経営・管理ビザの更新が難しくなったら、会社と不動産はどう畳むのか? —— 順番を間違えない
先に不動産を売り、あとから会社を畳みます。逆にすると詰みます。会社を解散すると、清算株式会社は債権者に対し一定の期間内に債権を申し出るべき旨を官報に公告しなければならず、その期間は2か月を下れません(会社法第499条第1項ただし書)。つまり会社を畳むには最低2か月かかります。そして清算が結了して法人格が消滅すれば、その会社名義の不動産は動かせなくなります。一方で在留資格には期限があります。2025年10月16日施行の改正で経営・管理の資本金の目安は500万円から3,000万円に引き上げられ、更新が通らない見込みの方が出ています。在留資格が切れる日、会社を畳み終える日、不動産の決済日。この3つをどう並べるかを整理します。文京区小日向・茗荷谷駅徒歩5分。
先に不動産を売り、あとから会社を畳みます。逆にすると詰みます。会社の清算には官報公告が要り、その期間は2か月を下れません(会社法第499条第1項ただし書)。法人格が消えれば、会社名義の不動産は動かせません。
このページは、会社名義の不動産をお持ちの方が、経営・管理の在留資格の更新が難しくなったときの順番を扱います。在留資格の要件そのものは外国人がグループホーム事業を始めるにはに、出国前の売却の流れは出国前の不動産売却の特集にまとめています。
最終更新:2026年◯月◯日
なぜ、いま更新が通らない人が出ているのか?
2025年10月16日施行の改正で、要件が大きく上がったからです。
在留資格「経営・管理」は、外国人が日本で会社を経営するための資格です。この要件が改正され、出資額(資本金)の目安が500万円以上から3,000万円以上に引き上げられました。あわせて、常勤職員の確保、一定水準の日本語能力、中小企業診断士・公認会計士・税理士等の専門家による事業計画の確認といった要件が加わっています。
既存の在留資格をお持ちの方には経過措置が設けられているとされますが、適用の条件はご自身の状況によって異なります。「次の更新は難しいかもしれない」と感じた時点が、動き始める時期です。
**在留資格の許否を判断するのは出入国在留管理庁です。**当社も、この記事も、結果を保証するものではありません。ここで扱うのは、もし更新が通らなかった場合に、不動産と会社をどう畳むかという段取りの話です。
順番はどちらが先なのか?
不動産を売るのが先です。会社を畳むのは後です。
理由は法人格にあります。会社の清算が結了すると法人格は消滅します。**法人格が消えれば、その会社名義の不動産の所有権移転登記はできません。**売れる状態ではなくなる、ということです。
さらに、会社を畳むには時間がかかります。
会社を畳むのに、どれくらいかかるのか?
最低2か月です。
株式会社は、株主総会の決議などによって解散します(会社法第471条)。解散した会社は清算株式会社となり、次の義務が生じます。
清算株式会社は、……遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。(会社法第499条第1項)
**この2か月は縮められません。**そして、債務を弁済した後でなければ残余財産を株主に分配できません(同法第502条)。
つまり、実務の流れはこうなります。
| 段階 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 不動産を売却し、代金を会社に入れる | 出国前の売却なら数週間 |
| 2 | 株主総会で解散を決議。清算人を選任 | — |
| 3 | 解散・清算人選任の登記(司法書士) | — |
| 4 | 官報公告(2か月以上)+知れている債権者への各別の催告 | 2か月以上 |
| 5 | 債務の弁済 → 残余財産の確定 | — |
| 6 | 決算報告の承認、清算結了の登記(司法書士) | — |
| 7 | 税務の届出・清算確定申告(税理士) | — |
**1を4より後に持ってくると、時間が足りなくなります。**そして清算結了まで進めてしまえば、売る手段そのものがなくなります。
在留資格が切れる日から、どう逆算するのか?
3つの日付を並べます。
| 日付 | 何が変わるか |
|---|---|
| 不動産の引渡日 | この日に居住者なら、源泉徴収10.21%はありません。非居住者になっていれば源泉徴収されます(いつから非居住者になるのか) |
| 住民票を抜く日(転出届) | 印鑑登録が消え、印鑑登録証明書が取れなくなります。決済の登記に必要です(外国人の印鑑登録) |
| 在留資格の満了日 | 日本に滞在できる期限 |
望ましい順番は、引渡し → 納税管理人の届出 → 転出届 → 出国、です。
会社を畳む2か月を、この前後のどこに置くかが設計になります。在留資格の期限まで余裕がなければ、清算の途中で出国することもあり得ます(清算人が日本にいるかどうか等、個別の検討が要ります)。ここは司法書士・税理士と一緒に組み立てる部分です。
会社名義と個人名義で、何が違うのか?
| 個人名義 | 会社名義 | |
|---|---|---|
| 売主 | ご本人 | 会社(代表者が署名) |
| 決済に必要なもの | 印鑑登録証明書、住民票など | 会社の印鑑証明書、登記事項証明書、代表者の本人確認 |
| 譲渡益への課税 | 所得税(譲渡所得) | 法人税(他の損益と通算される) |
| 非居住者の源泉徴収10.21% | ご本人が非居住者かで判定 | 外国法人かどうかで判定。日本法人であれば通常は生じません |
| 会社を畳むタイミング | 関係なし | 売却より後(本コラムの結論) |
会社名義のほうが、税の扱いも書類も別物です。「個人の売却と同じつもり」で進めると、決済当日に書類が足りません。
なお、役員社宅として代表者ご本人が住んでいる場合は、退去・原状回復と売却の日程が絡みます。住みながら売る形にするかどうかも、早めに決めておく論点です。
誰が何をするのか?
| 誰が | 何を |
|---|---|
| 四葉不動産株式会社 | 会社名義の不動産の売却の媒介。在留資格の満了日から逆算した日程の設計。司法書士・税理士へのおつなぎ |
| 四葉行政書士事務所(別契約) | 在留資格に関する申請書類の作成(更新・変更の見通しの整理を含む) |
| 司法書士(ご本人・会社と直接契約) | 所有権移転登記、解散・清算人選任の登記、清算結了の登記 |
| 税理士(ご本人・会社と直接契約) | 法人税の申告、清算確定申告、税務署への届出 |
**四葉不動産株式会社と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体として別の契約で受任します。**司法書士・税理士とは、ご本人または会社が直接ご契約いただく形をご案内し、当社が紹介料を受け取ることはありません。
**当社が対応できないこと:**在留資格の許否の判断(出入国在留管理庁が行います)、登記の申請代理(司法書士へ)、税額の計算と申告書の作成(税理士へ)。
出国後に、未納が残っていたらどうなるのか?
次に日本へ来るときに響きます。
出入国在留管理庁のガイドラインは、在留期間の更新・在留資格の変更において納税義務の不履行を消極的な要素として評価し、令和8年6月の改正で「関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況に関する情報を踏まえ、許否判断を行う場合があります」と注記しました。永住許可では、申請時点で納付済みでも当初の期間内に払っていなければ原則として消極評価です。
会社を畳む年は、法人税・消費税・住民税など、動く税目が多くなります。**「畳んだから終わり」ではありません。**詳しくは出国後の未納は、いつまで追いかけてくるのかに書きました。
この記事の根拠
| 内容 | 根拠 |
|---|---|
| 株式会社の解散事由(株主総会の決議ほか) | 会社法(平成17年法律第86号)第471条 |
| 清算株式会社の債権者に対する官報公告と各別の催告。その期間は2か月を下ることができない | 会社法第499条第1項 |
| 債務を弁済した後でなければ残余財産を株主に分配できないこと | 会社法第502条 |
| 在留資格「経営・管理」の要件の改正(2025年10月16日施行。出資額の目安 500万円以上→3,000万円以上、常勤職員、日本語能力、事業計画の専門家確認) | 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」/同「在留資格『経営・管理』」 |
| 在留期間の更新・在留資格の変更における納税義務の履行(消極的な要素としての評価、関係機関からの情報提供) | 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」7(最終改正 令和8年6月) |
| 永住許可における公的義務の履行 | 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」1(3)イ(令和8年2月24日改訂) |
| 非居住者から不動産を購入する際の源泉徴収(10.21%)と判定時点 | 所得税法第161条第1項第5号・第212条第1項/所得税基本通達36-12/国税庁 質疑応答事例 |
本ページは一般的な情報提供です。**在留資格の許否は出入国在留管理庁が判断し、当社も本記事も結果を保証しません。**在留資格の要件は改正・個別審査により変わります。経過措置の適用条件はご自身の状況によって異なります。清算の具体的な手順と期間、税務の取扱いは、司法書士・税理士がそれぞれ判断します。
不動産の媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が、在留資格に関する申請書類の作成は四葉行政書士事務所(登録番号 第25087022号)が、それぞれ別の契約としてお受けします。登記は司法書士、税務は税理士におつなぎし、それぞれ直接ご契約いただきます。当社が紹介料を受け取ることはありません。
この記事の著者 浦松 丈二|四葉不動産株式会社 代表取締役・専任宅地建物取引士。行政書士。元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)。中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。社会保険労務士試験合格(2026年9月開業予定)。
