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2026.08.24投資・事業用不動産

小規模保育事業の物件を貸す・探すとき、用途地域と面積で何を確認するのか

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

小規模保育の物件は用途地域では詰まりません。保育所は最も厳しい第一種低層住居専用地域でも建てられます。詰まるのは居室の面積(満2歳未満は1人3.3㎡、満2歳以上は1人1.98㎡)、用途変更の確認申請の要否、消防用設備、2階以上の避難の4点。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを条文と省令から順に整理します。

結論(先に要点):小規模保育の物件は、用途地域では詰まりません。保育所は建築基準法別表第二(い)項第六号で、最も制限の厳しい第一種低層住居専用地域でも建てられます。詰まるのは①居室の面積(満2歳未満は1人3.3㎡以上、満2歳以上は1人1.98㎡以上)②用途変更の確認申請の要否③消防用設備④2階以上に置くときの避難、の4点で、いずれも賃貸借契約の前に確認できます。

「あとは物件を決めるだけ」と言われて探し始め、内見で止まる。介護事業所やクリニックで起きる手戻りが、保育でも同じ形で起きます。本記事は、東京で小規模保育事業(定員6〜19人)の開設を考える事業者と、その物件を紹介・賃貸する不動産オーナー・仲介に向けて、契約前に確認できることを条文から順に並べたものです。認可の可否そのものは市町村の窓口が判断します。当社は物件側の用途・面積・避難の一次確認と紹介までを担い、可否の最終確認は市町村・特定行政庁・所轄消防署で行います。

小規模保育の物件は用途地域で建てられるのか?

結論から言えば、用途地域は障害になりにくい論点です。

建築基準法(昭和25年法律第201号)は、用途地域ごとに建てられる建築物を別表第二で定めています。「保育所」は、最も制限の厳しい第一種低層住居専用地域でも建てられます(同法別表第二(い)項第六号「老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの」)。第一種低層で建てられるということは、そこで挙げられた用途を引く他の住居系地域でも、商業・工業系の地域でも建てられるということです。用途地域を理由に「保育所は建てられない」と言われる場面は、原則としてありません。

ただし、これは「建築基準法上の用途制限」の話です。小規模保育事業を実際に始めるには、別に児童福祉法上の認可が要ります。小規模保育事業は児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第10項が定める「地域型保育事業」の一つで、利用定員6人以上19人以下、原則として満3歳未満の子どもを対象とします。開設者が国・都道府県・市町村以外であれば、同法第34条の15第2項により市町村長の認可を受けなければなりません。

論点決めているもの確認先
建物を建てられる用途地域か建築基準法別表第二特定行政庁(自治体の建築担当)
事業として認可されるか児童福祉法・市町村条例市町村(保育担当課)

用途地域そのものは自治体の都市計画図で調べられますが、地区計画・条例による上乗せがある区域では結論が変わることがあります。用途地域と容積率が土地の値づけをどう動かすかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。用途地域の最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。

居室の面積と採光はどこまで必要なのか?

ここが、物件選びの実質的な分かれ目です。定員は面積で頭打ちになります。

小規模保育事業(A型・B型)の設備は、家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準(平成26年厚生労働省令第61号)第28条が定めています。この省令は「従うべき基準」等として、市町村が条例(同法第34条の16)で具体化します。第28条の面積は次のとおりです。

区分必要な室・設備面積(子ども1人あたり)
満2歳未満乳児室又はほふく室、調理設備、便所乳児室又はほふく室 3.3㎡以上
満2歳以上保育室又は遊戯室、屋外遊戯場、調理設備、便所保育室又は遊戯室 1.98㎡以上/屋外遊戯場 3.3㎡以上

ここで、認可保育所(保育所型の児童福祉施設)とは面積の取り方が違う点に注意してください。認可保育所は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第32条で、乳児室が1人1.65㎡以上、ほふく室が1人3.3㎡以上と分かれています。小規模保育では乳児室とほふく室が「乳児室又はほふく室」でまとめられ、満2歳未満は一律3.3㎡以上です。「保育所の基準で計算した定員」と「小規模保育の基準で計算した定員」は一致しません。

採光も居室の要件です。建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第19条第3項は、保育所の保育室について採光に有効な部分の面積を床面積の5分の1以上とすることを求めています(照明設備の設置など一定の措置で緩和される場合があります)。窓が小さいテナントの一室では、この採光が定員の頭を押さえることがあります。

つまり、内見の段階で見るのは「広いか」ではなく、「この床面積と窓で、狙う定員が入るか」です。屋外遊戯場は、付近の公園等で代替できる場合の扱いが条例で定められていることがあります。市町村の保育担当課に、条例上の面積の算定方法を先に確認してください。

建物の用途変更確認申請はいつ要るのか?

事務所や店舗を保育所に変える場合、ここがクリニックと逆になります。

無床のクリニックは、建築基準法別表第一(い)欄の特殊建築物に当たらないため、用途変更の確認申請が原則要りませんでした。保育所は違います。 建築基準法施行令第115条の3第1号は、別表第一(い)欄(二)項(病院・有床診療所・共同住宅等)に類する用途として「児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む。)」を政令で指定しています。保育所はこの児童福祉施設等に含まれます。

その結果、建築基準法第87条第1項・第6条第1項第1号により、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える保育所への用途変更は、確認申請が必要になります。逆に、200㎡以下であれば用途変更の確認申請は原則要りません。

無床クリニックへの用途変更保育所への用途変更
別表第一(い)欄の特殊建築物当たらない当たる(施行令第115条の3で(二)項に類する用途)
用途変更の確認申請(第87条第1項)原則不要その用途部分が200㎡超なら必要

ただし、200㎡以下で確認申請が要らない場合でも、建築基準法を守らなくてよいわけではありません。第87条第2項は、用途を変更する場合に第48条(用途地域の制限)などを準用すると定めています。前述の採光(施行令第19条)、避難・内装制限といった実体規定は、確認申請の要否と関係なく変更後の用途に応じてかかります。「確認申請が不要」は「工事の中身を誰も見ない」という意味ではありません。 用途変更確認申請そのものの手続と図書の作成は、設計者(建築士)の領域です。

消防設備で追加コストが出るのはどこか?

保育所は、消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一の**(6)項ハ**に位置づけられます。乳幼児という「避難に支援が必要な人」が使う施設なので、消防用設備の判断は慎重に行われます。

設備保育所((6)項ハ)でのおおよその考え方根拠
消火器延べ面積150㎡以上で必要消防法施行令第10条
自動火災報知設備原則として延べ面積300㎡以上で必要。ただし施設の実態により基準が変わり得る消防法施行令第21条
スプリンクラー設備自力避難困難者が入所する施設((6)項ロ)で厳しく、通常規模の保育所は対象外のことが多い消防法施行令第12条

ここに落とし穴が二つあります。 一つは、テナントビルの一室を借りる場合、消防用設備の判断の単位がその一室ではなく建物全体になり得ること。もう一つは、乳幼児を主として利用させる施設は、就寝(昼寝)や避難支援の実態に応じて、延べ面積の下限を待たずに自動火災報知設備等が求められる運用があり得ることです。「小さいから要らない」とは限りません。

必要な設備がすでにビルに付いているのか、追加工事が要るのか、費用は誰が負担するのか。これは契約前に所轄消防署へ事前相談して確かめることです。契約後に判明すると収支計画が動きます。同じ理由で消防と自治体の確認が契約より先に要る例は「民泊を始められる物件の条件」に書きました。

なお、保育室を建物の2階以上に置く場合、家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準第28条は、耐火・準耐火構造や避難用の階段・経路など、平屋にはない上乗せの要件を定めています。「2階以上なら安く借りられる」と考えて選ぶと、この上乗せで逆転することがあります。

契約前に確認する順番は?

順番確認すること確認先
1用途地域と、地区計画・条例による上乗せ特定行政庁(自治体の建築担当)
2条例上の面積算定と、狙う定員が入るか市町村(保育担当課)
3用途変更の確認申請の要否(用途部分200㎡超か)、検査済証の有無特定行政庁・指定確認検査機関
4採光・避難などの実体規定(2階以上ならさらに上乗せ)設計者(建築士)
5消防用設備等の要否と、既存設備の状況所轄消防署
6貸主の承諾(用途・看板・給排水・原状回復の範囲・事故時の扱い)貸主・管理会社
7賃貸借契約の条項宅地建物取引業者

1から5の結論が出る前に契約すると、手戻りの費用は借主が負います。逆に1から5を先に済ませれば、貸主に説明できる材料が揃います。賃貸借契約書のどこを読むかは「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」に、同じ構造の手戻りが介護事業所で起きる理由は「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」に、無床クリニックとの用途変更の違いは「クリニックの物件は、契約前に何を確認するのか」に整理しています。障害福祉のグループホーム物件の探し方は「グループホームの物件の探し方」を、事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。

誰に相談すればよいですか?

物件の調査、媒介、賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。認可申請など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。用途変更の確認申請の図書作成は建築士(設計者)が、消防用設備の判断は所轄消防署が、認可そのものの可否は市町村が行います。

四葉不動産と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 第一種低層住居専用地域の住宅街に、小規模保育の物件を借りられますか?
A. 建築基準法別表第二(い)項第六号は「保育所」を第一種低層住居専用地域内に建築できる建築物として挙げています。用途地域そのものは障害になりにくい論点です。ただし地区計画・条例による制限、既存建物の構造、駐車場や送迎スペースの扱いは物件ごとに異なります。可否の最終確認は特定行政庁と市町村の窓口で行ってください。

Q. 認可保育所の面積で計算した定員が、そのまま小規模保育でも入りますか?
A. 一致しません。認可保育所は乳児室1人1.65㎡・ほふく室1人3.3㎡と分かれますが、小規模保育(A型・B型)は「乳児室又はほふく室」で満2歳未満が一律1人3.3㎡以上、満2歳以上の保育室・遊戯室が1人1.98㎡以上です(家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準第28条)。条例上の算定方法を市町村に確認してください。

Q. 事務所ビルの一室を小規模保育所にします。用途変更の確認申請は要りますか?
A. 保育所は建築基準法施行令第115条の3第1号により別表第一(い)欄(二)項に類する特殊建築物とされます。その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えると、同法第87条第1項の用途変更確認申請が必要です。200㎡以下でも採光・避難などの実体規定はかかります。工事の内容は設計者と特定行政庁にご確認ください。

Q. 小さな保育所でも自動火災報知設備は要りますか?
A. 保育所は消防法施行令別表第一(6)項ハに当たり、自動火災報知設備は原則として延べ面積300㎡以上で必要です(同令第21条)。ただし乳幼児が利用する施設は実態により基準が変わり得ますし、テナントビルでは建物全体で判断されることがあります。既存設備の有無を含め、所轄消防署に事前相談してください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第6条第1項第1号=別表第一(い)欄の特殊建築物200㎡超、第87条第1項=用途変更、同条第2項=第48条等の準用、別表第二(い)項第六号=保育所。現行条文は令和8年法律第23号による改正・2026年5月27日施行。2026年8月24日参照
  • e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(昭和25年政令第338号。第19条第3項=保育所の保育室の採光(床面積の5分の1以上)、第115条の3第1号=別表第一(い)欄(二)項に類する用途としての児童福祉施設等。2026年8月24日参照
  • e-Gov法令検索「児童福祉法」(昭和22年法律第164号。第6条の3第10項=小規模保育事業(定員6〜19人・満3歳未満)、第34条の15第2項=市町村長の認可、第34条の16=市町村条例による基準。2026年8月24日参照
  • e-Gov法令検索「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」(平成26年厚生労働省令第61号。第28条=小規模保育事業A型の設備(乳児室又はほふく室3.3㎡/保育室又は遊戯室1.98㎡/屋外遊戯場3.3㎡・2階以上の避難)、第29条=職員(保育士)の数。2026年8月24日参照
  • e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和23年厚生省令第63号。第32条=認可保育所の乳児室1.65㎡・ほふく室3.3㎡・保育室及び遊戯室1.98㎡(対比のため)。2026年8月24日参照
  • e-Gov法令検索「消防法施行令」(昭和36年政令第37号。別表第一(6)項ハ=保育所、第10条=消火器、第12条=スプリンクラー設備、第21条=自動火災報知設備。現行条文は令和7年政令第85号による改正・2025年10月1日施行。2026年8月24日参照

※用途変更の確認申請の要否は、変更前後の用途、床面積、政令で指定する類似の用途相互間に当たるか、増改築を伴うかによって変わります。本記事は個別の物件について判断していません。
※消防用設備等の設置義務は、防火対象物の用途区分・延べ面積・階数・構造や利用者の実態によって変わります。既存設備が現行の基準に適合しているかを含め、所轄消防署への事前相談が必要です。
※小規模保育事業の設備・運営の基準や屋外遊戯場の代替の扱いは、市町村の条例で具体化されます。着手時点で当該自治体のページと担当課を直接ご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や認可の取得を判断・保証するものではありません。最終確認は市町村・特定行政庁・所轄消防署の窓口で行ってください。
※物件の調査・媒介および賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、認可申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。用途変更確認申請の図書作成は建築士(設計者)の業務です。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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