相続した家の前面が共有私道だと、売却前に掘削承諾がいるのはなぜ?

相続した家の前面道路が複数人の共有私道だと、水道・ガスの引込や建替えで道路を掘る工事に、原則として他の共有者の関与が必要です。民法(明治29年法律第89号)は、著しい変更は全員の同意(第251条第1項)、形状・効用の著しい変更を伴わない管理は持分の価格の過半数(第252条第1項)、保存行為は各共有者が単独(第252条第5項)と定めます。法務省「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版・令和4年6月)」は、舗装の補修を保存行為、ライフラインの引込など多くの工事を管理行為(過半数)と整理し、売却前にこの掘削承諾を取り付けておくのが実務の通例です。所在がわからない共有者がいる場合は、令和3年改正(令和5年4月1日施行)で持分の取得(第262条の2)・譲渡(第262条の3)や、その者を除いて決める裁判(第251条第2項・第252条第2項)が用意されました。東京都文京区の宅地建物取引士が条文とガイドラインから整理します。売買と引込調整の媒介は当社、交渉・調停は弁護士、登記は司法書士、譲渡所得税は税理士へ分離受任でご案内します。
結論(先に要点):相続した家の前面道路が複数人の共有私道だと、水道・ガスの引込や建替えで道路を掘る工事に、原則として他の共有者の関与が必要になります。民法(明治29年法律第89号)は、共有物に著しい変更を加える行為は共有者全員の同意(第251条第1項)、形状・効用の著しい変更を伴わない管理の範囲は各共有者の持分の価格の過半数(第252条第1項)、保存行為は各共有者が単独(第252条第5項)で決すると定めます。法務省「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~(第2版・令和4年6月)」は、舗装の補修は保存行為、ライフラインの引込など多くの工事は管理行為(過半数)として整理しており、売却前にこの承諾(掘削承諾)を取り付けておくのが実務の通例です。所在がわからない共有者がいる場合は、所在等不明共有者の持分の取得(民法第262条の2)・持分の譲渡(第262条の3)や、その者を除いて管理・変更を決する裁判(第251条第2項・第252条第2項)が令和3年改正で用意されました(令和5年4月1日施行)。売買と引込調整の媒介は当社(宅地建物取引業)、交渉の代理や調停は弁護士、承諾書の権利関係の確定と登記は司法書士、譲渡所得税は税理士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします(紹介料のやりとりはありません)。
相続した実家や土地の前面道路が共有私道で、売る前に他の共有者から掘削の承諾を取り付けたい相続人の方に向けて、なぜ承諾が要るのか、どの制度で動くのかを、条文と法務省ガイドラインの順に整理します。本記事は一般的な情報提供であり、個別の工事がどの行為類型に当たるか、承諾が得られないときにどの手続を使うかの最終判断は、弁護士・司法書士と裁判所の領域です。
四葉不動産株式会社は、東京都文京区小日向を拠点に、相続した不動産の調査と売買・引込調整の媒介を承っています。前面が共有私道の物件について、契約前に確認できることからご相談いただけます。
共有私道の掘削承諾はなぜ売却前に必要になるのか?
前面道路が「共有私道」だと、その道路は複数人の共有物です。水道・ガスの引込管を新たに入れる、古い管を取り替える、建替えに伴って道路を掘るといった工事は、他人も持分を持つ土地を掘る行為になります。民法は、共有物をどう扱うかを行為の性質で分けています。
| 行為の類型 | 必要な関与 | 根拠 |
|---|---|---|
| 保存行為(現状維持。舗装の軽微な補修等) | 各共有者が単独でできる | 民法第252条第5項 |
| 管理行為(軽微な変更を含む) | 各共有者の持分の価格の過半数で決する | 民法第252条第1項 |
| 変更行為(形状・効用の著しい変更を伴うもの) | 共有者全員の同意 | 民法第251条第1項 |
さらに、管理の決定が共有者の一人に「特別の影響」を及ぼすべきときは、その共有者の承諾が必要です(第252条第3項)。問題は、工事の時点で全員の同意や過半数が確実に取れていないと、工事業者が着工をためらい、買主も融資を受けられないことです。だから、売る前に関係する共有者から承諾(掘削承諾)を取り付けておく運用が広く行われます。これは法律上の同意要件を満たすためであると同時に、将来のトラブルを避け、買主がそのまま工事に着手できるようにするための実務上の手当てでもあります。
法務省の私道ガイドラインは掘削の同意をどう整理しているのか?
法務省の「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会」は、どの工事にどこまでの同意が要るかを事例ごとに整理した報告書を公表しています。令和4年6月の第2版は、令和3年の民法改正(令和3年法律第24号)を踏まえた最新版です(初版は平成30年1月)。
ガイドラインは、工事の性質ごとにおおむね次のように整理しています(概要であり、個別事情で結論は変わります)。
| 工事の例 | 行為類型(ガイドラインの整理) |
|---|---|
| 私道の舗装の修復・補修 | 保存行為(各共有者が単独でできる) |
| 自己が使う私有の給水管を新たに敷設 | 持分に応じた使用として単独でできる場合がある |
| 公共下水道管の新設 | 管理行為(持分の価格の過半数で決する) |
| ライフライン事業者のための利用権の設定 | 通常は管理行為(過半数) |
| 長期間の断水を生じさせるなど一部の共有者に特別の影響を及ぼす工事 | 個別判断(特別の影響を受ける共有者の承諾が必要) |
令和3年改正は、共有物の「管理」の範囲を広げ、形状・効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」も過半数で決せるようにしました。ライフラインの引込のための掘削は、道路の形状・効用を著しく変えないことが多く、管理(過半数)の範囲で進められる場合が多いと整理されます。ただし、どの工事がどの類型に当たるかは管の経路・口径・掘削の規模で変わり、特別の影響の有無は事案ごとの個別判断です。類型の当てはめと承諾の範囲は、弁護士・司法書士にご確認ください。
所在がわからない共有者がいるとき何ができるのか?
共有私道では、相続が重なって持分が細分化し、連絡の取れない共有者(所在等不明共有者)がいることが珍しくありません。令和3年改正は、こうした場合に裁判所の関与で前に進める制度を整えました(令和5年4月1日施行)。
| 困りごと | 使える制度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 所在不明の共有者を除いて変更を加えたい | 裁判所の決定で、所在等不明共有者以外の同意により変更できる | 民法第251条第2項 |
| 所在不明の共有者を除いて管理を決めたい | 裁判所の決定で、所在等不明共有者以外の持分の過半数で管理事項を決せる | 民法第252条第2項 |
| 所在不明の共有者の持分そのものを取得したい | 裁判所の決定で、他の共有者がその持分を取得できる | 民法第262条の2 |
| 所在不明の共有者の持分を含めて第三者に売りたい | 裁判所の決定で、持分の譲渡権限が付与される | 民法第262条の3 |
これらはいずれも裁判所への申立てを要する手続で、所在等不明であることの調査(住民票・戸籍・不動産登記の調査等)や供託が前提になります。どの手続を選ぶか、申立てをどう組み立てるかは、弁護士・司法書士の領域です。当社は、登記簿・公図から共有者と持分の現況を読み、連絡の取りやすさを含めた段取りの前提を整理してお渡しします。
承諾書には何を書いてもらい、買主にどう引き継ぐのか?
掘削承諾は口頭では意味が薄く、書面で残すのが前提です。買主や金融機関、工事業者が安心して着工できるよう、承諾書には次の点を盛り込むのが通例です(文面の作成・権利関係の確定は司法書士・弁護士の領域です)。
- 給排水管・ガス管の設置・掘削を認めること、その位置・経路のおおよその範囲
- 将来の点検・補修・取替えのための再掘削を認めること
- 工事後の道路の原状回復の方法と費用の負担
- この承諾が土地の譲受人(買主)やその承継人にも及ぶこと(承継条項)
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
とくに承継条項は、相続人であるあなたが承諾を得ても、買主に引き継がれなければ買主が再び承諾を取り直すことになるため、売却を見据えるなら欠かせません。当社は、売買の媒介のなかで、こうした承諾の有無・範囲・承継の記載を物件調査の論点として確認し、不足があれば司法書士・弁護士へおつなぎします。承諾書そのものの作成や、承諾が得られない場合の交渉・裁判は、当社の業務ではありません。
交渉・登記・税務はそれぞれ誰に相談するのか?
共有私道の売却は、物件と承諾の調査、交渉、登記、税務が別々の専門の領域にまたがります。当社が担うのは物件の調査と売買・引込調整の媒介で、それ以外は各有資格者へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします。
| 困りごと | 頼む先 |
|---|---|
| 共有私道の現況調査、売買・引込調整の媒介 | 当社(宅地建物取引業) |
| 承諾が得られず交渉が紛争化、調停・訴訟、所在等不明共有者の申立て | 弁護士 |
| 共有持分の移転登記、承諾書の権利関係の確定 | 司法書士 |
| 売却に伴う譲渡所得税 | 税理士 |
これらはそれぞれ独立した事業体であり、別々にご契約いただく前提です。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。承諾が得られるか、どの裁判手続を使うかは、最終的には弁護士・司法書士と裁判所が判断します。物件を見ながら、承諾の要否・範囲・承継、所在不明共有者の有無という論点を切り分け、どこを誰に相談するかの段取りからご相談をお受けします。相続不動産の進め方は相続した不動産の相談窓口もご覧ください。
前面が共有私道の相続不動産のご相談を四葉不動産へ(相談無料)
お問い合わせに「共有私道の掘削承諾」と、道路の共有者のおおよその人数、連絡の取れない共有者がいるか、水道・ガスの引込か建替えかのご事情をご記入ください。承諾が取れる・取れないを先に決めつけず、現況調査と、交渉・登記・税務の専門家へどこを振るかの整理からお話しします。
よくある質問
Q. 相続しただけで地主や他の共有者の承諾は要りますか?
A. 相続によって共有私道の持分を引き継ぐこと自体には、他の共有者の承諾は要りません(相続は法律上当然に権利が移ります)。承諾が問題になるのは、水道・ガスの引込や建替えで道路を掘る工事をするときと、売却に備えて買主のために承諾を取り付けておくときです。工事の性質によって、保存行為(単独)・管理行為(過半数)・変更行為(全員同意)のどれに当たるかが変わります(民法第251条・第252条)。当てはめは弁護士・司法書士にご確認ください。
Q. 掘削は全員の同意が必要ですか、過半数でよいですか?
A. 工事の性質によります。法務省のガイドライン(第2版)は、ライフラインの引込など道路の形状・効用を著しく変えない工事を管理行為(持分の価格の過半数)として整理する一方、著しい変更を伴う工事は全員の同意(民法第251条第1項)が要るとしています。また、一部の共有者に特別の影響(長期間の断水等)を及ぼす場合は、その共有者の承諾が必要です(第252条第3項)。管の経路・規模で結論が変わるため、個別の当てはめは専門家にご確認ください。
Q. 連絡の取れない共有者がいると売れないのですか?
A. 売れないとは限りません。令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)で、所在等不明共有者の持分の取得(第262条の2)・持分の譲渡(第262条の3)や、その者を除いて管理・変更を決する裁判(第251条第2項・第252条第2項)が整えられました。いずれも裁判所への申立てと所在不明の調査が前提です。どの手続を選ぶかは弁護士・司法書士の領域で、当社は媒介と現況調査の範囲でお手伝いします。
Q. 承諾書は買主に引き継がれますか?
A. 自動では引き継がれないため、承諾書に「譲受人(買主)やその承継人にも効力が及ぶ」という承継条項を入れておくのが通例です。これがないと、買主が改めて共有者から承諾を取り直すことになり、売却が滞ることがあります。承諾書の作成や権利関係の確定は司法書士・弁護士の領域で、当社は売買の媒介のなかで承諾の有無・範囲・承継の記載を確認し、不足があれば専門家へおつなぎします。
この記事の出典(一次情報)
以下は確認の出発点となる公表資料です。法令は改正されるため、条文・項・号・施行日・最終改正はe-Gov法令検索で最新を確認してください。工事の行為類型の当てはめ、承諾の範囲、所在等不明共有者の手続の最終判断は、弁護士・司法書士と裁判所の領域です。参照日はいずれも2026年10月28日。個別の工事・売却の結論を保証するものではありません。
- e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第249条〜第264条=共有〔第251条=共有物の変更〈第1項=著しい変更を伴うものは全員の同意、第2項=所在等不明共有者以外の同意で変更できる旨の裁判〉、第252条=共有物の管理〈第1項=持分の価格の過半数、第2項=所在等不明共有者等を除いて決する裁判、第3項=一部の共有者に特別の影響を及ぼすときの承諾、第5項=保存行為は各共有者が単独でできる〉、第262条の2=所在等不明共有者の持分の取得、第262条の3=所在等不明共有者の持分の譲渡〕。第262条の2・第262条の3や第251条第2項・第252条第2項は令和3年法律第24号による改正で新設、令和5年4月1日施行)
- 法務省「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~(第2版)」(令和4年6月。共有私道の工事を保存・管理・変更に区分し、舗装の補修は保存行為、ライフラインの引込など多くの工事は管理行為〔過半数〕、特別の影響があるときは個別判断とする事例整理。初版は平成30年1月。参照日2026年10月28日。個別の当てはめは事案による)
- e-Gov法令検索「水道法」(昭和32年法律第177号。給水装置に関する規定)/「下水道法」(昭和33年法律第79号。第10条=排水設備の設置義務等。引込・排水設備設置の根拠法令)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の工事がどの行為類型に当たるか、承諾が得られるか、どの裁判手続を使えるかを保証するものではありません。行為類型の当てはめと交渉・調停・訴訟は弁護士が、持分の移転登記と承諾書の権利関係の確定は司法書士が、譲渡所得税は税理士が、所在等不明共有者に関する申立ては裁判所が判断・担当します。
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)/四葉不動産株式会社 代表取締役・宅地建物取引士。相続した不動産の調査と売買・引込調整の媒介を承ります。著者プロフィール
更新日:2026年10月28日
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