小規模多機能型居宅介護の物件要件|宿泊室・登録定員・用途地域の見方
小規模多機能型居宅介護(小多機)に転用できる物件は、①宿泊室を確保できるか(定員1人・床面積7.43㎡以上)②登録定員29人以下・通い最大18人・泊まり最大9人という規模を満たせるか③用途地域と用途分類(宿泊機能があるため寄宿舎か児童福祉施設等か・工業専用地域は不可)④宿泊機能がある分の消防用設備(スプリンクラー・自動火災報知)の4点で絞られます。ふつうの介護事業所と違い『泊まり』があることが物件条件を一段厳しくします。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、契約前に確認できることを条文と省令から順に整理します。
結論(先に要点):小規模多機能型居宅介護(小多機)に転用できる物件は、①宿泊室が取れるか(定員1人・床面積7.43㎡以上を確保できる部屋数か)②登録定員29人以下・通い最大18人・泊まり最大9人という規模を建物の広さで満たせるか③その用途地域・建物でその用途を使えるか(工業専用地域では建てられない・宿泊機能があるため用途分類の確認が要る)④宿泊機能がある分の消防用設備(スプリンクラー・自動火災報知設備)を設けられるか、の4点で絞られます。ふつうの介護事業所と違い「泊まり」があることが、物件条件を一段厳しくします。これらは内見の前に、書類でかなり絞り込めます。
「住宅地の空き戸建てや小さなテナントを小規模多機能に使いたい」というご相談で最初に確かめるのが、この4点です。本記事は、東京で小規模多機能型居宅介護(地域密着型サービスの一つ)への転用を検討するオーナー・介護事業者に向けて、不動産取引の目線で「どういう物件なら開設に進めるか」を条文と公的資料から順に整理したものです。介護保険法上の指定申請は行政書士が、建築確認・用途変更の設計は建築士・指定確認検査機関が、消防用設備の設計・設置は消防設備士が、人員配置や就業規則の労務は社会保険労務士が担います。当社は物件の調査と取引だけを担い、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、情報をお示しします。介護事業所一般の用途地域の見方は介護事業所の物件は用途地域で何を見るかに整理しており、本記事は小多機に固有の「泊まり」の物件条件に絞ります。
小規模多機能型居宅介護の物件には、なぜ宿泊室が要るのか?
「通い」を中心に、必要に応じて「訪問」と「泊まり」を組み合わせるサービスだからです。この「泊まり」があることが、物件を選ぶうえで通所系との決定的な違いになります。
小規模多機能型居宅介護は、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第19項が定めるサービスで、利用者の心身の状況や希望に応じて、事業所への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者宅への「訪問」を組み合わせ、入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話および機能訓練を行います。同法第8条第14項の「地域密着型サービス」の一つで、原則としてその事業所がある市町村の住民が利用し、指定を行うのも都道府県知事ではなく市町村長です(同法第78条の2第1項)。
物件の側から見ると、「通い」のための居間・食堂・台所に加えて、「泊まり」のための宿泊室が要るのが、通所介護やデイサービスと違うところです。指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第67条は、事業所に居間、食堂、台所、宿泊室、浴室、消火設備その他非常災害に際して必要な設備を設けることを求めています。この宿泊室があるかどうかが、物件選びの最初の関門です。
登録定員と通い・泊まりの定員は、物件の広さにどう効くのか?
宿泊室の数と居間・食堂の広さが、受け入れられる人数の上限を規定します。まず、定員の枠組みを押さえます。
同基準第66条は、指定小規模多機能型居宅介護事業所の登録定員(登録できる利用者の数の上限)を29人以下(サテライト型は18人以下)と定めています。そのうえで、1日あたりの「通い」と「泊まり」の利用定員を、次の範囲で定めるものとしています。
| 区分 | 1日あたりの利用定員 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録定員 | 29人以下(サテライト型は18人以下) | 平成18年厚生労働省令第34号 第66条 |
| 通いサービス | 登録定員の2分の1〜15人。登録定員26・27人は16人、28人は17人、29人は18人まで | 同第66条 |
| 宿泊サービス | 通いサービスの利用定員の3分の1〜9人 | 同第66条 |
宿泊室について、同基準第67条は、定員を1人(利用者の処遇上必要と認められる場合は2人でも可)とし、床面積を7.43㎡以上と定めています。居間および食堂は「機能を十分に発揮しうる適当な広さ」とされ、具体的な数字ではなく「通いの利用者が過ごせる広さか」で見ます。
物件の側から読み替えると——泊まりを最大9人受け入れたいなら、7.43㎡以上の宿泊室を9室分(相部屋にしない前提で)確保できる広さが要るということです。中古の戸建てやテナントでは、間取りをこの宿泊室の数と居間・食堂の広さに合わせて改修できるかが、受け入れ人数の上限を左右します。
住宅地の戸建てやテナントは、用途地域と建築基準法でどこまで使えるのか?
宿泊機能があるため、通所系より用途の分類がやや複雑になります。ここは特定行政庁・建築士に確認すべき点です。
用途地域については、小規模多機能型居宅介護の事業所は、宿泊機能を伴うことから、建築基準法(昭和25年法律第201号)上「寄宿舎」または「児童福祉施設等」として扱われ得ます。いずれに当たるかで、建てられる用途地域や必要な措置が変わります。共通して言えるのは、工業専用地域では住宅・寄宿舎や児童福祉施設等を建てられず、小多機の事業所も置けないことです。それ以外の地域で使えるかは、その建物がどの用途に分類されるかによるため、物件を決める前に自治体の都市計画課・建築指導課と建築士に確認してください。
既存建物を転用する場合は、用途変更の確認申請が要るかを見ます。同法第87条第1項は、建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物にする場合に確認の規定を準用すると定め、その第6条第1項第1号は「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」です。
| その用途に使う部分の床面積 | 用途変更の確認申請 |
|---|---|
| 200㎡以下 | 原則不要 |
| 200㎡超 | 必要(建築基準法第87条第1項・第6条第1項第1号) |
ただし——確認申請が要らないことと、建築基準法を守らなくてよいことは別です。同法第87条第2項は、用途変更に第48条(用途地域の制限)や避難・防火の規定を準用すると定めており、採光・排煙・避難・内装制限といった実体規定は確認申請の要否に関わらずかかります。用途分類の判定・用途変更の確認申請の要否と設計は建築士・指定確認検査機関の領域で、当社は物件の登記・図面などの書類を取り寄せてお渡しするところまでを担います。
宿泊機能があると、消防設備(自動火災報知・スプリンクラー)はどう変わるのか?
「泊まり」がある分、消防用設備の負担が通所系より重くなり得ます。ここが物件の改修費に直結します。
小規模多機能型居宅介護は、消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(6)項ロ又は(6)項ハに区分されます。どちらに当たるかは、その施設で避難に介助を要する者がどれだけいるか(自力避難が困難な者を主として入所させるか)で判定されます。(6)項ロ——自力避難が難しい人が入所する社会福祉施設等——に当たると、消防用設備の負担が大きくなります。
スプリンクラー設備について、かつては(6)項ロでも延べ面積275㎡以上で設置義務がかかっていました。消防法施行令の改正(平成27年4月1日施行)で面積要件が撤廃され、(6)項ロは原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が必要になりました。ただし、延べ面積275㎡未満で延焼抑制構造などの要件を満たす場合は免除される特例が残っています。
| 区分 | スプリンクラー設備 |
|---|---|
| (6)項ロ・275㎡以上 | 必要 |
| (6)項ロ・275㎡未満 | 原則必要。延焼抑制構造など一定の要件を満たせば免除の特例あり |
| (6)項ハ | 275㎡以上等で必要(区分・面積により異なる) |
このほか、(6)項ロでは自動火災報知設備や消防機関へ通報する火災報知設備、消火器なども面積等に応じて求められます。中古の戸建てや小規模テナントを転用する場合、このスプリンクラー等の設置費用が開設費用の大きな部分を占めることがあるため、物件を決める前に所轄消防署へ事前相談し、その建物で何がどこまで要るかを確かめておくのが順番です。区分の判定と設備の設計は消防署・消防設備士の領域で、当社が判断することはありません。
物件・指定申請・設計・労務は、それぞれ誰が担うのか?
窓口を分けます。小多機は関わる資格が多いぶん、はじめに交通整理をしておくと迷いません。
| やること | 担い手 |
|---|---|
| 物件の現況調査・買主/貸主探索・媒介・売買/賃貸借契約・原状回復や条件交渉 | 四葉不動産株式会社(宅地建物取引業) |
| 地域密着型サービスの指定申請など官公署提出書類の作成 | 行政書士 |
| 建築確認・用途変更の設計・法適合の確認 | 建築士・指定確認検査機関 |
| 消防用設備の設計・設置、区分の判定 | 消防設備士・消防署 |
| 介護報酬(介護給付費)の請求と加算 | 介護給付費請求の実務 |
| 人員配置・就業規則・研修などの労務 | 社会保険労務士 |
| 税務 | 税理士 |
物件の調査、書類の取り寄せ、媒介、売買・賃貸借の契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。小規模多機能型居宅介護の指定申請など、官公署に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。この2つはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 建築確認・用途変更の設計は建築士・指定確認検査機関、消防用設備は消防設備士、人員配置や就業規則の労務は社会保険労務士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。事業用物件全般の探し方は投資用・事業用不動産、開業とオフィス選びの関係は会社設立とオフィス選びをご覧ください。相談は無料です。
よくある質問
Q. 小規模多機能型居宅介護には、必ず宿泊室が要りますか?
A. はい。小規模多機能型居宅介護は「通い」を中心に「訪問」と「泊まり」を組み合わせるサービスで、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第67条が、宿泊室を含む設備を求めています。宿泊室は定員1人(処遇上必要な場合2人可)・床面積7.43㎡以上です。通所介護と違い「泊まり」の部屋を確保できるかが、物件選びの最初の関門になります。
Q. 登録定員29人というのは、物件の広さとどう関係しますか?
A. 登録定員は29人以下(サテライト型は18人以下)で、1日あたりの通いは登録定員の2分の1〜最大18人、泊まりは通いの利用定員の3分の1〜最大9人です(同基準第66条)。物件の側では、7.43㎡以上の宿泊室を何室確保できるかが泊まりの上限を、居間・食堂の広さが通いの受け入れを規定します。広さが受け入れ人数の上限を決める関係です。
Q. 住宅地の戸建てでも開設できますか?
A. 用途地域と建物の分類しだいです。小多機は宿泊機能を伴うため建築基準法上「寄宿舎」または「児童福祉施設等」として扱われ得ます。工業専用地域では建てられませんが、それ以外の地域で使えるかは用途分類によります。既存建物の転用でその用途に使う部分が200㎡を超えれば用途変更の確認申請が要ります(同法第87条第1項)。用途分類と設計は建築士・特定行政庁に確認してください。
Q. 泊まりがあると、消防設備は必ずスプリンクラーが要りますか?
A. 小多機は消防法施行令別表第一(6)項ロ又は(6)項ハに区分され、区分は避難に介助を要する者の状況で判定されます。(6)項ロなら平成27年4月1日施行の改正で原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラーが必要になりました(275㎡未満で延焼抑制構造等の要件を満たせば免除の特例)。区分と要否は建物ごとに異なるため、所轄消防署に事前相談してください。
この記事の出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「介護保険法」(平成9年法律第123号。第8条第14項=地域密着型サービスの定義、第8条第19項=小規模多機能型居宅介護の定義、第78条の2第1項=市町村長による指定。2026年9月11日参照)
- e-Gov法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号。第66条=登録定員29人以下・通いサービスの利用定員(登録定員の2分の1〜15人、登録定員に応じて最大18人)・宿泊サービスの利用定員(通いの利用定員の3分の1〜9人)、第67条=設備及び備品等(居間・食堂・台所・宿泊室・浴室・消火設備)、宿泊室は定員1人・床面積7.43㎡以上。2026年9月11日参照)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(昭和36年政令第37号。別表第一(6)項ロ=自力避難が困難な者が入所する社会福祉施設等、(6)項ハ=それ以外、第12条=スプリンクラー設備の設置基準。(6)項ロは平成27年4月1日施行の改正で延べ面積275㎡以上の要件が撤廃され原則設置義務となり、275㎡未満は延焼抑制構造等で免除の特例。2026年9月11日参照)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第6条第1項第1号=別表第一(い)欄の特殊建築物で200㎡超、第87条第1項=用途変更に伴う確認、同条第2項=第48条等の準用。工業専用地域における建築制限は別表第二による。2026年9月11日参照)
※小多機の物件要件は、宿泊室の確保、定員に見合う広さ、用途地域・用途分類、用途変更の要否、消防用設備が重なって決まります。本記事は個別の物件について判断していません。
※用途分類(寄宿舎か児童福祉施設等か)と用途変更の確認申請の要否・設計は建物ごとに異なります。適法性の判断と設計は建築士・特定行政庁・指定確認検査機関、消防用設備の区分判定と設計は消防署・消防設備士の領域です。
※各自治体の都市計画・所轄消防署の運用、地域密着型サービスの基準条例(自治体独自の上乗せ)は変わります。着手時点で当該市町村・所轄消防署・特定行政庁のページを直接ご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の物件の開設の可否や指定の取得を判断・保証するものではありません。物件の調査・媒介および売買・賃貸借契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、指定申請等の官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。建築確認・用途変更は建築士・指定確認検査機関、消防用設備は消防設備士、人員配置や就業規則の労務は社会保険労務士、報酬請求は介護給付費の実務、税務は税理士の領域です。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。
この記事の執筆者
浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と届出(行政手続)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。
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