中華圏の相続人が共有する日本の不動産を売るには?持分・委任状・現地公証の実務
台湾・香港・中国大陸に住む複数の相続人が日本の不動産を共有で相続し売りたいとき、建物・土地をまるごと売るには共有者全員の同意が要ります(民法第251条第1項)。持分だけなら単独で売れますが価格が下がりやすい。海外在住の相続人は印鑑証明に代えて在外公館の署名証明を用い、委任状に現地公証や領事認証を重ねます。非居住者が売主だと源泉徴収10.21%も重なります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、委任・現地公証・決済と海外送金の段取りを条文と国税庁の資料から整理します。
結論(先に要点):台湾・香港・中国大陸に住む複数の相続人が日本の不動産を共有名義で相続し、売りたい——このとき、建物・土地をまるごと売るには共有者全員の同意が要ります(民法第251条第1項)。全員がそろわなくても、自分の持分だけなら単独で第三者へ売れますが、価格は下がりやすく買主も限られます。海外在住の相続人は、日本の印鑑証明に代えて在外公館の署名証明(サイン証明)を用い、委任状に現地公証や領事認証を重ねて整えます。売買仲介・共有持分の取引実務は当社(四葉不動産株式会社)が、相続人の確定・渉外の遺産分割協議書や委任状の要否は行政書士(渉外相続)が、相続登記は司法書士が、相続税は税理士が、共有者間の対立や持分分割請求は弁護士が、本国側の公証は現地の公証人・弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で分担します。
複数の相続人が海外(台湾・香港・中国大陸)に住み、日本の不動産を共有で相続した——この記事は、そうした当事者や現地の専門家に向けて、海外在住の共有者が日本の不動産を売るときの段取りを、民法・法の適用に関する通則法・所得税法・不動産登記法の条文と国税庁の資料から整理したものです。売却の進め方・査定・媒介は当社が情報提供として担い、相続人の確定・書類の要否・登記・税務・紛争は有資格者が行います。国内相続人だけの共有売却とも、単独処分の空き家とも違い、この記事は「海外在住の複数共有者」に固有の委任・現地公証・決済と海外送金の段取りに焦点を当てます。
海外在住の相続人が共有する不動産は、全員そろわないと売れないのか?
まず前提として、被相続人が日本国籍なら、その相続は日本法によります(法の適用に関する通則法第36条=相続は被相続人の本国法による)。誰が相続人で、どの割合で共有するかは、この準拠法の判断が出発点になります。
そのうえで、共有不動産の売り方は国内の相続と同じ枠組みです。建物・土地をまるごと売るには共有者全員の同意が要ります(民法第251条第1項)。一方、自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに第三者へ売れます(ただし単独では使えず価格が下がりやすい)。
| 売り方 | 必要な同意 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全体を売る | 共有者全員の同意(民法第251条第1項) | 市場価格で売りやすいが、全員の足並みが要る |
| 持分だけを売る | 各共有者が単独で可能 | 同意不要だが、買主が限られ価格が下がりやすい |
海外在住の共有者がいると、この「全員の同意」を実際に集める手間が国内より重くなります。共有売却の基本的な枠組みは相続した共有の不動産を売るに、海外の相続人が関わる空き家の初動は中華圏の相続人が日本の空き家を相続したときに整理しています。相続不動産全般は相続と不動産をご覧ください。
売却に必要な委任状と、現地公証・領事認証は何をそろえるのか?
海外在住の相続人が日本にいる代表者や代理人に売却を任せる場合、委任状が要ります。問題は本人確認の裏付けです。日本国内なら実印+印鑑証明で示す本人性を、海外在住者は次のように整えます。
| 日本国内の書類 | 海外在住者の代替 |
|---|---|
| 印鑑証明書 | 在外公館(日本大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明) |
| 住民票(住所の証明) | 在外公館の在留証明 |
| 委任状の真正 | 委任状に署名証明を合綴し、必要に応じて現地公証・領事認証を重ねる |
署名証明には、委任状など特定の書類に領事の面前で署名し証明する「貼付形式」と、単独の証明書を出す形式があります。登記や決済で求められる形式は手続ごとに異なるため、どの書類にどの証明を付けるかは、渉外相続に詳しい行政書士・司法書士に、先に確認しておくのが安全です。
本国側で公証人の公証や認証が必要になる場合は、現地の公証人・弁護士が担います。日本側の書類を海外で使う/海外の書類を日本で使う、その双方向で認証の要否が変わる点に注意します。
持分だけを売る場合と、全体を売る場合で、手続はどう違うのか?
売る対象が「共有物そのもの」か「自分の持分」かで、必要な同意も段取りも変わります。
| 論点 | 全体を売る | 持分だけを売る |
|---|---|---|
| 同意 | 共有者全員の同意(民法第251条第1項) | 各共有者が単独で可能 |
| 遺産分割 | 未分割なら遺産分割協議(民法第907条)を先に整えることが多い | 法定相続分の持分を単独で処分できる |
| 委任 | 海外在住者を含む全員から委任・署名証明を集める | 売る本人の委任・署名証明で足りる |
| 価格 | 市場価格で売りやすい | 単独で使えず分割の手間がある分、下がりやすい |
| 買主 | 一般の買主 | 共有持分の買取業者や他の共有者などに限られやすい |
海外在住者を含む全員で全体を売るなら、遺産分割協議書と各人の委任・署名証明をそろえる段取りが要となります。話し合いがまとまらないときは、共有物分割(民法第256条・第258条)や持分の売却が選択肢になりますが、共有者間の対立が紛争になれば弁護士の領域です。まず全体売却の合意を探り、難しいときの出口として持分売却を検討する、という順が一般的です。
代金の海外送金と、非居住者の源泉徴収はどう扱うのか?
売主が非居住者(海外在住)の場合、買主側に源泉徴収の義務が生じることがあります。国内にある土地等の譲渡対価は国内源泉所得にあたり(所得税法第161条)、その支払をする買主は原則として対価の10.21%を源泉徴収し、国に納付します(所得税法第212条)。売主は確定申告で精算します。
ただし例外があります。譲渡対価が1億円以下で、かつ買主がその不動産を自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人であるときは、源泉徴収は不要です(所得税法施行令第281条の3)。事業用や高額の取引では源泉徴収がかかる、と考えておくのが安全です。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 源泉徴収の対象 | 非居住者が国内の土地等を譲渡した対価(所得税法第161条・第212条) |
| 税率 | 10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%) |
| 例外 | 対価1億円以下かつ買主が自己・親族の居住用(個人)の場合は不要(施行令第281条の3) |
| 精算 | 売主(非居住者)は確定申告で精算。納税管理人(国税通則法第117条)を定めておく |
| 海外送金 | 決済後の代金の海外送金は、取引銀行の本人確認・原資確認の手続に沿う |
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
具体的な源泉徴収の要否・税額・確定申告・納税管理人の選任は税理士の領域です。海外送金は取引銀行の手続に沿うため、着金から決済日を逆算する段取りも早めに固めます。賃貸中の物件を海外相続人が売る場面は海外に住む相続人が賃貸中のマンションを売るにはにも整理しています。
現地の専門家と、日本側の宅建・行政書士・司法書士はどう連携するのか(分離受任)?
海外在住の共有者による売却は、日本と現地の複数の専門家が関わります。役割を分けると次のとおりです。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 売買仲介・共有持分の取引実務・査定・媒介・売買契約 | 宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社) |
| 相続人の確定・渉外の遺産分割協議書・委任状や現地公証書類の要否 | 行政書士(四葉行政書士事務所/渉外相続) |
| 相続登記・所有権移転登記 | 司法書士 |
| 相続税・非居住者の譲渡所得税・納税管理人 | 税理士 |
| 共有者間の対立・持分の分割請求など紛争 | 弁護士 |
| 本国側の公証・認証 | 現地の公証人・弁護士 |
これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相続人の確定・書類の要否は行政書士、登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士、本国側の公証は現地の専門家へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。相談は無料です。
誰に相談すればよいですか?
海外在住の共有者による日本の不動産の売却について、査定・媒介・売買契約・共有持分の取引実務は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。相続人の確定・渉外の遺産分割協議書・委任状や現地公証書類の要否など官公署・私人間に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。相続登記・所有権移転登記は司法書士が、相続税・非居住者の譲渡所得税・納税管理人は税理士が、共有者間の紛争は弁護士が、本国側の公証は現地の公証人・弁護士が扱います。物件(不動産)と権利・手続を同じテーブルに並べて確認します。
よくある質問
Q. 相続人の一人が海外にいて連絡が取りにくいです。残りの人だけで売れますか?
A. 建物・土地をまるごと売るには共有者全員の同意が必要です(民法第251条第1項)。海外在住の共有者を含め、全員から委任と署名証明をそろえる必要があります。全員がそろわないときは、自分の持分だけを売る、または共有物分割で決着をつける、という選択肢を検討します。
Q. 印鑑証明が取れません。海外ではどうしますか?
A. 日本の印鑑証明に代えて、在外公館(日本大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)を用います。住所は在留証明で示します。委任状にどの証明を付けるか、本国側の公証・認証が要るかは手続ごとに異なるため、渉外相続に詳しい行政書士・司法書士に先に確認するのが安全です。
Q. 売った代金を海外に送るとき、税金は差し引かれますか?
A. 売主が非居住者の場合、買主が対価の10.21%を源泉徴収するのが原則です(所得税法第161条・第212条)。ただし対価が1億円以下で、かつ買主が自己・親族の居住用として買う個人なら不要です(所得税法施行令第281条の3)。要否・税額・確定申告・納税管理人は税理士が扱います。
Q. 本国(台湾・香港・中国大陸)側でも書類を用意する必要がありますか?
A. 委任状や相続関係の書類について、本国側で公証人の公証や認証が必要になることがあります。これは現地の公証人・弁護士が担います。日本側の書類を海外で使う場合と、海外の書類を日本で使う場合とで認証の要否が変わるため、双方向で確認しておくのが安全です。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第249条〜第264条=共有(第251条第1項=共有物の変更・処分は全員同意)、第256条・第258条=共有物分割、第907条=遺産分割協議。2026年9月21日参照)
- e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号。第36条=相続は被相続人の本国法による。2026年9月21日参照)
- e-Gov法令検索「所得税法」(昭和40年法律第33号。第161条=国内源泉所得(国内にある土地等の譲渡対価)、第212条=非居住者に対する支払の源泉徴収義務。2026年9月21日参照)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号。第76条の2=相続による所有権移転登記の申請義務。取得を知った日から3年以内。令和6年4月1日施行。2026年9月21日参照)
- 国税庁タックスアンサー No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき(非居住者からの土地等の購入と源泉徴収(譲渡対価10.21%・1億円以下かつ買主自己/親族の居住用の例外を含む)。2026年9月21日参照)
※共有物の全体売却・持分売却の可否、遺産分割、署名証明・現地公証・領事認証の要否、源泉徴収の要否と税額は、相続人の国籍・居住地・取引の内容によって変わります。本記事は個別の事案について判断していません。相続人の確定・書類の要否は行政書士へ、相続登記は司法書士へ、相続税・譲渡所得税は税理士へ、共有者間の紛争は弁護士へ、本国側の公証は現地の公証人・弁護士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の売却の可否や税額を判断・保証するものではありません。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、渉外の遺産分割協議書・委任状等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・登記・税務の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
売る・貸す・持ち続ける——決める前のご相談からで大丈夫です。
相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。
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