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2026.07.25グループホーム

戸建て・空き家を「グループホームに貸す」という選択──大家さんが最初に知りたいこと

浦松 丈二

浦松 丈二

四葉不動産株式会社 代表取締役・専任宅建士((東京)第293544号)/行政書士/元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)

プロフィール(士業ドットコム)↗

「福祉施設に貸すなんて、考えたこともなかった」──空き家になった戸建てのオーナーにグループホーム(障害者の共同生活援助)への賃貸をご提案すると、たいてい最初はそう言われます。けれど仕組みを知ると、事業者への一括賃貸で長期安定、地域に必要とされる使い方だと分かって、表情が変わる。建物は傷まないか、近隣は大丈夫か、途中で撤退されないか──大家さんの3大不安への答えと、契約書で必ず決めておくべきこと、向いている建物の条件を、文京区の宅建士が貸主の目線で整理しました。

「福祉施設に貸すなんて、考えたこともなかった」

相続で空き家になった戸建てのオーナーに、障害者グループホーム(共同生活援助)への賃貸をご提案すると、たいてい最初はこう言われます。ある大家さん(匿名化しています)は、親から受け継いだ家を数年空き家のままにしていました。売るには思い出が重すぎる。普通の賃貸に出すには設備が古い。──そこでグループホーム事業者への賃貸という選択肢をお話しすると、30分後には質問が止まらなくなりました。不安の正体は、ほとんどの場合「知らないこと」そのものです。

結論(先に要点):グループホームへの賃貸は、事業者(法人)が借主となる一括賃貸借が基本形です。入居者の入れ替わりがあっても契約相手は事業者のまま。空室リスクを事業者側が負い、事業の性質上長期・安定の賃貸になりやすい使い方です。一方で、普通の住居賃貸とは違う確認事項──用途の承諾・転貸の整理・設備工事と原状回復・消防設備の費用負担──を契約書で決め切る必要があります。ここを曖昧にしなければ、空き家・戸建ての有力な活用先になります。

「グループホームに貸す」とはどういう仕組みか

障害者グループホームは、障害のある方が世話人等の支援を受けながら少人数で共同生活する住まいです。大家さんから見た構図はシンプルです。

  • 借主は事業者(法人):賃貸借契約は運営法人と結びます。家賃の支払義務者も法人です
  • 入居者は事業者の利用者:入居者は事業者が福祉の制度に基づいて受け入れ、日常の管理は世話人・生活支援員が行います
  • 空室リスクは事業者側:1室空いても、大家さんへの家賃は契約どおり(ここが普通の賃貸との大きな違いです)

事業者は指定を受けるために建物へ投資し(後述の消防設備など)、地域との関係を築いて運営します。だからこそ、一度始まると長く借り続ける動機が強い借主です。

大家さんの3大不安に、正面から答えます

不安1:建物は傷まないか

グループホームには世話人等の職員が日常的に出入りし、事業として建物を管理します。手すりの設置や消防設備など、開設時に事業者負担で行われる改修は、建物の安全性能を上げる投資でもあります。もちろん経年の劣化は通常の賃貸と同様に起こります。だからこそ通常損耗・原状回復の範囲を契約書で決めておくことが大切です(後述)。

不安2:近隣とトラブルにならないか

いちばん多いご質問です。実務では、開設前に事業者が近隣への説明を行うのが一般的で、自治体との事前協議の中で地域との関係づくりが求められます。私自身、大家さんと一緒に事業者の説明に立ち会ったことがありますが、丁寧な説明と運営体制の提示で近隣の理解を得ていくプロセスを見て、「説明は事業者任せにせず、大家も内容を把握しておく」ことが安心につながると感じています。説明の進め方は物件・地域により異なるため、契約前に事業者へ「近隣説明をどう行うか」を確認しておきましょう。

不安3:途中で撤退されないか

事業者は行政の指定を受けて運営しており、利用者の生活の場である以上、簡単には撤退できない事業です。それでも契約は備えが基本です。契約期間(普通借家か定期借家か)、中途解約の予告期間と違約金、原状回復の範囲を明確にしておけば、万一の撤退時にも大家さんの損失を限定できます。

契約書で必ず決めておく5点

グループホーム賃貸の契約書は、住居用のひな形のままでは足りません。最低限、次の5点を書き切ります。

  1. 使用目的:「障害者総合支援法に基づく共同生活援助事業の用に供する」ことを明記
  2. 転貸・使用の整理:入居者が居住する形態を契約上どう位置づけるか(承諾の範囲を明確に)
  3. 工事の承諾:手すり・間仕切り・消防設備等の工事範囲と、事前承諾の手続き
  4. 原状回復:退去時にどこまで戻すか(消防設備は残置か撤去か、で費用が大きく変わります)
  5. 中途解約・再契約:予告期間、違約金、契約期間満了時の扱い

とくに4は見落としがちです。スプリンクラー等の消防設備は入居者像によって要否が変わる大きな投資です(詳しくは四葉行政書士事務所のコラム「グループホームの消防設備の要否」へ)。撤去して返すのか、残したまま返すのか──次の借主がまた福祉事業者なら「残置」が双方の利益になることもあります。ここは物件ごとの設計です。

どんな建物が向いているか

細かな基準は事業者と行政の確認事項ですが、大家さんとして押さえておきたい目安は3つです。

  • 部屋数と広さ:居室は1人あたり収納等を除き7.43㎡以上が基準。個室が4〜7室程度取れる戸建ては候補になりやすい規模です(指定基準を満たす物件条件
  • 規模:用途変更部分が200㎡以下なら建築確認申請が不要(2019年6月25日施行の改正建築基準法。基準への適合義務は残ります)。多くの戸建てはこの範囲に収まります(用途変更確認申請の要否
  • 書類:検査済証の有無は、手続きの重さを左右します。「実家の検査済証がどこにあるか分からない」という方は、まずそこからお調べします

契約前には、事業者側が区・消防・建築の3窓口へ事前協議を行うのが鉄則です(契約前にやる事前協議)。大家さんとしては、この事前協議に協力的な事業者かどうかが、良い借主を見分ける目安になります。

空き家・相続した実家の、第3の出口として

相続した実家の出口は「売る・貸す・住む」と言われますが、普通の賃貸に出しにくい戸建てこそ、グループホームという借り手と相性が良いことがあります。売却と違って所有は手放さず、空き家のまま傷ませることもない。空き家を放置すると何が起こるかで書いたとおり、放置は今や最も損な選択です。売る・残すの整理は相続不動産 完全ガイド、活用の選択肢は空き家の売却・活用もご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 家賃は普通の賃貸より高くなりますか?安くなりますか?

A. 物件・地域・改修の負担配分によって決まり、一概には言えません。相場観としては近隣の戸建て賃料をベースに、契約期間の長さや工事負担の設計とセットで調整するのが実務です。個別の物件については無料で査定・ご提案します。

Q. 入居者とトラブルが起きたら大家が対応するのですか?

A. 日常の対応は運営事業者(世話人・生活支援員・サービス管理責任者)が行います。大家さんの窓口はあくまで契約相手である法人です。連絡体制を契約時に確認しておくと安心です。

Q. 固定資産税や保険はどうなりますか?

A. 建物の用途が変わるため、火災保険は事業用の内容への見直しが必要になるのが一般的です。税務の取り扱いは個別事情によるため、提携税理士など税の専門家をご案内します。

Q. うちの実家が向いているか、どう調べればいいですか?

A. 図面・登記事項証明書・検査済証の有無が分かれば、初期的な見立てが可能です。四葉不動産は宅建業として物件面を、グループホームの指定申請は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として直接お受けしています。窓口は同じ浦松ですので、話は一度で通じます。

まとめ──「貸す」が地域の受け皿になる

グループホームに貸すことは、大家さんにとっては長期安定の賃貸経営であり、地域にとっては必要な住まいの受け皿づくりです。空き家のままの一軒が、誰かの「暮らしの場」に変わる──その橋渡しこそ、地元の不動産屋の仕事だと思っています。

四葉不動産(文京区・茗荷谷駅徒歩5分)は、グループホーム物件・開設ガイドを公開し、貸主・事業者双方のご相談を受けています。投資・事業用不動産もあわせてどうぞ。

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この記事の出典(一次情報)

※本コラムは一般的な情報提供であり、個別の建物・契約についての判断を示すものではありません。制度・法令は2026年7月執筆時点の情報です。建築・消防の適合判断は所管行政庁・管轄消防署への確認を、契約条件は個別の交渉・専門家の確認を前提としています。

この記事の執筆者

浦松丈二(うらまつ・じょうじ)。宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。元毎日新聞記者・中国総局長(記者歴34年)。社会保険労務士試験合格(2026年9月開業予定)。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。

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