検査済証のない中古物件を福祉施設に転用できるか──物件選びで先に見る点
検査済証のない中古物件でも、障害福祉やデイの施設に転用できることはあります。物件を選ぶ段階で見るのは、その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えるか(用途変更の確認申請の要否)、検査済証がなければ法適合状況調査で建築時の適法性を確かめられるか、既存不適格か違反建築か、の3点です。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、内見の前に書類で絞り込める点を条文と国の資料から整理します。
結論(先に要点):検査済証のない中古物件でも、障害福祉やデイの施設に転用できることはあります。ただし物件を選ぶ段階で見る点が変わります。①その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えるか(超えれば用途変更の確認申請が要る)②検査済証があるか、なければ法適合状況調査で建築時の適法性を確かめられるか③既存不適格なのか違反建築なのか、の3点です。これは内見の前に、書類でかなり絞り込めます。
「空いている事務所ビルを福祉に使いたい」「古い店舗をデイにしたい」という相談で最初に止まるのが、この検査済証の有無です。本記事は、空き家・古い事務所ビル・元店舗を障害福祉サービス事業所や放課後等デイサービスの物件に転用したい買主・オーナーの方に向けて、不動産取引の目線で「どういう物件なら転用に進めるか」を条文と国の資料から順に整理したものです。用途変更の確認申請や法適合状況調査そのものは建築士・指定確認検査機関が、福祉サービスの指定申請は行政書士が担います。当社は物件の調査と取引だけを担い、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、情報をお示しします。
検査済証がない物件だと、福祉施設への用途変更で何につまずくのですか?
つまずくのは「その建物が、建築当時の基準に適合していたことを示す資料が手元にない」という一点です。
検査済証は、工事が完了したあとの完了検査に通ったことを示す書類です。建築基準法(昭和25年法律第201号)第7条第5項は、建築主事が完了検査で建築基準関係規定に適合すると認めたときに検査済証を交付すると定めています。指定確認検査機関が完了検査を行った場合は、同法第7条の2第5項が同じく検査済証の交付を定めています。検査済証がないということは、この完了検査を受けた記録がない可能性が高いということです。
福祉施設への転用では、ここが効いてきます。用途変更の確認申請を出す場合でも、金融機関の融資審査でも、まず問われるのは「今の建物が適法に建っているか」です。検査済証があれば、建築当時にその確認が済んでいます。ないと、その確認を別の方法でやり直すことになります。
だから、検査済証の有無は「転用できるか否か」を直接決めるものではなく、転用の手続きにどれだけ手数と時間がかかるかを決めるものとして見るのが正確です。
そもそも用途変更の確認申請が要るのは、どんな規模・用途からですか?
障害福祉サービス事業所や児童福祉施設等は、建築基準法別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物に当たります。同法施行令第115条の3第1号が、別表第一(い)欄(二)項の「その他これらに類するもので政令で定めるもの」として児童福祉施設等を挙げており、この児童福祉施設等には、同施行令第19条第1項により、障害者支援施設・障害福祉サービス事業の用に供する施設・老人福祉施設・保育所などが含まれます。
そのうえで、建築基準法第87条第1項は、建築物の用途を変更して同法第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかにする場合に、確認の規定を準用すると定めています。その第6条第1項第1号は「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」です。
つまり——事務所や店舗を福祉施設に変えるとき、その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えれば、用途変更の確認申請が要るということです。
この「200㎡」は、以前は「100㎡」でした。建築基準法の一部改正(平成30年法律第67号、令和元年6月25日施行)で、第6条第1項第1号の特殊建築物の面積の基準が100㎡超から200㎡超に引き上げられました。小規模な福祉施設で、既存の建物ストックを使いやすくする趣旨です。
| その用途に使う部分の床面積 | 用途変更の確認申請 |
|---|---|
| 200㎡以下 | 原則不要 |
| 200㎡超 | 必要(建築基準法第87条第1項) |
ただし——確認申請が要らないことと、建築基準法を守らなくてよいことは別です。同法第87条第2項は、用途を変更する場合に第48条(用途地域の制限)や避難・防火に関する規定を準用すると定めています。採光・排煙・避難・内装制限といった実体規定は、確認申請の要否に関わらず、変更後の用途に応じてかかります。「200㎡以下だから何もしなくてよい」ではありません。
なお、変更の前後が政令で指定する類似の用途相互間に当たる場合は、確認申請が不要になることがあります。可否の最終確認は特定行政庁の窓口で行ってください。
既存不適格と違反建築はどう見分け、買う前に誰に何を調べてもらうのですか?
この2つは、言葉が似ていますが、扱いがまったく違います。
既存不適格は、建てたときは適法だったのに、その後の法改正で今の基準に合わなくなった建物です。建築基準法第3条第2項は、法の施行または適用の際に現に存する建築物などが新しい規定に適合しない場合、その規定を適用しないと定めています。つまり、既存不適格は違法ではありません。ただし、増改築や用途変更をきっかけに、現行基準への適合を求められる場面が出てきます。
違反建築は、建てたときから建築基準法に違反している建物です。建ぺい率・容積率オーバー、必要な確認や検査を受けていない、といったものです。これは是正の対象になります。
| 既存不適格 | 違反建築 | |
|---|---|---|
| 建築当時 | 適法だった | 違法だった |
| 根拠 | 建築基準法第3条第2項で適用除外 | 是正の対象 |
| 転用のしやすさ | 手続き次第で進められることが多い | まず是正が前提になり、難しいことが多い |
検査済証がない物件は、このどちらなのかが書類だけでは分かりにくいことがあります。ここを調べるのが、次に述べる法適合状況調査です。買う前に、建築士・指定確認検査機関に相談し、登記や図面、確認済証(あれば)を集めて見てもらうのが順番です。**この調査は不動産業者の業務ではありません。**当社は物件の書類(登記事項証明書・公図・建物図面など)を取り寄せてお渡しするところまでを担い、適法性の判断は建築士へおつなぎします。
検査済証がないとき、法適合状況調査で救える物件と救えない物件はどう分かれますか?
検査済証がない建物の適法性を確かめる方法として、国土交通省が示しているのが法適合状況調査です。
国土交通省は、令和6年12月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」を策定・公表し、従来の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月)を、令和7年4月1日をもってこの新ガイドラインに統合・一本化しました(2026年9月5日参照)。この調査は、依頼を受けた建築士(指定確認検査機関に業務の届出をした者を含む)が、図面などの資料と現地の状況を照合し、その建物が建築基準関係規定にどこまで適合しているかを確かめるものです。
ここで大事なのは、この調査は「適法にするための工事の設計」ではなく「今どこまで適合しているかの確認」だということです。調査の結果によって、物件は大きく2つに分かれます。
| 進めやすい物件 | 難しい物件 | |
|---|---|---|
| 図面・書類 | 確認済証・設計図書が残っている | 図面が一切ない |
| 建物の状態 | 現況が図面と一致し、大きな増改築がない | 無断の増築・改築が重なっている |
| 構造 | 現行の耐震基準を満たす見込みがある | 旧耐震で、補強が過大になる |
図面が残っていて、現況がそれと一致し、現行基準からの隔たりが小さい建物は、法適合状況調査を経て用途変更へ進める見込みが立ちやすくなります。逆に、図面がなく、無断増築が重なり、旧耐震で補強が過大になる建物は、費用と工期が読めず、断念することもあります。耐震の判断は建築士・構造の専門家、税務上の扱いは税理士の領域で、当社が可否を判断することはありません。物件を絞り込む段階で、この調査に進める見込みがあるかどうかを、書類の有無からおおまかに見ておくのが現実的です。
同じように、物件を決める前に行政や消防の確認が要る例は「民泊を始められる物件の条件」に、介護事業所で起きる同じ構造の手戻りは「介護事業所の物件が見つからない本当の理由」に整理しています。許認可の側から見た用途変更の手続きは、行政書士側の「グループホームと建築基準法上の用途変更」をご覧ください。
福祉施設向けに物件を絞り込むとき、内見の前に確認すべき書類は何ですか?
内見に行く前に、次の書類の有無を確かめておくと、無駄足が減ります。
| 書類 | 見るところ | どこで得るか |
|---|---|---|
| 検査済証・確認済証 | 完了検査を受けているか、確認を受けているか | 所有者・特定行政庁の台帳記載事項証明 |
| 設計図書(竣工図) | 図面が現況と一致するか | 所有者・管理会社 |
| 登記事項証明書 | 面積・構造・増築の登記の有無 | 法務局 |
| 用途地域・都市計画情報 | その用途を建てられる地域か | 自治体の都市計画課 |
| 消防用設備の現況 | 自動火災報知設備などの有無 | 所轄消防署・管理会社 |
とくに検査済証と設計図書の有無は、前の章で述べたとおり、法適合状況調査に進めるかどうかを大きく左右します。この2つは、物件の第一報の段階で聞いておく価値があります。 用途地域の確認は、その用途をそもそもその場所で建てられるかを決めるもので、放課後等デイの用途地域と物件の関係は「放課後等デイの物件と用途地域」にも整理しています。事業用物件全般の探し方は投資用・事業用不動産、開業とオフィス選びの関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。
誰に相談すればよいですか?
物件の調査、書類の取り寄せ、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。障害福祉サービス・放課後等デイサービスの指定申請など、官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。
この2つはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 用途変更の確認申請・法適合状況調査は建築士・指定確認検査機関、増改築に伴う登記は土地家屋調査士・司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。
よくある質問
Q. 検査済証がない物件は、そもそも福祉施設に使えないのですか?
A. 一律に使えないわけではありません。検査済証がないことは、建築当時の適法性を示す資料が手元にないという意味で、法適合状況調査などで確かめ直すことになります。図面が残り、現況が図面と一致し、現行基準からの隔たりが小さい建物は、用途変更へ進める見込みが立ちやすくなります。可否は建物ごとに異なるため、建築士・特定行政庁にご確認ください。
Q. 用途変更の確認申請は、床面積が何㎡を超えると必要ですか?
A. その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡を超える場合です(建築基準法第87条第1項・第6条第1項第1号)。この基準は平成30年法律第67号(令和元年6月25日施行)で100㎡超から200㎡超に引き上げられました。200㎡以下でも、採光・排煙・避難・内装制限などの実体規定は変更後の用途に応じてかかります。
Q. 既存不適格の建物は、福祉施設に転用できますか?
A. 既存不適格は違法建築ではありません。建築基準法第3条第2項により、建築当時に適法だった建物には現行規定の一部が適用されません。ただし用途変更や増改築をきっかけに現行基準への適合を求められる場面があります。どこまで求められるかは建物と工事の内容によるため、建築士・特定行政庁にご確認ください。
Q. 法適合状況調査は誰が行うのですか。不動産会社に頼めますか?
A. 国土交通省のガイドラインに基づく調査は、建築士(指定確認検査機関に業務の届出をした者を含む)が行います。不動産会社の業務ではありません。当社は物件の登記・図面などの書類を取り寄せてお渡しするところまでを担い、調査そのものは建築士・指定確認検査機関へおつなぎします。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第3条第2項=既存不適格の適用除外、第6条第1項第1号=別表第一(い)欄の特殊建築物で200㎡超、第7条第5項・第7条の2第5項=検査済証の交付、第87条第1項=用途変更に伴う確認、同条第2項=第48条等の準用、別表第一(い)欄(二)項。第6条第1項第1号の面積要件は平成30年法律第67号・令和元年6月25日施行で100㎡超から200㎡超に改正。2026年9月5日参照)
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(昭和25年政令第338号。第19条第1項=児童福祉施設等の範囲、第115条の3第1号=別表第一(い)欄(二)項の政令で定めるもの。2026年9月5日参照)
- 国土交通省「建築:既存建築物の活用の促進について」(「既存建築物の現況調査ガイドライン」を令和6年12月に策定・公表。従来の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月)を令和7年4月1日をもって統合・一本化。2026年9月5日参照)
※用途変更の確認申請の要否は、変更前後の用途、その用途に使う部分の床面積、政令で指定する類似の用途相互間に当たるか、増改築を伴うかによって変わります。本記事は個別の物件について判断していません。
※検査済証・確認済証の有無、台帳記載事項の確認方法、法適合状況調査に進めるかの見込みは、建物ごとに異なります。適法性の判断と用途変更の設計は建築士・特定行政庁・指定確認検査機関の領域です。
※各自治体の窓口・様式・受付の運用は変わります。着手時点で当該自治体・特定行政庁のページを直接ご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の転用の可否や許認可の取得を判断・保証するものではありません。物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、福祉サービスの指定申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。用途変更の確認申請・法適合状況調査は建築士・指定確認検査機関、登記は土地家屋調査士・司法書士、税務は税理士の領域です。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
代表が直接お返事し、ご希望を伺って条件に合う物件があればLINEでご紹介します。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
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