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売りにくい土地・建物

所在の分からない共有者がいる土地・家は売れますか?改正民法の持分取得・譲渡の制度

一軒の家が三つに分かれる様子と三人の後ろ姿を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

共有者の一人の所在が分からない土地・家は、売却に全員の同意が要る(民法第251条第1項)ため、そのままでは売れません。令和3年法律第24号による改正民法(2023年4月1日施行)で、所在等不明共有者の持分を裁判所の決定で取得する制度(第262条の2)と、持分を含めて第三者に譲渡する権限を得る制度(第262条の3)ができ、時価相当額を供託して進めます。相続で共有になった不動産は相続開始から10年を経過していないと使えない場面があります。申立ての代理は弁護士、登記は司法書士が担い、当社は裁判手続を代理せず、売れる形が整った後の査定・媒介と段取りの整理を行います。

結論(先に要点):共有者の一人と連絡が取れず所在も分からない土地・家は、そのままでは売れません。売却は共有物の処分にあたり、共有者全員の同意が要るからです(民法第251条第1項)。ただし令和3年法律第24号による改正民法(2023年4月1日施行)で、所在等不明共有者の持分を裁判所の決定により取得する制度(第262条の2)と、その持分を含めて第三者に譲渡する権限を裁判所から得る制度(第262条の3)ができました。いずれも時価相当額の金銭を供託して進めます。相続で共有になった不動産では、相続開始から10年を経過していないと使えない場面があります。申立ては裁判所への手続で、代理は弁護士が担い、当社(四葉不動産株式会社)は裁判手続を代理しません。当社が行うのは、制度で売れる形が整った後の査定・媒介と、そこに至る段取りの整理です。弁護士・司法書士・税理士とはそれぞれ独立した事業体として別々にご契約いただき、当社は紹介料を受け取りません。

親から相続した実家が兄弟姉妹の共有になっていて、そのうち一人が何十年も音信不通、住民票を追っても行き着かない——こうした土地・家を売りたいというご相談は、共有名義の中でも特に動かしにくい類型です。本記事は、所在の分からない共有者がいるときに使える改正民法の制度を、条文と手続の担い手の面から整理します。共有名義の売却の基本は相続した共有不動産を売るときの同意に、共有名義の出口の全体像は共有の土地・家の出口相談にまとめています。

共有者の一人と連絡が取れないと、なぜ売れませんか?

民法は、共有物の管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決めるとし(第252条第1項)、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が要ると定めています(第251条第1項)。不動産を売ることは、持分の過半数で決められる管理ではなく、共有者全員の同意が要る処分にあたります。共有者の一人が所在不明なら同意が取れず、全体を売ることはできません。

行為必要な同意根拠
保存行為(修繕など)各共有者が単独でできる民法第252条第5項
管理行為(短期の賃貸など)持分の価格の過半数民法第252条第1項・第4項
変更・処分(売却、長期の賃貸など)共有者全員民法第251条第1項
自分の持分だけを売る単独でできる持分は各共有者の所有権

自分の持分だけなら単独で売れますが、持分だけを買う相手は限られ、その後の共有関係も残ります。持分売却の考え方は中華圏の相続人がいる共有持分の売却にも書いています。

令和3年改正で、所在の分からない共有者がいても進められる手続は何ですか?

令和3年法律第24号による改正民法(2023年4月1日施行)は、所在等不明共有者がいる不動産について、裁判所の関与のもとで進められる制度を複数設けました。

制度できること条文主な要件・注意点
所在等不明共有者の持分の取得他の共有者が、所在等不明共有者の持分を取得する裁判を求める第262条の2所在等不明共有者は、取得した共有者に持分の時価相当額の支払を請求できる(第4項)。持分が相続財産に属し遺産分割をすべき場合、相続開始から10年を経過していないと裁判はできない(第3項)
所在等不明共有者の持分の譲渡権限の付与他の共有者全員が特定の第三者に不動産全体を譲渡することを前提に、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を得る第262条の3譲渡後、所在等不明共有者は不動産の時価相当額を持分に応じて按分した額の支払を請求できる(第3項)。相続開始から10年の要件は同じ(第2項)
変更の裁判所在等不明共有者以外の共有者の同意で変更を加えられる旨の裁判第251条第2項売却そのものではなく、共有物への変更のための制度
管理の裁判所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数で管理事項を決められる旨の裁判第252条第2項第1号管理に関する事項が対象
所有者不明土地管理命令裁判所が管理人を選任し、管理人が土地または共有持分を管理する第264条の2管理人が保存・利用改良の範囲を超える行為(処分など)をするには裁判所の許可が要る(第264条の3第2項)

売却の出口として直接使えるのは、第262条の2(持分を取得したうえで全体を売る)と第262条の3(第三者へ全体を譲渡する)です。どちらも、時価相当額の金銭を供託する手続を経ます。どの制度が使えるか、供託額がいくらになるかは、裁判所が事案ごとに判断します。本記事は個別の事案について制度の適用可否を判断しません。

手続はどこで、誰が、どう進めますか?

段階内容担う人
相続関係と持分の確認戸籍で相続人を確定し、登記簿で持分を確認。相続登記が未了なら先に申請(不動産登記法第76条の2・2024年4月1日施行)相続登記は司法書士、相続関係の書類は行政書士または司法書士
所在の調査住民票・戸籍の附票などで所在を追う弁護士・司法書士(職務上請求)、本人
裁判所への申立て第262条の2または第262条の3の裁判を求める。公告や供託の手続を経る代理は弁護士。裁判所提出書類の作成は弁護士または司法書士
供託裁判所が定めた額を供託所に供託申立人(弁護士・司法書士が手続を支援)
売却裁判の確定後、全体を売る当社(媒介)。登記は司法書士

裁判にかかる期間や費用は、共有者の人数、調査の難易度、供託額によって変わります。当社は裁判手続の代理をせず、弁護士・司法書士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。

不在者財産管理人や失踪宣告とは、どう使い分けますか?

改正前から、所在不明の人に関する制度として、家庭裁判所が選任する不在者財産管理人(民法第25条)と、生死が7年間明らかでないときの失踪宣告(同法第30条第1項)があります。

制度内容向く場面
不在者財産管理人(第25条)家庭裁判所が管理人を選任し、管理人が不在者の財産を管理する。売却など処分には家庭裁判所の権限外行為の許可が要る不在者の財産全体の管理が必要なとき
失踪宣告(第30条)生死が7年間明らかでないときに死亡したものとみなす相続を開始させる必要があるとき
持分の取得・譲渡(第262条の2・第262条の3)不動産の共有持分に絞って、供託を経て取得・譲渡する目的が特定の不動産の売却であるとき

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

どれを選ぶかは、目的(不動産だけ処分したいのか、財産全体か)、相続開始からの年数、他の共有者の意向で変わります。選択は弁護士へ相談したうえで決めます。

売却までの順番は、どう組みますか?

順番すること備考
1登記簿・戸籍で共有者と持分を確定相続登記が未了なら司法書士へ
2所在調査の結果を整理調査で見つかれば通常の全員合意の売却へ
3弁護士に制度の選択を相談10年要件、供託額、他の共有者の合意
4裁判・供託期間は事案による
5査定・媒介・売却当社。換価後の分け方は換価分割の流れ

相続で共有になった不動産では、10年の要件の関係で、先に家庭裁判所での遺産分割の手続が必要になることがあります。この判断も弁護士の領域です。

四葉不動産株式会社は、何を行いますか?

四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)は、東京都文京区小日向を拠点に、共有・再建築不可・借地・狭小地など売りにくい土地・建物の売却の媒介と、出口の比較を行っています。所在の分からない共有者がいる不動産では、次の範囲を担います。

  • 登記簿・公図・役所調査の結果を報告書にし、全体売却・持分売却・貸して持つ、の各出口を並べる
  • 裁判で売れる形が整った後の査定・媒介・売買契約・決済の段取り
  • 弁護士・司法書士・税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形のご案内

当社は裁判手続の代理、登記申請の代理、税務の判断をしません。

誰に相談すればよいですか?

不動産の査定・媒介・売買契約は四葉不動産株式会社が承ります。所在等不明共有者に関する裁判の申立てと交渉の代理は弁護士が、相続登記・持分移転登記と裁判所提出書類の作成は司法書士が、遺産分割協議書など相続関係の書類作成は四葉行政書士事務所が、譲渡所得や相続税は税理士が担います。四葉不動産株式会社と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体として受任し、別々にご契約いただきます。 当社・当事務所は紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。

よくある質問

Q. 供託する金額はいくらになりますか?
A. 裁判所が、所在等不明共有者の持分の時価相当額をもとに定めます。金額は不動産の評価と持分割合によって変わり、本記事では目安を書きません。評価の考え方や資料の集め方は弁護士・不動産鑑定士へ、当社は媒介の立場で取引事例などの資料を整えます。

Q. 相続から10年経っていません。どうすればよいですか?
A. 持分が相続財産に属し遺産分割をすべき場合、相続開始から10年を経過していないと第262条の2・第262条の3の裁判はできません(各条の第3項・第2項)。この場合は、家庭裁判所での遺産分割の手続や不在者財産管理人(民法第25条)の選任など別の道を検討します。どの手続を選ぶかは弁護士へご相談ください。

Q. 自分の持分だけを先に売ることはできますか?
A. 持分は各共有者の所有権なので単独で売れます。ただし持分だけを買う相手は限られ、買主との間で新たな共有関係が生まれます。売る前に、全体を売る道(第262条の3の譲渡権限など)と比べることをお勧めします。当社は両方を並べて比較します。

Q. 期間と費用はどのくらいかかりますか?
A. 共有者の人数、所在調査の難易度、裁判所の審理、供託額で変わり、一概には言えません。弁護士費用・司法書士費用・供託金・登記費用・媒介報酬は、それぞれの事業体が直接ご説明します。当社は媒介報酬を宅地建物取引業法第46条に基づく定めの範囲内で受け、紹介料は受け取りません。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第251条=共有物の変更、第252条=共有物の管理、第262条の2=所在等不明共有者の持分の取得、第262条の3=所在等不明共有者の持分の譲渡、第264条の2・第264条の3=所有者不明土地管理命令と管理人の権限(いずれも令和3年法律第24号による改正・2023年4月1日施行)、第25条=不在者の財産の管理、第30条=失踪の宣告。現行版の施行日 2026年6月24日・令和8年法律第45号による改正。2026年9月24日参照)
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号。第76条の2=相続登記の申請義務。2024年4月1日施行。2026年9月24日参照)
  • 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(所在等不明共有者の持分の取得・譲渡制度と相続登記義務化の施行日。2026年9月24日参照)

※どの制度が使えるか、供託額、期間、費用は、共有者の人数・相続開始からの年数・所在調査の結果・不動産の評価によって変わります。本記事は個別の事案について制度の適用可否を判断していません。裁判手続は弁護士へ、登記は司法書士へ、税務は税理士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の不動産・手続の適否や結果を判断・保証するものではありません。法的判断は弁護士など有資格者が行います。
※不動産の査定・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、相続関係の書類作成は四葉行政書士事務所が、裁判手続の代理は弁護士が、登記は司法書士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。裁判手続は弁護士、登記は司法書士に振り分けたうえで、共有不動産の出口を同じテーブルに並べて比較します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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