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相続の手続き(行政書士の実務から)

外国籍の人が亡くなったら相続はどの国の法律で行う?通則法36条・反致・日本の不動産

家族・住まい・相続書類を整理するイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

外国籍の被相続人の相続は、日本では「相続は、被相続人の本国法による」(法の適用に関する通則法第36条)から出発点が決まります。見るのは相続人ではなく被相続人の国籍です。本国の国際私法が日本法を指定するときは反致(通則法第41条)で日本法に戻ることがあり、動産・不動産を区別しない相続統一主義でも、日本所在の不動産だけ日本法で処理される場合があります。中国大陸(涉外民事关系法律适用法第31条・第9条)と台湾(涉外民事法律適用法第58条)の違い、集める資料、有資格者への振り分けを行政書士の実務から整理しました。

結論(先に要点):外国籍の人が亡くなったときの相続は、日本では「相続は、被相続人の本国法による」という考え方(法の適用に関する通則法第36条)から出発点が決まります。見るのは相続人の国籍ではなく、亡くなった被相続人の国籍です。ただし、その本国の国際私法(どの国の法律を使うかを定めるルール)が日本法を指定するときは日本法へ戻ることがあり、これを反致(通則法第41条)といいます。日本は動産・不動産を区別せず本国法で一括して考える相続統一主義ですが、反致を通じて日本にある不動産だけ日本法で処理される場合があります。本記事は準拠法の枠組みと集める資料を行政書士の視点で整理する一般的な情報提供であり、準拠法の最終的な確定や外国法の解釈はしません。準拠法適用の最終的な法的判断・相続争いは弁護士、相続登記は司法書士、相続税・国外財産の税務は税理士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で分けて振ります。行政書士は戸籍・親族関係資料の収集と、合意済み内容に基づく遺産分割協議書の作成を担当します。

外国籍の被相続人の相続は日本法か本国法か(通則法第36条)?

法の適用に関する通則法第36条は、「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。ここで最初に確認すべきは、相続人の国籍ではなく、亡くなった被相続人の国籍です。たとえば日本人の父が亡くなり、その子が中国籍・台湾籍であっても、子が外国籍だからといって直ちに中国法・台湾法になるわけではありません。逆に、被相続人が外国籍であれば、まずその被相続人の本国法を確認します。

被相続人が複数の国籍を持つ場合や無国籍の場合は、「本国法」をどう決めるか自体に別のルールがあります(通則法第38条)。複数国籍のうちに日本国籍があるときは日本法が本国法となり、日本国籍がないときは常居所を有する国の法、それもないときは最も密接な関係がある国の法によります。無国籍の場合は常居所地法によると整理されます。

「外国籍だから必ず外国法」でも「日本に財産があるから必ず日本法」でもない、という点が出発点です。外国籍・海外在住が絡む相続手続の全体像は海外在住・外国籍の相続手続はどう進めるかで整理しています。

「反致」で結局どの国の法律に戻るのはどんな場合か?

通則法第41条は、当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による、と定めています。これが反致です。第41条ただし書は、婚姻の効力・夫婦財産制・離婚(第25条から第27条まで)について反致を認めない趣旨ですが、相続(第36条)はこのただし書の除外に入っていないため、相続には反致が適用され得ます。

一般的な流れは次のとおりです。

日本(通則法第36条)→ 被相続人の本国法を見る → その外国の国際私法が日本法を指定する → 日本法へ戻る(通則法第41条の反致)

つまり、日本の通則法が「本国法による」としても、その本国の国際私法が別の国(たとえば財産所在地)を指しているときは、そこで日本法に戻ってくることがあります。どの国の法律が最終的に適用されるかは、被相続人の国籍・常居所・財産の所在・その本国の国際私法の内容を組み合わせて判断する必要があり、行政書士が個別に確定するものではありません。準拠法の確定・外国法の解釈は弁護士の領域です。

日本にある不動産だけ日本法で処理されることはあるのか?

日本の通則法は、動産・不動産を区別せず被相続人の本国法で一括して扱う相続統一主義を採っています。したがって、日本の通則法だけを見れば「日本にある不動産だから日本法」とはなりません。日本法へ戻るかどうかは、被相続人の本国の国際私法が動産・不動産をどう扱うかによります。

被相続人本国側の法定相続の準拠法の基本日本への反致
中国大陸籍法定相続は、動産=被相続人死亡時の常居所地法、不動産=不動産所在地法(涉外民事关系法律适用法第31条)日本所在の不動産や日本を常居所とする場合の動産で、日本法へ戻る場合がある
台湾籍相続は原則として被相続人死亡時の本国法(涉外民事法律適用法第58條)台湾法を指すのが原則で、中国大陸型の反致は通常生じにくい

中国大陸の国際私法は不動産を所在地法で扱うため、中国籍の被相続人が持つ日本所在の不動産については、日本の通則法第36条で一度中国法を参照し、中国側が不動産所在地=日本を指定することで、日本の通則法第41条による反致で日本法が適用される場合があります。ただし、中国「涉外民事关系法律适用法」第9条には、中国側で外国法を適用するときはその国の法律適用法を含めないという反致排除のルールがあり、これは日本側の第41条による反致とは別のものです。混同しないことが重要です。

台湾の「涉外民事法律適用法」第58條は相続を被相続人死亡時の本国法によるとしているため、台湾籍の被相続人については台湾法が指定されるのが原則で、日本法へ戻る構造は中国大陸型とは異なります。いずれも一般論であり、「必ず」「常に」を断定するものではありません。個別の適用判断は弁護士へ留保します。

本国法を証明する資料(本国の法令・戸籍・公証)は何を集めるのか?

準拠法の枠組みを踏まえたうえで、実務では次のような資料を集めます。国によって日本のような戸籍制度がないため、「外国の戸籍」と一括りにはできません。

ご自身のケースについて相談したい方へ

在留資格・許認可など、行政手続について状況をお聞かせください。

種類具体例
本国の相続法令本国の相続に関する法律、国際私法(法律適用法)の該当条文とその訳
身分関係の証明本国の戸籍、出生証明書・婚姻証明書・死亡証明書・親族関係証明書などの公的書類
認証・翻訳提出先が求める場合の日本語訳、公証・領事認証・アポスティーユ

公証・領事認証・アポスティーユの要否は、国・書類の種類・提出先・手続の種類によって異なり、「必ず必要」とは一概にいえません。アポスティーユと領事認証の使い分けは外務省の案内で確認します。なお、被相続人や相続人が必要な戸除籍謄本を提出できない場合は、法定相続情報証明制度を利用できないことがあります。制度の詳細は法定相続情報一覧図とは何かをご覧ください。遺言が絡む場合は、遺言の成立・効力(通則法第37条)と遺言の方式(遺言の方式の準拠法に関する法律)を分けて考える必要があります。

有資格者に振るべき判断はどこからか?

外国籍が絡む相続は、複数の専門家の分担で進めます。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提です。

  • 準拠法の確定・外国法の解釈・反致の個別適用・相続人の範囲や相続分の法的確定・相続争い → 弁護士
  • 相続登記(所有権移転登記)の代理申請 → 司法書士
  • 相続税・国外財産の課税範囲・納税管理人の要否など税務 → 税理士
  • 相続した不動産の売却・管理 → 宅地建物取引業者(別事業体の四葉不動産株式会社)

行政書士が担当するのは、戸籍等の収集、外国の身分関係書類の整理、翻訳文書の整理、合意済み内容に基づく遺産分割協議書の作成、各専門家へ渡す資料の整理です。遺産分割協議書の基本は遺産分割協議書は自分で作れるかをご覧ください。相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービス、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続した不動産の売却・管理は別事業体の四葉不動産株式会社による相続不動産の完全ガイドをご覧ください。中国語(繁体字・簡体字)・英語での相談にも対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 相続人が中国籍なら中国法で相続するのですか?
A. 相続人の国籍だけでは決まりません。日本の通則法第36条は、まず被相続人の本国法によるとしています。被相続人が外国籍の場合は、その本国の国際私法が日本法を指定する反致(通則法第41条)も含めて確認が必要です。個別の準拠法の確定は弁護士の領域です。

Q. 日本にある不動産は必ず日本法で相続できますか?
A. 一概にはいえません。日本は動産・不動産を区別しない相続統一主義のため、日本法へ戻るかどうかは被相続人の本国の国際私法によります。中国大陸籍の被相続人の日本所在不動産は不動産所在地法を介して日本法へ反致する場合がありますが、台湾籍では原則として本国法(台湾法)が指定されます。

Q. 本国の法律はどうやって確認・証明しますか?
A. 本国の相続法令・国際私法の該当条文とその訳、出生・婚姻・死亡・親族関係の証明書などを集めます。提出先が日本語訳や公証・領事認証・アポスティーユを求めることがありますが、要否は手続ごとに異なるため事前に確認します。

Q. 行政書士に頼めることと頼めないことは何ですか?
A. 行政書士は、戸籍等の収集、外国の身分関係書類・翻訳文書の整理、合意済み内容に基づく遺産分割協議書の作成を担当します。準拠法の確定・外国法の解釈・反致の個別適用・相続分の確定・紛争は弁護士、相続登記は司法書士、税務は税理士の領域です。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)第36条(相続は被相続人の本国法による)・第37条(遺言の成立及び効力)・第38条(本国法)・第41条(反致)(参照日 2026-09-28)
  • e-Gov法令検索「遺言の方式の準拠法に関する法律」(昭和39年法律第100号)(参照日 2026-09-28)
  • 中華人民共和国「涉外民事关系法律适用法」第9条(反致排除)・第31条(法定相続の準拠法。動産=常居所地法、不動産=所在地法)(参照日 2026-09-28)
  • 台湾「涉外民事法律適用法」第58條(相続は被相続人死亡時の本国法)(参照日 2026-09-28)
  • 外務省「証明・認証(アポスティーユ・公印確認・領事認証)」(参照日 2026-09-28)
  • 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」(外国籍・戸除籍を提出できない場合の利用可否。参照日 2026-09-28)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続・遺言の準拠法、相続人の範囲、相続分、課税範囲、手続の可否・効果を保証するものではありません。準拠法適用の最終的な法的判断・外国法の解釈・反致・紛争は弁護士、相続登記の代理申請は司法書士、相続税・国外財産の税務は税理士、不動産の売却・管理は宅地建物取引業者が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。相続した不動産の相談は別事業体の四葉不動産株式会社が担当し、当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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