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2026.09.12投資・事業用不動産

中国語圏の非居住バイヤーの取引時確認(犯収法)|宅建業者の本人確認と実質的支配者

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

非居住のバイヤーでも、宅地建物の売買を締結・代理・媒介する宅建業者は犯罪収益移転防止法第4条の取引時確認を省けません。本人特定事項・取引の目的・職業または事業の内容を確かめ、法人が買主なら実質的支配者まで確認し、確認記録・取引記録を7年間保存します。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、宅建業者自身が犯収法で行う取引時確認の実務を条文と国の資料から整理します。

結論(先に要点):非居住のバイヤーでも、宅地建物の売買契約を締結・代理・媒介する宅建業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)第4条の取引時確認を省けません。本人特定事項・取引の目的・職業または事業の内容を確かめ、法人が買主なら実質的支配者まで確認し、確認記録・取引記録を7年間保存します。

中国本土・台湾・香港で日本の不動産購入を支援する現地の専門家と、その顧客である非居住の買主に向けて、宅建業者自身が犯収法で行う取引時確認の実務を整理します。対象は本人確認・実質的支配者の確認・記録の保存・疑わしい取引の届出だけです。海外送金の手続きや課税の相談は税理士、購入後の所有権移転登記や相続登記は司法書士、契約トラブルなどの紛争は弁護士へ、それぞれ分けてご案内します。重要事項説明の読み方は中国語圏の買主に日本の収益物件を紹介する前に読む重要事項説明の要点、契約条項の誤解は中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項にまとめています。

非居住のバイヤーでも取引時確認は必要ですか?

必要です。国籍や居住地にかかわらず、宅建業者が宅地建物の売買契約を締結・代理・媒介するときは、犯収法第4条の取引時確認を行わなければなりません。

宅地建物取引業者は、犯収法(平成19年法律第22号)第2条第2項に掲げられた特定事業者です。宅地建物の売買またはその代理・媒介が特定業務にあたり、売買契約の締結・その代理・媒介が取引時確認の対象となる特定取引です(賃貸借の媒介は取引時確認の対象ではありません)。

論点内容
誰が行うか宅地建物取引業者(特定事業者。犯収法第2条第2項)
どの取引で宅地建物の売買契約の締結・その代理・媒介(特定取引)
何を確認するか本人特定事項・取引を行う目的・職業または事業の内容(法人は実質的支配者も)
非居住者・外国人国籍・居住地を問わず同じ義務がかかる

取引時確認は、顧客が居住者か非居住者か、日本人か外国人かで有無が変わるものではありません。非居住の外国人バイヤーだからといって省略することはできず、むしろ本人確認書類の種類や確認方法で居住者と段取りが異なる点に注意します。

本人特定事項は何をどう確認しますか(在留カードのない外国人・パスポートの場合)?

自然人なら氏名・住居・生年月日を、写真付きの本人確認書類の提示などで確認します。在留カードを持たない非居住の外国人は、旅券(パスポート)などで確認するのが基本です。

犯収法第4条第1項は、取引時確認の内容として、①本人特定事項②取引を行う目的③顧客が自然人なら職業、法人なら事業の内容、の確認を求めています。本人特定事項は、自然人なら氏名・住居・生年月日、法人なら名称・本店または主たる事務所の所在地です。確認方法の細目は同法施行規則と国土交通省のガイダンスが定めています。

顧客の区分主な本人確認書類の例留意点
日本の居住者(自然人)運転免許証、マイナンバーカード、在留カード等(写真付き)対面は提示を受ける方法が基本
在留のない非居住の外国人旅券(パスポート)等氏名・生年月日を確認。住居は本国等の住所を確認する
非対面での確認書類の送付+転送不要郵便の送付、eKYC等国内に送付先がない非居住者では方法が限られる

非居住の外国人は日本国内に住居がないため、住居としては本国などの住所を確認します。対面での取引が難しい場合は、本人確認書類の写しの送付を受けたうえで転送不要郵便を送る方法などが使われますが、国内に送付先のない非居住者では選べる方法が限られ、確認の段取りを決済日から逆算する必要があります。具体的にどの書類・どの方法が使えるかは、施行規則と国土交通省のガイダンスで個別に確かめます。

法人が買主のとき、実質的支配者はどこまで確認しますか?

資本多数決の法人(株式会社など)では、議決権の総数の25%を超える議決権を直接または間接に持つ自然人を実質的支配者として確認します。該当者がいなければ、事業経営を実質的に支配する自然人、それもいなければ代表者等を確認します。

法人が買主のときは、犯収法第4条第1項第4号により、その法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある自然人(実質的支配者)の本人特定事項を確認します。誰が実質的支配者にあたるかは、同法施行規則が定めています。

法人の種類実質的支配者の考え方(段階的に判断)
株式会社など資本多数決法人①議決権の25%超を直接・間接に持つ自然人 → ②いなければ事業経営を実質的に支配する自然人 → ③それもいなければ代表者等
一般社団・財団法人等①収益・財産の25%超の配当等を受ける自然人や事業を実質的に支配する自然人 → ②いなければ代表者等
確認の方法法人の代表者等から申告を受ける方法により確認する

実質的支配者は最終的に自然人まで遡って特定します。海外の持株会社や信託を通じて保有されている場合、層をたどって25%超の自然人を探すため、株主名簿や出資関係を示す資料の提出を現地の専門家と連携して求めることになります。誰が実質的支配者にあたるかの判断は、資本関係の事実にもとづいて行い、当社は事実の確認にとどめます。保有の形を法人にするか個人にするかの損得は中国・台湾の買主は日本の収益物件を法人で持つべきか個人で持つべきかで別に整理しています。

疑わしい取引の届出は、どんなときに必要ですか?

収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるときや、顧客が犯罪収益の隠匿等を行っている疑いがあると認められるときは、速やかに行政庁へ届け出ます。宅建業者の届出先は国土交通大臣(地方整備局等)です。

犯収法第8条は、特定事業者に対し、特定業務に係る取引について、収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるか、または顧客等が犯罪収益の隠匿等に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合に、速やかに行政庁へ届け出ることを求めています。判断は取引の態様・顧客の属性などを総合して行い、疑わしいかどうかの一応の目安として、国・JAFIC(警察庁犯罪収益移転防止対策室)が参考事例を公表しています。

論点内容
いつ届け出るか収受した財産が犯罪収益である疑い、または顧客が隠匿等を行っている疑いがあると認めるとき
届出先行政庁(宅建業者は国土交通大臣=所管の地方整備局等)
顧客への非開示届け出ようとすること等を顧客やその関係者に漏らしてはならない(犯収法第8条第3項)

届出をしようとすること、またはしたことを、顧客やその関係者に漏らすことは禁じられています。疑わしい取引に当たるかどうかの最終的な当てはめは個別事情によるため、本記事では具体的な該当性を断定していません。

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確認記録・取引記録は何年保存しますか?

確認記録は「特定取引等に係る契約が終了した日その他の主務省令で定める日」から7年間、取引記録は「取引が行われた日」から7年間保存します。

犯収法第6条は、取引時確認を行ったときに確認記録を作成し、契約が終了した日等から7年間保存することを、第7条は、特定業務に係る取引について取引記録を作成し、取引が行われた日から7年間保存することを、それぞれ求めています。

記録の種類根拠保存期間の起算
確認記録(取引時確認の内容・方法等)犯収法第6条特定取引等に係る契約が終了した日等から7年間
取引記録(取引の日付・財産の価額等)犯収法第7条取引が行われた日から7年間

非居住の買主との取引でも保存義務は同じです。本人確認書類の写しや申告書、実質的支配者の確認資料は、言語が混在しても日本側で整えて保存します。決済後に現地の専門家へ写しを共有する場合の段取りは、取引の前に役割分担を決めておきます。

取引時確認の先にある海外送金・課税・登記・紛争は、誰に相談しますか?

宅建業者が行う取引時確認・記録の保存・疑わしい取引の届出までが当社の役割で、それ以外は分けます。

日本側の物件の調査、重要事項説明、価格・条件の調整、媒介と売買契約、そして犯収法に基づく取引時確認・記録の保存は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。繁体字・簡体字での資料提供に対応します。現地(中国本土・台湾・香港)の専門家と当社は、それぞれ独立した事業体です。役割の重なる部分は、どちらが何を担うかを契約の前に明確にし、別々にご契約いただきます。

海外からの送金・着金に関する確認は取引銀行、取得・保有・譲渡に伴う課税や納税管理人の届出は税理士、所有権移転登記や相続登記は司法書士、契約トラブルなどの紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。購入時の資金決済の段取りは非居住者の中華圏バイヤーは日本の収益物件でアパートローンを組めるか、投資・事業用不動産の全体像は投資・事業用不動産のご相談にまとめています。

よくある質問

Q. 現金一括で買う非居住の買主でも、取引時確認は必要ですか?
A. 必要です。取引時確認は支払方法ではなく「宅地建物の売買契約の締結・代理・媒介」という取引の種類にかかる義務です(犯収法第4条)。現金決済でも、本人特定事項・取引の目的・職業または事業の内容を確認し、法人なら実質的支配者まで確認します。むしろ高額の現金決済は、疑わしい取引の届出(第8条)を検討すべき場面かどうかを個別に見ます。

Q. 在留カードのない海外在住の買主は、何で本人確認しますか?
A. 在留のない非居住の外国人は、旅券(パスポート)などで氏名・生年月日を確認し、住居は本国等の住所を確認するのが基本です。対面が難しい場合の非対面の方法は、国内に送付先のない非居住者では限られます。どの書類・どの方法が使えるかは施行規則と国土交通省のガイダンスで確かめ、確認の段取りを決済日から逆算します。

Q. 買主が海外法人のとき、実質的支配者はどこまで遡りますか?
A. 最終的に自然人まで遡ります。株式会社など資本多数決法人では、議決権の25%超を直接・間接に持つ自然人が実質的支配者です。持株会社や信託を介して保有している場合は層をたどって特定するため、株主名簿や出資関係の資料を、現地の専門家と連携して求めます。該当者がいなければ事業経営を実質的に支配する自然人、それもいなければ代表者等を確認します。

Q. 取引時確認の記録は、取引が終わったら処分してよいですか?
A. いいえ。確認記録は契約が終了した日等から7年間(犯収法第6条)、取引記録は取引が行われた日から7年間(第7条)保存します。非居住の買主との取引でも同じです。本人確認書類の写しや実質的支配者の確認資料を含め、日本側で整えて保存します。

この記事の出典(一次情報)

※取引時確認の具体的な方法、使える本人確認書類、実質的支配者の当てはめ、疑わしい取引の届出の該当性は、犯収法施行規則と国土交通省のガイダンス、個別の事実関係によって変わります。本記事では具体的な書類の可否や届出の該当性を断定していません(個別判断は【未検証】として扱っています)。
※海外送金・着金の手続きは取引銀行、課税・納税管理人の届出は税理士、所有権移転登記・相続登記は司法書士、契約トラブルなどの紛争は弁護士が行います。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断・税務判断を示すものではありません。最終的な判断は、それぞれの有資格者が行います。
※日本側の物件の調査・重要事項説明・媒介および売買契約、犯収法に基づく取引時確認は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が担い、現地の専門家とは、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で進めます。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。繁体字・簡体字での資料提供に対応し、中国語圏の買主と現地の専門家に向けて、取引時確認の実務を条文と国の資料に対応づけて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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