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投資・事業用不動産

新築の「青田売り」を買う中国語圏バイヤーが確認する手付金等の保全(宅建業法41条・41条の2)

海を挟んで向かい合う二つの街並みを描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

完成前の新築(青田売り)を買うとき、買主が支払う手付金等は宅地建物取引業法の「手付金等の保全措置」で守られます。売主が宅建業者で買主が宅建業者でないとき(第78条第2項)に働き、工事完了前(未完成)は第41条、完了後(完成)は第41条の2が根拠で保全の方法が違います。未完成は銀行等の保証委託・保証保険の2つのみ、完成はこれに指定保管機関の寄託が加わります。保全が要る額の線引きと、契約前に確認すべき書類、登記・税・海外送金の振り分けを、東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が条文から整理します。

結論(先に要点):完成前の新築(青田売り)を買うとき、買主が支払う手付金等は宅地建物取引業法の「手付金等の保全措置」で守られます。売主が宅地建物取引業者で、買主が宅建業者でないとき(同法第78条第2項)に働く制度です。工事完了前(未完成)の物件は第41条、工事完了後(完成)の物件は第41条の2が根拠で、保全の方法が違います。未完成は①銀行等による保証委託契約②保険事業者による保証保険契約の2つのみ、完成はこれに③指定保管機関による手付金等寄託契約が加わります。保全が要るのは、手付金等の額が未完成なら代金の5%または1000万円を、完成なら代金の10%または1000万円を超えるときで、買主へ所有権移転登記がされた後は額を問わず不要になります。保全措置の概要は重要事項説明(第35条)で説明されます。重要事項説明・売買契約は当社(宅建業者)、所有権移転登記は司法書士、譲渡・取得の税は税理士、外為法上の報告は本人と取扱銀行——役割は分かれます。

日本の新築マンション・戸建てを完成前に購入する中国大陸・台湾の投資家、およびその購入を助言する現地の不動産・法務の専門家に向けて、青田売り特有の「手付金等の保全措置」を、宅地建物取引業法の条文まで踏み込んで整理しました。中古・一般売買の手付とローン特約は「中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項」に分けています。重要事項説明・売買契約・保全措置の確認は当社(宅建業者)が行い、登記は司法書士、税務は税理士、外為法上の報告は本人と取扱銀行に振ります。これらはいずれも独立した事業体で、それぞれ直接ご契約いただきます。本記事は個別の取引の可否を判断するものではありません。

青田売り(完成前販売)とは何で、なぜ手付金の保全が問題になるのか

「青田売り」とは、建物が完成する前に売買することをいいます。 田に稲が実る前に売ることになぞらえた呼び方で、新築マンションや建売住宅の販売でよく使われます。買主は完成した現物を見ないまま契約し、手付金や中間金を先に支払い、引渡しは数か月〜1年以上先になります。

ここで問題になるのが、引渡し前に売主が倒産したら、先に払ったお金は戻るのかという点です。青田売りでは、契約から引渡しまでの間に買主が代金の一部を先払いします。もし売主(デベロッパー)が引渡し前に経営破綻すれば、物件も手に入らず、支払ったお金も回収できないおそれがあります。

この引渡し前リスクから買主を守るのが、宅地建物取引業法の手付金等の保全措置です。ここでいう「手付金等」は、第41条第1項が**「代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであつて、契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの」**と定義しています。手付金だけでなく、中間金・内金も含み、引渡し前に払う代金充当金が広く対象です。

この制度は、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅建業者でないときに働きます(自ら売主制限。第78条第2項)。新築の青田売りは売主がデベロッパー(宅建業者)であることが多いため、通常この保護が及びます。個人間売買や、買主自身も宅建業者である場合は適用されません。

手付金等の保全措置はいつ・どのくらいの額から必要になるのか

保全措置が必要になる金額の線引きは、未完成か完成かで異なります。

物件の状態保全が不要(=措置なしで受領できる)範囲根拠
工事完了前(未完成・青田売り)手付金等の額が代金の5%以下 かつ 1000万円以下宅地建物取引業法第41条・同施行令
工事完了後(完成)手付金等の額が代金の10%以下 かつ 1000万円以下宅地建物取引業法第41条の2・同施行令
買主へ所有権移転登記がされたとき/買主が所有権の登記をしたとき額を問わず保全不要第41条・第41条の2

この基準を超えて手付金等を受領するときは、受領する前に保全措置を講じなければなりません。 例えば代金1億円の未完成マンションで手付金600万円(=6%)を払うなら、5%=500万円を超えるため、売主は受領前に保全措置を講じる必要があります。逆に、買主への所有権移転登記が済んだ後は、買主の権利が登記で守られるため保全は不要になります。

注意したいのは、「一度に払う額」ではなく「引渡し前に払う手付金等の累計額」で判断する点です。手付金と中間金を分けて払っても、合算が基準を超えれば保全の対象になります。青田売りは中間金の設定が多いため、支払スケジュール全体で基準を超えるかを、契約前に確認します。

未完成物件と完成物件で保全の方法はどう違うのか(41条/41条の2)

保全の「方法」は、未完成(第41条)と完成(第41条の2)で選べる手段が違います。ここが青田売りで最も効く違いです。

保全の方法未完成(第41条)完成(第41条の2)
①銀行等による保証委託契約(返還債務を銀行等が連帯保証)○○
②保険事業者による保証保険契約(返還債務の不履行による損害を保険でうめる)○○
③指定保管機関による手付金等寄託契約(第三者が手付金等を保管)×(使えない)○

第41条第1項は、未完成物件について、銀行等による保証委託契約または保険事業者による保証保険契約の2つのいずれかを講じた後でなければ手付金等を受領してはならないと定めます。第41条の2第1項は、完成物件について、この2つに加え、指定保管機関による手付金等寄託契約(宅建業者に代理して指定保管機関が手付金等を受領・保管する契約)を認めています。

つまり、青田売り(未完成)では、第三者が預かる「寄託」型は使えず、返還債務を銀行の保証か保険で担保する形になります。 買主・現地専門家が確認すべきは、「保全措置が講じられているか」「その方式は保証委託・保証保険・(完成なら)寄託のどれか」「保証の名義・金額・期間が支払額と支払時期をカバーしているか」です。保全措置の概要は、重要事項説明書(宅地建物取引業法第35条)に記載され、契約前に宅地建物取引士が説明します。

中国語圏の買主が契約前に確認すべき書類は何か

海外から青田売りを買うプロ層が、契約前に押さえる書類は次のとおりです。手付(日本の解約手付)と中国の「定金」の役割の違いは「中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項」に整理しています。

書類確認するところ
重要事項説明書(第35条)手付金等の保全措置の概要(方式・保証機関・金額)。登記された権利、法令上の制限、私道負担、供給施設
売買契約書(第37条書面)手付金・中間金・残代金の額と支払時期。引渡し・登記の時期。契約不適合責任
保全措置の保証書・保険証券等保証・保険・寄託の名義、対象金額、期間が支払額・時期をカバーしているか
重要事項説明・IT重説の実施方法来日せずオンラインで受けられるか(IT重説の要件)
手付金等の受領時期と保全のタイミング基準額を超える手付金等の受領が、保全措置の後になっているか

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

特に「保全措置が支払いの前に講じられているか」は、書類の日付で確認できます。 基準額を超える手付金等を、保全措置なしに先に支払ってはいけません。重要事項説明はオンライン(IT重説)でも受けられ、海外在住の買主でも来日せず契約に進める場合があります。本人確認・署名証明の段取りはIT重説の記事を参照してください。事業用・投資用の物件全般は投資用・事業用不動産をご覧ください。

登記・税・海外送金は誰に相談すればよいのか

青田売りの購入では、宅建業者が扱う範囲と、他の専門家に振る範囲が分かれます。

やること担い手
重要事項説明・保全措置の確認・媒介・売買契約宅地建物取引業者(当社の宅建士)
契約書・重要事項説明書の外国語訳の作成行政書士
所有権移転登記・(新築の)所有権保存登記司法書士
取得・保有・譲渡に伴う税(登録免許税・不動産取得税・固定資産税・譲渡所得税等)税理士
外為法上の報告の要否、海外からの送金本人・取扱銀行(要否は専門家に確認)

当社が行うのは、物件の調査・媒介・重要事項説明・売買契約と、保全措置が講じられているかの確認までです。 登記は司法書士、税務は税理士、外国語訳の作成は行政書士に、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。非居住者が日本の不動産を取得・保有するときの外為法上の報告の要否や海外送金は、取引の性質によって扱いが変わるため、本人と取扱銀行、必要に応じて専門家に確認します。非居住者が買主になるときの重要事項説明の要点は「中国語圏の買主に日本の収益物件を紹介する前に読む重要事項説明の要点」に整理しています。

よくある質問

Q. 青田売りで払った手付金は、売主が倒産したら戻りますか?
A. 保全措置が講じられていれば、その方式(銀行等の保証委託・保証保険、完成物件なら指定保管機関の寄託)に従って返還が図られます。工事完了前の未完成物件は宅地建物取引業法第41条、完成物件は第41条の2が根拠です。ただし、手付金等の額が未完成なら代金の5%以下かつ1000万円以下、完成なら代金の10%以下かつ1000万円以下のときは、そもそも保全措置なしで受領できる範囲です。基準を超える手付金等が保全措置なしに受領されていないかを、契約前に確認します。

Q. 未完成物件と完成物件で、保全の方法はどう違いますか?
A. 未完成物件(第41条)で使えるのは、①銀行等による保証委託契約②保険事業者による保証保険契約の2つです。完成物件(第41条の2)は、この2つに加えて③指定保管機関による手付金等寄託契約が使えます。つまり、青田売り(未完成)では第三者が預かる寄託型は使えず、返還債務を銀行の保証か保険で担保する形になります。どの方式かは重要事項説明書(第35条)で確認できます。

Q. 買主も海外の不動産会社ですが、同じ保護を受けられますか?
A. 受けられません。手付金等の保全措置は、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅建業者でないときに働く自ら売主制限です(宅地建物取引業法第78条第2項)。買主自身が(日本の)宅地建物取引業者である場合、この制限は適用されません。海外の不動産会社が個人として買う場合の扱いは取引の実態によるため、契約前に宅地建物取引士に確認してください。

Q. 手付金等の保全がされているか、どこで分かりますか?
A. 重要事項説明書(宅地建物取引業法第35条)に「手付金等の保全措置の概要」が記載され、契約前に宅地建物取引士が説明します。加えて、保証委託契約に基づく保証書、保証保険の保険証券、寄託契約の書面など、保全措置を裏づける書類の名義・対象金額・期間を確認します。基準額を超える手付金等の受領が、保全措置を講じた後になっているか(書類の日付)も併せて確認します。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号。第41条=工事完了前〈未完成〉の宅地建物の売買で自ら売主となる場合の手付金等の保全措置〈銀行等の保証委託契約・保険事業者の保証保険契約〉と「手付金等」の定義。第41条の2=工事完了後〈完成〉の場合の保全措置〈上記2つに加え指定保管機関による手付金等寄託契約〉。第35条=重要事項の説明〈手付金等の保全措置の概要を含む〉。第37条=契約締結時の書面。第78条第2項=自ら売主制限の適用〈買主が宅建業者である場合を除く〉。2026年9月29日参照)
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行令」(昭和39年政令第383号。保全措置を要しない手付金等の額の基準に関する定め〈政令で定める額=1000万円〉。未完成は代金の5%以下、完成は代金の10%以下と併せて判定。2026年9月29日参照)
  • 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第41条・第41条の2の手付金等の保全措置、第35条の重要事項説明に関する運用の考え方。2026年9月29日参照)

※手付金等の保全措置の要否・方式・基準額は、物件の完成前後・支払スケジュール・代金額によって変わります。着手時点で、重要事項説明書に記載された保全措置の概要と裏づけ書類を直接ご確認ください。 外為法上の報告の要否・海外送金の手続きは取引の性質と当事者の居住地・国籍によって変わるため、本人・取扱銀行・専門家にご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の取引の可否や保全措置の充足、税務・外為法上の取扱いを判断・保証するものではありません。最終確認は宅地建物取引士・司法書士・税理士・取扱銀行に対して行ってください。
※重要事項説明・保全措置の確認・媒介・売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、外国語訳の作成は四葉行政書士事務所が、登記は司法書士が、税務は税理士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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