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相続

相続した実家が「事故物件」だった——売るときの告知義務と段取りはどうなりますか?

雨戸を閉めたまま草の伸びた空き家を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した実家で過去に人が亡くなっていても、売るときに常に告げなければならないわけではありません。国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)は、自然死・日常生活の中での不慮の死は原則として告げなくてよいとし、自殺・他殺等や特殊清掃等が行われた場合を告知の対象とします。賃貸では事案から概ね3年の経過が目安ですが、売買にはこの年数の区切りがありません。買主から問われた場合や社会的影響が大きい場合は期間・死因にかかわらず告げます。告知を怠ると契約不適合責任・損害賠償の問題になり得る点(民法第562条〜第564条・第566条)まで、東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士がガイドラインと条文から整理します。

結論(先に要点):相続した実家で過去に人が亡くなっていても、売るときに常に告げなければならないわけではありません。国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)は、老衰・病死などの自然死や、転倒・誤嚥といった日常生活の中での不慮の死は原則として告げなくてよいとし、自殺・他殺等や特殊清掃等が行われた場合を告知の対象とします。賃貸では事案から概ね3年の経過が告げなくてよくなる目安ですが、売買にはこの年数の区切りがありません。買主から問われた場合や社会的影響が大きい場合は、期間や死因にかかわらず告げます。告知を怠ると契約不適合責任・損害賠償の問題になり得ます(民法第562条〜第564条・第566条)。

相続した実家で、親や親族が室内で亡くなっていた——売りたいが、告げる義務はどこまであるのか、価格はどれだけ下がるのか。不安の多くは「基準がはっきりしない」ことから来ます。国土交通省は令和3年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、宅地建物取引業者が宅建業法上負う告知の考え方を整理しました。本記事は、室内での死亡(自然死・自死・事件など)があった実家を相続し、売却を考える相続人の方に向けて、告知の要否・期間の目安・重要事項説明での扱い・売り方を、ガイドラインと民法・宅建業法の条文から整理したものです。個別の事案で告げるべきか否かの最終判断は、事情により有資格者・裁判所に委ねられます。本記事は一般的な情報提供です。

相続した実家で人が亡くなっていると、売るとき必ず告げないといけませんか?

必ずではありません。自然死(老衰・病死など)や日常生活の中での不慮の死(転倒・誤嚥など)は、原則として告げなくてよいとされています。一方、自殺・他殺等や、特殊清掃等が行われた場合は告知の対象になります。

国土交通省のガイドラインは、取引の対象不動産やその建物の共用部分で生じた「人の死」について、宅地建物取引業者が売主・貸主に代わって買主・借主へ告げるべきかの判断を整理したものです。出発点は「どのような死が生じたか」です。

死の態様売買での告知の考え方(原則)
自然死(老衰・病死など)原則として告げなくてよい
日常生活の中での不慮の死(転倒・誤嚥・入浴中の事故など)原則として告げなくてよい
自殺・他殺等(上記以外の死)告知の対象
特殊清掃等が行われた場合告知の対象

ただしこれは「原則」で、買主から事案の有無を問われた場合や、社会的影響の大きさから買主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合は、期間や死因にかかわらず告げることになります。ガイドラインは宅建業者の実務指針であり、個別の事案で告知義務があるかどうかの最終判断は、事情により有資格者・裁判所に委ねられます。相続した空き家の売り方全般は相続と不動産に整理しています。

自然死・自死・事件で告知の要否や期間の目安はどう違いますか?

死の態様で原則の要否が分かれ、さらに賃貸と売買で「期間の目安」の扱いが違います。賃貸は事案から概ね3年の経過が告げなくてよくなる目安ですが、売買にはこの年数の区切りがありません。

ガイドラインは、賃貸借取引について、自然死・日常の不慮の死以外の死(自殺・他殺等)や特殊清掃等が行われた場合でも、事案の発生から概ね3年が経過した後は原則として告げなくてよいとしています(事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い事案を除く)。これに対し、売買取引にはこの「概ね3年」という期間の区切りが置かれていません。実家の売却は売買にあたるため、年数の経過だけを理由に告知不要とは判断できない点に注意が要ります。

論点賃貸借取引売買取引(実家の売却はこちら)
自然死・日常の不慮の死原則告げなくてよい原則告げなくてよい
自殺・他殺等/特殊清掃等事案から概ね3年の経過が告げなくてよくなる目安年数での区切りはない
買主・借主から問われた場合期間・死因にかかわらず告げる期間・死因にかかわらず告げる
社会的影響が特に大きい事案3年経過後も告げる場合がある告げる

なお、告げる場合でも、ガイドラインは亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様・発見状況等までを告げる必要はないとしており、プライバシーへの配慮を求めています。どこまで・どう書くかは次の重要事項説明・告知書の論点につながります。

重要事項説明書・告知書にはどう書けばよいですか?

売買では、宅地建物取引業法第35条の重要事項説明で買主へ説明し、売主は**告知書(物件状況等報告書)**に知っている事実を記載します。心理的瑕疵に当たり得る事実を売主が知っているのに伏せると、のちの紛争の種になります。

宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条は、契約が成立するまでに買主へ重要事項を説明することを宅建業者に義務づけています。「人の死」に関する事実のうち告知の対象になるものは、重要事項説明で買主に伝えます。その前提として、売主は売買で一般に用いる**告知書(物件状況等報告書)**に、自ら知っている事実を正確に記載します。相続した実家の場合、相続人自身が死亡の経緯を直接知らないこともありますが、知っている事実を伏せないことが出発点です。

書面役割相続人(売主)側の留意点
告知書(物件状況等報告書)売主が知る物件の状況・履歴を買主へ伝える室内での死亡など、知っている事実を正確に書く。わからない点は「不明」と記す
重要事項説明書(宅建業法第35条)宅建業者が契約前に買主へ説明する告知の対象となる事実を調査のうえ説明に反映する

氏名・具体的な死の態様・発見状況等まで書く必要はありませんが、事実の有無そのものを伏せると、告知義務違反や契約不適合の問題につながり得ます。何をどこまで書くかに迷う場合は、取引を担う宅建業者と事前にすり合わせます。

告知を怠るとどうなりますか(契約不適合・損害賠償)?

告げるべき事実を伏せたまま売ると、契約不適合責任(民法第562条〜第564条)や損害賠償の問題になり得ます。心理的瑕疵が契約不適合に当たるかは個別事情によりますが、紛争になれば弁護士の領域です。

民法(明治29年法律第89号)は、引き渡された目的物が契約の内容に適合しないとき、買主に追完請求(第562条)・代金減額請求(第563条)・損害賠償請求や契約の解除(第564条)を認めています。いわゆる心理的瑕疵(人の死など、住み心地に関わる事情)がこの「契約不適合」に当たるかは、事案の態様・経過期間・買主の認識などの個別事情によって判断され、最終的には裁判所の判断に委ねられます。

期間の面では、第566条が、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、不適合を理由とする追完請求・代金減額・損害賠償・解除ができなくなる(売主が引渡し時に不適合を知り、又は重大な過失で知らなかったときを除く)と定めています。告げるべきことを告げずに売ると、この担保責任や損害賠償の対象になり得るほか、宅建業者には宅建業法上の告知義務の問題も生じます。告知の要否・内容の最終判断は個別事情により有資格者・裁判所に委ねられるため、迷う事案は早めに相談します。

ご自身のケースについて相談したい方へ

物件探しや売却について、状況をお聞かせください。

価格や売り方(現況・解体・買取)はどう考えればよいですか?

心理的瑕疵のある物件は、一般に相場より価格が下がりやすい一方、現況のまま売る・解体して更地で売る・買取で売るなど、売り方の選択肢があります。どれが手取りで有利かは、立地・建物の状態・税の特例とあわせて考えます。

価格への影響は事案の態様・経過・立地によって幅があり、本記事で一律の下落率は示せません(事案ごとに異なるため)。売り方の主な選択肢は次のとおりです。

売り方考え方
現況のまま売る解体費をかけずに売る。買主層・価格は事案の態様と立地による
解体して更地で売る建物を取り壊して売る。解体費と、更地化で上がる固定資産税、空き家特例の適用の順序を踏まえて判断
不動産会社による買取一般の買主を介さず売却。価格は相対的に下がりやすいが、早く・確実に手放しやすい

解体して更地で売るか、古家付き(現況)で売るかの比較は「相続した空き家は、解体して更地で売るか古家付き土地で売るか」に、旧耐震マンションの売り方は「相続した旧耐震マンションは売れる?」に整理しました。譲渡所得や空き家の3,000万円特別控除などの税務判断は税理士の領域です。どの売り方が合うかの査定・比較は当社が情報提供としてご案内します。

誰に相談すればよいですか?

事故物件の売却の進め方・査定・買主探し・媒介・売買契約、告知書の作成補助は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。遺産分割協議書など官公署・私人間に提出する書類の作成は、四葉行政書士事務所が承ります。

これらはそれぞれ独立した事業体です。それぞれ直接ご契約いただきます。 当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相続登記・所有権移転登記は司法書士へ、譲渡所得・空き家特例など税務の判断は税理士へ、近隣や買主との紛争・損害賠償は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。告知の要否・内容の最終判断は個別事情により有資格者・裁判所に委ねられます。相談は無料です。

よくある質問

Q. 相続した実家で親が病気で亡くなりました。売るとき告げないといけませんか?
A. 老衰・病死などの自然死は、国土交通省のガイドライン上、原則として告げなくてよいとされています。転倒・誤嚥・入浴中の事故といった日常生活の中での不慮の死も同様です。ただし、特殊清掃等が行われた場合や、買主から事案の有無を問われた場合、社会的影響の大きさから買主が把握しておくべき特段の事情がある場合は、告げることになります。個別の事案での最終判断は事情により有資格者・裁判所に委ねられるため、迷う場合はご相談ください。

Q. 自死や事件があった場合、何年か経てば告げなくてよくなりますか?
A. ガイドラインは、賃貸借取引については自然死・日常の不慮の死以外の死や特殊清掃等が行われた場合でも、事案から概ね3年の経過を告げなくてよくなる目安としています(事件性・周知性・社会的影響が特に高い事案を除く)。これに対し、売買取引にはこの「概ね3年」という期間の区切りがありません。実家の売却は売買にあたるため、年数の経過だけを理由に告知不要とは判断できない点に注意が要ります。

Q. 告げるとき、亡くなった人の名前や死の様子まで説明しないといけませんか?
A. いいえ。ガイドラインは、告げる場合でも、亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様・発見状況等までを告げる必要はないとしており、プライバシーへの配慮を求めています。告知の対象となるのは、取引の判断に影響する事実の有無であり、故人の個人情報を細かく伝えることではありません。何をどこまで記すかは、取引を担う宅建業者とすり合わせてください。

Q. 告知をしないで売ると、どうなりますか?
A. 告げるべき事実を伏せて売ると、契約不適合責任(民法第562条〜第564条)や損害賠償の問題になり得ます。民法第566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと不適合を理由とする請求ができなくなるとしつつ、売主が引渡し時に不適合を知り又は重大な過失で知らなかったときはこの限りでないとしています。心理的瑕疵が契約不適合に当たるかは個別事情により、最終判断は裁判所に委ねられます。紛争は弁護士の領域です。伏せずに正確に伝えることが、のちの紛争を避ける出発点です。

この記事の出典(一次情報)

  • 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年〔2021年〕10月公表。取引の対象不動産やその共用部分で生じた人の死について、宅地建物取引業者が宅建業法上負う告知の考え方を整理。自然死・日常生活の中での不慮の死は原則告げなくてよい、賃貸借取引ではそれ以外の死や特殊清掃等でも事案から概ね3年の経過が告げなくてよくなる目安、売買取引にはこの期間の区切りなし、買主・借主から問われた場合や社会的影響が特に大きい事案は期間・死因にかかわらず告げる、告げる場合でも氏名・死の態様・発見状況等までは不要。2026年10月1日参照)
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号。第35条=重要事項の説明(契約が成立するまでに宅地建物取引業者が買主等へ重要事項を説明する義務)。2026年10月1日参照)
  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第562条=買主の追完請求権、第563条=代金減額請求権、第564条=損害賠償請求・解除(第415条・第541条・第542条の権利行使を妨げない)、第566条=目的物の種類・品質に関する担保責任の期間制限(買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求できない。売主が引渡し時に悪意・重過失のときを除く)。2026年10月1日参照)

※告知の要否・内容、心理的瑕疵が契約不適合に当たるか、価格への影響は、死の態様・経過期間・周知性・立地などの個別事情によって変わり、最終的には有資格者・裁判所の判断に委ねられます。本記事は個別の事案について判断していません。
※相続登記・所有権移転登記は司法書士へ、譲渡所得・空き家の3,000万円特別控除など税務の具体的な判断は税理士へ、近隣や買主との紛争・損害賠償は弁護士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の告知の要否や売却の可否・税額を判断・保証するものではありません。
※不動産の調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、遺産分割協議書等の書類作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。物件(不動産)と権利・手続(相続・登記・税務の振り分け)の論点を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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相続した実家、海外に住んだまま持っている物件、入居者がいるままの一棟——いまの状況をLINEで一言お送りください。代表(宅地建物取引士)が直接お返事し、売却・賃貸・そのまま持つ場合の見通しを整理します。査定・媒介は四葉不動産株式会社が単独でお受けします。

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