中国・台湾の買主は日本の収益物件を法人で持つべきか個人で持つべきか
中華圏の非居住者が日本の収益物件を持つとき、法人(日本の資産管理会社)で持つか個人で持つかは買う前に決めておく論点です。分かれ目は、非居住者本人が受け取る賃料の源泉徴収と確定申告、内国法人が受け取る賃料が非居住者源泉の対象外になること、どちらでも要る納税管理人の3つ。最終的な有利不利は税理士の領域で、東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が物件取得と管理の実務の側から整理します。
結論(先に要点):中華圏の非居住者が日本の収益物件を持つとき、「法人(日本の資産管理会社)で持つか、個人で持つか」は、買う前に決めておく論点です。分かれ目は主に3つ——①非居住者本人が受け取る賃料には源泉徴収と確定申告がついてくる②日本の会社(内国法人)が受け取る賃料は非居住者への源泉徴収の対象から外れるが、法人には設立・維持のコストがかかる③どちらでも納税管理人の届出が要る場面がある、です。最終的な有利不利の判断は税理士の領域で、当社は物件取得と管理の実務の側から情報をお示しします。
本記事は、日本の収益不動産を検討する中華圏(中国・台湾)の非居住者投資家と、それを支援する現地の不動産・会計の専門家に向けたものです。保有スキームの最終判断は税理士へ、資産管理会社の設立登記は司法書士へ、代表者の在留資格は行政書士へ振り分けます。当社(四葉不動産株式会社)は物件取得と管理の情報提供に限り、これらはそれぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。
非居住者が日本の収益物件を法人で持つと、個人と何が変わるのですか?
いちばん大きく変わるのは、賃料を「誰が」受け取るかです。
個人で持てば、賃料を受け取るのは非居住者本人です。この賃料は、日本国内にある不動産の貸付けによる対価として、所得税法第161条第1項第7号の国内源泉所得に当たります。国内源泉所得である以上、日本の所得税の対象になり、確定申告が必要です。
法人で持てば——ここでいう法人は、日本で設立した資産管理会社(内国法人)です——賃料を受け取るのは日本の会社です。会社の所得として法人税の対象になり、非居住者本人への支払いではなくなります。
| 個人保有(非居住者本人) | 法人保有(日本の資産管理会社) | |
|---|---|---|
| 賃料を受け取る主体 | 非居住者本人 | 日本の内国法人 |
| 課税 | 所得税(確定申告) | 法人税ほか |
| 非居住者への源泉徴収 | 対象になり得る(後述) | 対象外(内国法人への支払いだから) |
| 設立・維持コスト | 小さい | 設立費用・毎年の申告・均等割などがかかる |
**どちらが有利かは、賃料の規模、本人の他の所得、将来の売却や相続の予定によって変わります。**これは税額の比較になるため、税理士の判断です。当社が「法人がよい」「個人がよい」とお答えすることはありません。
資産管理会社を作るなら、設立登記と税務は誰に頼むのですか?
日本で資産管理会社を作る場合、役割はきれいに分かれます。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 会社の設立登記 | 司法書士 |
| 定款作成などの書類作成 | 行政書士 |
| 法人税・住民税・消費税の申告と判断 | 税理士 |
| 代表者・役員の在留資格 | 行政書士 |
| 物件の調査・媒介・売買契約 | 宅地建物取引業者(当社) |
会社を設立する登記は司法書士の業務です。設立後の法人税・消費税の申告と、有利不利の判断は税理士の業務です。当社はここには入りません。 物件をどう取得し、どう管理するかという不動産の側だけを担います。
非居住者が代表者になる場合、在留資格や、会社の実体(事業所・帳簿)をどう整えるかが論点になります。在留資格は行政書士へおつなぎします。保有後の管理を現地から行う実務は、「海外に住みながら日本の不動産を管理する」にも整理しています。
非居住者への賃料の源泉徴収と、納税管理人はどう関わるのですか?
個人で持つ場合に必ず出てくるのが、この源泉徴収です。
所得税法第212条第1項は、非居住者に対して国内源泉所得を支払う者に、支払いの際の源泉徴収を義務づけています。不動産の賃借料はこの国内源泉所得に当たるため(同法第161条第1項第7号)、テナントが支払う賃料から、原則として20.42%(所得税20%+復興特別所得税)が源泉徴収されます(同法第213条第1項)。源泉徴収した税額は、支払った月の翌月10日までに納付されます。
ただし、大きな例外があります。 所得税法施行令第328条により、土地・家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払う賃料は、源泉徴収の必要がありません。つまり——借り手が「自分や家族が住むために借りている個人」なら源泉徴収は不要、借り手が法人や事業目的なら源泉徴収が要る、という分かれ方をします。収益物件では、テナントが事業者であることも多く、その場合は源泉徴収の対象になります。
| 賃料の借り手(テナント) | 源泉徴収 |
|---|---|
| 自己・親族の居住用に借りる個人 | 不要(所得税法施行令第328条) |
| 法人・事業目的の借り手 | 必要(原則20.42%) |
そして、非居住者が日本で確定申告や納税を行うには、納税管理人が要ります。国税通則法第117条第1項は、日本に住所・居所を有しない個人が、申告書の提出など国税に関する事項を処理する必要があるときは、日本に住所・居所を持つ者のうちから納税管理人を定めなければならないと定めています。定めたときは同条第2項により届け出ます。納税管理人に資格が要るか、会社でもなれるかは、「納税管理人に資格は要るのか、会社でもなれるのか」に整理しています。源泉徴収の実務の流れは「非居住者の家賃はどう源泉徴収されるか」をご覧ください。
**法人で持つと、この非居住者への源泉徴収の論点は消えます。**賃料を受け取るのが内国法人になるからです。ただし、法人には別途、法人税の申告と、赤字でもかかる住民税の均等割などがあり、これらの見積もりは税理士の判断になります。
物件取得の実務で、法人保有と個人保有はどこで手続きが分かれますか?
不動産取引の現場では、次の点が分かれます。
| 場面 | 個人保有 | 法人保有 |
|---|---|---|
| 契約の名義 | 非居住者本人 | 資産管理会社 |
| 契約前に要るもの | 本人確認・住所証明(本国の公証等) | 会社の設立が先。設立中は契約できない |
| 融資 | 非居住者個人への融資は限られる | 会社の実体・決算が見られる |
| 決済・送金 | 本国からの送金の記録 | 会社口座の開設が前提 |
| 登記 | 本人名義で登記(司法書士) | 会社名義で登記(司法書士) |
法人で持つと決めた場合、会社の設立が物件の契約より先になります。設立が終わっていないと、会社名義で契約できないからです。ここで段取りを誤ると、良い物件を押さえられません。個人で持つ場合は、本人確認書類を本国の公証などでそろえる時間を見込みます。
いずれの登記も司法書士が担い、当社は物件の調査・媒介・売買契約までを担います。事業用・投資用の物件全般は投資用・事業用不動産に整理しています。
現地の専門家と日本側で、どう役割を分けて進めるのですか?
中華圏の投資家を支援する現地の不動産・会計の専門家と、日本側の私たちとで、役割はこう分かれます。
| 役割 | 担い手 |
|---|---|
| 保有スキーム(法人か個人か)の最終判断 | 税理士(日本) |
| 資産管理会社の設立登記 | 司法書士(日本) |
| 在留資格・官公署提出書類 | 行政書士(日本) |
| 物件の調査・媒介・売買契約・管理 | 宅地建物取引業者(当社) |
| 本国側の資金・送金・現地手続き | 現地の専門家 |
現地の専門家が本国側の資金計画と投資家との窓口を担い、日本側では税理士・司法書士・行政書士・当社が、それぞれの独占業務に沿って分担します。**この分担は、どこか一社がまとめて引き受ける形ではありません。**それぞれ独立した事業体として、別々にご契約いただきます。当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。
よくある質問
Q. 日本の収益物件は、法人で持ったほうが税金は安くなりますか?
A. 一概には言えません。賃料の規模、本人の他の所得、将来の売却・相続の予定によって、法人保有が有利になる場合もあれば、設立・維持のコストが重く不利になる場合もあります。これは税額の比較になるため、税理士の判断です。当社が有利不利をお答えすることはありません。
Q. 非居住者が個人で持つと、賃料はいつも源泉徴収されますか?
A. いつもではありません。借り手が自己または親族の居住用に借りる個人であれば、所得税法施行令第328条により源泉徴収は不要です。借り手が法人や事業目的であれば、原則20.42%の源泉徴収の対象になります(所得税法第212条第1項・第213条第1項)。収益物件ではテナントが事業者であることも多く、その場合は対象になります。
Q. 日本の会社(資産管理会社)で持てば、非居住者への源泉徴収は関係なくなりますか?
A. 賃料を受け取るのが日本の内国法人になるため、非居住者への源泉徴収の論点は生じません。ただし法人税の申告や、赤字でもかかる住民税の均等割などが別途生じます。その見積もりと有利不利は税理士にご確認ください。
Q. 納税管理人は、法人保有でも要りますか?
A. 非居住者本人が日本で確定申告や納税を行う必要がある場面では、国税通則法第117条により納税管理人が要ります。法人保有で賃料が会社の所得になり、本人が日本で申告する必要がない場合は、この論点は会社側の申告に移ります。個別の要否は税理士にご確認ください。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「所得税法」(昭和40年法律第33号。第161条第1項第7号=国内にある不動産の貸付けによる対価が国内源泉所得、第212条第1項=非居住者への支払いの源泉徴収義務、第213条第1項=源泉徴収の税率20%。2026年9月5日参照)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(昭和40年政令第96号。第328条=土地・家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払う賃料は源泉徴収を要しない。2026年9月5日参照)
- 国税庁タックスアンサー No.2880「非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」(源泉徴収の対象・自己または親族の居住用の例外・税率20.42%・翌月10日納付。令和7年4月1日現在の法令等に基づく。2026年9月5日参照)
- e-Gov法令検索「国税通則法」(昭和37年法律第66号。第117条第1項=日本に住所・居所を有しない者の納税管理人、同条第2項=納税管理人を定めたときの届出。2026年9月5日参照)
※源泉徴収の要否・税率、法人保有と個人保有の有利不利は、賃料の規模、テナントの属性、租税条約の適用、本人の在留・居住の状況によって変わります。本記事は個別の課税関係を判断していません。
※保有スキーム(法人か個人か)の最終判断と税額の比較は税理士、資産管理会社の設立登記は司法書士、在留資格・官公署提出書類は行政書士の領域です。当社は物件の取得・管理の情報提供に限ります。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・投資判断を助言・保証するものではありません。物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。税務は税理士、登記は司法書士、紛争は弁護士の領域です。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
代表が直接お返事し、ご希望を伺って条件に合う物件があればLINEでご紹介します。
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