認知症グループホームはどんな物件なら開設できる?用途地域・面積・消防の要件
認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、どんな物件でも開設できるわけではありません。効くのは、市町村の日常生活圏域ごとの必要利用定員総数の空き(総量規制)、消防法施行令別表第一(6)項ロとしてのスプリンクラー等、1ユニット5〜9人という規模、既存建物の用途変更の要否の4点です。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、内見の前に書類で絞り込める点を条文と公的資料から整理します。
結論(先に要点):認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、どんな物件でも開設できるわけではありません。物件を選ぶ段階で効いてくるのは、①その市町村の「日常生活圏域」ごとの必要利用定員総数に空きがあるか(総量規制)②消防法施行令別表第一(6)項ロとしてスプリンクラー等の消防用設備が要ること③1ユニット5〜9人・1事業所原則3ユニットまでという規模と居室の広さ④既存建物を転用するとき用途変更の確認申請が要るか、の4点です。これらは内見の前に、書類でかなり絞り込めます。
「空いている一戸建てや小規模なアパートをグループホームにしたい」という相談で最初に確かめるのが、この4点です。本記事は、東京で認知症対応型共同生活介護(地域密着型のグループホーム)の開設を検討する介護事業者・投資家の方に向けて、不動産取引の目線で「どういう物件なら開設に進めるか」を条文と公的資料から順に整理したものです。介護保険法上の指定申請は行政書士が、消防用設備や用途変更の確認申請は消防設備士・建築士・指定確認検査機関が、世話人や計画作成担当者の労務は社会保険労務士が担います。当社は物件の調査と取引だけを担い、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、情報をお示しします。
認知症グループホームはどんな物件なら開設できるのか?
先に、この施設が制度上どう位置づけられているかを押さえると、物件選びの筋が通ります。
認知症対応型共同生活介護は、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第20項が定める、要介護者であって認知症である人に、共同生活を営む住居で入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話および機能訓練を行うサービスです。これは同法第8条第14項の「地域密着型サービス」の一つで、原則としてその事業所がある市町村の住民が利用します。指定を行うのも都道府県知事ではなく市町村長です(同法第78条の2第1項)。
物件の側から見ると、開設できる物件の条件は次の順で絞られます。
| 段階 | 見るところ | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 圏域の空き | その日常生活圏域に必要利用定員総数の空きがあるか | 介護保険法第78条の2第5項第4号 |
| ② 用途地域 | その用途をその場所で建てられるか | 建築基準法・用途地域の制限 |
| ③ 消防 | (6)項ロの消防用設備を設けられるか | 消防法施行令別表第一・第12条 |
| ④ 規模・居室 | 1ユニット5〜9人・居室の広さを満たせるか | 平成18年厚生労働省令第34号第93条 |
| ⑤ 用途変更 | 既存建物なら確認申請が要るか | 建築基準法第87条第1項 |
とくに①は、物件を探す前に確かめるべき点です。物件が良くても、その圏域に空きがなければ指定が下りないことがあるからです。
用途地域と「日常生活圏域」の制限はどう効くのか?
ここが、訪問・通所系の介護事業所と大きく違うところです。
まず用途地域です。グループホームは「共同生活を営む住居」であり、多くの用途地域で建てられます。ただし工業専用地域では住宅・寄宿舎の類が建てられないなど、地域による制限は残ります。物件を決める前に、その用途地域でその建物を使えるかを自治体の都市計画課で確かめてください。
より効いてくるのが「日常生活圏域」の制限です。市町村は、介護保険事業計画のなかで日常生活圏域ごとに認知症対応型共同生活介護の必要利用定員総数を定めています。介護保険法第78条の2第5項第4号は、申請があった圏域の利用定員の総数が、市町村介護保険事業計画で定める必要利用定員総数に既に達しているとき、または申請によってこれを超えることになると認めるとき、その他計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときに、市町村長が指定をしないことができると定めています。つまり、圏域に空きがなければ、物件がどれほど適していても指定が下りないことがあるということです。
だから、物件探しの順番は「良い物件を見つけてから圏域を調べる」ではなく、**「開設したい市町村・圏域に定員の空きがあるかを先に確かめてから、その圏域内で物件を探す」**が正確です。空き状況は公募・整備方針の形で示されることが多く、自治体の担当課に確認します。
消防用設備(スプリンクラー等)とバリアフリーの要件は?
認知症グループホームは、消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(6)項ロに当たります。(6)項ロは、自力避難が難しい人が入所する社会福祉施設等で、老人短期入所施設・特別養護老人ホーム・認知症高齢者グループホーム等が含まれます。ここが、消防用設備の負担を大きく左右します。
スプリンクラー設備について、かつては(6)項ロでも延べ面積275㎡以上で設置義務がかかっていました。ところが消防法施行令の改正(平成27年4月1日施行)で面積要件が撤廃され、(6)項ロは原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が必要になりました。ただし、延べ面積275㎡未満で、火災の拡大を抑える構造(延焼抑制構造)などの要件を満たす場合には免除される特例が残っています。
| 施設の延べ面積 | スプリンクラー設備((6)項ロ) |
|---|---|
| 275㎡以上 | 必要 |
| 275㎡未満 | 原則必要。延焼抑制構造など一定の要件を満たせば免除の特例あり |
このほか、(6)項ロでは自動火災報知設備や消防機関へ通報する火災報知設備なども、面積等に応じて求められます。中古の一戸建てや小規模アパートを転用する場合、このスプリンクラー等の設置費用が開設費用の大きな部分を占めることがあるため、物件を決める前に所轄消防署へ事前相談し、その建物で何がどこまで要るかを確かめておくのが順番です。可否と具体的な設備の設計は消防設備士・消防署の領域で、当社が判断することはありません。
バリアフリーについては、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)が、老人ホーム等の「特別特定建築物」を床面積2,000㎡以上で建てる(用途変更を含む)ときに建築物移動等円滑化基準への適合を義務づけています。多くのグループホームはこの規模に届かず努力義務にとどまりますが、自治体の福祉のまちづくり条例で対象や規模が上乗せされていることがあるため、これも自治体で確認します。同じように物件を決める前に消防や行政の確認が要る構造は検査済証のない中古物件を福祉施設に転用できるかにも整理しています。
既存建物の用途変更で建築確認が必要になるのはどんなときか?
空き家や元の共同住宅・事務所をグループホームに転用する場合、用途変更の確認申請が要るかどうかを先に見ます。
認知症高齢者グループホームは、建築基準法(昭和25年法律第201号)別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物として扱われます。同法第87条第1項は、建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物にする場合に確認の規定を準用すると定め、その第6条第1項第1号は「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」です。
つまり——その用途に使う部分の床面積が200㎡を超えれば、用途変更の確認申請が要るということです。この「200㎡」は、以前は「100㎡」でした。建築基準法の一部改正(平成30年法律第67号、令和元年6月25日施行)で100㎡超から200㎡超に引き上げられ、小規模な福祉施設で既存の建物ストックを使いやすくなりました。
| その用途に使う部分の床面積 | 用途変更の確認申請 |
|---|---|
| 200㎡以下 | 原則不要 |
| 200㎡超 | 必要(建築基準法第87条第1項・第6条第1項第1号) |
ただし——確認申請が要らないことと、建築基準法を守らなくてよいことは別です。同法第87条第2項は、用途を変更する場合に第48条(用途地域の制限)や避難・防火に関する規定を準用すると定めており、採光・排煙・避難・内装制限といった実体規定は確認申請の要否に関わらずかかります。用途変更の確認申請の要否と設計そのものは建築士・指定確認検査機関の領域で、当社は物件の登記・図面などの書類を取り寄せてお渡しするところまでを担います。
開設までの費用と期間の目安はどのくらいか?
費用・期間は、建物の状態(新築か転用か、スプリンクラーの有無、用途変更の要否)と自治体の公募の時期に大きく左右されるため、一律の相場は出せません。物件選びの段階で読んでおくべきは、次の変動要因です。
| 変動要因 | 効いてくる場面 |
|---|---|
| 圏域の公募時期 | 指定の入口。公募がなければ着手できない期がある |
| スプリンクラー等の消防用設備 | 転用時の工事費。275㎡未満の特例に乗れるかで差が出る |
| 用途変更の確認申請 | 200㎡超だと設計・申請の期間が加わる |
| 居室・共用部の改修 | 1ユニット5〜9人・居室の広さ(原則1人・7.43㎡以上)を満たす改修 |
| 人員の確保 | 計画作成担当者(うち1以上は介護支援専門員)・世話人等の確保 |
規模と居室の基準は、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)が定めています。第93条は、共同生活住居(ユニット)の数を原則1以上2以下(地域の実情により3まで)とし、1ユニットの入居定員を5人以上9人以下、居室は原則1人で床面積7.43㎡以上と定めています。第90条は従業者の員数を定め、計画作成担当者のうち1以上の者は介護支援専門員でなければならないとしています。この人員の確保と労務の設計は社会保険労務士の領域で、物件の広さがユニット数・定員の上限を規定する関係だけを、当社は物件の側から確認します。事業用物件全般の探し方は投資用・事業用不動産、開業とオフィス選びの関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。
誰に相談すればよいですか?
物件の調査、書類の取り寄せ、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。認知症対応型共同生活介護の指定申請など、官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。
この2つはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 消防用設備の設計・設置は消防設備士、用途変更の確認申請は建築士・指定確認検査機関、世話人・計画作成担当者などの人員配置や就業規則の労務は社会保険労務士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。
よくある質問
Q. 良い物件が見つかれば、どこの市町村でもグループホームを開設できますか?
A. いいえ。認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスで、市町村が日常生活圏域ごとに必要利用定員総数を定めています。その圏域に空きがなければ、市町村長は指定をしないことができます(介護保険法第78条の2第5項第4号)。物件を探す前に、開設したい市町村・圏域に定員の空きがあるかを自治体の担当課で確かめるのが順番です。
Q. 中古の一戸建てを転用する場合、スプリンクラーは必ず要りますか?
A. 認知症グループホームは消防法施行令別表第一(6)項ロに当たり、平成27年4月1日施行の改正で、原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が必要になりました。ただし延べ面積275㎡未満で延焼抑制構造など一定の要件を満たす場合は免除の特例があります。建物ごとに異なるため、所轄消防署に事前相談してください。
Q. 用途変更の確認申請は、どのくらいの広さから必要ですか?
A. その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡を超える場合です(建築基準法第87条第1項・第6条第1項第1号)。この基準は平成30年法律第67号(令和元年6月25日施行)で100㎡超から200㎡超に引き上げられました。200㎡以下でも、採光・排煙・避難・内装制限などの実体規定は変更後の用途に応じてかかります。
Q. 1つの建物で何人まで受け入れられますか?
A. 1ユニット(共同生活住居)の入居定員は5人以上9人以下で、1事業所の共同生活住居は原則1以上2以下、地域の実情により3まで置けます(平成18年厚生労働省令第34号第93条)。物件の広さが置けるユニット数・居室数の上限を規定します。居室は原則1人で床面積7.43㎡以上です。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号。第8条第14項=地域密着型サービスの定義、第8条第20項=認知症対応型共同生活介護の定義、第78条の2第1項=市町村長による指定、同条第5項第4号=必要利用定員総数に達している場合等の指定拒否。2026年9月6日参照)
- e-Gov法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号。第90条=認知症対応型共同生活介護の従業者の員数、計画作成担当者のうち1以上は介護支援専門員、第93条=共同生活住居の数・入居定員5人以上9人以下・居室は原則1人で床面積7.43㎡以上。2026年9月6日参照)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(昭和36年政令第37号。別表第一(6)項ロ=認知症高齢者グループホーム等、第12条=スプリンクラー設備の設置基準。(6)項ロは平成27年4月1日施行の改正で延べ面積275㎡以上の要件が撤廃され原則設置義務となり、275㎡未満は延焼抑制構造等で免除の特例。2026年9月6日参照)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第6条第1項第1号=別表第一(い)欄の特殊建築物で200㎡超、第87条第1項=用途変更に伴う確認、同条第2項=第48条等の準用、別表第一(い)欄(二)項。面積要件は平成30年法律第67号・令和元年6月25日施行で100㎡超から200㎡超に改正。2026年9月6日参照)
- 国土交通省「バリアフリー法の概要」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律。老人ホーム等の特別特定建築物は床面積2,000㎡以上で建築物移動等円滑化基準への適合義務。自治体の条例で対象・規模の上乗せがある。2026年9月6日参照)
※開設できる物件の要件は、市町村の圏域の空き、用途地域、消防、規模、用途変更の要否が重なって決まります。本記事は個別の物件について判断していません。
※消防用設備の要否と設計、用途変更の確認申請の要否と設計は、建物ごとに異なります。適法性の判断と設計は消防設備士・消防署・建築士・特定行政庁・指定確認検査機関の領域です。
※各自治体の公募・整備方針・窓口・様式・受付の運用は変わります。着手時点で当該市町村・所轄消防署・特定行政庁のページを直接ご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の開設の可否や指定の取得を判断・保証するものではありません。物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、指定申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。消防用設備は消防設備士、用途変更の確認申請は建築士・指定確認検査機関、人員配置や就業規則の労務は社会保険労務士、税務は税理士の領域です。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
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