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2026.09.08相続の手続き(行政書士の実務から)

相続人がいないとき──相続財産清算人の選任と特別縁故者への財産分与

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

法定相続人がいない(相続人のあることが明らかでない)ときは、相続財産が法人となり(民法第951条)、家庭裁判所が利害関係人・検察官の請求で相続財産清算人を選任します(民法第952条第1項)。清算人の弁済、特別縁故者への財産分与(民法第958条の2、3箇月以内)、残余の国庫帰属(民法第959条)までの全体像と、2023年(令和5年)4月1日施行の改正で相続財産管理人から相続財産清算人へ名称が変わり公告が並行化された点を整理し、選任申立て・審判は弁護士・司法書士、登記は司法書士、相続税は税理士へ分離受任で振る分担をまとめました。

結論(先に要点):法定相続人がいない(相続人のあることが明らかでない)ときは、相続財産は法人となり(民法第951条)、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求で相続財産清算人を選任します(民法第952条第1項)。清算人が債権者・受遺者へ弁済し、それでも残った財産は、被相続人と生計を同じくしていた者・療養看護に努めた者などの特別縁故者へ分与でき(民法第958条の2)、最終的に残ったものは国庫に帰属します(民法第959条)。2023年(令和5年)4月1日施行の改正で「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に改められ、公告が並行化されました。本記事は行政書士の視点で手続の全体像を整理する一般的な情報提供です。選任の申立て・審判は家庭裁判所の手続で弁護士・司法書士の領域、不動産の登記は司法書士、相続税は税理士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく前提で分けて振ります。

法定相続人が誰もいないとき、遺産はどうなるのか?

配偶者も子も直系尊属も兄弟姉妹もいない、あるいは全員が相続放棄した——このように「相続人のあることが明らかでないとき」は、相続財産はそのままでは宙に浮きます。民法は、この財産を一つの法人(相続財産法人)として扱い(民法第951条)、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人が管理・清算する仕組みを用意しています。清算人が被相続人の債権者や受遺者に弁済し、残った財産があれば特別縁故者への分与を経て、最後に残ったものが国庫に帰属します。

段階内容根拠
相続財産法人の成立相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人となる民法第951条
清算人の選任・相続人捜索の公告家庭裁判所が清算人を選任し、6箇月以上の期間を定めて相続人を捜索する公告をする民法第952条
債権者・受遺者への公告清算人が2箇月以上の期間を定めて請求の申出を公告する(上記6箇月の期間内に満了)民法第957条第1項
権利主張がないとき期間内に相続人の権利主張がなければ、知れなかった債権者・受遺者は権利を行使できない民法第958条
特別縁故者への分与家庭裁判所が請求により清算後残存財産の全部または一部を与える民法第958条の2
国庫帰属処分されなかった財産は国庫に帰属する民法第959条

「相続人がいない」ケースには、初めから親族が誰もいない場合のほか、相続人全員が相続放棄をして結果的に承継者がいなくなった場合も含まれます。相続放棄の基本は相続放棄と限定承認で整理しています。

相続財産清算人は誰が・どうやって選任するのか?

相続財産清算人は、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が選任します(民法第952条第1項)。利害関係人には、被相続人にお金を貸していた債権者、遺贈を受ける受遺者、特別縁故者になり得る立場の人、被相続人に対して債権・債務を持つ人などが含まれます。申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。手続は家事事件手続法の別表第一に掲げる審判事件として進みます。

項目内容
申し立てられる人利害関係人(相続債権者・受遺者・特別縁故者になり得る者など)または検察官
申立先被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
手続の性質家事事件手続法(別表第一の審判事件)
予納金官報公告費用や清算人の報酬に充てる予納金を求められることがある

清算人には、多くの場合、弁護士や司法書士などが選ばれます。選任後、清算人は相続人を捜索する公告と、債権者・受遺者への請求申出の公告を行い、財産を換価して弁済にあてます。選任の申立てや審判は家庭裁判所への手続であり、代理や紛争性のある対応は弁護士、審判申立書類の作成や登記は司法書士の領域です。行政書士は、行政書士業務の範囲で、財産や関係者の整理といった前提部分を情報として支援します。

特別縁故者として財産分与を受けられるのはどんな人か?

清算を経ても財産が残り、相続人としての権利を主張する者がいないとき、家庭裁判所は、相当と認めれば特別縁故者に清算後残存する財産の全部または一部を与えることができます(民法第958条の2第1項)。条文が挙げる特別縁故者は、次の3つの類型です。

類型
被相続人と生計を同じくしていた者内縁・事実婚の配偶者、事実上の養子など
被相続人の療養看護に努めた者長年身の回りの世話や看護を続けてきた人
その他被相続人と特別の縁故があった者上記に準じる密接な関係があったと認められる人

分与を求める請求は、清算人選任の公告(民法第952条第2項)で定められた期間の満了後3箇月以内にしなければなりません(民法第958条の2第2項)。この期限を過ぎると分与を受けられなくなるため、時期の管理が重要です。分与するかどうか、どの範囲かは、被相続人との関係の濃さや財産の状況を踏まえて家庭裁判所が判断します。誰が特別縁故者に当たるかの最終判断は家庭裁判所が行うもので、本記事はその見込みを断定するものではありません。おひとりさまが生前に備える方法は死後事務委任契約任意後見契約で整理しています。

2023年の民法改正で清算の手続きと期間はどう変わったのか?

2023年(令和5年)4月1日に施行された民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)により、この分野は大きく整理されました。ポイントは名称と公告の2つです。

改正点改正前改正後
名称相続財産管理人相続財産清算人
公告の進め方選任の公告・債権申出の公告・相続人捜索の公告を順に行う相続人捜索の公告(6箇月以上)と債権申出の公告(2箇月以上)を並行して行う
手続に要する期間の目安公告を順に重ねるため合計で10箇月以上公告を並行させることで、最短でおおむね6箇月程度

改正前は3種類の公告を順番に重ねる必要があり、清算の完了まで少なくとも10箇月以上かかっていました。改正後は、相続人を捜索する公告(民法第952条第2項)の期間内に、債権者・受遺者への請求申出の公告(民法第957条第1項)が満了するよう並行して行うため、期間が短縮されました。なお、この改正では相続開始後の相続財産の保存を目的とする相続財産管理人(民法第897条の2)という別の制度も設けられており、名称が似ているため混同しないよう注意が必要です。

選任申立て・登記・相続税はそれぞれ誰に相談すればよいのか?

相続人不存在の手続は、家庭裁判所・登記・税務が絡み、複数の資格者の領域にまたがります。役割は次のように分かれ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提です。

  • 手続の全体像の整理、財産や関係者の情報の整理 → 四葉行政書士事務所(行政書士業務の範囲)
  • 相続財産清算人の選任申立て・審判など家庭裁判所の手続、紛争性のある事案 → 弁護士(代理・交渉)、司法書士(申立書類の作成)
  • 相続財産清算人名義への変更登記、国庫帰属や特別縁故者への分与に伴う不動産登記 → 司法書士
  • 相続税・譲渡所得など税務の申告 → 税理士

行政書士は家庭裁判所の審判申立てを代理することはできず、清算人に選任されるのも通常は弁護士・司法書士です。当事務所の役割は、あくまで手続の見取り図づくりと、行政書士業務の範囲での情報整理にとどまります。相続業務の全体像は相続業務のサービス、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。土地を手放す選択肢としての国庫帰属は相続土地国庫帰属制度でも扱っています。相続した不動産の売却など不動産の相談は、別事業体の四葉不動産株式会社が相続不動産の窓口で対応します。四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体で、各分野は独立した事業体として別々にご契約いただく前提です。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 相続人が全員相続放棄した場合も相続財産清算人が必要ですか?
A. 相続人全員が放棄して承継する人がいなくなった場合も、「相続人のあることが明らかでないとき」に当たり、相続財産は法人となります(民法第951条)。債権者への弁済や財産の処分が必要なときは、利害関係人または検察官が家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てます(民法第952条第1項)。

Q. 内縁の配偶者は財産をもらえますか?
A. 内縁・事実婚の配偶者は法定相続人ではありませんが、被相続人と生計を同じくしていた者などの特別縁故者として、家庭裁判所へ財産分与を請求できる場合があります(民法第958条の2第1項)。請求は清算人選任の公告期間の満了後3箇月以内に行う必要があります(同条第2項)。認められるかどうかは家庭裁判所の判断です。

Q. 手続にはどれくらい時間がかかりますか?
A. 2023年(令和5年)4月1日施行の改正で公告が並行して行えるようになり、最短でおおむね6箇月程度が目安になりました。改正前は公告を順に重ねるため10箇月以上かかっていました。実際の期間は財産の内容や換価の状況によって変わります。

Q. 残った財産は最終的にどうなりますか?
A. 清算後、特別縁故者への分与によっても処分されなかった財産は、国庫に帰属します(民法第959条)。不動産が残る場合の名義変更(相続財産清算人名義への登記や国庫帰属の登記)は司法書士、相続税は税理士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第897条の2・第951条・第952条・第957条・第958条・第958条の2・第959条(参照日 2026-09-08)
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」(相続財産管理人から相続財産清算人への名称変更・公告の合理化、2023年〔令和5年〕4月1日施行)(参照日 2026-09-08)
  • 裁判所「相続財産清算人の選任」(家事事件手続法別表第一の審判事件。申立先・利害関係人・予納金の説明)(参照日 2026-09-08)

本記事は一般的な情報提供であり、誰が特別縁故者に当たるか、分与を受けられるかといった最終判断や、紛争性のある個別の助言をするものではありません。相続財産清算人の選任申立てや審判は家庭裁判所への手続で、代理・交渉は弁護士、申立書類の作成や不動産登記は司法書士、相続税は税理士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。相続した不動産の売却の相談は別事業体の四葉不動産株式会社が担当し、当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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