相続した土地が都市計画道路の予定地にかかっていたら、どう売るか

相続した土地が都市計画道路の予定地にかかっていても、土地は相続人の所有なので売れます。売り方を左右するのは、都市計画決定だけの段階か事業認可まで進んだ段階かの違いです。予定地では都市計画法(昭和43年法律第100号)第53条の建築許可が要り、第54条は階数2以下・地階なし・容易に移転除却できる建物なら許可するとします。事業認可後は第65条の制限・第67条の届出と先買い・第68条の買取請求が重なり、収用の対価補償金には租税特別措置法第33条の4の5000万円特別控除の余地があります。東京都文京区の宅地建物取引士が、契約前に確認できることを条文から整理します。
結論(先に要点):相続した土地が都市計画道路の「予定地」にかかっていても、土地は相続人の所有なので売ること自体はできます。価格と売り方を左右するのは、その土地が「都市計画決定だけの段階」か「都市計画事業の認可まで進んだ段階」かという違いです。都市計画道路の予定地(都市計画施設の区域)では、都市計画法(昭和43年法律第100号)第53条により、建築物を建てるとき都道府県知事等(市の区域内は市長)の許可が要ります。第54条は、その建築物が階数2以下で地階がなく、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造その他これらに類する構造で、容易に移転・除却できるものなら許可しなければならない、と定めています(自治体の運用で事業化が当面見込まれない区間を3階まで認める例もありますが、事業化が近い区間は対象外です)。都市計画事業の認可(第59条)の告示後は、第65条で事業地内の建築等がさらに制限され、第67条で土地建物を有償で譲渡するときは施行者への届出と先買いがかかり、第68条で収用手続が保留された土地の所有者は施行者に時価での買取りを請求できます。最終的には土地収用法による収用と損失補償に進み、対価補償金には租税特別措置法第33条の4の5000万円特別控除が使える余地があります(最初の買取り等の申出から6か月以内の譲渡などの要件あり)。建築制限の確認は不動産・建築士、収用・補償交渉は弁護士、所有権移転登記は司法書士、5000万円控除など税務は税理士の領域で、当社(宅地建物取引業)は売買の媒介と調査を担い、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします(紹介料のやりとりはありません)。
都市計画道路の計画線がかかる実家・土地を相続し、建築制限や将来の収用を心配して売却・活用を検討している相続人に向けて、予定地の確認のしかた、建築制限の中身、事業認可の前後で売り方がどう変わるか、価格と補償・税の考え方、誰に振るかを、条文と公的資料の順に整理します。本記事は一般的な情報提供であり、個別の建築制限の適否や収用・補償・税務の最終判断は、自治体・建築士・弁護士・税理士などの領域です。
四葉不動産株式会社は、東京都文京区小日向を拠点に、相続した不動産の調査と査定・売却の媒介を承っています。「公図や都市計画図に赤い計画線が入っている」という段階から、契約前に確認できることをご相談いただけます。
都市計画道路の『予定地』とは何で、どこで確認できるか?
都市計画道路は、都市計画法に基づいて都市計画決定された道路で、将来その道路を造るために線(計画線)が引かれた区域が「予定地」です。正確には、計画決定された都市計画施設(道路)の区域にあたります。計画決定だけで何十年も事業化されていない区間も多く、「計画はあるが工事はまだ」の状態が続くことがあります。
| 段階 | 何が起きているか | かかる制限の根拠 |
|---|---|---|
| 都市計画決定 | 道路の区域(計画線)が決まった段階。事業化は未定 | 都市計画法第53条の建築制限 |
| 都市計画事業の認可 | 事業として実施することが認可・告示された段階 | 都市計画法第65条の事業地内の制限 |
自分の土地が予定地にかかるかは、物件所在地の市町村の都市計画課で確認できます。多くの自治体は都市計画図や都市計画情報(Web上の都市計画GIS)を公開しており、計画線と自分の敷地の重なりの目安を見られます。ただし地図の縮尺では境界付近の正確な食い込み幅までは読み切れないため、計画線が敷地のどこを通り、何平方メートルがかかるかは、自治体の窓口で都市計画施設の区域の図面に当てて確認するのが確実です。都市計画の種類による売り方の違いは、市街化調整区域の土地について相続した市街化調整区域の土地は売れるかでも扱っています。本記事は都市計画道路の予定地(都計法53条・65条の建築制限と収用)に主題を限定します。
予定地にかかる土地に家は建てられるか(都計法53条の建築制限)?
都市計画道路の予定地では、建物を建てることが禁止されるわけではなく、「許可を受ければ、容易に移転・除却できる建物なら建てられる」という制限がかかります。根拠は都市計画法第53条と第54条です。
第53条は、都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内で建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等(市の区域内では市長)の許可を受けなければならない、と定めています(軽易な行為、非常災害の応急措置、都市計画事業の施行として行う行為などは除かれます)。第54条は、知事等は、申請が都市計画に適合し、かつ次の建築物にあたるときは許可しなければならない、としています。
| 第54条が許可の要件とする建築物 | 内容 |
|---|---|
| 階数 | 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと |
| 構造 | 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること |
| 趣旨 | 将来の事業の際に容易に移転し、または除却することができると認められること |
つまり、鉄筋コンクリート造の3階建てのような頑丈で移転の難しい建物は、予定地では建てにくいのが原則です。自治体によっては、事業化が当面見込まれない区間について運用で3階建てまで認める例もありますが(都市計画運用指針を踏まえた各自治体の運用)、事業化が近い区間は対象外です。さらに第55条は、円滑な事業執行のため特に必要なとき、知事等が第54条にかかわらず許可しないことができる土地の区域を指定できる仕組みを置き、その場合には土地所有者からの買取りの申出に応じる仕組みがあります。買主から見ると「建て替えに制限がかかる土地」なので、価格や需要に影響します。実際にどの構造・階数まで認められるかの判断は、建築士・特定行政庁の領域です。がけ・擁壁など別の制限と重なる土地の売り方はがけ地・擁壁のある土地を売るでも整理しています。
事業認可の前と後で、売却の進め方はどう変わるか?
同じ予定地でも、都市計画事業の認可(第59条)の前と後で、かかる制限と売却の手順が大きく変わります。
認可前(計画決定だけ)の段階では、制限は第53条の建築制限にとどまり、収用はまだ始まっていません。土地は通常どおり売買でき、買主は第53条の範囲で建築計画を立てます。認可後(事業認可の告示後)は、第65条により事業地内で土地の形質の変更・建築物の建築・工作物の建設、重量5トンを超えるなど移動の容易でない物件の設置・堆積をするには知事等の許可が必要になり、制限が強まります。
| 論点 | 認可前(計画決定のみ) | 認可後(事業認可の告示後) |
|---|---|---|
| 建築等の制限 | 第53条(容易に除却できる建物は許可される) | 第65条(土地の形質変更・建築等に許可が必要) |
| 譲渡の手続き | 通常の売買 | 第67条=有償譲渡は施行者へ届出・施行者は30日以内に先買い可 |
| 買取り請求 | 原則なし(第55条指定区域は別) | 第68条=収用手続が保留された土地の所有者は施行者に時価で買取り請求できる |
認可後に事業地内の土地建物を有償で譲渡しようとするときは、予定対価と相手方を施行者(国・都道府県・市区町村など)に書面で届け出る必要があり、施行者は届出から30日以内にその土地建物を買い取ることができます(第67条)。この期間は第三者へ譲渡できません。届出をせずに譲渡すると過料の対象になり得ます(第95条)。逆に、所有者の側からは、収用手続が保留された事業地内の土地について、施行者に時価での買取りを請求できる場合があります(第68条)。どちらの段階かで売り先(一般の買主か、施行者か)と手順が変わるため、まず自分の土地が今どの段階かを自治体で確認するのが出発点です。
相続した予定地を売るとき、価格と補償・税はどう考えるか?
価格は、建築制限による減価(どの構造・階数まで建てられるか)と、事業がどこまで進んでいるか(将来の収用の確度)で変わります。相続した予定地の出口は、おおむね3つに分かれます。
| 出口 | 内容 | 主に関わる専門家 |
|---|---|---|
| 一般の買主へ売る | 建築制限を織り込んだ価格で市場に出す。認可後は第67条の届出が前提 | 当社(宅地建物取引業) |
| 施行者の買取り・収用に応じる | 事業認可後、収用・買取りで対価補償金を受ける | 施行者・弁護士(補償交渉) |
| 保有して活用する | 第53条の範囲で平屋・軽量の建物や駐車場などに使う | 建築士 |
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
収用等によって対価補償金を受ける場合、租税特別措置法第33条の4の「収用交換等の場合の5000万円特別控除」を使える余地があります。これは、収用等で得た対価補償金について、一定の要件のもとで譲渡所得から最高5000万円を控除できる制度です。対象は原則として対価補償金で、収益補償金・経費補償金などは原則対象外です。公共事業の施行者から最初に買取り等の申出を受けた日から6か月以内に譲渡していることなどの要件があり、代替資産を取得して課税を繰り延べる第33条の特例とは同じ年に併用できず、特別控除の年間合計は5000万円が上限です(第36条)。補償金の区分や控除の適用可否は税理士が、補償交渉は弁護士が判断します。当社は、建築制限を織り込んだ市場での売り方と、事業の段階に応じた出口の切り分けを整理します(補償額・税額そのものの算定は各有資格者の領域です)。
建築制限の確認・収用交渉・登記・税務は誰に振るか?
都市計画道路の予定地の売却は、建築制限(不動産・建築士)・収用と補償交渉(弁護士)・登記(司法書士)・税務(税理士)が別々の領域にまたがります。不動産会社が担うのは物件の調査と査定・媒介までで、それ以外は各有資格者へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形になります。
| 困りごと | 振り先 |
|---|---|
| 計画線・建築制限の調査、査定、売却の媒介 | 当社(宅地建物取引業) |
| 建てられる構造・階数(第54条)の適否、建築計画の判断 | 建築士・特定行政庁 |
| 事業認可後の収用・損失補償をめぐる交渉・争い | 弁護士 |
| 所有権移転登記、相続登記 | 司法書士 |
| 5000万円特別控除など譲渡所得の申告・適用判断 | 税理士 |
これらはそれぞれ独立した事業体であり、別々にご契約いただく前提です。当社は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。建築制限の適否は建築士・特定行政庁が、収用・補償は弁護士が、登記は司法書士が、税務は税理士が判断・担当します。なお、相続した土地の名義が被相続人のままなら、売却の前に相続登記(令和6年〈2024年〉4月1日から義務化・不動産登記法第76条の2)が要るのが通常で、これは司法書士の領域です。当社は、計画線が敷地のどこを通りどれだけかかるか、今は計画決定だけか事業認可後かという段階を自治体で確認し、売り方と出口の整理からご相談をお受けします。相続不動産の進め方は相続した不動産の相談窓口もご覧ください。
都市計画道路の予定地にかかる相続土地の売却のご相談を四葉不動産へ(相談無料)
お問い合わせに「都市計画道路の予定地」と、物件所在地(自治体)、計画線が敷地にかかっている範囲(分かる範囲で)、今が計画決定だけか事業認可後か、相続登記が済んでいるかをご記入ください。売れる・売れないを先に決めつけず、計画線と建築制限の調査と、建築・収用・登記・税務の専門家へどこを振るかの整理からお話しします。
よくある質問
Q. 都市計画道路の予定地にかかる相続した土地は売れますか?
A. 土地は相続人の所有なので、売ること自体はできます。価格と売り方を左右するのは、都市計画決定だけの段階か、都市計画事業の認可まで進んだ段階かの違いです。計画決定だけなら第53条の建築制限(容易に除却できる建物なら許可される)を織り込んで市場で売り、事業認可後は第67条の施行者への届出・先買いや、第68条の買取り請求、最終的には収用・補償が関わります。今どの段階かは物件所在地の自治体で確認するのが出発点です。
Q. 予定地に家は建てられますか?3階建ては無理ですか?
A. 都市計画法第53条の許可を受ければ、建てられる場合があります。第54条は、階数2以下で地階がなく、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造その他これらに類する構造で、容易に移転・除却できる建物なら許可しなければならないとしています。鉄筋コンクリート造の頑丈な建物や、原則として3階建ては建てにくい一方、事業化が当面見込まれない区間を運用で3階まで認める自治体もあります。実際の可否は建築士・特定行政庁が判断します。
Q. 将来の収用で税金は安くなりますか?
A. 収用等で対価補償金を受ける場合、租税特別措置法第33条の4の収用交換等の5000万円特別控除を使える余地があります。対象は原則として対価補償金で、収益補償金・経費補償金などは原則対象外です。最初に買取り等の申出を受けた日から6か月以内の譲渡などの要件があり、代替資産取得の課税繰延べ(第33条)とは同じ年に併用できません。適用の可否や補償金の区分は税理士が判断します。本記事では制度の骨格のみを示します。
Q. 事業認可後に売るとき、普通の買主に売れますか?
A. 売れますが、手順が加わります。事業認可の告示後は、事業地内の土地建物を有償で譲渡しようとするとき、予定対価と相手方を施行者へ書面で届け出る必要があり、施行者は届出から30日以内にその土地建物を買い取ることができます(第67条)。この期間は第三者へ譲渡できず、届出をせずに譲渡すると過料の対象になり得ます(第95条)。届出や収用・補償をめぐる判断は弁護士、手続きは施行者の窓口で確認します。
この記事の出典(一次情報)
以下は確認の出発点となる公表資料です。法令は改正されるため、条文・項・号・施行日・最終改正はe-Gov法令検索で最新を確認してください。計画線が敷地にかかる範囲や事業の段階、第54条の運用(3階建ての可否など)は自治体ごとに異なるため、物件所在地の市町村の都市計画課に直接確認してください。参照日はいずれも2026年11月1日。個別の建築制限の適否や収用・補償・税の適用を保証するものではありません。
- e-Gov法令検索「都市計画法」(昭和43年法律第100号。第53条=都市計画施設の区域内等における建築の許可、第54条=許可の基準〔階数2以下・地階なし・容易に移転除却できる構造〕、第55条=許可の基準の特例・買取り、第59条=都市計画事業の認可、第65条=事業地内における建築等の制限、第67条=土地建物等の有償譲渡の届出と先買い、第68条=土地の買取請求、第95条=過料)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和32年法律第26号。第33条=収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例、第33条の4=収用交換等の場合の5000万円特別控除、第36条=特別控除額の年間合計の上限)
- e-Gov法令検索「土地収用法」(昭和26年法律第219号。都市計画事業の収用・損失補償の根拠となる手続法)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号。第76条の2=相続登記の申請義務〔令和6年4月1日施行〕)
- 国税庁タックスアンサー「収用等により土地建物を売ったときの特例」および質疑応答事例(5000万円特別控除の対象・要件・他の特例との関係。参照日2026年11月1日。適用可否は所轄税務署の判断による)
- 各自治体の都市計画図・都市計画情報(都市計画GIS)、国土交通省「都市計画運用指針」(計画線の確認方法、第54条の運用は自治体ごとに異なる。参照日2026年11月1日)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の建築制限の適否、収用・補償の成立、税の特例の適用を保証するものではありません。建築制限の適否と建築計画は建築士・特定行政庁が、収用・損失補償の交渉は弁護士が、相続登記や所有権移転登記は司法書士が、5000万円特別控除など譲渡所得の申告は税理士が判断・担当します。
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)/四葉不動産株式会社 代表取締役・宅地建物取引士。相続した不動産の調査と査定・売却の媒介を承ります。著者プロフィール
更新日:2026年11月1日
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