住宅型有料老人ホームの物件を探す:用途地域・消防・面積の要件
住宅型有料老人ホームの物件で先に効くのは、①用途地域(有料老人ホームは「老人ホーム」として児童福祉施設等に含まれ、工業専用地域を除くすべての用途地域で建てられる)②消防(消防法施行令別表第一(6)項ロか(6)項ハかで、スプリンクラー設備が延べ面積に関わらず要るか6,000㎡以上で要るかが変わる)③居室の面積(老人福祉法上の一律基準はないが、標準指導指針は個室・1人13㎡以上を目安とする)の3点です。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを条文と国の資料から順に整理します。
結論(先に要点):住宅型有料老人ホームの物件で先に効くのは、①用途地域(有料老人ホームは「老人ホーム」として児童福祉施設等に含まれ、工業専用地域を除くすべての用途地域で建てられる)②消防(消防法施行令別表第一(6)項ロか(6)項ハかで、スプリンクラー設備が延べ面積に関わらず要るか6,000㎡以上で要るかが変わる)③居室の面積(老人福祉法上の一律基準はないが、標準指導指針は個室・1人13㎡以上を目安とする)の3点です。老人福祉法第29条第1項の届出は事業者本人が都道府県知事へ行い、当社は物件情報の提供にとどまります。
住宅型有料老人ホームを新しく開こうとするとき、「どんな建物・戸建てを借りれば(買えば)よいか」で最初に迷います。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や介護付き有料老人ホームの記事を読むと、各戸25㎡・特定施設の指定・人員配置といった条件が並びますが、住宅型は制度の乗り方が違うため、物件で確認する順番も変わります。本記事は、住宅型有料老人ホームの開設を検討する事業者や、事業用物件を探す不動産実務者に向けて、契約前に確認できることを条文と国の資料から順に整理したものです。物件の調査・媒介・賃貸借の仲介は当社(四葉不動産株式会社)が情報提供として担い、届出の受理は都道府県知事等が判断します。
住宅型有料老人ホームは、サ高住や介護付きと物件要件がどう違いますか?
同じ「高齢者向けの住まい」でも、乗っている制度が違うと、物件に求められるものが変わります。厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針は、有料老人ホームを次の4類型に分けています。
| 類型 | 介護が必要になったときの介護の出どころ | 物件の乗り方 |
|---|---|---|
| 介護付有料老人ホーム(一般型) | ホーム自身が提供する特定施設入居者生活介護 | 特定施設入居者生活介護の指定(介護保険法)が要る |
| 介護付有料老人ホーム(外部サービス利用型) | 委託先の介護サービス事業所 | 同上(外部利用型として指定) |
| 住宅型有料老人ホーム | 入居者自身が選ぶ地域の訪問介護等 | 老人福祉法第29条第1項の届出のみ。特定施設の指定は受けない |
| 健康型有料老人ホーム | 介護が必要になれば契約を解除して退去 | 届出のみ |
住宅型は「特定施設の指定を受けず、介護は外部の訪問介護等を使う」類型です。 このため、サ高住のような各戸25㎡以上という登録基準(サ高住にできる物件の条件を参照)や、介護付きの人員配置・設備の指定基準がそのままかかるわけではありません。介護保険の「施設系」事業所と物件の見方がどう違うかは「介護事業所の物件は用途地域で決まる」もあわせてご覧ください。事業用物件の考え方は投資用・事業用不動産、開業の拠点としての探し方は事業用の拠点・オフィスにまとめています。
どの用途地域なら住宅型有料老人ホームを開けますか?
有料老人ホームは、建築基準法別表第2の「老人ホーム」に含まれ、児童福祉施設等(同法施行令第19条・第115条の3第1号)の一つとして扱われます。児童福祉施設等は、工業専用地域を除くすべての用途地域で建てられます。 診療所ほど自由ではありませんが、保育所と同じ扱いで、第一種低層住居専用地域でも建てられる余地があります。
| 用途地域 | 有料老人ホーム(老人ホーム)の扱いの目安 |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域 | 建てられる(高さ・斜線・規模の制限に留意。多くは2階建てまで) |
| 中高層・住居・準住居地域 | 建てやすい |
| 近隣商業・商業・準工業・工業地域 | 建てやすい |
| 工業専用地域 | 建てられない(老人ホームは列挙されていない) |
ただし、既存の共同住宅や戸建てを住宅型有料老人ホームに変えるときは、用途地域上の可否とは別に、建築基準法第87条第1項の用途変更に伴う確認申請の要否が問題になります(詳しくは後述)。用途地域上の可否と用途変更の要否は、契約前に特定行政庁の窓口で確認できます。
消防設備(スプリンクラー・自動火災報知)はどの面積から義務になりますか?
住宅型有料老人ホームの物件で最も面積が効くのが消防です。消防法施行令別表第一で、有料老人ホームは入居者の状態によって(6)項ロと(6)項ハに分かれ、スプリンクラー設備の基準がまったく変わります。
| 区分 | 有料老人ホームの当てはめ | スプリンクラー設備 | 自動火災報知設備 |
|---|---|---|---|
| (6)項ロ | 主として避難が困難な要介護者を入居させるもの | 延べ面積に関わらず設置(従前275㎡以上→平成26年政令第333号・平成27年4月1日施行で原則すべて) | 延べ面積に関わらず設置 |
| (6)項ハ | (6)項ロに該当しないもの(避難が困難な要介護者が主体でない) | 延べ面積6,000㎡以上で設置 | 延べ面積300㎡以上で設置 |
(6)項ロは、平成18年の長崎県大村市の認知症高齢者グループホーム火災を受けた一連の改正で規制が段階的に強化され、現在はスプリンクラー設備が延べ面積に関わらず必要です。ただし、延べ面積275㎡未満で、火災発生時の延焼を抑制する構造(消防法施行規則第12条の2に定める構造)を有するものは、スプリンクラー設備を要しません。 また延べ面積1,000㎡未満の施設は、水道を利用した「特定施設水道連結型スプリンクラー設備」を設置できます。
住宅型有料老人ホームが(6)項ロと(6)項ハのどちらになるかは、入居者の実態(避難が困難な要介護者を主として入居させるか)で消防機関が判断します。 住宅型は自立・軽度の入居者を想定することが多く(6)項ハに当たる例が多いものの、実態で(6)項ロと判定されると小規模でもスプリンクラーが要ります。物件を決める前に、想定する入居者像を添えて管轄の消防機関に確認するのが確実です。放課後等デイなど他の福祉施設での(6)項ロ・ハの考え方は「放課後等デイサービスの物件」にも整理しています。
既存の共同住宅・戸建てを転用するとき、建築基準法上どこを確認しますか?
住宅型有料老人ホームは、既存の共同住宅・戸建て・寄宿舎などを転用して開くことも少なくありません。このとき建築基準法で確認したいのは、次の点です。
| 確認点 | なぜ効くか | 根拠 |
|---|---|---|
| 用途変更の確認申請 | 特殊建築物(有料老人ホーム)の用途に供する部分が200㎡超なら確認申請が要る | 建築基準法第87条第1項・第6条第1項第一号 |
| 用途地域の可否 | 工業専用地域では建てられない | 同法別表第2 |
| 採光・換気・階段・防火 | 居室の採光(法第28条)、直通階段・避難経路、防火区画 | 同法・同施行令 |
| 検査済証・既存不適格 | 増改築時に現行基準が及ぶ範囲。検査済証の有無 | 同法第7条ほか |
「共同住宅(寄宿舎)」から「有料老人ホーム(児童福祉施設等)」へは用途が変わるため、200㎡を超える部分があれば用途変更の確認申請が要ります。 共同住宅と有料老人ホームは、採光・階段・避難などの技術基準が異なる部分があり、既存建物のままでは満たせないことがあります。中古の建物を購入して転用する場合の再建築・接道の考え方は「相続した再建築不可の物件」も参考になります。用途変更の要否と現況の適合は、契約前に建築士・特定行政庁に確認してください。
なお、居室の面積について老人福祉法上の一律の数値基準はありませんが、標準指導指針は「一般居室、介護居室及び一時介護室は個室とし、入居者1人当たりの床面積は13㎡以上」を目安として示しています(介護居室がすべて個室で1室18㎡以上なら廊下幅の要件が変わる、など)。これはサ高住の各戸25㎡とは別の物差しです。標準指導指針は技術的助言で、実際の運用は都道府県・指定都市の指導指針で幅があります。
物件を押さえる前に、老人福祉法の届出との順番をどう組みますか?
住宅型有料老人ホームは、物件だけでは開設できません。老人福祉法第29条第1項は、有料老人ホームを設置しようとする者に、あらかじめ(設置を行う前に)都道府県知事(指定都市・中核市は市長)へ届け出ることを義務づけています。標準指導指針は、この届出を「建築確認後速やかに、有料老人ホームの設置を行う前に」行うこと、届出後に入居募集を行うことを求めています。事業体をまたぐため、担い手を分けて考えます。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 物件の調査・媒介・賃貸借の仲介 | 宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社) |
| 老人福祉法第29条の届出書類の作成 | 行政書士(四葉行政書士事務所)※届出は事業者本人が都道府県へ |
| 消防用設備(スプリンクラー・自火報)の設計・設置 | 消防設備士・設備業者(消防機関に事前相談) |
| 用途変更の確認申請・採光避難の適合 | 建築士 |
| 物件を購入する場合の所有権移転登記 | 司法書士 |
| 賃貸借・開業の税務 | 税理士 |
順番の要は「物件を押さえる前に、消防区分と用途変更の要否を確認しておく」ことです。 契約後に(6)項ロ判定でスプリンクラーが必要と分かる、用途変更で採光が足りないと分かる、という手戻りを避けるためです。届出の受理そのものは都道府県知事等が判断し、当社は物件情報の提供にとどまります。
誰に相談すればよいですか?
物件の調査、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。老人福祉法第29条の届出など官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。消防用設備の設計・設置は消防設備士・設備業者が、用途変更の確認申請は建築士が、購入する場合の所有権移転登記は司法書士が、税務は税理士が、それぞれの領域を扱います。
これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。届出の受理は都道府県知事等が判断します。相談は無料です。
よくある質問
Q. 住宅型有料老人ホームにも、サ高住のような各戸25㎡の面積基準はありますか?
A. 老人福祉法上の一律の床面積基準はありません。ただし有料老人ホーム設置運営標準指導指針が「個室・入居者1人当たり13㎡以上」を目安として示しており、都道府県・指定都市の指導指針で運用に幅があります。サ高住の各戸25㎡(共用部分が十分なら18㎡)は高齢者住まい法の登録基準で、住宅型とは別の制度です。着手時に開設予定地の指導指針を確認してください。
Q. 小規模なら、スプリンクラー設備はなくても開けますか?
A. 区分によります。(6)項ハ(避難が困難な要介護者が主体でない)なら延べ面積6,000㎡以上で義務ですが、(6)項ロ(主として避難が困難な要介護者を入居させる)は延べ面積に関わらず必要です。ただし(6)項ロでも延べ面積275㎡未満で延焼を抑制する構造(消防法施行規則第12条の2)を有するものは免除されます。区分の判定は入居者の実態で消防機関が行うため、想定する入居者像を添えて事前に確認してください。
Q. 中古の共同住宅を借りて住宅型有料老人ホームにできますか?
A. できる場合があります。ただし共同住宅(寄宿舎)から有料老人ホーム(児童福祉施設等)へは用途が変わるため、供する部分が200㎡を超えれば用途変更の確認申請(建築基準法第87条第1項)が要り、採光・避難・防火などの技術基準を満たす必要があります。工業専用地域では建てられません。契約前に建築士・特定行政庁で現況の適合と用途変更の要否を確認してください。
Q. 物件と届出は、どちらを先に進めればよいですか?
A. 物件を押さえる前に、消防区分((6)項ロ・ハ)と用途変更の要否を確認しておくのが安全です。老人福祉法第29条第1項の届出は「設置を行う前に」都道府県知事等へ出すもので、標準指導指針は建築確認後速やかに届け出て、届出後に入居募集をするよう求めています。届出書類の作成は行政書士が承り、届出自体は事業者ご本人が都道府県へ行います。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「老人福祉法」(昭和38年法律第133号。第29条第1項=有料老人ホームを設置しようとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。第29条第2項=変更の届出、第3項=廃止・休止の届出。2026年9月4日参照)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(老発第0718003号)(有料老人ホームの4類型〈介護付・住宅型・健康型〉、居室は個室・入居者1人当たり13㎡以上、建築確認後速やかに設置前に老人福祉法第29条第1項の届出を行うこと。技術的助言。2026年9月4日参照)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(昭和36年政令第37号。別表第一(6)項ロ・ハ=社会福祉施設等の区分、第12条=スプリンクラー設備の設置基準、第21条=自動火災報知設備の設置基準。2026年9月4日参照)
- 消防庁 参考資料「消防法施行令別表第一(6)項に係るスプリンクラー設備の基準(概要)」((6)項ロ=有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る)は原則すべて、(6)項ハ=それを除く有料老人ホームは6,000㎡以上。2026年9月4日参照)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第48条・別表第2=用途地域の制限〈老人ホームは児童福祉施設等として工業専用地域を除き建築可〉、第87条第1項=用途変更に伴う確認申請、第6条第1項第一号=特殊建築物の確認。2026年9月4日参照)
※スプリンクラー・自動火災報知設備の区分判定((6)項ロか(6)項ハか)、居室面積の目安、用途変更の適合は、開設予定地の消防機関・特定行政庁・都道府県によって幅があります。本記事は個別の物件について判断していません。着手時点で管轄の消防機関・特定行政庁・都道府県の窓口で確認してください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の可否や有料老人ホームの届出の受理を判断・保証するものではありません。届出の受理は都道府県知事等が判断します。
※物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、届出等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。消防用設備は消防設備士、用途変更は建築士、所有権移転登記は司法書士、税務は税理士へ直接ご依頼いただきます。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と許可(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
代表が直接お返事し、ご希望を伺って条件に合う物件があればLINEでご紹介します。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|10:00〜18:00(定休:火・水)
