共有者の一人が所在不明のとき、その持分を取得・処分する2023年の新制度(民法262条の2・262条の3)

共有不動産に連絡の取れない共有者(所在等不明共有者)がいても、2023年4月1日施行の改正民法で、裁判所の裁判を経てその持分を取得し、または持分を含めて第三者へ売れる制度ができました(民法第262条の2・第262条の3)。手続は不動産所在地の地方裁判所に申し立て、裁判所が定める時価相当額を供託して進みます(非訟事件手続法第87条・第88条)。公告の期間は3か月を下らず、供託をしないと申立ては却下されます。持分の譲渡は他の共有者全員が持分の全部を同じ買主へ譲渡することが条件で、裁判の効力発生後2か月以内に譲渡の効力が生じなければ失効します。裁判所への申立ての代理は弁護士、裁判所提出書類の作成と登記は司法書士、供託は法務局、共有不動産の売却の媒介は別事業体の四葉不動産株式会社に分けて整理します。行政書士は戸籍・登記記録等の調査と資料整理まで。
結論(先に要点):共有不動産に連絡の取れない共有者(所在等不明共有者)がいても、2023年4月1日施行の改正民法で、裁判所の裁判を経てその持分を取得し、または持分を含めて第三者へ売れる制度ができました(民法第262条の2・第262条の3)。手続は不動産所在地の地方裁判所に申し立て、裁判所が定める時価相当額を供託して進みます。本記事は制度の枠組みの一般的な情報提供であり、申立ての代理や裁判所提出書類の作成はしません。
所在等不明共有者とは誰で、どう認定されるか?
所在等不明共有者とは、共有者の中に「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」者がいる場合の、その共有者をいいます(民法第262条の2第1項)。相続が重なって共有者が増え、一部の共有者の住所も氏名も分からなくなった土地・建物で問題になります。
「知ることができない」かどうかは、必要な調査を尽くしても判明しないことを指します。具体的には、登記記録、住民票や戸籍の附票、相続関係を示す戸籍などを調べ、それでも氏名や所在が分からないことを、裁判所に資料で示します。調査を尽くさないまま「所在不明だ」と決めつけることはできません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 民法第262条の2(持分の取得)・第262条の3(持分の譲渡) |
| 施行日 | 2023年(令和5年)4月1日(民法等の一部を改正する法律=令和3年法律第24号) |
| 対象 | 不動産の共有持分 |
| 認定 | 登記記録・住民票・戸籍の附票等の調査を尽くしても共有者の氏名・所在が判明しないこと |
従来からある不在者財産管理人(民法第25条)は、不在者の財産全般を管理する制度で、選任や管理に時間と費用がかかります。これに対し262条の2・262条の3の制度は、共有の不動産について、所在等不明共有者の持分だけを対象に、取得や譲渡を進められる点で手続が絞られています。
不明共有者の持分を取得する裁判所の手続(民法262条の2)はどう進むか?
不動産が数人の共有で、所在等不明共有者がいるとき、裁判所は、共有者の請求により、その請求した共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる裁判をすることができます(民法第262条の2第1項)。請求した共有者が複数いれば、各自の持分の割合で按分して取得します。手続は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます(非訟事件手続法第87条第1項)。
裁判所は、申立てがあったことなどを公告し、所在等不明共有者が異議などを届け出る期間を定めます。この期間は3か月を下ってはなりません(非訟事件手続法第87条第2項)。登記簿上で氏名・所在が分かる共有者には、別途通知もされます(同条第3項)。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申立て | 不動産所在地の地方裁判所へ | 非訟事件手続法第87条第1項 |
| 公告・期間 | 異議等の届出期間を公告。3か月以上 | 同条第2項 |
| 供託 | 裁判所が定める額を供託(次節) | 同条第5項・第8項 |
| 裁判の確定 | 確定して初めて効力が生じる | 同条第9項 |
一つ注意点があります。その不動産について裁判上の分割請求や遺産分割の請求がされ、所在等不明共有者以外の共有者が異議を届け出たときは、裁判所は取得の裁判をすることができません(民法第262条の2第2項)。また、持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していなければこの裁判はできません(同条第3項)。
不明共有者の持分を含めて第三者に売る方法(262条の3)は?
共有不動産をまるごと第三者に売りたいのに、所在等不明共有者がいて全員の合意が取れない——このときは、持分の譲渡の制度を使います。裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、所在等不明共有者の持分を特定の者に譲渡する権限を付与する裁判をすることができます(民法第262条の3第1項)。ただし、他の共有者の全員が、それぞれの持分の全部を同じ特定の者(買主)に譲渡することが条件です。つまり、不動産全体を一人の買主に移すための制度です。
この権限付与の裁判が効力を生じた後、2か月以内(裁判所が伸長したときはその期間内)に、権限に基づく持分の譲渡の効力が生じなければ、裁判は効力を失います(非訟事件手続法第88条第3項)。買主・価格・決済の段取りを先に固めておく必要があります。
| 項目 | 持分の取得(262条の2) | 持分の譲渡(262条の3) |
|---|---|---|
| 何をする制度か | 不明共有者の持分を自分が取得 | 不明共有者の持分を含め第三者へ譲渡する権限を得る |
| 条件 | 請求共有者が取得(複数なら按分) | 他の共有者全員が持分全部を同じ買主へ譲渡すること |
| 期間の制約 | — | 裁判の効力発生後2か月以内に譲渡の効力(伸長可) |
| 支払請求 | 不明共有者が時価相当額を請求(同条第4項) | 不明共有者が時価相当額の持分割合按分額を請求(262条の3第3項) |
供託する金額(時価相当額)はどう決まるか?
いずれの制度でも、裁判所は、裁判をする前に、申立人に対し、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を供託所に供託し、その旨を届け出るよう命じます(非訟事件手続法第87条第5項。第88条で譲渡の裁判にも準用)。この供託をしないと、申立ては却下されます(同条第8項)。供託は、所在等不明共有者が受け取るべき対価を確保しておくための仕組みです。
供託すべき額は裁判所が定めますが、その基礎になるのは、取得の場合は取得される持分の時価相当額、譲渡の場合は不動産全体の時価相当額のうち所在等不明共有者の持分割合に相当する額です。時価を示すために、不動産の評価資料(査定や鑑定など)が必要になります。供託された金銭は、裁判が確定した後に、所在等不明共有者(本人や相続人)が還付を請求できます(法務省の制度資料・参照日 2026-11-01)。
| 制度 | 供託の基礎になる額 |
|---|---|
| 持分の取得(262条の2第4項) | 取得される持分の時価相当額 |
| 持分の譲渡(262条の3第3項) | 不動産全体の時価相当額の持分割合按分額 |
評価額や供託額の当てはめは、個別の事情で変わります。本記事は制度の枠組みの情報提供にとどめ、具体的な金額の判断はしません。
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申立ての代理・登記・供託は誰に振るか(弁護士・司法書士との分担)?
この制度は、調査・申立て・供託・登記・売却が連なります。担当は次のとおり分かれ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約・お手続きいただきます。
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共有不動産の売却の相談は、四葉行政書士事務所とは別事業体の四葉不動産株式会社が、独立した事業体として別契約で対応します。申立ての代理は弁護士、裁判所提出書類の作成と登記は司法書士が、いずれも独立した事業体として別々にご契約・お手続きいただきます。各分野は、それぞれの窓口・資格者と別々にご契約いただく前提で、当事務所は紹介料を受け取りません。共有者の所在が分からず手続が止まっている段階でも、事実関係の調査からお手伝いできます。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続の取扱業務は相続業務のご案内、相続の総合案内は相続のご相談をご覧ください。関連する記事として、相続人が見当たらないときの相続財産清算人・不在者財産管理人、遺産分割協議書の作り方、相続手続のはじめ方と戸籍調査もあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 連絡が取れない共有者がいると、不動産は一切動かせないのですか?
A. いいえ。2023年4月1日施行の民法第262条の2・第262条の3で、不動産所在地の地方裁判所の裁判を経て、所在等不明共有者の持分を取得したり、持分を含めて第三者に売ったりできる制度ができました。ただし、必要な調査を尽くして所在が分からないことを示し、裁判所が定める時価相当額を供託するなどの手続が必要です。
Q. 不在者財産管理人を選ぶのと、この制度はどう違いますか?
A. 不在者財産管理人(民法第25条)は不在者の財産全般を管理する制度で、管理人の選任・管理に時間と費用がかかります。262条の2・262条の3は、共有の不動産について所在等不明共有者の持分だけを対象に、取得または第三者への譲渡を進める制度で、手続が持分に絞られています。どちらが適するかは事情によるため、弁護士に確認してください。
Q. 供託したお金は、いなくなった共有者が戻ってきたらどうなりますか?
A. 供託は所在等不明共有者のために行うもので、裁判が確定した後に、本人や相続人が供託所へ還付を請求できます(法務省の制度資料・参照日 2026-11-01)。供託すべき額は、取得される持分の時価相当額などを基礎に裁判所が定めます(非訟事件手続法第87条第5項)。供託をしないと申立ては却下されます(同条第8項)。
Q. 行政書士は裁判所への申立てもしてくれますか?
A. いたしません。裁判所への申立ての代理は弁護士、申立書など裁判所に提出する書類の作成と登記は司法書士の領域です。当事務所(行政書士)は、戸籍・登記記録・住民票の附票などの調査と、共有関係・相続関係の資料の整理という範囲でお手伝いします。弁護士・司法書士・不動産は、いずれも独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「民法」第262条の2(所在等不明共有者の持分の取得。裁判所が共有者の請求により持分を取得させる裁判、分割・遺産分割請求への異議届出による制限、相続財産の持分は相続開始から10年経過要、時価相当額の支払請求)、第262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡権限の付与。他の共有者全員の譲渡を条件、時価相当額の持分割合按分額の支払請求)(2023年=令和5年4月1日施行・参照日 2026-11-01)
- e-Gov法令検索「非訟事件手続法」第87条(持分の取得の裁判。不動産所在地の地方裁判所の管轄、3か月を下らない期間の公告、裁判所が定める額の供託命令と供託しない場合の却下、裁判の確定による効力)、第88条(持分の譲渡の権限付与の裁判。第87条の準用、効力発生後2か月以内に譲渡の効力が生じなければ失効・伸長可)(参照日 2026-11-01)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」の改正共有制度(所在等不明共有者の持分の取得・譲渡、供託と供託金の還付の取扱い)に関する制度資料(参照日 2026-11-01)
本記事は一般的な情報提供であり、特定の共有不動産についてどの手続が使えるか、供託すべき金額がいくらかを保証・判断するものではありません。要件・手続・期間は法令改正や運用で変わるため、必ず最新の条文と法務省・裁判所の案内で確認してください。裁判所への申立ての代理は弁護士、申立書など裁判所提出書類の作成と裁判確定後の所有権移転登記は司法書士、供託の手続は法務局(供託所)、共有不動産の売却の媒介は別事業体の四葉不動産株式会社(宅地建物取引業者)が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約・お手続きのうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。具体的な法的判断は、面談のうえ行政書士などの有資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。
まずは、状況を整理するところから。
四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。
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