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相続の手続き(行政書士の実務から)

上場株式・投資信託を相続したときの証券口座の名義変更・移管

家族・住まい・相続書類を整理するイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

上場株式や投資信託は、現金のように分けられません。相続では保有銘柄を把握し、遺産分割の内容を決めたうえで、各証券会社の相続手続を通じて相続人名義の証券口座へ移管するのが基本です(証券保管振替機構)。口座がない相続人は原則として新規開設が必要です。分割前の株式は準共有となり、議決権行使には権利行使者の指定が要ります(民法第896条・第898条・第899条・第264条、会社法第106条、最高裁平成9年1月28日判決)。相続税評価は財産評価基本通達169の4つの価額のうち最も低い額。準確定申告(所得税法第124条・第125条)は税理士、分割協議書は行政書士、登記は司法書士という分離受任を整理します。

結論(先に要点):上場株式や投資信託は、現金のように口座から引き出して分けることはできません。相続では、まず被相続人がどの証券会社にどの銘柄・口数を持っていたかを把握し、遺産分割の内容を決めたうえで、各証券会社の相続手続を通じて相続人名義の証券口座へ「移管」するのが基本です(証券保管振替機構〔ほふり〕を通じた振替の仕組み)。相続した株式等を受け取る相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、原則として新たに口座を開設してから移管します。遺産分割が確定するまでの株式は共同相続人の準共有となり、議決権などの権利行使には権利行使者を1人定めて会社へ通知する必要があります(民法第896条・第898条・第899条、民法第264条、会社法第106条)。相続税の評価は財産評価基本通達169により、課税時期の最終価格と直近3か月の月平均額のうち最も低い価額で行います。遺産分割協議書の作成や必要書類の収集支援は行政書士、証券口座の移管手続は各証券会社、準確定申告・配当や譲渡の税務・相続税の申告は税理士、相続人間の紛争は弁護士、不動産があれば相続登記は司法書士、不動産の売却仲介は宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社は当事務所とは別事業体)が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で分けて担います。本記事は一般的な情報提供であり、個別の評価額や手続の可否を判定・保証するものではありません。当事務所は紹介料を受け取りません。

上場株式や投資信託を相続したら、まず何をしますか?

最初にすることは、被相続人の保有していた株式・投資信託の全体像を把握することです。証券会社からの取引残高報告書、配当金の通知、特定口座年間取引報告書などが手がかりになります。どの証券会社に口座があるか分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に対する「登録済加入者情報の開示請求」で、口座を開設している証券会社等を確認できる仕組みがあります。

全体像がつかめたら、その株式等を誰がどのように取得するかを遺産分割で決めます。株式や投資信託は1株・1口の単位があり、現金のように端数まで自由に分けられないため、特定の相続人が取得する、法定相続分で分ける、いったん代表者が受け取ってから売却して代金を分けるなど、方針を定めておく必要があります。遺産分割協議書の作成や、戸籍・残高証明書など必要書類の収集の支援は行政書士の業務範囲です。遺産分割協議書そのものの作り方は遺産分割協議書の作り方で整理しています。相続全体の進め方は相続業務と受任の流れをご覧ください。

証券口座の名義変更・移管はどう進めますか(口座がない相続人は)?

上場株式・投資信託は、預貯金のように「解約して払い戻す」のではなく、相続人名義の証券口座へ振り替える(移管する)のが基本です。手続は口座のある各証券会社ごとに行い、一般には次の書類を求められます(詳細は証券会社により異なります)。

場面一般的に必要となるもの(証券会社ごとに確認)
相続の申出証券会社所定の相続手続依頼書
被相続人・相続人の確認戸籍(出生から死亡まで)、相続人の戸籍、法定相続情報一覧図など
分け方の確認遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書)または遺言書
受け皿の口座株式等を取得する相続人の、その証券会社の証券口座

ここで実務上の注意点は、株式等を取得する相続人が、その証券会社に自分の証券口座を持っていない場合です。上場株式はいったん相続人名義の口座へ移管するのが原則で、売却はその後に行うため、口座がなければ原則として新たに口座を開設する必要があります。移管の手続や売却のタイミングは各証券会社の案内に従い、料金は報酬額表を目安に、書類作成・収集の支援の範囲をご相談ください。

遺産分割前の株式は誰のものですか(準共有と議決権)?

相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し(民法第896条)、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属します(民法第898条)。各共同相続人は、その相続分に応じて権利義務を承継します(民法第899条)。株式のような所有権以外の財産権が数人の共有に属する場合は「準共有」と呼ばれ、共有の規定が準用されます(民法第264条)。

準共有の状態にある株式について、議決権などの権利を行使するには、共有者が権利行使者を1人定めて会社に通知しなければなりません(会社法第106条)。最高裁判所は、共同相続人間で権利行使者を定めるにあたっては、持分価格の過半数で決することができるとしています(最高裁平成9年1月28日判決)。つまり、遺産分割が終わるまでは、相続人が各自ばらばらに議決権を行使できるわけではない、という点に注意が必要です。遺産分割が確定すれば、分割の内容に従って各相続人が取得します。非上場株式の場合は評価や分割の難しさがより大きくなるため、非上場株式の評価と遺産分割協議で別に整理しています。

準確定申告や配当・譲渡の税金は誰に頼みますか?

被相続人に一定の所得があった場合、相続人は被相続人の準確定申告を行う必要があります。準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出するのが原則です(所得税法第124条・第125条)。相続人が2人以上いるときは、原則として各相続人が連署して提出します(各別に提出することもできます)。

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相続後に配当を受け取ったり株式を売却したりした場合の課税(上場株式等の配当・譲渡に関する申告分離課税など。租税特別措置法)や、相続税の申告は、いずれも税理士の業務です。税額の計算や申告書の作成は、行政書士が行うことはできません。四葉では、税務は税理士に、相続人間に争いがあるなど紛争性のある事案は弁護士に、不動産があれば相続登記は司法書士に、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提でお振りします。

相続税の評価(上場株式の4つの価額)はどう決まりますか?

上場株式の相続税評価は、財産評価基本通達169(上場株式の評価)によります。原則として、課税時期(相続開始の日)の最終価格で評価しますが、それが次の3つの月平均額のうち最も低い額を超える場合には、その最も低い月平均額で評価します。結果として、次の4つの価額のうち最も低い価額で評価することになります。

番号価額
(1)課税時期(相続開始日)の最終価格
(2)課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
(3)課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
(4)課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額

投資信託は、上場株式とは評価の定めが異なり、種類(上場している受益権か、日々決算型か等)に応じた取扱いがあります。いずれも最終的な評価額の確定と相続税の申告は税理士の業務です。評価や申告の要否は遺産全体の構成によって変わるため、相続財産の把握を優先し、不動産を含む場合の総合的な整理は不動産の相続ハブ相続不動産の売却・活用(運営する四葉不動産株式会社は当事務所とは別事業体です)も参考になります。本記事は、評価の枠組みを一次情報で確認できた範囲で示すもので、個別の評価額は税理士の確認を前提にしてください。

よくある質問

Q. 証券口座はどうやって名義変更しますか?
A. 上場株式・投資信託は、解約払戻しではなく、相続人名義の証券口座へ移管するのが基本です。手続は口座のある各証券会社ごとに行い、相続手続依頼書、戸籍一式、遺産分割協議書または遺言書などを求められます。どの証券会社に口座があるか不明なときは、証券保管振替機構(ほふり)への開示請求で確認できます。

Q. 株式を受け取る相続人が証券口座を持っていない場合は?
A. 上場株式はいったん相続人名義の証券口座へ移管するのが原則で、売却はその後に行います。そのため、取得する相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、原則として新たに証券口座を開設してから移管します。手続の詳細は各証券会社の案内に従ってください。

Q. 遺産分割が終わる前に、相続人が自由に議決権を使えますか?
A. 使えません。遺産分割前の株式は共同相続人の準共有となり(民法第264条・第898条)、議決権などの権利行使には権利行使者を1人定めて会社へ通知する必要があります(会社法第106条)。権利行使者は持分価格の過半数で決することができます(最高裁平成9年1月28日判決)。

Q. 税金の手続は行政書士に頼めますか?
A. 準確定申告(所得税法第124条・第125条)や相続税の申告、配当・譲渡の課税の計算は税理士の業務であり、行政書士は行いません。行政書士が担えるのは、遺産分割協議書の作成や戸籍・残高証明書などの必要書類の収集の支援です。税務・登記・紛争は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第896条(相続の一般的効力)、第898条(共同相続の効力=相続財産の共有)、第899条(相続分に応じた承継)、第264条(準共有)(参照日 2026-10-15)
  • e-Gov法令検索「会社法」(平成17年法律第86号)第106条(共有者による権利の行使=権利行使者1人を定め会社へ通知)(参照日 2026-10-15)
  • 最高裁判所平成9年1月28日判決(共有株式の権利行使者は共有者の持分価格の過半数で決することができる)(参照日 2026-10-15)
  • e-Gov法令検索「所得税法」(昭和40年法律第33号)第124条・第125条(年の中途で死亡した場合等の確定申告=準確定申告。相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)、および上場株式等の配当・譲渡に関する租税特別措置法の課税(参照日 2026-10-15)
  • 国税庁「財産評価基本通達」169(上場株式の評価=課税時期の最終価格と、課税時期の属する月・前月・前々月の毎日の最終価格の月平均額のうち最も低い価額)、国税庁タックスアンサー(上場株式の評価・準確定申告)(参照日 2026-10-15)
  • 証券保管振替機構(ほふり)「登録済加入者情報の開示請求」および各証券会社の相続手続の案内(相続人名義の口座への移管)(参照日 2026-10-15)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続税評価額、各証券会社の手続の可否、税務の判断を確定・保証するものではありません。遺産分割協議書の作成と必要書類の収集の支援は行政書士、証券口座の移管手続は各証券会社、準確定申告・配当や譲渡の税務・相続税の申告は税理士、相続人間の紛争は弁護士、不動産の相続登記は司法書士、不動産の売却仲介は宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社は別事業体)が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。各専門家はそれぞれ独立してご契約いただき、当事務所は紹介料を受け取りません。評価や手続の最新の取扱いは、国税庁・各証券会社・証券保管振替機構の公式資料で確認してください。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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