比べたときの、死因贈与の実務上の大きな特徴です。不動産登記法第105条第2号は、権利の設定・移転などに関する請求権(始期付き・停止条件付きのものを含む)を保全しようとするときに仮登記ができると定めています。死因贈与による所有権移転の請求権は「贈与者の死亡」を始期とする請求権なので、生前のうちに「始期付所有権移転仮登記」をしておくことができます。
| 比較 | 死因贈与 | 遺贈 |
|---|---|---|
| 生前の仮登記 | できる(始期付所有権移転仮登記・不動産登記法第105条第2号) | 原則できない(遺言者の生存中は受遺者に権利が生じていない) |
| 死亡後の登記 | 仮登記に基づく本登記(原則、贈与者の相続人または執行者と受贈者の共同申請) | 受遺者と遺言執行者(いなければ相続人)による移転登記 |
仮登記をしておくと、順位を保全できるため、贈与者が死亡した後に本登記を備えやすくなります。ただし、仮登記そのもので所有権が移るわけではなく、効力が生じるのは贈与者の死亡後です。また本登記の際には、原則として贈与者の相続人の協力が必要になることがあり、死因贈与の執行者を契約で定めておくと手続が進めやすくなります。仮登記・本登記の申請そのものは司法書士の業務であり、行政書士が代理するものではありません。登記手続の要否や添付書類は事案により異なるため、契約書を作る段階で司法書士にも確認しておくのが実務の要です。
死因贈与でかかる税金(相続税・不動産取得税・登録免許税)はどうなるのか?
死因贈与は「贈与」という名前ですが、税金の扱いは贈与税ではなく相続税です。死因贈与は相続税法上、遺贈に含めて扱われ、受贈者には相続税が課されます。一方で、不動産を取得したことに伴う不動産取得税や登録免許税は、相続の場合と扱いが異なる点に注意が必要です。
| 税目 | 死因贈与の扱い | 参考:相続・相続人への遺贈 |
|---|---|---|
| 相続税 | 課税対象(相続税法上「遺贈」に含む) | 課税対象 |
| 不動産取得税 | 課税される(地方税法第73条の7第1号の非課税に当たらない) | 非課税(相続・包括遺贈・相続人への遺贈) |
| 登録免許税(所有権移転) | 原則2.0%(1,000分の20) | 0.4%(1,000分の4・相続人に対する遺贈を含む) |
不動産取得税は、相続(包括遺贈および被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む)による取得が地方税法第73条の7第1号で非課税とされていますが、死因贈与はこの「相続」に含まれず、受け取る人が相続人であっても課税されます。登録免許税は、相続および相続人に対する遺贈による移転が1,000分の4(0.4%)であるのに対し、死因贈与による移転は原則1,000分の20(2.0%)です。相続人が受贈者になる死因贈与で軽減の余地があるかどうかは個別の判断になるため、税額の試算と適用の可否は税理士に、登記にかかる登録免許税の計算は司法書士に確認してください。税金の最終的な判断は、本記事のような一般的な情報提供ではなく、税理士など有資格者が行います。
受贈者が先に亡くなったら、負担付きだったらどうなるのか?
まず、受贈者が贈与者より先に亡くなった場合です。死因贈与には遺贈の規定が準用されるため(民法第554条)、受贈者が贈与者の死亡以前に死亡したときは、原則としてその死因贈与は効力を生じないと考えられています(遺贈について定めた第994条第1項の準用)。受贈者の相続人(たとえばその子)が当然に地位を引き継ぐわけではありません。確実に次の世代へ渡したいなら、予備的な定めを契約に入れるなどの工夫を検討します。
次に、負担付死因贈与の場合です。「自分の面倒を見る代わりに、死んだらこの不動産を贈与する」といったように、受贈者に一定の負担を課す死因贈与があります。最高裁判所第三小法廷 昭和57年4月30日判決は、負担の履行期が贈与者の生前とされている負担付死因贈与で、受贈者が負担の全部またはこれに類する程度の履行をした場合には、特段の事情がない限り、第1022条・第1023条の準用による撤回は認められないと判断しました。
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| 場面 | 原則的な扱い |
|---|---|
| 受贈者が贈与者より先に死亡 | 原則として死因贈与は効力を生じない(第554条→第994条第1項の準用) |
| 負担なしの死因贈与 | 贈与者は生前いつでも撤回できるのが原則(昭和47年判決) |
| 負担付きで、受贈者が負担の全部またはこれに類する程度を履行 | 特段の事情がない限り撤回できない(昭和57年判決) |
つまり、負担付死因贈与では、受贈者が約束した負担を実際に果たしたかどうかが、撤回できるかどうかの分かれ目になります。どの程度の履行で撤回が制限されるか、特段の事情があるかは、契約の経緯や負担と財産の価値の関係などから個別に判断される事柄であり、一律には決まりません。似た仕組みである負担付遺贈については負担付遺贈とペット信託、「相続させる」遺言と遺贈の違いは特定財産承継遺言と遺贈の違いもご覧ください。
契約書の作成・仮登記・税務は、それぞれ誰に頼むのか?
関係する専門家が分かれるため、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただくのが基本です。四葉グループの行政書士は、ご意向の聞き取りと死因贈与契約書の文案作成、添付資料の整理を、独立した事業体として担います。
| 工程 | 担当(独立した事業体として別々にご契約) |
|---|---|
| 死因贈与契約書の文案作成・必要書類の整理 | 行政書士(当事務所) |
| 始期付所有権移転の仮登記・死亡後の本登記 | 司法書士 |
| 相続税・不動産取得税・登録免許税の試算と申告 | 税理士 |
| 遺留分侵害額請求など紛争になった場合の交渉・調停・訴訟 | 弁護士 |
| 死因贈与を受けた不動産の売却・管理・査定 | 宅地建物取引業者(別事業体の四葉不動産株式会社) |
行政書士が担当するのは、ご意向の聞き取りと死因贈与契約書(必要に応じて執行者の定めや予備的条項を含む)の文案作成、添付資料の整理です。仮登記・本登記は司法書士、税額の試算・申告は税理士、受贈者と相続人の間で遺留分などの争いが生じた場合は弁護士が担います。当事務所の取扱業務・受任の流れ・報酬額表もご覧ください。相続した不動産の売却・管理は別事業体の四葉不動産株式会社が担当し、不動産相続の窓口は相続の総合案内もご覧ください。公正証書で作る場合の手数料や証人は公正証書遺言の手数料と証人が参考になります。各専門家とは独立した事業体として契約し、相互に紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 死因贈与の契約書を作ったら、もう撤回できないのですか?
A. 原則として、贈与者は生前であればいつでも撤回できます。最高裁判所第二小法廷 昭和47年5月25日判決は、死因贈与の撤回には遺言の撤回を定めた民法第1022条が方式に関する部分を除いて準用されると判断しており、書面で交わした死因贈与でも撤回できるのが原則です。ただし、負担付きで受贈者が負担の全部またはこれに類する程度を履行したときは、特段の事情がない限り撤回できません(昭和57年4月30日判決)。
Q. 遺言と死因贈与では、生前の仮登記ができるかどうかが違うと聞きました。
A. そのとおりです。死因贈与では、贈与者の生前に受贈者のために「始期付所有権移転の仮登記」をしておくことができます(不動産登記法第105条第2号)。遺贈では、遺言者の生存中は受遺者に権利が生じていないため、原則として生前の登記はできません。仮登記は順位の保全に役立ちますが、所有権が移るのは贈与者の死亡後で、申請そのものは司法書士の業務です。
Q. 死因贈与でもらった不動産には、どんな税金がかかりますか?
A. 相続税の対象になります(死因贈与は相続税法上「遺贈」に含まれます)。加えて、不動産取得税は課税され(相続のような非課税にならない・地方税法第73条の7第1号)、登録免許税は所有権移転につき原則2.0%(1,000分の20)です。相続・相続人への遺贈が0.4%であるのと比べて重くなる場合があります。税額の試算・申告は税理士、登記にかかる税の計算は司法書士にご確認ください。
Q. 死因贈与契約書は行政書士に頼めますか?有効・無効の判断もしてもらえますか?
A. 死因贈与契約書の文案作成と必要書類の整理は行政書士が支援できます。ただし、個別の契約が有効か無効か、遺留分を侵害していないか、撤回できるかどうかの最終判断は、本記事のような一般的な情報提供ではなく、有資格者が個別の事情をふまえて行います。仮登記・本登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ分けて進めます。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第549条(贈与の成立=当事者の意思表示と受諾による契約)・第554条(死因贈与。性質に反しない限り遺贈に関する規定を準用)・第960条(遺言は法律に定める方式に従わなければできない)・第994条第1項(遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺贈は効力を生じない)・第1022条(遺言の撤回)・第1023条(前の遺言と後の遺言の抵触等)(参照日 2026-11-02)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和47年5月25日判決。死因贈与の取消し(撤回)には遺言の撤回に関する民法第1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると判断(参照日 2026-11-02)
- 最高裁判所第三小法廷 昭和57年4月30日判決。負担の履行期を贈与者の生前とする負担付死因贈与で、受贈者が負担の全部またはこれに類する程度の履行をした場合は、特段の事情がない限り第1022条・第1023条の準用による撤回は認められないと判断(参照日 2026-11-02)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号)第105条第2号(始期付き・停止条件付き等の請求権を保全するための仮登記)(参照日 2026-11-02)
- e-Gov法令検索「相続税法」(死因贈与は遺贈に含めて相続税の課税対象)・「地方税法」第73条の7第1号(相続=包括遺贈および相続人に対する遺贈を含む、による不動産の取得は不動産取得税を課さない)・「登録免許税法」別表第一・一・(二)(所有権移転登記の税率。相続・相続人に対する遺贈は1,000分の4、その他の原因による移転は1,000分の20)(参照日 2026-11-02)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の死因贈与契約の有効・無効、撤回の可否、仮登記の要否、課される税額を判断・確定するものではありません。死因贈与契約書の文案作成・必要書類の整理は行政書士、始期付所有権移転の仮登記・死亡後の本登記は司法書士、相続税・不動産取得税・登録免許税の試算と申告は税理士、遺留分侵害額請求など紛争になった場合の交渉・調停・訴訟は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。相続した不動産の売却・管理は別事業体の四葉不動産株式会社が担当し、当事務所は紹介料を受け取りません。個別の契約の効力や税の取扱いは、契約の内容と事情を確認のうえ、必要に応じて有資格者が判断します。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。
まずは、状況を整理するところから。
四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。
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