相続した空き家を3,000万円控除で売るには──「3年目の12月31日」から逆算する
相続した空き家の3,000万円特別控除には、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限があります。ただし逆算で最初に効いてくるのは税務ではなく、物件の使い方です。「もったいないから、とりあえず貸す」と、その時点で特例は使えなくなります。令和6年改正で買主が翌年2月15日までに耐震改修・取壊しをする形も認められ、契約の組み方がそのまま税額に跳ね返るようになりました。文京区小日向の四葉不動産株式会社が、期限から逆算した売却スケジュールの組み方を解説します。
相続した空き家の3,000万円特別控除には、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限があります。ただし逆算で最初に効いてくるのは税務ではなく、「相続してから一度も貸さない・住まない」という物件の使い方です。ここを踏み外すと、期限内に売っても特例は使えません。
まず、いつまでに売ればよいのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡期限 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 制度の適用期間 | 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 |
| 控除額 | 最高3,000万円 |
| 控除額(相続人が3人以上) | 最高2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡) |
| 売却代金 | 1億円以下 |
たとえば令和6年3月に相続が開始した場合、3年を経過する日は令和9年3月。その日の属する年の12月31日、つまり令和9年12月31日が期限です。制度自体の適用期限とたまたま同じ日になりますが、この2つは別の期限です。
1億円以下かどうかの判定には注意が必要です。他の相続人が売った分や、分割して売った分も合算して判定します。特例の適用を受けた後で残りの部分を売り、合計が1億円を超えたときは、その売却の日から4か月以内に修正申告と納税が必要になります。「自分の持分だけなら1億円以下」で安心はできません。
不動産屋として、最初に止めるのはどこか
空き家を相続した方から、こんな相談をよく受けます。
「売るかどうかまだ決められない。空けておくのももったいないから、とりあえず貸しておこうと思う」
この判断が、3,000万円控除を消します。
特例の要件に「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと」があります。1か月でも貸せば、相続人の誰かが住めば、そこで終わりです。取り壊してから売る場合も、取壊しの時までと譲渡の時までの両方で同じ条件がかかります。
| よくある行動 | 3,000万円控除への影響 |
|---|---|
| とりあえず賃貸に出す | 使えなくなる |
| 相続人の誰かが住む | 使えなくなる |
| 駐車場・資材置場として貸す | 使えなくなる |
| 取り壊した跡地を建物・構築物の敷地にする | 使えなくなる |
| 空き家のまま管理する | 維持される |
売るか残すかを決めかねている段階こそ、先に「貸さない」という判断だけは固めておく必要があります。決めかねている期間の維持費が惜しくなるのは自然な感情ですが、そこで貸すと、後で大きな差になって返ってきます。
売るか残すかの迷いそのものについては、相続した実家は、売るべきか残すべきか に書きました。
令和6年に何が変わったのか
実務が大きく動いたのはここです。
改正前は、売主(相続人)が譲渡の時までに耐震改修を済ませるか、家屋を取り壊しておく必要がありました。つまり売れるかどうかわからないうちに、解体費を先出しする構造でした。
改正後(令和6年1月1日以後の譲渡)は、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震基準を満たすようにするか、家屋の全部を取り壊した場合も対象になります。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 耐震改修・取壊しをする人 | 売主 | 売主または買主 |
| 期限 | 譲渡の時まで | 譲渡の日の属する年の翌年2月15日まで |
| 売主の解体費の先出し | 必要 | 不要にできる |
ただしこれは、売買契約の組み方の問題になったということでもあります。買主が期限内に工事や解体を実行しなければ特例は使えません。契約時にどう手当てするかが、そのまま税額に跳ね返ります。 仲介する側の設計力が問われる部分です。
家屋そのものの要件は何か
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築 |
| 建物の種類 | 区分所有建物登記がされている建物でないこと(分譲マンションは対象外) |
| 相続開始直前の居住状況 | 被相続人以外に居住していた人がいなかったこと |
| 老人ホーム等に入所していた場合 | 要介護認定等を受けて入所するなど特定事由があり、一定の要件を満たせば対象になり得る |
| 売る相手 | 親子・夫婦など特別の関係がある人でないこと |
| 他の特例 | 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例などの適用を受けていないこと |
親が老人ホームに入っていたケースは、要件が細かく分かれます。親が老人ホームへ入ったら、自宅はどうする で触れた状況が、そのまま税務要件に直結します。該当しそうなら、早い段階で税理士にご確認ください。
逆算のスケジュールはどう組むか
期限は12月31日ですが、その日に向けて動かすべき作業は複数あります。
| 順序 | 作業 | 誰が動くか |
|---|---|---|
| 最初 | 相続人調査・戸籍収集・遺産分割協議書の作成 | 行政書士 |
| 次 | 相続登記(相続人名義にしないと売れない) | 司法書士 |
| 事前 | 被相続人居住用家屋等確認書の交付申請 | 市区町村(物件所在地) |
| 事前 | 耐震基準適合証明書の調査(使う場合。譲渡の日前2年以内に調査終了しているもの) | 建築士等 |
| 販売 | 販売活動 | 宅地建物取引業者 |
| 契約 | 売買契約 | 売主・買主・宅地建物取引業者 |
| 期限 | 譲渡(引渡し) | 売主・買主 |
実際に一番時間を食うのは、上の2行です。 相続人が多い、疎遠、海外在住といった事情があると、遺産分割協議だけで半年から1年かかることがあります。「3年もある」と思っているうちに、販売に使える期間が数か月しか残っていない、という相談は珍しくありません。
年末は決済が混み合います。12月31日ぎりぎりの引渡しを前提にした計画は組まないでください。
誰に相談すればよいのか
| 論点 | 担当 | 四葉での受任 |
|---|---|---|
| 特例が使えるか、税額がいくら変わるか、確定申告 | 税理士 | 提携税理士へお繋ぎします |
| 売却の可否・価格・買主との契約条件の設計 | 宅地建物取引業者 | 四葉不動産株式会社が受任 |
| 相続人調査・戸籍収集・遺産分割協議書の作成 | 行政書士 | 四葉行政書士事務所が受任 |
| 相続登記 | 司法書士 | 提携司法書士へお繋ぎします |
| 相続人間に争いがある場合 | 弁護士 | 提携弁護士へお繋ぎします |
税額の判断は税理士の領域です。 当方が行うのは、期限から逆算した売却スケジュールの設計と、特例を壊さない物件の扱い方のご案内です。
四葉不動産株式会社と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体として別契約・別請求で受任します。
関連ページ
この記事の根拠
| 法令・出典 | 該当箇所 | 備考 |
|---|---|---|
| 租税特別措置法 | 第35条(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例) | 適用期間:平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 |
| 租税特別措置法施行令 | 第20条の3、第23条 | ― |
| 租税特別措置法施行規則 | 第18条の2 | ― |
| 所得税法 | 第33条(譲渡所得) | ― |
| 国税庁タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 | 要件・提出書類の全般 | 令和7年4月1日現在法令等。参照日:2026年7月28日 |
| 国税庁タックスアンサー No.3307「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」 | 老人ホーム入所時の取り扱い | 参照日:2026年7月28日 |
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断ではありません。特例の適用可否・税額の計算・申告は税理士の業務です。個別の事案は必ず税理士にご確認ください。
