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投資・事業用不動産

中国本土の資本規制(年5万ドル枠)があるのに、日本の不動産をどう決済するのか

海を挟んで向かい合う二つの街並みを描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

中国本土の個人が国外へ送れる外貨は、便利化額度(結售・結購とも1人あたり年間で等値5万米ドル)という狭い枠に収まり、しかもこの枠内の購汇は『境外での不動産購入』という資本項目には使えません。だから日本の不動産決済は、手付・残代金をいつ・どの原資で送れるかを契約前に見極めることが出発点になります。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、中国側の資本規制と日本側の決済スケジュールの両面から、送金可否の見極めと日本側の外為法報告を条文と公的資料から整理します。

結論(先に要点):中国本土の個人が国外へ送れる外貨は、便利化額度(結售・結購とも1人あたり年間で等値5万米ドル)という狭い枠に収まり、しかもこの枠内の購汇は「境外での不動産購入」という資本項目には使えません。だから日本の不動産決済は、手付・残代金をいつ・どの原資で送れるかを契約前に見極めることが出発点になります。送金可否や節税そのものは扱わず、日本側の外為法の報告は行政書士、国外送金の税務は税理士、資金の適法性に関する紛争は弁護士へ分けてご案内します。

中国本土で日本の不動産購入を支援する現地の不動産・資産管理の専門家と、その顧客である買主に向けて、「決済資金が約束どおり日本へ届くか」を中国側の資本規制と日本側の決済スケジュールの両面から整理します。当社は日本側の媒介・情報提供を担い、外貨の購入可否や送金スキームの設計、税務、適法性の判断は行いません。該当する領域はそれぞれの専門家へ、別々にご契約いただく形でご案内します。

中国本土の個人が海外へ送金できる金額には、どんな枠があるのか

便利化額度という年間の総額枠があり、1人あたり年間で等値5万米ドルです。しかもこの枠内の外貨購入は、資本項目である「境外での不動産購入」には使えません。

中国本土の個人が人民元を外貨に換える(購汇)・外貨を人民元に換える(結汇)には、国家外匯管理局の《個人外匯管理弁法実施細則》(匯発〔2007〕1号)が定める「年度総額」の管理がかかります。年度総額は結售・結購それぞれ1人あたり年間で等値5万米ドルで、この枠内なら本人確認書類で銀行窓口の手続きが簡便にできます(便利化額度)。

ここで決済実務上いちばん効くのは、この便利化額度内の購汇は「経常項目」にしか使えないという点です。国家外匯管理局は、個人の便利化額度内の購汇を、海外旅行・留学・海外での医療・親族訪問・公務商務などの経常項目に限り、境外での不動産購入・証券投資・まだ開放していない資本項目には使えないとしています。日本の不動産を買うための大口の購汇・送金は、この個人枠の想定外です。

項目内容
根拠《個人外匯管理弁法実施細則》(匯発〔2007〕1号)
年度総額(便利化額度)結售・結購とも1人あたり年間 等値5万米ドル
枠内で使える用途旅行・留学・海外医療・親族訪問・公務商務など経常項目
枠内で使えない用途境外不動産購入・証券投資などの資本項目
超過したとき取引の真実性を示す証明書類を提出し、銀行の審査を経て取り扱う

つまり「年5万ドルを何年か積めば買える」という単純な話にはなりません。資本項目の購汇は便利化額度を超えても原則として認められないためです。具体的にどの原資・どの経路なら適法に送れるかは、外貨管理と送金の専門領域で、当社は判断しません。決済設計の前に、現地の外貨・送金の専門家による見極めが要ります。

日本の不動産購入で、手付と残代金はどの順序で送るのか

日本では契約時に手付、決済・引渡時に残代金を支払うのが通常です。送金が2段階になるため、それぞれの原資と着金のタイミングを契約前に確かめます。

日本の不動産売買は、売買契約の締結時に買主が手付を交付し、後日の決済日に残代金を支払って所有権移転・引渡しを受ける、という2段階が一般的です。中国本土からの買主の場合、この2回の送金が中国側の規制・審査・着金の時間差の影響を受けます。

段階いつ日本側で起きること送金で詰まりやすい点
手付売買契約時手付の授受、契約成立少額でも国外送金の審査・着金に日数がかかる
残代金決済・引渡時残代金決済、所有権移転登記の申請、引渡し大口のため資本項目規制・審査の影響が最も大きい

日本の手付は原則「解約手付」で、民法(明治29年法律第89号)第557条第1項により、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して契約を解除できます。中国の「定金」とは性格が違うため、この点は中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項に整理しています。残代金が決済日に届かなければ、買主の債務不履行として手付の没収や契約解除につながりうるため、送金の所要日数を決済日から逆算して契約の日程を組むことが実務の要です。

送金が枠や審査で止まったとき、契約はどうなるのか

残代金が決済日までに届かなければ、買主の債務不履行となり、手付を失う・契約を解除されるおそれがあります。これを避けるには、資金確保・送金の見込みを契約条件に反映させておきます。

日本の売買契約には、買主の融資が通らなかったときに契約を無条件で白紙へ戻す「融資利用の特約(ローン特約)」という仕組みがあります。ただしこれは国内の住宅ローンを前提にした条項で、国外からの送金が規制・審査で止まった場合を当然に救う特約ではありません。非居住の買主が現金で買う場合は、そもそもローン特約を置かないことも多いためです。

確認すること見るポイント
決済日までの送金所要日数中国側の審査・着金の時間差を織り込み、余裕を持った決済日にする
資金の原資と経路便利化額度では足りない大口を、どの適法な原資・経路で用意できるか(専門家の確認)
送金が間に合わないときの手当て決済日の延長や、資金確保を条件とする特約を置けるか(売主との交渉事項)
手付の性格解約手付か。履行の着手前後で解除の扱いが変わる

送金が止まるリスクは、契約の前に資金計画として見極めておくものです。決済日を過ぎてからでは、手付の没収や違約という形で跳ね返ります。資金の適法性や送金可否そのものの判断、紛争になったときの対応は、外貨・送金の専門家や弁護士の領域で、当社は行いません。

日本側で確認しておく外為法の届出・報告は誰がやるのか

非居住者が日本の不動産を取得したときは、取得後20日以内に外為法に基づく報告が必要です。報告書の作成は行政書士が、別契約で承ります。

外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号。外為法)は、非居住者による本邦にある不動産またはこれに関する権利の取得について、取得後20日以内に、日本銀行を経由して財務大臣へ報告書(様式第22)を提出することを求めています(外為法第55条の3第1項・同法第20条第10号および関係省令)。金額・面積の大小を問わず対象で、2026年4月1日以降の取得は目的を問わず報告対象に広がりました。報告をせず、または虚偽の報告をした場合は、六月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(外為法第71条第3号)。

論点何をするか担当
外為法の取得報告取得後20日以内に様式第22を日本銀行経由で財務大臣へ本人または居住者である代理人。書類作成は行政書士(別契約)
所有権移転登記名義変更の登記、署名証明等の添付書類司法書士
取得・保有・譲渡の税務課税関係、納税管理人の届出税理士
国外送金に伴う税務送金・資金移動に関わる申告税理士

この日本側の外為法報告は、中国側の資本規制とは別の制度です。報告の詳細は非居住者が日本の不動産を買ったら20日以内に外為法の報告にまとめています。当社は日本側の物件調査・重要事項説明・媒介・契約を担い、官公署へ提出する書類の作成が要る場面では、併設の四葉行政書士事務所が別契約で受任します。

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繁体字圏(台湾・香港)の買主と、中国本土とで送金実務はどう違うのか

香港は外国為替管理がなく資金移動が自由で、台湾は個人の年間累積の匯出額度が中国本土よりはるかに大きいため、送金で詰まりにくい点が中国本土との最大の違いです。

同じ中華圏でも、資金の国外移動に関する制度は地域で大きく異なります。

地域個人の対外送金の枠組み不動産決済への影響
中国本土便利化額度 年等値5万米ドル。資本項目の境外購房には使えない大口の購汇・送金が構造的に難しい
台湾中央銀行《外匯収支或交易申報辦法》。個人の年間累積結匯額度は等値500万米ドル(法人は5,000万米ドル)。新台幣50万元以上の外匯取引は申報義務枠が大きく、申報を前提に送金しやすい
香港外国為替管理がなく、資金移動は原則自由送金規制で決済が止まるリスクは小さい

台湾・香港の買主は、中国本土のような狭い購汇枠に縛られないため、決済スケジュールの組み方が変わります。台湾に関わる相続・不動産の越境案件の進め方は台湾の専門家が日本の不動産取引で戸惑う登記と権利証の違いにも触れています。現地の専門家と組んで進める形は現地プロと組んで日本の不動産を扱うにまとめました。なお各地の額度・申報基準は改正されるため、送金の前に現地の金融機関・中央銀行の最新の案内でご確認ください。

当社は、日本側の物件の調査、重要事項説明、価格と条件の調整、媒介と売買契約を担います。現地(中国本土・台湾・香港)の外貨・送金の専門家や各士業と当社は、それぞれ独立した事業体です。役割の重なる部分は、どちらが何を担うかを契約の前に明確にし、別々にご契約いただきます。 外貨の購入可否・送金スキームの設計、国外送金に関わる税務は税理士、資金の適法性に関する紛争は弁護士、日本側の外為法報告は行政書士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。

よくある質問

Q. 年5万ドルの枠を何年か積み立てれば、日本の不動産を買えますか?
A. 単純には積み上げられません。便利化額度(年等値5万米ドル)内の購汇は、旅行・留学・医療などの経常項目に限られ、国家外匯管理局は境外での不動産購入などの資本項目には使えないとしています。枠を超える購汇は、取引の真実性を示す証明書類の審査を経ますが、資本項目の境外購房はこの枠内外を問わず原則認められていません。どの原資・経路なら適法に送れるかは外貨・送金の専門家にご確認ください。

Q. 決済日までに残代金の送金が間に合わないと、どうなりますか?
A. 残代金が決済日に届かなければ、買主の債務不履行として手付を失う、または契約を解除されるおそれがあります。日本の融資利用の特約(ローン特約)は国内の住宅ローンを前提とした条項で、国外送金が止まった場合を当然に救うものではありません。送金の所要日数を決済日から逆算し、必要なら決済日の延長や資金確保を条件とする特約を置けるか、契約前に売主側と調整します。

Q. 日本側で、買ったあとに必ず出す届出はありますか?
A. 非居住者が日本の不動産を取得したときは、取得後20日以内に、外為法に基づく報告書(様式第22)を日本銀行経由で財務大臣へ提出します(外為法第55条の3第1項・同法第20条第10号・関係省令)。金額の大小を問わず対象で、2026年4月1日以降の取得は目的を問わず報告対象です。報告書の作成は行政書士が別契約で承り、登記は司法書士、税務は税理士へそれぞれ直接ご依頼いただきます。

Q. 台湾や香港の買主も、中国本土と同じ送金の制約を受けますか?
A. 受けません。香港は外国為替管理がなく資金移動が原則自由です。台湾は中央銀行の《外匯収支或交易申報辦法》により、個人の年間累積結匯額度が等値500万米ドル(法人は5,000万米ドル)で、中国本土の年5万米ドルの便利化額度とは枠の大きさが大きく異なります。各地の額度・申報基準は改正されるため、送金前に現地の金融機関・中央銀行の最新の案内でご確認ください。

この記事の出典(一次情報)

※中国本土の外貨購入・対外送金の可否、適法な原資・経路の判断は、取引の実態・最新の外匯政策により変わります。本記事では具体的な送金スキームの可否を断定しておらず、該当性は【未検証】として外貨・送金の専門家による確認を前提としています。
※非居住者の外為法報告・登記添付書類・税務の要否は、取得の目的・態様で変わります。本記事では具体的な税額・税率や報告の該当性を断定していません。
※台湾・香港の送金制度および額度は改正されます。本記事は参照日時点の一般的な整理で、個別の送金可否を保証するものではありません。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断・税務判断を示すものではありません。外貨・送金の可否は専門家、国外送金に関わる税務は税理士、資金の適法性に関する紛争は弁護士、日本側の外為法報告は行政書士が行います。
※日本側の物件の調査・重要事項説明・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が担い、現地の専門家・各士業とは、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で進めます。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。投資・事業用不動産の全体像は投資・事業用不動産のご相談をご覧ください。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。繁体字・簡体字での資料提供に対応し、中国語圏の買主と現地の専門家に向けて、送金・決済のスケジュールと日本側の手続きを対応づけて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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