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相続の手続き(行政書士の実務から)

相続財産に同族会社の非上場株式が含まれるとき、遺産分割協議はどう進めますか?

座卓を囲んで一枚の書面に向かう三人の後ろ姿を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

被相続人が持っていた同族会社の非上場株式も相続財産で、遺産分割の対象です。分割前は相続人全員の準共有となり(民法第898条・第264条)、権利行使者を定めて会社に通知しなければ権利を行使できません(会社法第106条、最判平成9年1月28日・平成27年2月19日)。評価が食い違う理由(財産評価基本通達の類似業種比準・純資産価額・配当還元方式)、後継者に集める代償分割、協議書の書き方、会社法第133条の株主名簿の名義書換までを整理。評価・相続税は税理士、不動産の相続登記は司法書士、紛争は弁護士へ振り分ける分離受任を明示しました。

結論(先に要点):被相続人が持っていた同族会社の非上場株式も相続財産で、遺産分割の対象です。相続人が複数いるときは、遺産分割が終わるまで株式は相続人全員の準共有となり(民法第898条・第264条)、会社に対する権利は、権利行使者を一人定めて通知しなければ行使できません(会社法第106条)。分割の場面では、非上場株式は取引価格がないため評価が相続人ごとに食い違いやすく、後継者に株式を集めるには代償分割などの工夫が要ります。行政書士は、相続人・相続関係の確認と遺産分割協議書の作成を支援します。株式の評価と相続税の申告は税理士、不動産の相続登記は司法書士、まとまらず調停・審判になる場合は弁護士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で整理します。本記事は一般的な情報提供で、個別の評価額や分け方を判断するものではありません。

遺産分割が終わるまで、会社の株式は誰がどう扱いますか?

相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属します(民法第898条第1項)。2023年(令和5年)4月1日施行の改正で、相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分(法定相続分・指定相続分)をもって各相続人の共有持分とすることが明文化されました(民法第898条第2項)。株式も同じで、遺産分割が終わるまでは相続人全員の準共有(民法第264条)となり、各共同相続人は相続分に応じて権利義務を承継します(民法第899条)。

準共有の株式について会社に対する権利(議決権など)を行使するには、共有者が権利を行使する者一人を定め、会社にその氏名等を通知しなければなりません。通知がなければ権利を行使できず、ただし会社が同意した場合はこの限りではありません(会社法第106条)。この権利行使者を誰にするかは、準共有持分の過半数で決めることができるとされています(最判平成9年1月28日)。また、共有株式の議決権の行使自体も、株式の管理に関する行為として、民法第252条本文により各共有者の持分の価格に従いその過半数で決するとされています(最判平成27年2月19日)。会社法第106条ただし書で会社が同意しても、民法の共有規定に従った行使でなければ適法な権利行使とはならない、というのが判例の考え方です。

場面誰が決めるか根拠
分割前の共有持分法定相続分・指定相続分による民法第898条第2項・第900条から第902条
権利行使者の指定準共有持分の過半数会社法第106条/最判平成9年1月28日
議決権の行使内容持分の価格の過半数(管理行為)民法第252条本文/最判平成27年2月19日

つまり、後継者が一人で会社を動かしたくても、分割が終わるまでは過半数の合意がないと権利行使者になれないことがあり、経営の空白を避けるためにも遺産分割を早く固めることが重要になります。

非上場株式の評価が相続人ごとに食い違うのは、なぜですか?

上場株式と違い、非上場株式には市場の取引価格がありません。相続税の計算では、財産評価基本通達(取引相場のない株式の評価)にもとづき、会社の規模や株主の立場に応じて評価方式を使い分けます。国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」では、次の方式が示されています。

評価方式主に使う場面
類似業種比準方式大会社などで、配当・利益・純資産を同業の上場会社と比べて評価する
純資産価額方式小会社などで、会社の資産・負債を相続税評価額に置き換えて評価する
配当還元方式同族株主以外の少数株主などで、配当をもとに評価する特例的な方式

同じ会社の株式でも、株主が経営を左右できる同族株主か、そうでない少数株主かで使う方式が変わり、評価額が大きく異なります。さらに、相続税の申告に使う評価(通達による評価額)と、相続人どうしが分け方を話し合うときに前提とする「時価」の考え方は、目的が違うため一致するとは限りません。ここが、相続人ごとに「株はいくらか」の認識が食い違う主な理由です。株式の評価と相続税の申告は税理士の業務で、当事務所とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は評価額の計算や税額の判断を行いません。

後継者に株式を集める分割は、どんな方法がありますか?

株式を後継者に集中させたい一方で、他の相続人にも公平に配分したい――このバランスをとるために、遺産分割にはいくつかの方法があります(民法第906条は、遺産の種類・性質、各相続人の事情などを考慮して分割すると定めています)。

分割方法内容株式の集中との相性
現物分割財産をそのまま各相続人に配る株式を後継者、不動産・預貯金を他の相続人へ、と割り振れる場合に有効
代償分割一部の相続人が財産を取得し、他の相続人に金銭等を支払う後継者が株式を全部取得し、他の相続人へ代償金を払う形が使われやすい
換価分割財産を売って金銭で分ける後継者に株式を残す目的とは相性が悪い
共有のまま分割せず準共有を続ける権利行使者の指定が必要で、経営判断が滞りやすい

後継者に株式を集めるには、代償分割で後継者が株式を取得し、他の相続人へ代償金を支払う組み立てがよく用いられます。代償金の原資(自己資金・生命保険金など)の確保や、遺留分への配慮も併せて検討が必要です。どの方法が適するかは、財産の構成・相続人の関係・税負担によって変わり、税務面は税理士、紛争性のある調整は弁護士と、それぞれ別々にご契約のうえ進めます。

遺産分割協議書には、株式についてどこまで書きますか?

遺産分割協議書は、相続人全員が分け方に合意した内容を文書にしたものです。非上場株式については、後日の名義書換や税務申告で特定できるよう、会社と株式を具体的に書きます。書き方の一般的なポイントは次のとおりです。

  • 発行会社の商号と本店所在地(同名の会社と区別できるように)
  • 株式の種類(普通株式・種類株式の別)と株式数
  • 取得する相続人の氏名
  • 代償分割の場合は、代償金の額・支払期日・支払方法

ご自身のケースについて相談したい方へ

在留資格・許認可など、行政手続について状況をお聞かせください。

相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を添えるのは、他の遺産と同じです。遺産分割協議書の作成は行政書士業務の範囲で支援できます。一般的な作り方は遺産分割協議書は自分で作れる?必要書類・書き方のポイントもあわせてご覧ください。相続財産に不動産が含まれる場合の相続登記は司法書士の業務で、相続登記の流れを参照し、当事務所とは別に司法書士へご依頼ください。

協議成立後、株主名簿の書換えと税務申告は誰がしますか?

遺産分割が成立しても、それだけでは会社の株主名簿は変わりません。非上場会社では、株式を取得した相続人が発行会社に対して株主名簿の名義書換を請求します(会社法第133条)。相続などの一般承継による取得の場合は、取得者が単独で名義書換を請求できる取扱いがあります(会社法第133条第2項、会社法施行規則第22条)。株主名簿の名義書換をしなければ、会社その他の第三者に対して自分が株主であることを主張できません(会社法第130条第1項)。株主名簿は会社が備え置くものなので、書換えの手続や必要書類は発行会社に確認します。

相続税の申告が必要な場合は、株式の評価を含めて税理士が行います。相続税の申告と納税の全体像は国税庁タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」で確認できます。当事務所は税務相談・税額計算を行いません。相続不動産の売却や活用のご相談は、別事業体である四葉不動産株式会社の相続不動産の相談窓口へお問い合わせください。相続手続の全体像は相続手続の総合案内、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。

相続関係の確認・協議書・評価・登記・紛争は、それぞれ誰に頼みますか?

非上場株式が絡む相続は、複数の専門分野が交わります。担当は次のように分かれます。

  • 相続人・相続関係の確認、遺産分割協議書の作成支援 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 非上場株式の評価・相続税の申告・納税 → 税理士
  • 相続財産に不動産が含まれる場合の相続登記 → 司法書士
  • 株主名簿の名義書換・権利行使者の指定通知の受付 → 発行会社
  • 分割がまとまらず調停・審判になる場合、権利義務・紛争にわたる個別の法的判断 → 弁護士
  • 相続不動産の売却・活用 → 四葉不動産株式会社

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体です。当事務所は相続関係の確認と協議書の作成支援を独立した事業体として担い、評価・税務・登記・紛争解決は、それぞれの資格者と別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 遺産分割が終わる前に、後継者が一人で株主総会の議決権を使えますか?
A. 準共有の株式は、権利行使者を一人定めて会社に通知しなければ権利を行使できません(会社法第106条)。権利行使者の指定は準共有持分の過半数で決するとされ(最判平成9年1月28日)、議決権の行使内容も持分の価格の過半数で決するとされています(最判平成27年2月19日)。個別の当否は紛争性を帯びることがあり、弁護士に、独立した事業体として別々にご相談ください。

Q. 相続税の申告に使う株価で、相続人どうしの分け方も決めなければいけませんか?
A. 相続税の評価(財産評価基本通達による評価額)と、相続人どうしの合意形成で前提とする時価は、目的が異なり一致するとは限りません。評価と申告は税理士の業務で、当事務所とは別々にご契約いただきます。当事務所は評価額の計算を行いません。

Q. 遺産分割協議書には株式を何と書けばよいですか?
A. 発行会社の商号・本店所在地、株式の種類と株式数、取得する相続人を具体的に書きます。代償分割なら代償金の額・支払期日・支払方法も記載します。作成の支援は行政書士業務の範囲で行えます。

Q. 協議がまとまったら、会社の株主名簿は自動で変わりますか?
A. 自動では変わりません。株式を取得した相続人が発行会社に名義書換を請求します(会社法第133条。相続などの一般承継は取得者が単独で請求できる取扱いがあります)。手続や必要書類は発行会社に確認してください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第264条・第898条(第2項は令和3年法律第24号により追加、2023年4月1日施行)・第899条・第900条から第902条・第906条・第907条・第252条(参照日 2026-09-23)
  • e-Gov法令検索「会社法」(平成17年法律第86号)第106条・第130条第1項・第133条(参照日 2026-09-23)
  • e-Gov法令検索「会社法施行規則」(平成18年法務省令第12号)第22条(一般承継による株主名簿の書換請求)(参照日 2026-09-23)
  • 最高裁判所第三小法廷 平成9年1月28日判決(共有株式の権利行使者の指定は持分の過半数で決する)/最高裁判所第一小法廷 平成27年2月19日判決(共有株式の議決権行使と民法第252条)(参照日 2026-09-23)
  • 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」/No.4205「相続税の申告と納税」(財産評価基本通達による評価。参照日 2026-09-23)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の株式の評価額、分割の方法、権利行使の当否、相続税の要否・税額を判断・保証するものではありません。非上場株式の評価・相続税の申告と納税は税理士、相続財産に不動産が含まれる場合の相続登記は司法書士、遺産分割がまとまらず調停・審判になる場合や権利義務・紛争にわたる個別の法的判断は弁護士、相続不動産の売却・活用は四葉不動産株式会社が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。株主名簿の名義書換の手続・必要書類は発行会社に確認してください。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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