中華圏の相続人が日本の空き家を相続したとき、不動産会社が最初にできることは何か
中華圏の相続人が日本の空き家を相続したとき、不動産会社が相続直後にできるのは現地確認・査定・維持管理・売却準備の4つです。日本にいなくても現地を見て査定を出せ、相続登記や遺産分割の前でも並行できます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、不動産会社の範囲と他士業に振る境目を条文から整理します。
結論(先に要点):中国語圏の相続人が日本の空き家を相続したとき、不動産会社が相続発生直後にできるのは、現地の確認・査定・維持管理・売却準備の4つです。日本にいなくても、当社が現地を見て写真と査定を出せます。相続登記(司法書士)や遺産分割の合意が済む前でも、これらの準備は並行して進められます。ただし売買契約と所有権移転登記には、相続登記の完了と相続人全員の合意が要ります。
日本に不動産を残して家族が亡くなった——台湾・大陸・香港に住む相続人や、その相続を扱う専門家にとって、最初の壁は「日本に行けない」ことです。本記事は、日本の相続不動産に関わる中国語圏の専門家・相続人に向けて、相続発生直後に日本の不動産会社ができること、逆に他の専門家に委ねるべきことを、条文と公的資料から整理したものです。相続登記・税務・紛争・署名の認証は、それぞれ別の専門家の領域です。
日本にいなくても物件の現状を確認できるのか?
できます。しかも、これは相続発生直後にまず進めるべきことです。
不動産会社は、相続人の依頼を受けて、現地を訪れ、外観・室内・接道・境界の状況を写真と報告書にまとめ、査定価格を出せます。相続人が日本に来る必要はありません。空き家は、放置すると雨漏り・シロアリ・不法投棄・近隣からの苦情が進み、価値が下がります。早く現状を押さえるほど、選択肢が広く残ります。
法律上も、相続発生直後に「何もできない」わけではありません。民法(明治29年法律第89号)第898条により、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属します。共有物の保存行為(現状の確認、最低限の維持)は、遺産分割が終わる前でも、各共有者が単独でできます(民法第252条第5項)。つまり、遺産分割の合意を待たずに、現地確認や見回り・換気・草刈りといった維持は始められます。
一方で、共有物の管理・変更に当たる行為(長期の賃貸借、大規模なリフォーム、売却など)は、保存行為とは扱いが違い、共有者の持分の過半数や全員の同意が要ります。「見る・保つ」は先に進められ、「貸す・売る・大きく変える」は合意が要る——この線引きが出発点です。居住中のオーナーの管理の論点は「海外に住みながら日本の不動産を管理する」に整理しています。
相続登記の前に売却の準備を進めてよいのか?
進められます。ただし、「準備」と「契約・登記」の線は明確です。
日本では、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項は、相続により所有権を取得した者に対し、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記を申請する義務を課しています。遺産分割がまとまらない場合の中間的な手当てとして、第76条の3の相続人申告登記(自分が相続人である旨を登記所に申し出る)も用意されています。
売買契約を結び、買主へ所有権移転登記をするには、その前提として相続登記が完了していることと、相続人全員の売却の合意が必要です。ここは動かせません。
しかし、そこに至るまでの準備は並行できます。
| 相続登記の完了前でも進められる準備 | 相続登記の完了・全員の合意が要ること |
|---|---|
| 現地確認・写真・査定 | 売買契約の締結 |
| 権利関係・接道・境界などの調査 | 買主への所有権移転登記 |
| 登記事項証明書・公図・測量図の取得 | 長期の賃貸借・大規模リフォーム |
| 維持管理(見回り・換気・草刈り) | — |
相続登記そのものの申請は司法書士の業務です。相続人が海外在住の場合、印鑑証明書が取れないため、日本国籍の方は在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)を、外国籍の方は現地の公証人(公証処等)の認証を印鑑証明書の代わりに用いるのが一般的で、この署名の認証は司法書士・公証人・領事の領域です。当社(不動産会社)が扱うのは、その手前の調査・査定と、合意後の媒介です。台湾からの相続で日本の不動産を扱う流れは「台湾からの相続と日本の不動産」に、業者間で共同して取引を進める形は「中国語圏の不動産プロと共同で取引する」に整理しています。
空き家の固定資産税と管理費は誰が負担するのか?
相続した瞬間から、費用は発生し続けます。ここを曖昧にすると、相続人の間で後からもめます。
固定資産税は、地方税法(昭和25年法律第226号)第359条により、**毎年1月1日(賦課期日)**の時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている者に課されます。相続後も名義が被相続人のままなら、実際に所有する相続人(現に所有している者)が納税義務を負います。遺産分割が終わるまでは、相続人が法定相続分に応じて負担するのが原則で、共有者は連帯して納税義務を負います。
空き家で特に注意すべきは、住宅用地特例です。 地方税法第349条の3の2は、住宅の敷地について固定資産税の課税標準を軽減しています(小規模住宅用地=200㎡以下の部分は6分の1)。ところが、空家等対策の推進に関する特別措置法により、「特定空家等」または「管理不全空家等」として市町村から勧告を受けると、この住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。管理不全空家等は令和5年(2023年)の法改正で加わったもので、同改正は2023年12月13日に施行されています。「放置していたら勧告が来て、翌年から税額が跳ね上がった」という事態は、これで起こります。
| 費目 | 誰が・いつ | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 1月1日時点の所有者(名義が被相続人なら現に所有する相続人) | 地方税法第359条。遺産分割前は法定相続分で負担、共有者は連帯 |
| 住宅用地特例の喪失 | 特定空家等・管理不全空家等の勧告後 | 空家特措法(令和5年改正・2023年12月13日施行)。土地の税額が上がる |
| 維持管理費 | 依頼した相続人 | 見回り・草刈り・水道光熱の基本料金など |
放置した空き家に何が起きるか、売るか残すかの判断は「相続した実家、売るか残すか」に、相続登記義務化で何が変わったかは「相続したとき、登記の義務化で何が変わったか」に整理しています。相続税・譲渡所得税の計算と、費用を誰の負担にするかの税務上の整理は、税理士の所管です。
日本の不動産会社に依頼できる範囲はどこまでか?
はっきり分かれます。当社(不動産会社)ができるのは、次の4つです。
| できること(不動産会社) | 委ねる先 |
|---|---|
| 現地確認・写真・査定 | — |
| 権利・接道・境界・法令上の制限の調査 | — |
| 空き家の維持管理(見回り・換気・草刈り等) | — |
| 売却・賃貸の媒介(合意後) | — |
| 相続登記・相続人申告登記 | 司法書士 |
| 相続税・譲渡所得税・取得費 | 税理士 |
| 遺産分割の紛争・交渉 | 弁護士 |
| 海外在住相続人の署名の認証 | 公証人・在外公館(領事) |
当社と、司法書士・税理士・弁護士・公証人は、それぞれ独立した事業体です。相続人の方には、それぞれと別々に、直接ご契約いただきます。 当社は、これらの専門家との間で紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。誰に何を頼むかが分かれていることが、費用と責任の所在を明確にします。相続不動産全般の進め方は相続・空き家の相談にまとめています。
相続発生直後の順番は?
| 順番 | 進めること | 担い手 |
|---|---|---|
| 1 | 現地確認・写真・査定、維持管理の開始 | 不動産会社 |
| 2 | 登記事項証明書・公図・測量図など資料の収集 | 不動産会社 |
| 3 | 相続人の確定、相続登記(または相続人申告登記) | 司法書士 |
| 4 | 固定資産税・相続税・譲渡所得税の見込み | 税理士 |
| 5 | 遺産分割の合意(まとまらなければ調停・交渉) | 相続人・(紛争時)弁護士 |
| 6 | 売却・賃貸の媒介と契約、所有権移転登記 | 不動産会社・司法書士 |
1と2は、遺産分割の合意を待たずに始められます。空き家は時間が敵です。まず現状を押さえ、費用の発生を把握し、そのうえで合意と登記を整える——この順が、遠方からでも損を小さくする道です。
誰に相談すればよいですか?
物件の現地確認、査定、調査、維持管理、売却・賃貸の媒介は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。日本語でも中国語でも、相続人が海外にいても、現地の状況をお伝えします。
相続登記は司法書士、相続税・譲渡所得税は税理士、遺産分割の紛争は弁護士、海外在住相続人の署名の認証は公証人・在外公館(領事)へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。 これらはそれぞれ独立した事業体であり、当社とは別々にご契約いただきます。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。
よくある質問
Q. 相続人が全員海外にいますが、日本の空き家の現状を確認できますか?
A. できます。不動産会社が相続人の依頼を受けて現地を訪れ、外観・室内・接道・境界の状況を写真と報告書にまとめ、査定を出せます。現状確認や見回り・換気といった維持(保存行為)は、遺産分割の合意が済む前でも各相続人が単独で依頼できます。相続人が来日する必要はありません。
Q. 相続登記が済む前でも、売る準備を始められますか?
A. 準備は始められます。査定、権利・接道・境界の調査、登記事項証明書などの資料収集は並行できます。ただし売買契約と買主への所有権移転登記には、相続登記の完了と相続人全員の売却の合意が必要です。相続登記の申請は司法書士へ直接ご依頼ください。
Q. 空き家を放置すると、固定資産税は上がりますか?
A. 上がることがあります。市町村から「特定空家等」または「管理不全空家等」として勧告を受けると、住宅用地特例(小規模住宅用地は6分の1)が外れ、土地の固定資産税が上がります。管理不全空家等は令和5年改正(2023年12月13日施行)で加わりました。税額の見込みは税理士・市町村にご確認ください。
Q. 海外在住の相続人は、印鑑証明書がなくても手続きできますか?
A. できます。日本に住民登録がなく印鑑登録ができない場合、日本国籍の方は在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)を、外国籍の方は現地の公証人の認証を、印鑑証明書の代わりに用いるのが一般的です。形式や提出先の要件は、司法書士・公証人・領事にご確認ください。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号。第76条の2第1項=相続による所有権取得を知った日から3年以内の相続登記の申請義務、第76条の3=相続人申告登記。相続登記の申請義務化は2024年4月1日施行。2026年8月24日参照)
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第898条=共同相続財産の共有、第252条=共有物の管理・保存行為。2026年8月24日参照)
- e-Gov法令検索「地方税法」(昭和25年法律第226号。第359条=固定資産税の賦課期日(1月1日)、第349条の3の2=住宅用地に対する課税標準の特例(小規模住宅用地は6分の1)。2026年8月24日参照)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)」(管理不全空家等の新設、特定空家等・管理不全空家等への勧告による住宅用地特例の除外。2023年12月13日施行。2026年8月24日参照)
- 日本司法書士会連合会「相続人の中に海外居住者がいる場合」(印鑑証明書に代わる在外公館の署名証明(サイン証明)・在留証明書の実務。2026年8月24日参照)
※固定資産税の負担、住宅用地特例の適用、勧告の有無は、市町村の課税・空家対策の運用によって異なります。着手時点で当該市町村に直接ご確認ください。
※相続税・譲渡所得税・取得費の計算は税理士の所管です。相続人の署名の認証(署名証明・公証人の認証・領事認証)は司法書士・公証人・領事の領域です。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続や物件について判断・保証するものではありません。
※物件の調査・査定・維持管理・媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が承ります。相続登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士、署名の認証は公証人・在外公館が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と手続(相続・行政)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
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