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2026.09.02相続

相続した共有の不動産を売る——全員の同意が要る場面と、自分の持分だけを売る場合の実務

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した共有の不動産を「まるごと」売るには共有者全員の同意が要ります(民法第251条第1項)。一方、自分の持分だけなら他の共有者の同意なしに第三者へ売れますが、使い道が限られるため価格が下がりやすく買主も限られます。話し合いがまとまらないときは共有物分割(民法第256条・第258条)に進み、争いになれば弁護士へ。売る前提として相続登記(2024年4月から義務)を先に済ませます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が条文から整理します。

結論(先に要点):相続した共有の不動産を「まるごと」売るには、共有者全員の同意が要ります(民法第251条第1項=変更・処分の原則)。一方、自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに第三者へ売れます。ただし持分だけの売買は使い道が限られるため価格が下がりやすく、買主も限られます。話し合いがまとまらないときは共有物分割(民法第256条・第258条)に進み、争いになれば弁護士の領域です。売る前提として相続登記(2024年4月から義務)を先に済ませる必要があります。

きょうだいなど複数人で相続して共有名義になった実家や土地を売りたいのに、全員の足並みがそろわない——このとき最初に分かれるのは、「共有のまま全体を売る」道と「自分の持分だけを売る」道です。本記事は、共有不動産をどう売るか迷っている相続人に向けて、まず何を確認し誰に相談すればよいかを、民法と不動産登記法の条文から整理したものです。売却の進め方・査定・買主探しは当社(四葉不動産株式会社)が情報提供として担い、法的判断は有資格者が行います。

共有のまま不動産を売るには、なぜ共有者全員の同意が要るのか(民法251条)?

共有物を第三者へ売る(処分する)ことは、共有物の物理的・法律的な状態を根本から変える行為です。民法第251条第1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えることができないと定めます。共有物全体の売却は、この変更・処分にあたるため、共有者全員の同意が必要です。

令和3年の民法改正(共有制度の見直し。施行日=令和5年4月1日)で、共有のルールは次のように整理されました。

行為の種類決め方根拠
保存(現状維持・修繕など)各共有者が単独でできる民法第252条第5項
管理(賃貸・軽微な変更など)持分の価格の過半数で決する民法第252条第1項
変更・処分(売却・大規模な改変)共有者全員の同意民法第251条第1項

つまり、「過半数が賛成だから売れる」わけではありません。 全体を売るには全員の同意が要ります。相続で共有になった不動産をどう分けるか(換価分割)の進め方は「相続不動産の換価分割はどう進めるか」に、借地上の建物を相続したときの承諾の要否は「相続した家が借地だった」に整理しています。相続不動産全般は相続と不動産をご覧ください。

自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れるのか?

売れます。共有者は自分の持分を、他の共有者の同意なしに自由に第三者へ譲渡できます。持分は各共有者に属する権利であり、その処分は各人の自由に委ねられているためです(所有権の内容としての処分の自由)。

ここが混乱しやすい点です。「全体の売却=全員の同意が必要」だが「持分の売却=単独でできる」。 対象が「共有物そのもの」か「自分の持分」かで、必要な同意がまったく変わります。

  • 全体を売る:共有者全員の同意(民法第251条第1項)
  • 持分を売る:各共有者が単独で可能(他の共有者の同意は不要)

ただし、持分を売れることと、それが有利に売れることは別です。次の見出しで、持分売却の実務を見ます。

持分を売ると買主は誰になり、価格はなぜ下がりやすいのか?

持分だけを買った人は、単独ではその不動産を自由に使えません。ほかの共有者と一緒に使うか、あらためて共有物分割で決着をつける必要があります。このため、持分の買主は限られ、価格も下がりやすくなります。

論点内容
買主実務上は共有持分の買取を専門にする業者や、共有関係を整理したい他の共有者などに限られやすい
価格単独で使えず分割の手間・費用がかかる分、市場価格に持分割合を掛けた額より低くなりやすい
その後買主が共有物分割を求め、残った共有者が対応を迫られることがある
使い道「早く現金化したい」「他の共有者と話が進まない」場合の選択肢になり得る

持分売却は「足並みがそろわないときの出口」になり得ますが、価格面では不利になりやすく、残る共有者との関係にも影響します。まずは全体を売る合意を探り、それが難しいときの選択肢として持分売却を検討する——という順で考えるのが一般的です。査定と売り方の比較は当社がご案内します。

話し合いがまとまらないとき、共有物分割はどこから弁護士の領域になるのか?

共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法第256条第1項。ただし5年以内の期間で不分割の特約が可能)。協議が調わないとき、または共有者が協議に応じないときは、その分割を裁判所に請求できます(民法第258条第1項)。裁判所は、現物分割・賠償分割(一人が取得し他へ代金を支払う)・競売による代金分割のいずれかを命じます。

段階内容担い手
協議共有者間で売却・分割の方法を話し合う共有者本人
全体売却の合意ができた媒介・売買契約へ宅地建物取引業者
協議が調わない共有物分割請求(訴訟・調停)弁護士

「話し合いがまとまらず争いになった」段階からは、弁護士の領域です。 共有物分割請求の代理や、共有者間の交渉が紛争に発展した場合の対応は、当社や行政書士ではなく弁護士が担います。当社は、合意ができた場合の売却・媒介に伴走します。

売る前に相続登記を済ませないといけないのはなぜか(2024年義務化)?

売買や持分譲渡をするには、その不動産が誰の名義かが登記で確定していなければなりません。相続で取得した不動産は、まず相続登記(被相続人から相続人への名義変更)を済ませる必要があります。

不動産登記法第76条の2は、相続により不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内の相続登記の申請を義務づけています(令和6年4月1日施行)。正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。

  • 名義が被相続人のままでは、売買の登記(買主への移転登記)ができない
  • 遺産分割協議がまとまっていれば、その内容にもとづき相続登記をする
  • 相続登記や持分移転の登記は、司法書士の業務

相続登記の義務化は、売る・売らないにかかわらず適用されます。売却を考えるなら、まず相続登記を済ませておくのが前提になります。

同意・登記・税金・仲介は、それぞれ誰に頼むのか(分離受任)?

共有不動産の売却は、複数の専門家が関わります。役割を分けると次のとおりです。

やること担い手
売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社)
遺産分割協議書の作成行政書士(四葉行政書士事務所)
相続登記・持分移転登記司法書士
共有物分割請求・共有者間の紛争弁護士
譲渡所得税・取得費の計算税理士

譲渡所得(売った金額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算)や、相続で取得した不動産の取得費の考え方は、国税庁のタックスアンサー(No.3252 取得費となるもの、No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期、No.3202 譲渡所得の計算のしかた)に整理されています。具体的な税額の計算・申告は税理士が担います。

誰に相談すればよいですか?

共有不動産の売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。遺産分割協議書など官公署・私人間に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。相続登記・持分移転登記は司法書士が、共有物分割請求など話し合いがまとまらず争いになった場合は弁護士が、譲渡所得税・取得費の計算は税理士が扱います。

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、紛争は弁護士、税務は税理士、雇用・社会保険は社会保険労務士(四葉社会保険労務士事務所)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. きょうだい3人の共有です。2人が賛成すれば売れますか?
A. 全体を売るには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条第1項)。過半数で決められるのは賃貸などの管理行為(民法第252条第1項)で、売却(処分)は全員の同意が要ります。全員がそろわない場合は、自分の持分だけを売る、または共有物分割で決着をつける、という選択肢を検討します。

Q. 他の共有者が売却に反対しています。自分の分だけ売れますか?
A. 自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに第三者へ売れます。ただし持分だけの買主は限られ、単独では使えないため価格が下がりやすい点に注意が必要です。まず全体売却の合意を探り、難しいときの選択肢として持分売却を検討するのが一般的です。査定と売り方の比較はご案内できます。

Q. 話し合いが平行線です。どうすればよいですか?
A. 共有者はいつでも共有物の分割を請求でき(民法第256条第1項)、協議が調わないときは裁判所に分割を請求できます(民法第258条第1項)。裁判所は現物分割・賠償分割・競売による代金分割のいずれかを命じます。争いになった段階からは弁護士の領域です。合意ができた場合の売却・媒介は当社が伴走します。

Q. 名義が亡くなった親のままです。先に何をすべきですか?
A. 売買や持分譲渡の前に、相続登記(親から相続人への名義変更)を済ませる必要があります。相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が求められます(不動産登記法第76条の2)。相続登記・持分移転登記は司法書士の業務です。遺産分割協議書の作成は行政書士が承ります。

この記事の出典(一次情報)

※共有物の変更・管理・分割の具体的なあてはめ、持分売却の価格、共有物分割の方法(現物・賠償・競売)の選択は、個別の事情によって変わります。本記事は個別の事案について判断していません。争いのある事案は弁護士へご相談ください。
※譲渡所得税・取得費の具体的な計算と申告は税理士へ、相続登記・持分移転登記は司法書士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の売却の可否や税額を判断・保証するものではありません。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・登記・税務の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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