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2026.09.10相続

相続した『私道の持分(位置指定道路)』は、どう売る?──宅地との一体売却・通行掘削承諾・評価

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続した私道の持分は、原則として前面の宅地と一体として売ります。持分だけを切り離すと買主の使い道が狭まり価格が下がりやすいからです。売却では、買主が求める通行・掘削の承諾を私道の共有者から取れるか、位置指定道路(建築基準法第42条第1項第5号)か2項道路(同第2項)かで説明が変わること、私道の相続税評価(財産評価基本通達24)は不特定多数が通るか特定の者だけかで扱いが分かれること、を押さえます。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、条文と国の資料から整理します。

結論(先に要点):相続した私道の持分は、原則として前面の宅地と一緒に(宅地と一体として)売ります。持分だけを切り離すと買主の使い道が狭まり、価格が下がりやすいからです。売却では、買主が求める通行・掘削の承諾を私道の共有者から取れるか、位置指定道路(建築基準法第42条第1項第5号)か2項道路(同第2項)かで説明が変わること、私道の相続税評価(財産評価基本通達24)は不特定多数が通るか特定の者だけかで扱いが分かれること、を押さえます。まず登記と現況の確認から始めます。

「実家を相続したら、前の道が近所と共有の私道で、その持分も引き継いでいた」というご相談は少なくありません。私道の持分は、宅地の“おまけ”のようでいて、売却では通行・掘削の承諾や評価をめぐって思わぬ論点になります。本記事は、宅地とともに前面私道の持分を相続した相続人に向けて、不動産の側から確認できることを、民法・建築基準法・財産評価基本通達の条文と国の資料から整理したものです。当社は現況調査・買主探索・媒介と説明を担い、相続登記は司法書士、評価と譲渡・相続の税務は税理士、共有者との通行・掘削をめぐる紛争は弁護士、分筆・境界確定は土地家屋調査士へ、それぞれ独立した事業体として分けてご案内します。

相続した私道持分は、宅地と一緒に売る?別々に売る?

原則は、前面の宅地と一体として売ります。私道の持分だけを単独で売ることは、避けるのが実務です。

前面私道の持分は、その宅地に接して出入りするための“通行の土台”です。宅地を売って私道持分を手元に残すと、買主は他人の私道に接する宅地を、通行・掘削の承諾なしに使うことになりかねません。逆に私道持分だけを第三者に売っても、その持分単独では使い道がほとんどなく、価格もつきにくいのが通常です。だからこそ、宅地と私道持分はセットで動かします。

売る前に、まず登記で私道の権利の形を確かめます。私道は、①共有者みんなで1筆を持分で共有している形(共有型)と、②私道を細かく分筆し、各人が自分の前の部分を単独所有して互いに通行し合う形(分筆型・相互利用型)があります。どちらかで、承諾を取る相手や説明の仕方が変わります。

確認すること見る資料
私道が共有型か分筆型か、持分割合登記事項証明書・公図・地積測量図
私道が建築基準法上の道路か(位置指定・2項)特定行政庁の道路種別の確認
私道に上下水道・ガスの本管が入っているか各インフラ事業者・自治体の埋設状況
相続の名義が入っているか登記事項証明書(相続登記の要否)

売る前提として、相続登記(不動産登記法第76条の2)を先に済ませます。宅地本体の共有を全員で売る/自分の持分だけ売る整理は相続した共有の不動産を売るにまとめています。

位置指定道路と2項道路で、売却時の注意はどう変わる?

どちらも建築基準法上の「道路」ですが、成り立ちが違い、買主への説明のポイントも変わります。

建築基準法第42条第1項第5号は、特定行政庁から位置の指定を受けた私道を「位置指定道路」として道路に含めます。一方、第42条第2項は、建築基準法の施行時(昭和25年11月23日)にすでに建物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものを道路とみなします(いわゆる2項道路・みなし道路)。2項道路では、道路の中心線から水平距離2mの線が道路境界線とみなされ、建て替えの際にはその線まで敷地を後退(セットバック)させ、後退部分には建物や塀を築けません。

種別根拠売却時に効いてくる点
位置指定道路建築基準法第42条第1項第5号指定図で幅員・区域を確認。私道の変更・廃止は制限されうる
2項道路(みなし道路)建築基準法第42条第2項買主の建て替え時にセットバックが必要。後退部分は建築面積に算入できない

いずれも、買主が「その宅地に建て替えられるか」に直結します。接道の要件を満たすかは相続した再建築不可の物件は、売る前に何を確かめるのかも、市街化調整区域の相続土地は相続した市街化調整区域の土地は売れる?もあわせてご覧ください。道路種別は登記からはわからないため、特定行政庁の窓口で確認します。

買主が求める「通行・掘削の承諾」は誰から取る?

私道の他の共有者(または隣接の私道所有者)から取ります。ここは売主・買主の双方に関わる、実務上いちばん時間のかかる部分です。

買主は、①その私道を車や人が通れること(通行)、②上下水道・ガスの工事で私道を掘り返せること(掘削)を確かめたいと考えます。私道が共有なら、共有物の使用・管理・変更のルール(民法。令和3年法律第24号で見直し、令和5年4月1日施行)が関わります。改正民法は、形状・効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」や管理に関する事項は各共有者の持分価格の過半数で決められること(第251条第1項・第252条第1項)、共有者に所在等が不明の者がいるときは裁判所の関与で決定できる仕組みを整えました。もっとも、掘削のように私道を物理的に損なう工事の承諾をどう位置づけるかは個別性が高く、実務では関係する私道所有者から通行・掘削の承諾書を個別に取り交わすのが通例です。

「通行・掘削の承諾が既存の共有者から確実に取れるか」は、本記事では一律に断定できません(未検証)。共有者の数・関係・私道の管理状況によるため、売却を進める前に個別に確認します。 承諾が取りにくい、あるいは共有者と争いになっている場合は、弁護士へおつなぎします。当社は、承諾の取り付けの見通しと、買主・金融機関への説明の段取りに伴走します。

私道の相続税評価(評価通達24)は、税理士にどう確認する?

私道の評価は、その私道が「不特定多数の者の通行の用に供されているか」で大きく変わります。ここは税理士の領分ですが、確認の勘所だけ整理します。

財産評価基本通達24は、私道の用に供されている宅地の価額について、原則として私道でないものとした場合の価額の30%相当額で評価し、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは価額を評価しない(ゼロ)としています。国税庁の質疑応答事例では、公道から公道へ通り抜けできる私道や、行き止まりでも不特定多数が公共施設・商店街へ出入りに使う私道が「不特定多数の者の通行の用に供されている」例として挙げられています。

私道の状況評価(財産評価基本通達24)
不特定多数の者が通行(通り抜け等)評価しない(ゼロ)
特定の者だけが通行(袋小路・行き止まり)私道でないとした場合の価額の30%
もっぱら自分の宅地のためだけの敷地内通路私道として区別せず宅地に含めて評価される場合がある

どの区分に当たるか、路線価との関係、具体的な評価額は税理士の判断です。本記事では個別の評価額を断定しません(未検証)。 相続税の申告や譲渡所得の計算とあわせて、税理士にご確認ください。相続した不動産の全体像は相続した不動産のご相談にまとめています。

登記・測量・税務・紛争は、それぞれ誰に振る?

窓口を分けます。私道は関わる資格が多いので、はじめに交通整理をしておくと迷いません。

やること担い手
現況調査・道路種別の確認・買主探索・媒介・重要事項説明四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)
私道持分・宅地の相続登記(名義変更)司法書士
私道の相続税評価・譲渡所得税の計算と申告税理士
私道の分筆・境界確定・地積測量図の作成土地家屋調査士
通行地役権・掘削同意をめぐる共有者間の紛争弁護士
通行・掘削の承諾書など官公署提出以外の書面の整備支援行政書士(作成できる範囲で)

現況調査、道路種別の確認、買主探索、媒介と重要事項説明(宅地建物取引業法第35条。私道に関する負担は説明事項です)は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。相続登記は司法書士、評価・税務は税理士、分筆・境界確定は土地家屋調査士、共有者間の紛争は弁護士へ、それぞれ独立した事業体として、それぞれ直接ご契約いただく形をご案内します。 当社は、複数の窓口が並行して動くときの段取りに、一つの窓口として伴走します。当社・当事務所は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。境界が未確定のまま売れるかは相続した土地、境界が未確定のまま売れる?をあわせてご覧ください。相談は無料です。

よくある質問

Q. 私道の持分だけを売ることはできますか?
A. 法律上、自分の共有持分を売ること自体はできますが、私道持分単独では使い道がほとんどなく、価格がつきにくいのが通常です。前面の宅地と一体として売るのが実務です。宅地を売って私道持分を残すと、買主が他人の私道に接する宅地を通行・掘削の承諾なしに使う形になりかねず、後の紛争の種になります。

Q. 2項道路に接した宅地を相続しました。売るとき何に気をつけますか?
A. 建築基準法第42条第2項のみなし道路(2項道路)では、買主が建て替える際に道路中心線から2mの線まで敷地を後退(セットバック)させる必要があり、後退部分には建物・塀を築けず建築面積にも算入できません。この点は買主の設計・資金計画に直結するため、重要事項説明で丁寧に伝えます。道路種別は登記ではわからないので、特定行政庁で確認します。

Q. 通行・掘削の承諾は、必ず取れるのですか?
A. 取れるかどうかは、共有者の数・関係・私道の管理状況によります。改正民法(令和5年4月1日施行)は共有物の管理・軽微な変更を持分価格の過半数で決められるよう整えましたが、掘削のような工事の承諾は個別性が高く、実務では関係者から個別に承諾書を取り交わします。争いになれば弁護士へおつなぎします。当社は取り付けの見通しと買主・金融機関への説明の段取りに伴走します。

Q. 相続した私道の相続税評価は、どうなりますか?
A. 財産評価基本通達24により、私道は原則として私道でないとした場合の価額の30%で評価し、不特定多数の者の通行の用に供されている私道(通り抜け等)は評価しません(ゼロ)。どの区分に当たるか、路線価との関係、具体的な評価額は税理士の判断です。相続税申告・譲渡所得の計算とあわせて税理士にご確認ください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第249条〜第264条=共有物の使用・管理・変更。令和3年法律第24号による見直し〈令和5年4月1日施行〉で、第251条第1項=著しい変更を伴わない軽微な変更は持分価格の過半数、第252条=管理に関する事項は持分価格の過半数、所在等不明共有者がいる場合の裁判所の関与。2026年9月10日参照
  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号。第42条第1項第5号=特定行政庁の位置指定を受けた道路(位置指定道路)、第42条第2項=施行時に建築物が立ち並ぶ幅員4m未満の道で特定行政庁が指定したもの(2項道路・みなし道路)、道路中心線から2mの後退。2026年9月10日参照
  • 国税庁「不特定多数の者の通行の用に供されている私道」(財産評価基本通達24。私道の用に供されている宅地は私道でないとした場合の価額の30%、不特定多数の者の通行の用に供されている私道は評価しない〈ゼロ〉。2026年9月10日参照
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」(第76条の2=相続による所有権移転登記の申請義務〈令和6年〈2024年〉4月1日施行〉。私道持分・宅地を売る前提として名義を整える根拠。2026年9月10日参照
  • 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(宅地建物取引業法第35条の重要事項説明。私道に関する負担に関する事項の説明。2026年9月10日参照

※通行・掘削の承諾が既存の共有者から取れるか、掘削の承諾を共有物のどの行為(管理・変更)と位置づけるかは、共有者の数・関係・私道の管理状況により、一律に断定できません(未検証)。売却を進める前に個別にご確認ください。
※私道の評価区分(ゼロか30%か)、路線価との関係、具体的な評価額は税理士が判断します。本記事は個別の評価額・税額を断定していません(未検証)。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断・税務判断を示すものではありません。相続登記は司法書士、評価・税務は税理士、分筆・境界確定は土地家屋調査士、共有者間の紛争は弁護士が行います。
※現況調査・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が、官公署提出書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で受任します。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。相続した私道の持分について、道路種別と通行・掘削の承諾、評価と登記の期限を同じテーブルに並べて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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