検査済証のない収益ビルの遵法性をどう調べる?海外の不動産プロ向け取得前デューデリ
検査済証のない収益ビルでも取引はできますが、遵法性(建築基準法への適合)を取得前に確かめる必要があります。検査済証は完了検査に合格した証(建築基準法第7条)で、無いこと自体が違法を意味するわけではありません。建築時は適法で後の改正で現行規定に合わなくなった既存不適格(第3条第2項)は適法、建築時からの違反建築とは別物です。中国・台湾の不動産プロに向けて、東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が取得前デューデリの進め方を条文と公的資料から整理します。
結論(先に要点):検査済証のない収益ビルでも取引はできますが、遵法性(建築基準法への適合)を取得前に確かめる必要があります。検査済証は完了検査に合格した証(建築基準法第7条)で、無いこと自体が違法を意味するわけではありません。建築時は適法で、その後の法改正で現行規定に合わなくなった「既存不適格」(第3条第2項)は適法、建築時から違反の「違反建築」とは別物です。見分けは、検査済証があれば当時の適法性が推定でき、無ければ法適合状況調査(国土交通省の現況調査ガイドライン)で確かめます。物件情報と遵法性調査の進め方の提供までが不動産の範囲です。
この記事は、日本の一棟収益不動産を顧客に紹介する中国・台湾の不動産・資産管理の専門家に向けたものです。中華圏の投資家に日本の収益ビルを勧める前に、専門家として「その建物は合法か」をどう確かめるか——検査済証の有無を切り口に、取得前デューデリの進め方を条文と公的資料から整理します。個別の物件が適法かどうかの最終判断は建築士・指定確認検査機関が行うもので、本記事は調査の進め方を示すものです。
検査済証のない収益ビルはなぜ取引で問題になるのか?
将来の増改築・用途変更・融資でつまずくおそれがあり、遵法性の立証コストが買主に乗るからです。
日本の建築確認・検査は二段階です。着工前に計画が基準に合うかを審査する「建築確認」(建築基準法第6条・第6条の2)と、工事完了後に現物が確認どおりかを検査する「完了検査」(第7条・第7条の2)です。完了検査に合格すると検査済証が交付されます。検査済証がない建物は、完了検査を受けていない(または合格していない)ため、竣工時に基準へ適合していたことを公的書類で示せません。
| 段階 | 何を確かめるか | 根拠 | 交付される書類 |
|---|---|---|---|
| 建築確認 | 着工前、計画が基準に適合するか | 建築基準法第6条・第6条の2 | 確認済証 |
| 完了検査 | 完了後、現物が確認どおりか | 建築基準法第7条・第7条の2 | 検査済証 |
さらに、一定規模以上の特殊建築物等は、検査済証の交付を受けるまで使用できません(第7条の6。仮使用認定の例外あり)。収益ビル(店舗・事務所・共同住宅など)はこの特殊建築物に当たることが多く、検査済証の欠如は使用・増改築・用途変更・金融機関の融資審査で不利に働きます。取得後の是正や立証にかかる時間・費用は最終的に価格へ跳ね返るため、取得前に遵法性を確かめることが投資判断の土台になります。中国語圏の買主への説明で押さえる重要事項は中国語圏の買主に日本の収益物件を紹介する前に読む重要事項説明の要点にまとめています。
既存不適格と違反建築はどう見分けるのか?
「建築時は適法だったか」で分かれます。適法だったのが既存不適格、そうでないのが違反建築です。
建築基準法(昭和25年法律第201号)第3条第2項は、法や条例の施行・適用の際に現に存在する建築物で、新しい規定に適合しない部分には、その規定を適用しないと定めます。これが既存不適格で、建築時には適法だった建物が、その後の法改正で現行基準に合わなくなった状態です。既存不適格は違法ではありません。 そのまま使い続けられますが、増改築の際には現行基準への適合が求められることがあります。
一方、違反建築は、建築確認を受けていない、確認と違う建て方をした、完了検査を受けずに増築を重ねたなど、建築時点から法に反している建物です。是正命令や使用制限の対象になり、融資・売却で大きな障害になります。
| 区分 | 建築時 | 現行法 | 適法性 | 取引での扱い |
|---|---|---|---|---|
| 既存不適格 | 適法 | 一部不適合 | 適法(第3条第2項) | 増改築時に現行基準への適合を要することがある |
| 違反建築 | 違法 | 違法 | 違法 | 是正命令・使用制限の対象。是正が前提 |
見分けの手がかりは書類です。検査済証があれば竣工時の適法性が推定でき、確認済証はあるが検査済証がない場合は「確認どおりに完成したか」が空白になります。検査済証がない建物では、建築士や指定確認検査機関による法適合状況調査で建築時の適法性を確かめる道があります。国土交通省は従来「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月)を示していましたが、これは2025年(令和7年)4月1日から「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合・一本化されました。図面・記録の照合(書類調査)と現地調査を組み合わせ、建築士が適合状況を調べます。
重要事項説明では何を確認すべきか?
登記された権利・法令上の制限に加え、検査済証を含む建築確認・検査の履歴を確かめます。
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条は、宅建業者が契約前に、宅地建物取引士をして重要事項を書面(電磁的方法を含む)で説明させることを義務づけます。収益ビルの取得前デューデリでは、次の点を突き合わせます。
| 確認する点 | 内容 |
|---|---|
| 建築確認・検査の履歴 | 確認済証・検査済証の有無、確認台帳記載事項証明の取得 |
| 法令上の制限 | 用途地域、建蔽率・容積率、既存不適格の有無 |
| 現況との整合 | 図面・確認内容と現物(増築・用途変更の有無)の一致 |
| 賃貸借の状況 | 既存の賃貸借契約・敷金・賃料、賃貸人たる地位の移転 |
| 是正の見通し | 違反があれば是正の可否・費用・期間 |
検査済証の有無は重要事項説明の対象に含まれ、確認台帳記載事項証明書(特定行政庁が交付)で確認・検査の記録を照合できます。「確認済証はあるが検査済証がない」「増築部分に確認の記録がない」といった食い違いは、書類の突き合わせで発見できます。 中華圏のプロの買主が犯罪収益移転防止法の取引時確認でどう扱われるかは中国語圏の非居住バイヤーの取引時確認(犯収法)、売買契約条項の落とし穴は中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項にまとめています。福祉用途への転用を前提にした検査済証なし物件の見方は検査済証のない中古物件を福祉施設に転用できるかを参照してください。
ご自身のケースについて相談したい方へ
物件探しや売却について、状況をお聞かせください。
是正・登記・税務は誰に振るのか?(振り先の整理)
物件情報と遵法性調査の進め方の提供までが不動産の範囲です。ここから先は、それぞれの専門家に別々にご依頼いただきます。
| 役割 | 担い手 |
|---|---|
| 物件情報の提供、遵法性調査の進め方の整理、重要事項説明、媒介 | 四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号) |
| 法適合状況調査・現況調査、是正のための設計・建築確認 | 建築士/指定確認検査機関 |
| 所有権移転登記 | 司法書士 |
| 取得後の税務、非居住者の源泉・確定申告、納税管理人 | 税理士 |
| 契約紛争 | 弁護士 |
四葉不動産株式会社と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。建築士・指定確認検査機関・司法書士・税理士・弁護士へも、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。取得後の投資運用や賃貸の相談は事業用・投資用不動産のご相談から承ります。相談は無料です。
よくある質問
Q. 検査済証がない収益ビルは、そもそも買えないのですか?
A. 買えます。検査済証がないこと自体は取引を禁じるものではありません。ただし竣工時の適法性を公的書類で示せないため、増改築・用途変更・融資で不利になりえます。取得前に法適合状況調査(国土交通省の現況調査ガイドライン)で遵法性を確かめ、価格やスケジュールに織り込むのが実務です。可否と費用の最終判断は建築士にご確認ください。
Q. 「既存不適格」と説明されました。違法ではないのですか?
A. 違法ではありません。既存不適格(建築基準法第3条第2項)は、建築時には適法だった建物が、その後の法改正で現行基準に合わなくなった状態で、そのまま使い続けられます。ただし増改築の際には現行基準への適合が求められることがあります。建築時から違反している「違反建築」とは別物なので、どちらに当たるかを書類で確かめます。
Q. 検査済証がなくても、増築や用途変更はできますか?
A. 可能な場合がありますが、前提として建築時の適法性を確かめる必要があります。検査済証がない建物では、建築士や指定確認検査機関の法適合状況調査(現況調査)で適法性を立証したうえで、増改築や用途変更の確認申請に進みます。可否・費用・期間は建物ごとに異なるため、建築士に個別にご確認ください。
Q. 海外にいる買主でも、遵法性調査は進められますか?
A. 進められます。確認済証・検査済証や確認台帳記載事項証明などの書類調査は現地に居なくても着手でき、現地調査は建築士・指定確認検査機関が行います。非居住者の取得では、外為法の報告、賃料の源泉徴収、確定申告、納税管理人など税務・手続が重なるため、税務は税理士に、契約は当社に、それぞれ直接ご相談ください。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第3条第2項=既存不適格、第6条・第6条の2=建築確認、第7条・第7条の2=完了検査・検査済証、第7条の6=検査済証の交付を受けるまでの建築物の使用制限。2026年9月19日参照)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号。第35条=重要事項の説明。2026年9月19日参照)
- 国土交通省「既存建築物の現況調査ガイドライン」(既存建築物の活用の促進)(2025年〈令和7年〉4月1日から運用。従来の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」〈平成26年7月〉を統合。既存建築物の増築・改築・移転・大規模の修繕/模様替えの際の建築基準法令への適合状況の調査手順。第4版=令和8年3月。2026年9月19日参照)
※検査済証の有無、既存不適格か違反建築かの別、法適合状況調査(現況調査)の要否・可否は、建物の建築時期・確認/検査の履歴・現況によって物件ごとに異なります。適法性の最終的な判断は建築士および指定確認検査機関が行うもので、本記事は一律の可否を断定していません。
※国土交通省のガイドラインは改定・統合されています。最新の名称・版・運用は国土交通省の公式ページで確認してください。本記事は2026年9月19日時点の公表内容に基づきます。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断を示すものではありません。法適合状況調査・是正のための建築確認は建築士/指定確認検査機関、所有権移転登記は司法書士、取得後の税務は税理士、契約紛争は弁護士が行います。
※物件情報の提供・重要事項説明および売買契約の媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、許認可の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。日本の収益不動産について、確認・検査の履歴と登記と税務を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
「これ、どうしたらいい?」の一言からで大丈夫です。
代表が直接お返事し、ご希望を伺って条件に合う物件があればLINEでご紹介します。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|10:00〜18:00(定休:火・水)
