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2026.08.29投資・事業用不動産

鍼灸院・整骨院の物件を探すとき、用途地域と保健所の開設届で何を確認する?

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

鍼灸院・整骨院(あはき・柔整の施術所)の物件で先に効くのは、①用途地域(施術所は診療所と違い「サービス業を営む店舗」に準じて扱われるのが一般的で、用途地域の制限を受ける)②施術所の構造設備基準(専用施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上・換気・消毒設備)を満たせるか、の2点です。開設届は「開設後10日以内」に施術者本人が保健所へ出すもので、届出書類の作成は行政書士が承ります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることをあはき法・柔道整復師法の条文と省令から整理します。

結論(先に要点):鍼灸院・整骨院(あはき・柔整の施術所)の物件で先に効くのは、①用途地域(施術所は診療所と違い「サービス業を営む店舗」に準じて扱われるのが一般的で、用途地域の制限を受けます)②施術所の構造設備基準(専用施術室6.6㎡以上・待合室3.3㎡以上・換気・消毒設備)を満たせるか、の2点です。開設届は「開設後10日以内」に施術者本人が保健所へ出すもので、届出書類の作成は行政書士が承ります。契約前に用途地域と広さ・換気を確かめれば、手戻りは防げます。

「内装だけ」と言われて借りたのに、いざ開こうとすると施術室の広さや換気が基準に足りない。飲食店や美容室で起きるのと同じ手戻りが、鍼灸院・整骨院でも起きます。本記事は、東京で鍼灸院・接骨院(整骨院)を開こうとしている施術者の方と、その物件を貸す方に向けて、賃貸借契約を結ぶ前に確認できることを、あはき法(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)・柔道整復師法の条文と省令から順に整理したものです。療養費の取扱いや施術内容の当否といった医事の判断には踏み込みません。可否の最終確認は特定行政庁と保健所の窓口で行います。

鍼灸院・整骨院はどの用途地域なら開ける?

まず前提の整理です。鍼灸院は「はり・きゅう」の施術所(あはき法)、整骨院・接骨院は「柔道整復」の施術所(柔道整復師法)で、あん摩マッサージ指圧も含めて、これらは医療法の**診療所ではなく「施術所」**です。ここが用途地域の話の起点になります。

診療所は建築基準法の用途制限では全用途地域で建てられますが、施術所には建築基準法別表第二に固有の分類がなく、多くの特定行政庁が「サービス業を営む店舗」(理髪店・美容院に類するもの)に準じて用途地域の制限をかけて運用しています。 その前提だと、住宅街のいちばん厳しい地域では単独の店舗としては開けません。

建築基準法(昭和25年法律第201号)施行令(昭和25年政令第338号)第130条の3は、第一種低層住居専用地域で建てられる兼用住宅を列挙し、延べ面積の2分の1以上を住居とし、店舗等の部分の床面積の合計が50㎡以下であることを条件にしています。施術所を同条第3号の「理髪店、美容院……その他これらに類するサービス業を営む店舗」に当てはめて扱う運用では、第一種低層住居専用地域は自宅兼用で小規模なものに限られます。第一種住居地域以上になれば、3,000㎡以下の店舗として建てやすくなります。

用途地域施術所(店舗として扱う場合)の目安
第一種・第二種低層住居専用地域原則、兼用住宅のみ(住居が延べ面積の1/2以上・店舗部分50㎡以下)
第一種・第二種中高層住居専用地域面積制限の下で可(自治体の運用による)
第一種・第二種住居地域、準住居地域3,000㎡以下の店舗として建てやすい
近隣商業・商業・準工業地域建てられる

ただし注意が必要です。 法に基づく施術所を「診療所に準じるもの」として扱い、低層住居専用地域でも認める自治体もあり、扱いは特定行政庁で分かれます。 テナントビルなら建物全体の用途で見る必要もあります。用途地域上の可否は物件ごとに変わるので、契約前に特定行政庁の窓口で確認してください。 用途地域と容積率が土地の値づけをどう動かすかは「日本の土地値はなぜ『容積率』で変わるのか」に整理しています。

施術所として保健所に届け出る構造設備基準とは?

保健所(都道府県知事等)が見るのは「構造設備」です。あはき法第9条の5第1項は「施術所の構造設備は、厚生労働省令で定める基準に適合したものでなければならない」と定め、同条第2項が衛生上必要な措置を求めます。柔道整復師法第20条も同じ立て付けです。内装が終わってから基準に足りなければ、そのままでは使えません。 ここが物件選びの起点になります。

具体的な数値は省令にあります。あはき法施行規則(平成2年厚生省令第19号)第25条と、柔道整復師法施行規則(平成2年厚生省令第20号)第18条は、ほぼ同じ内容で次を求めています(2026年8月29日参照)。

項目省令が求める基準
施術室6.6㎡以上の専用の施術室を有すること
待合室3.3㎡以上の待合室を有すること
換気施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること(これに代わる適当な換気装置があればこの限りでない)
消毒施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

さらに、あはき法施行規則第26条・柔道整復師法施行規則第19条は衛生上必要な措置として、常に清潔に保つこと、採光・照明・換気を充分にすることを挙げています。

物件側で確認しておくとよいのは、この数値を満たせる素地があるかです。

契約前に確認なぜ効くか
6.6㎡以上の施術室と3.3㎡以上の待合室を取れる広さ・間取りか面積は省令の要。ワンルームでは施術室と待合を分けて取れないことがある
窓の大きさ・位置、または換気設備施術室面積の1/7以上の外気開放か換気装置が要る
給排水の位置手指・器具の消毒に洗い場が要る
電気容量物療機器・空調・給湯で容量が要る。増設は費用と工期に響く
床・壁の清掃性「常に清潔に保つ」ための素地。原状回復の範囲とも絡む

換気・給排水・電気容量の設計は施工業者(設計者)の領域です。当社(不動産会社)は、物件がこれらの条件を満たせるかの下調べと、貸主との条件交渉に伴走します。 設備設計そのものは行いません。同じ構造の手戻りが起きる理由は「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」に、契約書のどこを読むかは「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」に整理しています。

居抜き物件とスケルトン、届出のやり直しはどこで変わる?

大きく違います。前の借主が鍼灸院・整骨院だった居抜きなら、施術室の区画・洗い場・換気が残っていることがあります。ただし——「前も施術所だったから大丈夫」は保証になりません。

理由は2つです。第一に、施術所の届出は施術所ごとに出すもので(あはき法第9条の2/柔道整復師法第19条)、前の店の届出が新しい開設者に引き継がれるわけではありません。第二に、あはき(あん摩・はり・きゅう)と柔道整復は根拠法が別で、両方を行うならそれぞれの届出が要ります。前の店がはり・きゅうだけで、あなたが整骨院も併設するなら、柔整の構造設備・届出が別途要るということです。

居抜き(前も施術所)スケルトン
施術室・待合の区画前の間取りを踏襲できる場合あり一から設計
洗い場・給排水残っていることが多い(要点検)新設。位置を設計から
換気設備流用できる場合あり新設
届出新たに出す(あはき・柔整は別々)新たに出す
初期費用の傾向抑えやすい増えやすい

居抜きでも、引渡し前に施術室の広さと換気が現行の省令基準を満たすかを点検しておくのが安全です。残置設備の所有・修繕・撤去の負担を契約でどう定めるかは、居抜き特有の論点です。

開設届は誰がいつ出す?内装着工前に何を確認する?

ここが美容室・理容所と逆になる点です。美容所・理容所の開設届は「あらかじめ(開設前)」ですが、施術所の届出は「開設後10日以内」です。 あはき法第9条の2は「施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と定め、柔道整復師法第19条も同じです(届出先は、保健所設置市・特別区ではその市長・区長)。休止・廃止したときは、その日から10日以内に届け出ます。

「開設後」とはいえ、構造設備は開設の時点で省令基準に適合していなければならないので、実務の流れはこうなります。

順番やること担い手
1用途地域・用途変更の要否を確認特定行政庁・宅地建物取引業者
2施術室・待合の広さ、換気、給排水を満たせるか下調べ宅地建物取引業者・施工業者
3賃貸借契約宅地建物取引業者
4内装工事(区画・施術室・待合・換気・消毒設備)施工業者
5開設 → 10日以内に施術所の届出開設者(施術者本人)
6保健所の確認・立入検査保健所

なお、事務所や別業種の店舗を施術所に変える場合でも、施術所は建築基準法別表第一(い)欄の特殊建築物には通常当たらないため、用途変更の確認申請は原則不要です。ただし確認申請の要否とは別に、用途地域の制限(建築基準法第48条)や採光・換気などの実体規定はかかります。消防面では、鍼灸院・整骨院は消防法施行令別表第一の(15)項(非特定用途の防火対象物)として扱われるのが一般で、必要な消防用設備は建物全体のテナント構成・階数・延床面積で変わります。用途地域・用途変更・消防は、契約前に特定行政庁・消防署で確認できます。

物件契約でつまずきやすい点はどこ?

施術所の届出(開設後10日以内)など保健所に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。届出そのものは施術者本人が行うもので、行政書士が代わりに提出するのではなく、書類の作成をお手伝いする位置づけです。用途変更・建築確認が絡む場合の設計は建築士が、内装の給排水・換気設計は施工業者が扱います。行政の窓口・様式・条例の数値・受付の運用は変わります。着手時点で管轄の保健所と特定行政庁のページを直接ご確認ください。 事業用物件全般は投資用・事業用不動産、事務所と許認可の関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。

物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。施術所の届出など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。

この2つ(不動産会社・行政書士事務所)はそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。登記は司法書士、税務は税理士、労務は社会保険労務士(2026年9月開業予定)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。

よくある質問

Q. 鍼灸院や整骨院は、住宅街(第一種低層住居専用地域)に開けますか?
A. 施術所を「サービス業を営む店舗」に準じて扱う一般的な運用では、単独の店舗としては原則開けません。建築基準法施行令第130条の3により、兼用住宅(住居が延べ面積の1/2以上・店舗部分50㎡以下)としてなら建てられます。一方で法に基づく施術所を診療所に準じて扱う自治体もあり、扱いは分かれます。物件ごとに特定行政庁の窓口で確認してください。

Q. 施術室や待合室の広さに、法律上の数値はありますか?
A. あります。あはき法施行規則第25条・柔道整復師法施行規則第18条は、6.6㎡以上の専用施術室と3.3㎡以上の待合室、施術室面積の7分の1以上を外気に開放し得ること(または換気装置)、消毒設備を求めています。これは全国共通の省令基準です。

Q. 前も整骨院だった居抜き物件なら、そのまま届出が通りますか?
A. そのまま引き継がれるわけではありません。届出は施術所ごとに新たに出します(あはき法第9条の2・柔道整復師法第19条)。あはき(あん摩・はり・きゅう)と柔道整復は根拠法が別なので、両方を行うならそれぞれ届出が要ります。残置設備が現行の省令基準を満たすかを引渡し前に点検し、保健所に確認してください。

Q. 開設届はいつ出せばよいですか?物件契約より先ですか?
A. 施術所の届出は「開設後10日以内」です(あはき法第9条の2・柔道整復師法第19条)。美容所・理容所の「あらかじめ(開設前)」とは順序が逆です。ただし構造設備は開設の時点で省令基準に適合している必要があるため、物件契約→内装工事→開設→10日以内に届出、の順で準備します。

この記事の出典(一次情報)

※施術所の用途地域上の扱い(「サービス業を営む店舗」に準じるか、診療所に準じるか等)は特定行政庁の運用で分かれます。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の保健所・特定行政庁・消防署の窓口で確認してください。
※消防用設備・避難の要否は、物件の階数・延床面積・テナント構成によって変わります。最終確認は消防署の窓口で行ってください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や届出の受理を判断・保証するものではありません。療養費・保険の取扱いや施術内容の当否といった医事の判断には立ち入っていません。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、施術所の届出等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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