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2026.09.02投資・事業用不動産

スケルトン物件で飲食店を開くとき、排気・グリストラップ・防火で物件選びはどこまで決まるか

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

スケルトン(内装なし)物件で飲食店を開けるかは、契約前の4点でほぼ決まります。①用途地域(第一種低層住居専用地域・工業専用地域では原則不可)②排気ダクトを外壁・屋上まで通せる経路と貸主の許可③グリストラップを後付けできる給排水の素地④防火区画・スプリンクラー・避難経路が階数と面積で成立するか。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを食品衛生法・建築基準法・消防法・風営法の条文から順に整理します。

結論(先に要点):スケルトン物件で飲食店を開けるかは、契約前の4点でほぼ決まります。①用途地域(第一種低層住居専用地域や工業専用地域では原則開けない)②排気ダクトを外壁または屋上まで通せる経路と貸主の許可があるか③グリストラップを床下・屋外に後付けできる給排水の素地があるか④防火区画・スプリンクラー・避難経路が階数と面積で成立するか。可否の最終判断は保健所・特定行政庁・消防にあります。物件段階でこの素地を確かめれば、内装工事後の手戻りを防げます。

「居抜きなら設備が残っているから早い。スケルトンなら自由に作れる」——どちらも一面では正しいのですが、スケルトン(内装なしの状態)は「自由」の裏で、排気・給排水・防火の設備をゼロから作れる物件かどうかを、借りる前に見極める必要があります。本記事は、東京で内装のないスケルトン物件から飲食店を新規開業したい個人・法人に向けて、賃貸借契約を結ぶ前に確認できることを、食品衛生法・建築基準法・消防法・風営法の条文から順に整理したものです。物件の選定・媒介・賃貸借の仲介は当社(四葉不動産株式会社)が情報提供として担い、可否の最終確認は保健所・特定行政庁・消防の窓口で行います。

スケルトンと居抜きで、物件選びの見るところはどう変わるのか?

居抜きは、前のテナントの排気・グリストラップ・保健所の設備をそのまま引き継げるかが主題です。これに対しスケルトンは、それらが「作れるか」を素地から見ます。分岐が逆になります。

見るところ居抜きスケルトン
排気・厨房設備既存設備が使えるか・引き継げるかダクト経路を外壁・屋上まで新設できるか
グリストラップ設置済みか・容量が足りるか床下・屋外に後付けできる給排水があるか
保健所の施設基準前テナントの構造が現行基準に合うか手洗い・区画・床壁を基準どおり作れるか
費用と時間造作の譲渡・原状回復の範囲内装一式の設計・施工が前提

居抜きの物件で前テナントの設備・保健所の引き継ぎを見る観点は、飲食店に限らず美容室・理容所などでも同じ構造で起きます。保健所の届出が契約より先に絡む例は「美容室・理容所を開くための物件は何を確認する?」に整理しています。スケルトンでは、以下の4点を契約前に確かめます。

その用途地域で飲食店は開けるのか(第一種低層・工業専用の落とし穴)?

飲食店は「店舗」として、建築基準法(昭和25年法律第201号)第48条と別表第二で用途地域ごとに建てられるかが決まります。ここが最初の関門です。

用途地域飲食店(店舗)の扱いの目安
第一種低層住居専用地域原則不可。兼用住宅(住居が延べ面積の1/2以上・店舗部分50㎡以下)の範囲に限られる
第二種低層住居専用地域床面積150㎡以内など一定規模の店舗として建てられる場合がある
第一種中高層住居専用地域床面積500㎡以内・2階以下など条件つきで建てられる場合がある
住居・準住居・近隣商業・商業・準工業地域建てやすい
工業専用地域不可(飲食店は建てられない)

「テナントビルだから当然開ける」とは限りません。 第一種低層住居専用地域や工業専用地域では、飲食店そのものが原則として建てられません。加えて、事務所や別業種の店舗を飲食店に変えるとき、床面積によっては用途変更の確認申請(同法第87条第1項)が要る場合があります。用途地域上の可否と用途変更の要否は、契約前に特定行政庁の窓口で確認できます。用途地域が事業用物件の可否をどう左右するかは「クリニックの物件は、契約前に何を確認するのか」の整理も参考になります。事業用物件全般は投資用・事業用不動産をご覧ください。

排気ダクトを外壁・屋上まで通せる物件かをどう確かめるのか?

厨房の排気は、飲食店の物件選びで最も差がつく点です。スケルトンでは排気ダクトが未設置なので、次を契約前に確認します。

  • 排気経路:厨房から外壁または屋上まで、ダクトを通せる縦シャフト・PS(パイプスペース)や外壁貫通の余地があるか
  • 貸主の許可:外壁貫通・屋上への排気口設置は、賃貸借契約や管理規約で貸主・管理組合の承諾が要ることが多い
  • 近隣への配慮:排気口の位置は、においや騒音で近隣とトラブルになりやすい。方位・高さを事前に見る
  • 給気とのバランス:強い排気には見合った給気が要る。第一種換気の設計余地があるか

排気は建物の構造そのものに関わるため、貸主が「不可」とする物件では、そもそも重飲食(強い火力・油煙を伴う業態)が成立しません。ダクトの設計・施工は施工業者(設計者)の領域です。当社(不動産会社)は、物件がこれらの条件を満たせるかの下調べと、貸主との条件交渉に伴走します。 排気の可否は業態を左右するため、賃貸借契約書のどこを読むかとあわせて確認します。

グリストラップは後付けできるのか、給排水と床下で決まるのはどこか?

グリストラップ(油脂分離阻集器)は、厨房排水に含まれる油脂や残さが下水道へ流れ込むのを防ぐ設備です。下水道法(昭和33年法律第79号)第10条は、公共下水道の供用区域で排水設備の設置を義務づけ、同法施行令第8条が排水設備の技術上の基準を定めます。油脂を多く出す飲食店では、各自治体の下水道条例・排水設備要綱が阻集器(グリストラップ)の設置を求めるのが一般的です(2026年9月2日参照)。

スケルトンで確認するのは、後付けできる素地があるかです。

確認点なぜ効くか
床下の余地床埋め込み型は床スラブを掘る必要があり、階上のテナントでは設置できないことがある
屋外設置の余地床下が取れない場合、屋外設置型を置けるスペースと配管経路があるか
排水勾配厨房から阻集器、公共下水道までの勾配が取れるか
排水の水質基準油分(ノルマルヘキサン抽出物質)などの排出基準は自治体条例で定められ、基準を超えると受け入れられない

グリストラップの容量・型式・水質基準は自治体によって幅があります。着手時点で管轄の下水道担当窓口のページを直接確認してください。 給排水の設計は施工業者の領域で、当社は物件段階での設置余地の下調べに伴走します。

防火区画・スプリンクラー・避難経路で、階数と面積の何が効くのか?

飲食店は、消防法(昭和23年法律第186号)と消防法施行令別表第一の(三)項ロに掲げる特定防火対象物にあたり、不特定多数が出入りする点で消防用設備の求めが厳しくなります。消防法第17条は、政令で定める技術上の基準に従って消防用設備等を設置・維持する義務を関係者に課します。物件段階で効くのは次の点です。

論点何で決まるか
自動火災報知設備特定防火対象物では設置対象になりやすい。延べ面積・階で基準が変わる
スプリンクラー設備面積・階数(地階・無窓階・高層階)で対象が変わる。地下や高層のテナントは要注意
避難経路・二方向避難階数と収容人員で、避難口・階段の数や幅が問われる
防火区画面積区画・竪穴区画などが建築基準法側で問われ、内装制限もかかる

地階・無窓階・高層階のテナントは、同じ面積でも設備の求めが重くなります。 これらは物件の階と面積、既存の共用設備で決まるため、内装を作り込む前に消防(所轄消防署)と相談しておくのが安全です。建築確認を要する工事では、確認の際に消防長・消防署長の同意(消防法第7条)が前提になります。設備の設計・施工は消防設備業者・建築士の領域です。

保健所の営業許可と消防・建築は、誰にどの順で頼むのか(分離受任)?

飲食店を始めるには、食品衛生法第55条により都道府県知事等の営業許可が要ります。許可は、施設が同法第54条にもとづく都道府県の条例(東京都なら食品衛生法施行条例)の施設基準に合うと保健所が認めたときに下ります。したがって流れはこうなります。

順番やること担い手
1用途地域・用途変更の要否を確認特定行政庁・宅地建物取引業者
2排気・グリストラップ・防火の素地を下調べ宅地建物取引業者・施工業者
3賃貸借契約宅地建物取引業者
4内装工事(厨房・区画・排気・排水・消防設備)施工業者・建築士・消防設備業者
5飲食店営業許可の申請開設者・行政書士
6保健所の施設検査・消防同意保健所・消防
7許可後に開業開設者

深夜0時以降に酒類の提供を主として営む場合は、これとは別に、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第33条第1項による深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書を、営業開始の10日前までに公安委員会(所轄警察署経由)へ提出します。飲食店営業許可や深夜酒類提供の届出など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。行政の窓口・様式・自治体の数値・受付の運用は変わります。着手時点で管轄の保健所・消防・警察署のページを直接ご確認ください。

誰に相談すればよいですか?

物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業開始届出など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。排気ダクト・防火区画・スプリンクラーの設計と建築確認は建築士が、消防用設備の設計・施工は消防設備業者が、給排水・グリストラップの施工は施工業者が扱います。可否の最終判断は保健所・特定行政庁・消防が行い、税務は税理士へ、雇用・社会保険は社会保険労務士(四葉社会保険労務士事務所)へ振ります。

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、税務は税理士、雇用契約・就業規則・社会保険の新規適用は社会保険労務士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. スケルトンと居抜き、飲食店を早く開けるのはどちらですか?
A. 一般には、設備が残る居抜きのほうが工事は少なく早いことが多いです。ただし前テナントの設備が現行の保健所基準に合わなければ作り直しになります。スケルトンは自由に作れる反面、排気・グリストラップ・防火をゼロから設計・施工するため時間と費用がかかります。どちらが向くかは業態と物件で変わるため、物件ごとに確認してください。

Q. どんな物件だと飲食店が開けないことがありますか?
A. 第一種低層住居専用地域や工業専用地域は、建築基準法第48条・別表第二により飲食店(店舗)が原則として建てられません。また、排気ダクトを外壁・屋上まで通せない、グリストラップを設置できない、地階・高層で消防設備が成立しない、といった物件では重飲食が難しいことがあります。可否は特定行政庁・保健所・消防で確認してください。

Q. グリストラップは必ず要りますか?後付けできますか?
A. 油脂を多く出す飲食店では、各自治体の下水道条例・排水設備要綱で阻集器(グリストラップ)の設置が求められるのが一般的です(下水道法第10条・施行令第8条が排水設備と技術上の基準の根拠)。後付けの可否は床下や屋外の余地、排水勾配で決まります。容量・型式・水質基準は自治体で異なるため、管轄の下水道担当窓口で確認してください。

Q. 深夜まで営業してお酒を出すには、何か届出が要りますか?
A. 深夜0時以降に酒類の提供を主として営む場合は、風営法第33条第1項による深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書を、営業開始の10日前までに公安委員会(所轄警察署経由)へ提出します。飲食店営業許可とは別の手続きです。届出書の作成は行政書士が承ります。要件は施行規則で定められ運用も変わるため、所轄警察署で確認してください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「食品衛生法」(昭和22年法律第233号。第54条=公衆衛生に与える影響が著しい営業の施設基準を都道府県が条例で定める、第55条=営業許可(都道府県知事等の許可)。平成30年改正の施行日は令和3年6月1日。2026年9月2日参照
  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第48条=用途地域の制限、別表第二=用途地域内の建築物、第87条第1項=用途変更に伴う確認申請。2026年9月2日参照
  • e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号。第7条=建築確認の際の消防同意、第17条=消防用設備等の設置維持義務。飲食店は消防法施行令別表第一(三)項ロの特定防火対象物。2026年9月2日参照
  • e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(昭和23年法律第122号。第33条=深夜における酒類提供飲食店営業。営業開始10日前までに公安委員会(所轄警察署経由)へ届出。2026年9月2日参照
  • e-Gov法令検索「下水道法」(昭和33年法律第79号。第10条=排水設備の設置義務、施行令第8条=排水設備の技術上の基準。グリストラップ(油脂分離阻集器)の設置は各自治体の下水道条例・排水設備要綱による。2026年9月2日参照

※用途地域上の可否・用途変更の確認申請の要否は、物件の床面積・構造・区域の指定によって変わります。最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
※グリストラップの容量・型式・排水の水質基準、消防用設備(自動火災報知設備・スプリンクラー等)の設置対象は、自治体・物件の階数・面積・構造で幅があります。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の保健所・消防・下水道担当・警察署の窓口で確認してください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や飲食店営業許可の可否を判断・保証するものではありません。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、飲食店営業許可等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と許可(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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