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2026.08.28投資・事業用不動産

調剤薬局を開くための物件は何が必要?──用途地域と構造設備基準(面積・調剤室・清潔区域)の確認点

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

調剤薬局の物件で先に効くのは、①用途地域(薬局は「店舗」扱いで、診療所と違い用途地域の制限を受ける)②薬局等構造設備規則が求める面積おおむね19.8㎡以上・調剤室6.6㎡以上・清潔な区画、の2点です。医療モールやクリニック併設なら処方箋の応需と動線も見ます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを薬機法と構造設備規則の条文から整理します。

結論(先に要点):調剤薬局の物件で先に効くのは、①用途地域(薬局は「店舗」扱いで、診療所と違い用途地域の制限を受ける)②薬局等構造設備規則が求める面積おおむね19.8㎡以上・調剤室6.6㎡以上・清潔な区画、の2点です。医療モールやクリニック併設なら処方箋の応需と動線も見ます。可否の最終判断は保健所と特定行政庁にあります。契約前に用途地域と区画の素地を確かめれば、手戻りは防げます。

「クリニックの隣だから薬局も当然入れる」と考えて借りたのに、開設許可の段になって調剤室の面積や区画のやり直しを求められる。飲食店やクリニックの物件で起きるのと同じ手戻りが、調剤薬局でも起きます。本記事は、東京で調剤薬局を新規開設・移転しようとしている薬剤師・医療系事業者の方と、医療モールを企画する不動産オーナーに向けて、賃貸借契約を結ぶ前に確認できることを、医薬品医療機器等法(薬機法)と薬局等構造設備規則の条文から順に整理したものです。可否の最終確認は保健所と特定行政庁の窓口で行います。

調剤薬局の物件は、どんな用途地域なら開けるのか?

ここが、クリニックとの最大の違いです。診療所は建築基準法の用途制限では全用途地域で建てられますが、薬局は「店舗(物品を販売する店舗)」として扱われ、用途地域の制限を受けます。

建築基準法(昭和25年法律第201号)は、別表第二と第48条で用途地域ごとに建てられる建築物を定めています。薬局は住居系の一部地域では単独の店舗として建てにくく、第一種低層住居専用地域では原則として兼用住宅(延べ面積の2分の1以上を住居とし、店舗部分が50㎡以下)の範囲でしか建てられません。近隣商業・商業・準工業地域などでは建てやすくなります。

用途地域薬局(店舗)の扱いの目安
第一種低層住居専用地域単独店舗は不可。兼用住宅の範囲(住居が延べ面積の1/2以上・店舗部分50㎡以下)に限られる
第二種低層住居専用地域政令で定める一定規模の店舗として建てられる場合がある
第一種・第二種中高層住居専用地域面積制限が緩和され建てやすい
住居・準住居・近隣商業・商業・準工業地域建てられる

「診療所が建っている土地だから薬局も当然に入れる」とは限りません。 診療所(クリニック)は用途制限を受けない一方、その隣接地や同じ建物でも、薬局は店舗として用途地域の制限を受けます。加えて、事務所や別業種の店舗を薬局に変えるとき、床面積によっては用途変更の確認申請が要る場合があります。用途地域上の可否と用途変更の要否は、契約前に特定行政庁で確認できます。 クリニック物件の確認順序は「クリニックの物件は、契約前に何を確認するのか」に、用途地域と容積率が土地の値づけをどう動かすかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。

薬局開設許可の構造設備基準(面積・調剤室・清潔区域)は何を満たすのか?

薬局を開くには、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律・昭和35年法律第145号)第4条第1項により、所在地の都道府県知事(保健所を設置する市の市長・特別区の区長)の許可が要ります。この許可は6年ごとに更新が必要です(同条第4項)。そして第5条は、構造設備が厚生労働省令で定める基準に適合しないときなどに、許可を与えないことができると定めます。

その「厚生労働省令で定める基準」が、薬局等構造設備規則(昭和36年2月1日厚生省令第2号)第1条です。物件選びに直接効く号を抜き出すと、次のとおりです(2026年8月28日参照)。

薬局の構造設備基準(抜粋)
第一号購入・譲受けをしようとする者が容易に出入りでき、薬局であることが外観から明らかであること
第二号換気が十分であり、かつ、清潔であること
第三号他の薬局・店舗、常時居住する場所、不潔な場所から明確に区別されていること
第四号面積は、おおむね19.8㎡以上とし、薬局の業務を適切に行えること
第五号照度(医薬品の陳列は60ルクス以上、調剤台は120ルクス以上)を確保できる採光・照明
第七号冷暗貯蔵のための設備を有すること
第八号鍵のかかる貯蔵設備を有すること
第十号調剤室は6.6㎡以上の面積を有し、天井・床は板張り・コンクリート又はこれらに準ずるもので、購入者等が進入できない措置が採られていること

つまり物件側では、面積おおむね19.8㎡以上を確保でき、そのなかに6.6㎡以上の調剤室を、居住場所や不潔な場所から明確に区分して作れるかが起点になります。なお「清潔区域」という言い方でよく問われるのは、在宅医療向けに無菌製剤処理(高カロリー輸液の混合など)を行う場合の無菌調剤室です。これは無菌製剤処理を行う薬局だけに求められる別基準で、室内の空気清浄度を常時ISO14644-1のクラス7以上に保つ設備などが要ります。通常の調剤のみなら不要ですが、在宅対応を予定するなら物件段階で設置余地を見ておくと手戻りがありません。

給排水・空調・電気容量の設計は施工業者(設計者)の領域です。当社(不動産会社)は、物件がこれらの条件を満たせるかの下調べと、貸主との条件交渉に伴走します。 設備設計そのものは行いません。同じ構造の手戻りが起きる理由は「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」に、契約書のどこを読むかは「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」に整理しています。

医療モールやクリニック併設の物件で、気をつける点は何か?

医療モールは、集患の動線が整い開業しやすい一方、物件として固有の論点があります。

論点なぜ効くか
構造設備の区分規則第三号は「他の薬局・店舗・居住場所・不潔な場所からの明確な区別」を求める。共用部と調剤室・待合の仕切りを図面で確認する
面積の確保区画を切ると有効面積が減る。19.8㎡・調剤室6.6㎡を割らないか
独立性薬機法上、薬局は特定の医療機関と経営的・機能的に独立していることが求められる。動線や誘導の作りが問われる場面がある
賃料と処方箋の見込み併設クリニックの診療科と処方の傾向で在庫構成が変わる。賃料負担とのバランスを見る
用途地域・用途変更モール全体の用途と、薬局部分の用途地域上の可否・用途変更の要否

とくに薬局と医療機関の独立性は、物件の作り(出入口・動線・区画)に関わるため、契約前に図面段階で保健所の考え方を確認しておくのが安全です。数値や運用は自治体で異なります。事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選び、保健所への届出が契約より先に絡む例は「美容室・理容所を開くための物件は何を確認する?」をご覧ください。

契約前に、保健所と行政書士へ確認しておくことは何か?

薬局開設許可は、構造設備が整ってから保健所の検査を受けて下ります。したがって流れはこうなります。

順番やること担い手
1用途地域・用途変更の要否を確認特定行政庁・宅地建物取引業者
2面積・調剤室・区画・給排水・電気容量を満たせるか下調べ宅地建物取引業者・施工業者
3賃貸借契約宅地建物取引業者
4内装工事(調剤室・区画・貯蔵設備・照明・換気)施工業者
5薬局開設許可の申請開設者・行政書士
6保健所の立入検査(構造設備)・審査保健所
7許可後に開設・調剤開始開設者

物件の契約は手続の前提です。 管理薬剤師の配置など人の要件は物件とは別に準備します。薬局開設許可など保健所・薬事の窓口に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。行政の窓口・様式・自治体の数値・受付の運用は変わります。着手時点で管轄の保健所のページを直接ご確認ください。

誰に相談すればよいですか?

物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。薬局開設許可など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。建築確認・調剤室の構造の設計は建築士が、給排水・空調の設計は施工業者が扱います。薬機法上の適合可否の最終判断は保健所(都道府県・保健所設置市・特別区)が行い、税務は税理士へ振ります。

この2つ(不動産会社・行政書士事務所)はそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士(2026年9月開業予定)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 診療所が建てられる土地なら、薬局も当然に開けますか?
A. とは限りません。診療所は建築基準法の用途制限では全用途地域で建てられますが、薬局は「店舗」として扱われ、用途地域の制限を受けます。第一種低層住居専用地域では原則として兼用住宅の範囲に限られます。用途地域上の可否は物件ごとに異なるため、特定行政庁の窓口で確認してください。

Q. 調剤薬局に必要な面積は、法律で決まっていますか?
A. 薬局等構造設備規則第1条は、薬局の面積を「おおむね19.8㎡以上」、調剤室を「6.6㎡以上」と定めています。これは全国共通の省令基準です。ただし照度や設備の細部の運用、必要な広さの判断は自治体・物件で幅があるため、管轄の保健所で確認してください。

Q. 在宅医療に対応する予定です。物件段階で何を見ておけばよいですか?
A. 無菌製剤処理(高カロリー輸液の混合など)を行うなら、無菌調剤室が要ります。これは無菌製剤処理を行う薬局だけに求められる別基準で、空気清浄度を常時ISO14644-1のクラス7以上に保つ設備などが必要です。通常の調剤のみなら不要ですが、将来対応するなら設置余地を物件段階で見ておくと手戻りがありません。

Q. 薬局開設許可は誰がいつ申請しますか?物件契約より先ですか?
A. 薬局開設許可(薬機法第4条第1項)は、構造設備が整い保健所の検査を受けてから下ります。したがって、物件契約→内装工事→許可申請→保健所の検査・審査→開設、の順です。物件の契約は手続の前提になります。許可申請書など官公署提出書類の作成は行政書士が承ります。

この記事の出典(一次情報)

※構造設備の細部(照度の測り方、必要面積の判断、区画の運用など)や薬局と医療機関の独立性の審査は、各都道府県・保健所設置市・特別区の運用で幅があります。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の保健所と特定行政庁の窓口で確認してください。
※用途地域上の可否・用途変更の確認申請の要否は、物件の床面積・構造・区域の指定によって変わります。最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や薬局開設許可の可否を判断・保証するものではありません。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、薬局開設許可等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と許可(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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