非居住者(中国・台湾の売主)から日本の不動産を買うとき、買主に源泉徴収義務がある

非居住者(海外に生活の本拠を置く中国本土・台湾の売主など)から日本の土地建物を買うとき、源泉徴収をするのは売主ではなく買主です。買主は代金支払時に10.21%(所得税10%+復興特別所得税)を天引きし、翌月10日までに税務署へ納めます。ただし個人が自己・親族の居住用に買い、対価が1億円以下なら不要。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、所得税法212条1項・施行令281条の3・国税庁タックスアンサーNo.2879から、買主が負う購入時の源泉徴収義務と居住用1億円以下の例外を整理します。税額の算定・還付は税理士、登記との関係は司法書士へ分離受任でご案内します。
結論(先に要点):非居住者(海外に生活の本拠を置く中国本土・台湾の売主など)から日本の土地建物を買うとき、源泉徴収をするのは売主ではなく買主です。買主は売買代金の支払時に10.21%(所得税10%+復興特別所得税)を天引きし、翌月10日までに税務署へ納めます。ただし個人が自己または親族の居住用に買い、対価が1億円以下なら不要です。当社は売買契約・決済と物件情報の提供を担い、税額の算定・納付書の作成・還付(確定申告)の最終判断は税理士、登記との関係整理は司法書士へ、別々にご契約いただく形でご案内します。
中国本土・台湾で日本の不動産取引を支援する現地の専門家と、非居住者から物件を買う国内の買主・担当者に向けて、「買主が負う購入時の源泉徴収義務」と、よく誤解される「居住用1億円以下の例外」の線引きを、所得税法・施行令と国税庁タックスアンサーから整理します。当社は日本側の媒介・情報提供を担い、源泉徴収税額の確定・納付・還付や登記の判断は行いません。該当する領域はそれぞれの専門家へ、別々にご契約いただく形でご案内します。
なぜ非居住者から不動産を買うと、売主ではなく買主が源泉徴収するのか
非居住者が日本の土地等を売って得る対価は「国内源泉所得」で、その支払をする買主に源泉徴収義務が課されるからです。売主が代金を国外へ持ち出し無申告で出国する事態を防ぐため、代金を払う側に徴収させる仕組みです。
所得税法(昭和40年法律第33号)第161条第1項第5号は、国内にある土地等の譲渡による対価を非居住者・外国法人の「国内源泉所得」と定めます。そして同法第212条第1項は、非居住者等に国内源泉所得を国内で支払う者に、支払の際の源泉徴収と納付を義務づけています。つまり支払う側=買主が徴収義務者です。買主が法人か個人かは問わず、事業者でない個人が自宅を買う場合も原則として義務者になります。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 徴収義務者 | 対価を支払う買主(法人・個人を問わない。事業者でなくても原則対象) |
| 対象となる所得 | 非居住者等への国内の土地等の譲渡対価(所得税法第161条第1項第5号の国内源泉所得) |
| 根拠 | 所得税法第212条第1項(源泉徴収)・第213条(税率) |
| 対象となる「土地等」 | 土地、土地の上に存する権利、建物およびその附属設備または構築物 |
| 制度の趣旨 | 売主が申告前に代金を国外へ移して無申告で出国する事態を防ぐ |
東京地裁平成28年5月19日判決は、住民票上の住所が国内にあっても生活の本拠が国外にある売主を非居住者と認め、その買主は第212条第1項の源泉徴収義務を負うとしました。「住民票があるから居住者」とは限らないという点が、取引前の確認で最も効きます。
源泉徴収が不要になる「居住用1億円以下」の例外はどこで線引きされるのか
買主が個人で、自己または親族の居住の用に供するために買い、かつ譲渡対価が1億円以下のとき、源泉徴収は不要です。3つすべてを満たす必要があり、1つでも欠けると義務が残ります。
所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第281条の3は、第161条第1項第5号の対価のうち、個人が自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けたもので、対価が1億円以下のものを源泉徴収の対象から除いています。買主が法人なら、金額の大小にかかわらず源泉徴収が必要です。この例外は個人の居住用に限られるからです。
| 例外の要件 | 内容 | 外れる例 |
|---|---|---|
| 買主が個人 | 自然人であること | 買主が法人 → 金額を問わず源泉徴収が必要 |
| 居住用 | 自己または親族の居住の用に供するため | 投資・賃貸・事業用 → 不要の対象外 |
| 1億円以下 | 譲渡対価が1億円以下 | 1億円超 → 全額について源泉徴収が必要 |
国税庁の質疑応答によると、1億円を超えるかどうかは譲渡した側(売主)の譲渡対価の額で判定します。店舗併用住宅のように居住用以外の部分があっても、家屋の床面積の2分の1以上を居住用に供する場合は居住用に取得したものと扱うのが相当とされています。一方で売主が複数(共有・複数相続人)の場合の持分ごとの1億円判定は事案で扱いが分かれ、国税庁の質疑と民間解説でも整合しない部分があります。ここは断定せず【未検証】とし、税理士・司法書士の確認を前提にします。相続した持分を非居住者が売る側の論点は海外に住む相続人が日本の不動産を売るときの源泉徴収とあわせてご覧ください。
税率10.21%は売買代金のどこに、いつ、誰が納付するのか
税率は10.21%(所得税10%に復興特別所得税を加えた率)で、買主が代金支払時に天引きし、原則として支払った月の翌月10日までに税務署へ納めます。残りの約89.79%を売主に支払う形になります。
税率10%は所得税法第213条、これに復興特別所得税(復興財確法〈東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法〉第28条により源泉所得税額の2.1%)が上乗せされ、合計10.21%になります。復興特別所得税は平成25年1月1日から令和19年12月31日までの源泉徴収に適用されます。
| いつ・誰が | 何をするか | 期限 |
|---|---|---|
| 買主(支払時) | 対価の10.21%を天引きして残額を売主へ | 代金支払時 |
| 買主(納付) | 天引き分を「所得税徴収高計算書(納付書)」で税務署へ納付 | 支払った月の翌月10日まで |
| 国外で支払う場合 | 支払者が国内に住所・居所・事務所等を有するとき | 支払った月の翌月末日まで |
納付書の作成や、どの金額を対価の額として10.21%を計算するか(手付・固定資産税等の精算金の扱いなど)は税額に直結する税務判断で、当社は行いません。税理士が別契約で承ります。なお令和9年分以後は、所得税に加えて防衛特別所得税が課される旨が国税庁ページに示されていますが、源泉徴収の具体的な上乗せ方法・率はここでは断定せず【未検証】とし、支払の直前に最新の国税庁の案内でご確認ください。
売主が非居住者かどうかを、買主はどうやって取引前に確認するのか
住民票の住所だけでは判断できません。生活の本拠が国内か国外かで決まるため、在留・居住の実態、連絡先、出国の有無を取引前に確認し、疑わしいときは徴収義務を前提に決済を組みます。
所得税法第2条第1項は、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を「居住者」、それ以外を「非居住者」と定めます。判定の基準時は原則として対価の支払時です。買主にとって源泉徴収を怠ると後から本税・不納付加算税・延滞税を自ら負担するリスクがあるため、売主の非居住性は契約前に見極めることが要です。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 生活の本拠 | 住民票の有無だけでなく、実際の居住地・滞在日数・出国の予定 |
| 連絡先・納税管理人 | 国外在住なら納税管理人の届出の有無、連絡の取りやすさ |
| 支払時点の居住者性 | 契約時と決済時で居住者性が変わる場合がある(基準は原則支払時) |
| 売主が複数のとき | 共有・相続で非居住者が混じるか。持分ごとに判定・按分が要るか |
非居住者かどうかの判定を引渡し・決済の日との関係でどう押さえるかは非居住者かどうかの判定は引渡しの日で見るに整理しています。現地の専門家と組んで売主の居住実態を確認する進め方は現地プロと組んで日本の不動産を扱うにまとめました。判定に迷う事案は、当社が決済スケジュールを調整し、税額の確定は税理士へ振る形で進めます。
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源泉徴収した税は、売主の確定申告でどう精算・還付されるのか
源泉徴収はあくまで「前払い」です。非居住者である売主は、譲渡所得として日本で確定申告し、源泉徴収された10.21%と本来の税額との差を精算します。納めすぎていれば還付、不足なら追加納付になります。
非居住者が日本の不動産を譲渡した所得(譲渡所得)は、原則として日本で課税され、確定申告が必要です。確定申告の際、買主が源泉徴収した税額は前払いとして税額から差し引かれ、過不足が精算されます。国外在住の売主は、申告や納付のために納税管理人を定めて税務署へ届け出るのが通常です。
| 段階 | 誰が | 内容 |
|---|---|---|
| 購入時 | 買主 | 10.21%を源泉徴収・納付(前払い) |
| 譲渡後 | 売主(非居住者) | 譲渡所得として確定申告、源泉徴収分を精算(還付または追加納付) |
| 申告の準備 | 売主 | 納税管理人の届出、取得費・譲渡費用の整理 |
| 登記との関係 | 買主・売主 | 所有権移転登記の添付書類(署名証明等)と源泉徴収の整合 |
還付の可否・金額や取得費の算定は税務判断そのものなので、当社は行いません。税理士が別契約で承ります。所有権移転登記は司法書士が担い、源泉徴収の有無が登記や決済の書類とどう関わるかは司法書士・税理士と整理します。租税条約により取扱いが変わる場合もあるため、売主の居住国の制度は現地の税務専門家の確認を前提にします。
当社は、日本側の物件の調査、重要事項説明、価格と条件の調整、媒介と売買契約・決済を担います。源泉徴収税額の算定・納付書の作成・還付のための確定申告は税理士、所有権移転登記と源泉徴収の関係整理は司法書士、売主が複数相続人の場合の持分按分は税理士・司法書士が担い、当社とは、それぞれ独立した事業体です。役割の重なる部分は、どちらが何を担うかを契約の前に明確にし、別々にご契約いただきます。 各専門家へはそれぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。
よくある質問
Q. 中国本土の個人から投資用のマンションを買います。1億円以下なら源泉徴収は不要ですか?
A. 不要にはなりません。源泉徴収が不要になる例外は、買主が個人で、かつ自己または親族の居住の用に供するために買い、対価が1億円以下の場合に限られます。投資用・賃貸用は居住用に当たらないため、1億円以下でも10.21%の源泉徴収が必要です。対価の額や精算金の扱いなど税額の確定は税理士へご確認ください。
Q. 源泉徴収を忘れて代金を全額売主に払ってしまうと、どうなりますか?
A. 徴収義務者は買主なので、天引きしていなくても買主が納付義務を負います。後から本税に加えて不納付加算税や延滞税がかかり、売主へ払いすぎた分の回収も難しくなりがちです。だからこそ売主の非居住性は契約前に見極め、決済時に天引きできる形を組んでおくことが重要です。具体の税額・納付は税理士へ、決済の組み方は当社へご相談ください。
Q. 売主が複数の相続人で、一部だけが海外在住です。1億円の判定はどうなりますか?
A. 共有・複数相続人の場合の持分ごとの1億円判定や、非居住者の持分だけ源泉徴収する扱いは事案によって分かれ、国税庁の質疑と民間の解説でも整合しない部分があります。本記事では断定せず【未検証】としています。持分按分と源泉徴収の要否は、税理士・司法書士に個別にご確認ください。
Q. 税率10.21%の「0.21%」は何ですか?
A. 所得税10%に、復興特別所得税(源泉所得税額の2.1%=10%×2.1%=0.21%)を上乗せした合計です。復興特別所得税は平成25年1月1日から令和19年12月31日までの源泉徴収に適用されます。令和9年分以後は防衛特別所得税が加わる旨も示されていますが、具体の上乗せ方法は支払の直前に国税庁の最新案内でご確認ください。
この記事の出典(一次情報)
- 国税庁タックスアンサー No.2879「非居住者等から土地等を購入したとき」(非居住者等からの国内の土地等の譲渡対価の支払者は10.21%を源泉徴収。個人が自己・親族の居住用に取得し対価1億円以下なら不要。納付は原則翌月10日まで。根拠=所法161・164・212・213、所令281の3、復興財確法28ほか。令和8年4月1日現在法令等・2026年10月7日参照)
- e-Gov法令検索「所得税法」(昭和40年法律第33号。第161条第1項第5号=国内にある土地等の譲渡対価の国内源泉所得/第212条第1項=源泉徴収義務/第213条=税率/第2条第1項=居住者・非居住者の定義。2026年10月7日参照)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(昭和40年政令第96号。第281条の3=個人が自己・親族の居住用に取得した対価1億円以下は源泉徴収を要しない。2026年10月7日参照)
- e-Gov法令検索「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財確法)」(第28条=復興特別所得税は源泉所得税額の2.1%。平成25年1月1日〜令和19年12月31日。所得税10%と合わせ10.21%。2026年10月7日参照)
- 東京地裁平成28年5月19日判決(住民票上の住所が国内にあっても生活の本拠が国外なら非居住者。その対価を支払う買主は所得税法第212条第1項の源泉徴収義務を負う。2026年10月7日参照)
※1億円以下の判定、共有・複数相続人の持分按分、店舗併用住宅の扱い、取得費・精算金を含む対価の額の確定は、取引の実態で変わります。本記事では具体の税額・該当性を断定しておらず、該当性は【未検証】として税理士・司法書士による確認を前提としています。
※令和9年分以後の防衛特別所得税の上乗せ方法・率、租税条約による取扱いは本記事で断定していません。支払の直前に国税庁の最新案内と現地税務専門家の確認を前提とします。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断・税務判断を示すものではありません。源泉徴収税額の算定・納付・還付の確定申告は税理士、所有権移転登記は司法書士、紛争は弁護士が行います。
※日本側の物件の調査・重要事項説明・媒介および売買契約・決済は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が担い、税理士・司法書士とは、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で進めます。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。投資・事業用不動産の全体像は投資・事業用不動産のご相談をご覧ください。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。繁体字・簡体字での資料提供に対応し、中国語圏の買主と現地の専門家に向けて、源泉徴収の要否と決済スケジュールを対応づけて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
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